公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
新八郎の留守の間、東郷家の嫁として鹿児島で暮らすことになったマリ子(熊谷真実)。男をたてる土地柄の中、マリ子は貴美(三木弘子)から様々な心得を学ぶ。一方で、磯野家の近況を書いたマチ子(田中裕子)からの手紙を、隆太郎(戸浦六宏)たちとともに心待ちにしていた。マチ子は新聞社で相変わらず愛想がないだの言われるが、仕事は順調な様子。療養中のヨウ子(早川里美)も、自分で少しずつ歩けるように訓練しており…。
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鹿児島に向かったマリ子は新八郎の留守宅で初めて東郷家の嫁としての生活を経験しておりました。
マリ子は井戸端で洗濯中。
貴美「まあ、そげなことは私がやりますから、あなたは早く岩村さんへ行かんと。あちらでも待っておいでなさるでしょうが」
マリ子「はい、でももう少しですから」
貴美は今まで一人でやっていたことだから、気を遣わなくていいというが、マリ子は後は干すだけだと明るく返す。マリ子みたいな人はどこに行ってもかわいがられそう。
洗濯物を干すとき、まず貴美が物干しざおを拭く。
貴美「まあ。お若いからマリ子さんと一緒にやると仕事の早く片づくこと」
マリ子「はい。馬力のあるのだけが取り柄です」
貴美「まあ」
しかし、マリ子が最初に貴美の浴衣を干そうとすると貴美に注意された。
貴美「おなごんもんは一番最後に干さんといかんとです」
マリ子「はい」
貴美「薩摩の国は昔から旦那様大事の土地柄ですからね。私はあちこち主人について転勤しましたから別にやかましゅう言う気はなかですけれど、おなごんもんがさおの一番上に干してあると、この辺は旧士族の多か所ですからね」
マリ子「そういえば、新八郎さんも言ってました。うちに帰れば男は偉いんだ、偉いんだって」
貴美「まあ。それでは東京ではマリ子さんの方がお偉かったようですね」
マリ子「いえ、そんな…!」
貴美「冗談ですよ」
マリ子「ひどいですわ、お義母様」
貴美「すんもはん」
2人で仲よく干す。
貴美「さあ、それでは旦那様のものから、はい、高々と」
マリ子「でも岩村の伯母もそばにこういう注意をしてくれる人がいなかったから、きっといろいろまごついて悲鳴を上げたんですわ」
貴美「ですから、あなたが矢面に立ってあげないと。市長様の奥様ですからね」
マリ子「でも、私、うちは女ばかりの家族ですからこういうところが無頓着で駄目なんですよね」
貴美「『郷に入りては郷に従え』『柳に風』とそう思ってやればゆるゆる慣れます」
マリ子「はい」
マリ子は長男の嫁ではないし、同居することなく(この家だって新八郎の実家ではなく、両親の隠居所だし)、ひと言ぐらい挨拶に行けばそれでよかったんだと思うけど、これはドラマのオリジナル展開かなあ? 「長谷川町子物語」でも確かに毬子は鹿児島の叔父のところで働くというシーンはあったけど、どこに住んでたとか言及されてなかった。
隆太郎が貴美を呼ぶ。
貴美「お呼びでございもしたか?」
隆太郎「呼んだから来たとじゃろう?」
マリ子を心配する。
隆太郎「いっき岩村さんへ行かせてやらんか。マリ子はおはんの手伝いに来たとじゃなかぞ」
貴美「はい」
隆太郎「早う弁当を作ってやらんか。早う」
貴美「はい」
隆太郎「じゃっどん、芋飯はいかんぞ、芋飯は。ちゃんとした弁当を作ってやれ」
貴美「はい」
隆太郎「ああ~、さあ早う早う!」
男は偉いといってるそばからなんたることぞ。それこそ薩摩士族の末えいが弁当や洗濯のことまで口にして男子のこけんに関わるとは。しかし、嫁かわいさでどうやらこの御仁はそこまで気付いていないというのもうれしいことではありませんか。
当時でもうるさい人たちがいたせいか? 「男は偉い」と口にはしてますけど、口だけですからね~という感じかな? 新八郎も隆太郎も優しい。
一方、マチ子の方は…
文化部のデスクで仕事(写真の修整?)をするマチ子に小田が声をかけた。
小田「いや、さすがにおなごん人たい。思ったより丁寧な仕事で結構です」
マチ子「ご期待に添えて幸せでございます。あの、何かほかに?」
小田「いや、ほかに特別に言うことはなかとやけどね褒められた時ぐらいもうちょっとうれしげな顔ばしてもよかと思うてね」
マチ子「(硬い表情で)はあ、さようでございますか。それは大変失礼いたしました」
小田「…」
小田「あのな」
マチ子「はい」
小田「これはほかの人が言うとるとば耳に挟んだことやけど」
マチ子「はい」
小田「磯野さんは美人で仕事も言葉も丁寧で『掃き溜めの鶴』んごとあるけど、あれでもうちっと年頃の娘並みに笑うてくれたら仕事がもっと楽しゅうなるとそう言うとったばい」
マチ子「(あきれ顔)まあ、ご冗談をおっしゃったら困りますわ」
小田「いやいや…」
マチ子「あの、終わりましたけど」
小田「えっ?」
マチ子「あの、ほかに何をやりましたらよろしゅうございますか?」
小田「う~む…え~っと残念ながら今日の仕事はもうこれでおしまいたい」
マチ子「はあ、そうですか」
時計は4時36分。
マチ子のナレーション「というようなわけで自分では全く無意識なのですが、仕事が終わった途端に時計を気にするらしく、あれは多分好きな男性がいて、あいびきの時間が待ち遠しいのだろうというあらぬうわさが立っていることをごく最近知りました。こんなバカなことってあるでしょうか、マー姉ちゃん」
マリ子が川添画塾に行った初日、他の画学生にからかわれたみたいにリアルないや~な感じのセクハラが時々出てくるね。マチ子みたいな態度も今なら”フキハラ(不機嫌ハラスメント)”とか言われちゃうのか!? でも、女性なんだから笑えと言うのはなんだかねー。あと、恋人がいるんじゃないかも余計なお世話だ。女性だから仕事が丁寧というのも誉め言葉のようで今はあまりよろしくない。
マリ子「『仕事がないのなら、さっさと帰ってヨウ子の顔を見てやりたいのが人情ではありませんか』」
隆太郎「うむ、そんとおりじゃ」
隆太郎、貴美にマチ子の手紙を読み聞かせるマリ子。えー!
マリ子「『私はつくづく仕事があってもなくても決められた時間、机の前に縛りつけられている、いわゆるお勤め人には向いていないことを毎日のように再確認している次第です』」
貴美「ほんのごて、ぐらしか」
マリ子「鼻っ柱が強いくせに甘ったれなんですの、あの子は」
隆太郎「そげなことはなか。マチ子さんは芸術家じゃっど」
手紙の続き
マリ子「『まあ、私のことはともかくとしてヨウ子については決して悪い知らせばかりではありませんからご安心のほど』」
貴美「まあ、よかこと」
隆太郎「おはんは黙っちょれ」
マリ子「『人質に出した御仁もまた』…」
人質とは母のことで変な漫画用語だとごまかすマリ子。
マリ子「『つまり、母も周りが病気やいろいろな不安を抱いた悩める人ばかりなもので行って慰め、励まし、喜々として療養所の雑用を一身に請け負い、久しぶりに喜びと苦しみを思う存分、分かち合うことができて、まさに『水を得た魚』のごとくと申せましょう。物資不足も何のその。生きがいと張りのある輝かしき日々を送っています』
ヨウ子を見舞ったマチ子。ヨウ子はベッドの上で苦しそうにしている。
マチ子「お母様はどこにいらしたの? 一体。どこで分かち合ってるの?」
ヨウ子はひとりで散歩に行ったのだという。昨日まで30分、今日は45分歩いたので、少し大変だったけど、松林をちゃんと歩けた。
ヨウ子「まず、病気と立ち向かえるだけの体力を作ること。私、本当に先生のおっしゃるとおりだと思って」
マチ子「分かったわ。それには違いないけれど、散歩のあとはちゃんとゆっくり休んで静養しなくちゃいけなかったんじゃなかった?」
ヨウ子を横にならせるマチ子。ヨウ子は先生に3か月で2時間歩けるように努力しなさいと言われた。2時間…! 健康な人間でも結構きつい。
トミ子がお見舞いにやって来た。どうでもいいことだけど、昨日観た「トゥルーマン・ショー」でトゥルーマンが好きだった本名・シルビアの女優さん(ナターシャ・マケルホーン)の顔立ちがトミ子さんに似てるなーって昨日ずっと思ってた。とにかく美人さん。
トミ子と一緒にはるも入室。マチ子が病室にいることに驚く。
はる「新聞社の方はどうしたの? ええ? また何か仕事をしくじって…それとも嫌になって抜け出してきたの?」
マチ子「いいえ、とんでもない」
さらに「クビになるようなこと何をしたの?」と問い詰めるはるに、漫画ルポで軍需工場で働いてる若い人たちを描く仕事で、早く終わったからヨウ子の顔を見に来たというマチ子。
前に、疎開先が急に変わったことを調べていたら見つけた記事。この記事によればつい最近、行方不明だった「戦時版」が発見されたということみたい。もう挿絵の女性がサザエさんそのものに見える。
トミ子はヨウ子のために「生きのいい干物」を持って来た。生きのいい…干物!
トミ子「干物っていうとはビタミンDがいっぱい入っとるけん…。ちょっと待って、ビタミンっていうとは敵性語?」
マチ子「いいんじゃないの? 私もよく分かんないけど誰もいないことだし」
同室の人は散歩中で不在。
トミ子「ならよかね。それでね、できれば骨ごと食べるとカルシ…。まあ、よかたい。カルシウムがあって、なおのこと体によかそうですたい」
ヨウ子「はい」
はるはトミ子にお礼を言う。
トミ子「いいえ。これもマリ子さんとの約束ですけん」
はる「マリ子との?」
トミ子「うちができるだけのことはするけん、旦那様だと思うて後顧の憂いなく、あちらのご両親にお仕えしてきんしゃいってけしかけたもんですけん」
知らない言葉が多いんだなー。無知。
トミ子「でもちゃんとやれよっとやろか、あのそそっかし屋さんが」
はる「本当に」
トミ子「ウフフッ。(はるの方を向いて)あら、まあごめんなさい! つい昔の癖で」
マチ子「いいのよ、そのとおりなんだもの」
はる「マチ子が言うことはありまっしぇん。いいんですよ、そのとおりなんですから」
鹿児島の家。貴美がマリ子に箱を取るように言い、袋に詰めた米を箱に入れる。
貴美「これなら鉄道で送っても中がお米とは分からんでしょう」
マリ子「はい」
貴美「それなら明日、これを送ってきてたもいやんせ」
マリ子「はい。あの、どこへ?」
貴美「まあ…ヨウ子さんの所に決まってるでしょう」
マリ子「ヨウ子の所へですか?」
貴美「お散歩なさるにも何にも、まず体力です。体力つけるには、まずお食事です」
マリ子「でも…」
貴美「それに、おかあ様だって患者さんのご面倒見られるにはしっかりとお食事をなさらんといつか倒れるに決まっているでしょ」
マリ子「ええ…」
貴美「そのかわり、私どもは代用食ですよ。日本中の皆さんが困っていらっしゃるのですから、ぜいたくは許されません。よかですね?」
マリ子「はい」
貴美「そいだったらくれぐれも中身がお米だと悟られんように上手に荷造りをしてください」
マリ子「はい、ありがとうございます。お義母様!」
とは言うものの果たしてマー姉ちゃんにそんな器用な荷造りができるものなのでしょうか?
そういや、新八郎の兄が軍医という話もしてたけど、父も軍医だったね。だから、病人のヨウ子に対してああいう気遣いができる両親なのかなと思い至った。
優しい義両親…というかマリ子の態度も明るくハキハキしてるから好かれるよね。