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【連続テレビ小説】マー姉ちゃん (80)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

新八郎の母・貴美(三木弘子)から、新八郎(田中健)が帰国したという電話が入る。喜ぶマリ子(熊谷真実)だったが、毎朝新聞から広島行きの切符を二枚手配されたことに、何かを察するはる(藤田弓子)。広島につくと、父・隆太郎(戸浦六宏)から、新八郎が戦地に戻る前に結婚式をあげてほしいと頼まれる。今度、南方へ赴けば生きて戻れる保証がないと言う。そこへ、軍服姿で坊主になった新八郎が現れ、結婚はしないと言い…。

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鹿児島からの電話ということで、電話を取ろうとしたマリ子だったが、はるが受話器を死守。電話は新八郎の母・貴美からだった。

貴美「実はたった今、新八郎のことで長男から連絡が入りまして」

はるの返事だけでマリ子やマチ子には内容が分からず。

はる「そうですか。それじゃあ、そちら様も明日には広島に。まあ…こんなにうれしいことはございませんわ。あ、いえ…あの、はい。はい。承知いたしました。それではそういうことにいたします。早速にありがとうございました。それではあの毎朝の方から連絡が入り次第、そちらにお電話させていただきます。はい。無事、ご帰還おめでとうございました。それでは」電話を切る。

 

マチ子「それじゃあ…帰ってきたの!? 新八郎さん!」

はる「そうですよ」

マリ子「お母様…!」

マチ子「だったらどうして電話を独り占めなさったの! 何でマー姉ちゃんに代わってやってくださらなかったんですか!」

はる「だって電話はね、向こうのお母様からでしたし、それに新八郎さんはね、今日、広島に着いたばかりなんですって」

 

マリ子「広島へ!? じゃあ東郷さんは無事日本へ!」

はる「まだ細かいことはよく分からないんだけどね、向こうのお兄様が軍医さんをしていらっしゃる関係でお兄様とだけは連絡が取れたらしいの。それでそのお兄様から鹿児島の方に連絡が入ったのよ。明日、広島に面会にいらっしゃいって」

マチ子「マー姉ちゃん!」

マリ子「お母様…」その場でへたり込む

はる「まあ、しっかりなさい。何ですか、これしきのことで」

マリ子「だって…。ヨウ子」

 

ヨウ子がそばに来ていた。

ヨウ子「おめでとう、マー姉ちゃん! よかったわね」

マリ子「ヨウ子…。駄目じゃないの、寝てなくっちゃ」

ヨウ子「でも『病は気から』というんでしょう?」

はる「まあ、なんてすばらしい娘たちなんでしょう! でも図に乗ってはいけませんよ。図に乗ってまた病気がぶり返したらせっかく切符が手に入っても、マリ子は心配で面会どころではなくなりますよ」

ヨウ子「はい」

 

毎朝新聞から電話があり、広島行きの切符を2枚入手したという連絡が入った。

はる「2枚って…一体どういうことなんでしょう?」

ヨウ子「それはもちろんお母様の分ですわ」

はる「だって、新八郎さんと婚約したのはマリ子の方で私ではありませんよ」

ヨウ子「だからお母様は婚約者のお母様じゃありませんか」

マチ子「でもね…」

マリ子「そうよ。こんな時、私とお母様が家を空けられるはずがないじゃありませんか」

ヨウ子「こんな時ってどんな時?」

 

はる「そうですよね…そうかもしれませんね」

マリ子「お母様」

はる「広島まで面会に来いとおっしゃるからにはきっと何かがおありなんでしょう。軍医のお兄様がわざわざ毎朝に切符を頼んでくださるなんて、これはただの帰還ではないと思いますよ」

マチ子「それ、どういうこと?」

 

はる「名誉の負傷をされたのかもしれないし」

マチ子「やめて、そんな不吉なこと!」

はる「それとも何かの任務でほんの一時だけ日本に帰されたのかもしれんし。いずれにしても私たちは広島に行かなければなりません。留守の方は大丈夫ね? ヨウ子、マチ子」

マチ子「私は…」

ヨウ子「私は大丈夫です。マッちゃん姉ちゃんがいてくださったら」

マリ子「ヨウ子…」

 

蒸気機関車の映像。「新日本紀行」みたいな。

 

ヨウ子の病状に心を残したまま、その翌日、マリ子とはるは一路、広島へ向かっておりました。そして駅頭に迎え出ていた新八郎の母によって案内されたのが城下町の一角にある静かな宿の一室でした。

 

国民服の隆太郎の待つ部屋に貴美がマリ子とはるを案内した。

隆太郎「さあ、どうぞ。お入りやったもんせ。ああ、久しかぶりでごわした。またこん度は遠か所を急のことでさぞ、お疲れでごわしたろ」

はる「とんでもございません。こちらこそ毎日のことにかまけまして、すっかりご無沙汰いたしましてまことに申し訳ございませんでした」

はるさんの頭が畳につくくらい低い。昔の人の頭を下げるってこのくらい。マリ子はそこまでじゃないから現代っぽい。

 

上座の座布団を勧められるが、はるは「いえ、そこでは座が高すぎますわ」と遠慮する。何度も勧められ、座布団は外して上座に座る。

 

隆太郎から折り入って頼みがあると言われた。

隆太郎「実は今朝ほど新八郎には、こんあたいだけが30分ばかり面会をしてきもした」

はる「はい」

マリ子「あの、それで新八郎さんはご無事だったんでしょうか? それとも…」

隆太郎「うむ。間もなく元気でここへ来るはずじゃっどん。そん前にあなた方にお願いがごわす」

はる「はい、何なりとお申しつけくださいまし」

 

隆太郎「もとより軍の機密に関することなれど、せがれも詳しかことは語らんとごわんどん、今度、南方へ派遣されるための一時帰国のように思えました」

マリ子「南方へ?」

隆太郎「じゃっどん、今度外地に向かったら二度と生きて戻れるか分からんち思いもんで、どうかせがれと祝言をば挙げていただきたい」

はる「えっ?」

隆太郎「形ばかりでもよかです。何とぞこん機会に2人を夫婦にさせてやってはいただけんもんでごわんそか」

はる「はい…」

 

貴美「せがれは生きて戻れんごとあれば、なおのこと祝言を挙げる気持ちはないと申しているそうでございます。そいじゃって形ばかりで結構でございます。それほど思うた娘さんとなら、せめて祝言のまねごとだけでも挙げさせたいっち主人ともども親としてやってやれる最後のお願いだと思いまして」

隆太郎「どうぞ、こんとおりお願いしもす」

2人とも頭を下げる。

 

はる「どうぞどうぞ…どうぞお手をお上げくださいまし。婚約した時からマリ子は新八郎さんの妻でございます」

隆太郎「そいなら!」

はる「はい。結婚とは病める時も健やかなる時も死が2人を分かつまで共に愛が変わらぬことを誓うことでございます。婚約とはその結婚を前提としたものでございますればマリ子の愛も終生変わらぬものでございます。結構でございます。旅先のこととてろくな支度もございませんけれど喜んで祝言を挙げさせていただきます」

貴美「奥様…!」

 

はる「はい。マリ子、よろしいですね。婚約した時からこの日があることを思ってあなたの廃嫡手続きを済ませておきました」

マリ子「お母様…!」

はる「ええ。式を挙げて入籍をすれば、あなたと新八郎さんは正式の夫婦です。マリ子は新八郎さんに恥ずかしくないように心からお仕えするのですよ」

マリ子「はい、お母様」

隆太郎「磯野さん…!」

はる「はい。ふつつかな娘ではござりますが、改めてよろしゅうお願い申し上げます」

隆太郎「ありがとう…まっこてありがとうごわす」

 

そこに新八郎が入室。新八郎は丸刈り(のヅラ)になっていた。当時もう売れっ子ではあったんだろうけど、登場時の(戦前にしては)長髪だったり、丸刈りにもならないし、なんだかなーと思ってしまう。

 

関係ないけど私の好きだった女優さんもせっかくの朝ドラ出演に一ファンとして喜んだものの老けメイク拒否を自ら笑い話と話してて、同じくなんだかなーだった。ちゃんとしてれば別の未来があったかもしれないのに。

 

新八郎の顔が見れて嬉しそうなマリ子。新八郎は、はるに広島まで来たことのお礼を言った。はるはマリ子と一緒にいられる時間を聞いた。日程が発表され、1週間。

 

隆太郎「そいなら一刻の猶予もでけんど。じゃっどん1週間もあったなら、何もこげな旅先で結婚式を挙ぐることもなか」

新八郎「結婚って一体誰の?」

はる「何を言うとるの? あなたとマリ子のですよ」

新八郎「いや、そんな…」

はる「『そんな』とは何事ですか」

新八郎「いや、そのことでしたら今朝、父にはっきりと…」

 

隆太郎「じゃっどん磯野さんでは快くご承知くださったとじゃ」

新八郎「そうはいきません。今度の南方派遣というのは…」

はる「お黙りなさい。四の五の言うとったら磯野家は婚約不履行として東郷家を告訴いたしますよ」

新八郎「お義母さん…」

はる「ええ。マリ子もそのつもりでおります。それとも、あなたはこのマリ子の気持ちを踏みにじるおつもりですか?」

新八郎「マリ子さん…」

マリ子は笑顔でうなずく。

 

またしても蒸気機関車の映像。

 

かくて東郷、磯野両家の一行5人は一路九州へ渡り、鹿児島へと直行したのです。

 

ここは東郷新八郎の実家ということでいいんだよね? はるとマリ子は布団を並べて敷いてもらった。部屋にはピンクの着物がかけてある。

はる「だけど念のためにこの着物を持ってきて本当によかったこと。でなかったら明日の花嫁さんは、もんぺ姿になるところだったわ」

マリ子「まあ」二人笑う。

 

はる「でも…こっちのトランクは開けずに済んで本当によかったこと」

マリ子「こっちのトランクって一体何を入れてらしたの?」

はる「喪服です」

マリ子「お母様」

はる「さあ、そろそろ休みましょうか」

はるは布団を引っ張ってぴったりとくっつけた。

 

磯野家。マチ子とヨウ子が布団を並べて寝ていた。

マチ子「いよいよ、お嫁さんになっちゃうのか。マー姉ちゃんも」

ヨウ子「今頃、どうしているかしら?」

マチ子「あの人のことだもん。ただ慌てふためいているだけじゃないの?」

ヨウ子「でも一目見たかったわ。マー姉ちゃんのお嫁さん姿」

マチ子「うん。さあ、もう寝なさいよ。2人が帰ってきた時に熱でも出てたら大変よ」

ヨウ子「帰ってくるの? マー姉ちゃん

マチ子「ん?」

ヨウ子「だってお嫁さんになるんでしょう? 東郷さんのうちの」

 

マチ子にとってまさにヨウ子のひと言は不意打ちでした。

 

はるにぴったりくっついて寝ているマリ子。

 

常に長女であったマリ子が物心ついてから初めて母の胸を独占できたのが磯野マリ子である最後の晩だったのです。その思いにさしものマー姉ちゃんも無性に切なく涙の味がしょっぱいことを再認識したのでした。

 

以前はマチ子がはるの膝に乗ったり、今日みたいなマリ子の姿だったり、子供のように甘える様子が今見ると、ちょっと異常に見えないこともないような…家族の結びつきが強すぎるように感じてしまうんだな。