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【連続テレビ小説】マー姉ちゃん (120)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

安定した職がない者を制限する、東京への転入問題。マリ子(熊谷真実)はフクオカ新聞の小田(織本順吉)を訪ね、名目上の社員の座を勝ち取る。荷造りも一段落したマリ子とトミ子(村田みゆき)は、学生の頃に歩いた道をたどる。再び東京へ行くマリ子に、エールを送るトミ子は今や4人の母親、今度は出版を目指すマリ子。だが、二人の友情はあの頃と変わらない。その夜、隆太郎(戸浦六宏)たちも磯野家の見送りにかけつけ…。

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磯野家前

はる「それじゃあ、頑張ってね」

ヨウ子「しっかりマー姉ちゃん

千代「うちも祈っておりますけんね」

マリ子「はい。それじゃあ行ってまいります」

 

と、歓呼の声に送られてマリ子が出て行った、その行き先は…

 

小田「何だって?」

マリ子「ですから、こちらの社員にしていただきたいんです」

小田「あの、悪いがもう一度言うてくれんですか?」

マリ子「はい、私とマチ子をですね、こちらかあるいは西部日本新聞の記者にですね…」

小田「何ば言うとるんですか、あんたらは」

マリ子「はい?」

 

小田「終戦の時でん、早まるなと言う暇もなく辞めてしまえば、今度の『サザエさん』だってそうたい。せっかく人気が出てきたっちゅうのに東京に行くと言うて、さっさと結婚ばさせてだね、それを今になってきょうだいともども使うてくれとは、一体、あんた、我々をだな…」

マリ子「いえ、そうじゃないんです」

小田「しかし、あんた、今、社員にしてくれと」

マリ子「ですから名目上でよろしいんです」

小田「名目上?」

 

マリ子「はい。東京は今、転入制限が厳しくて定職がなかったり、就職先がはっきりしない者には移動証明を受け付けてくれないんです。ですから名目上、こちらの新聞記者にしていただけたら、大変ありがたいんですが。ええ、もちろん名目だけの社員ですからお月給をくださいなどとは決して」

小田「そげなこと当たり前でっしょう」

マリ子「はっ、はい」

 

小田「で、マチ子さんは東京へ行って一体何ばするとですか?」

マリ子「はい、おかげさまで陽談社、陽文社、文学館からたくさん仕事を持ち込まれたようなありさまで、しかたがないので一人で遅れて帰ってくることになりました」

小田「ほう。で、お姉さんの方は挿絵ですか?」

マリ子「はい、そうしたいと思っているのですが、とりあえず『サザエさん』を出版します」

 

小田「『サザエさん』というと?」

マリ子「はい、あの『サザエさん』です」

小田「で、どこから出すとですか?」

マリ子「どこからと申しますと?」

小田「いや、その出版社たい」

 

マリ子「はい、姉妹出版からですわ」

小田「姉妹出版? あんまり聞いたことなかな」

マリ子「はい、私が出すんですから」

小田「えっ!?」

この辺り、「マー姉ちゃん」が始まる前の15分番組で見たな。

 

マリ子「母の命令なものですから私があれを本にします。もう2万部注文してまいりました」

小田「2万部!?」

マリ子「はい」

小田「へえ~…。まあね、出来上がったらうちの社にも何冊か」

マリ子「あっ、もちろんそのつもりでおりますわ。そういう事情もありまして住む家も確保できたのに転入することだけができないでおりますのですから、こうやってお願いに参りました」

 

小田「う~ん、しかしだね…」

マリ子「いえ、転入さえしてしまえばクビにしていただいて結構です。ですから、どうぞお気軽に考えていただけませんでしょうか?」

小田「気軽くと言ってもだね、磯野さん…」

マリ子「あの、母と下の妹を連れてまいります関係上、私とマチ子が就職していた方が何かと安全かと思いますので、思い切ってお願いに参りました。ですから…」

 

もう一押し! 一気に押して押して押しまくり、相手を土俵の外へ!

 

マチ子・ヨウ子・千代(声だけ)「そら、そこよ! 押せ~! 押せ、押せ、マー姉ちゃん!」

 

東京・ウラマド姉妹宅

マチ子「やった~! マー姉ちゃん、万歳!」

電報を手に取り、喜んでいる。

マドカ「でしたら、転入の段取りが?」

マチ子「ええ、さすがは我がマー姉ちゃんです! これでいつでも引っ越してこられるようです!」

マドカ「まあ、よかったわね、お姉様!」

ウララ「マドカさん!」

 

部屋の隅の椅子に腰かけ、小さく拍手する編集者の井関。調べると和田一壮(かずお)さんという方で、何となく見たことある人だと思ったけど、ドラマや映画は1980年までで今は画家などをやられていて出演作もあまり覚えがない。

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見たことあるなと思ったのは、↑の映画に出てた上田耕一さんでした。髪の濃い感じが似てるなー。寺山修司顔というか。

 

マチ子「あの、ですから、ねっ? 明日の福岡行きの切符、なんとかなりませんでしょうか?」

井関「ちょ…ちょっと待ってくださいよ、マチ子先生。先生に帰られてしまったら…」

ウララ「だからものは相談だって言ってるでしょう」

井関「はい…いえ、まだ何も相談されてはおりませんが」

マドカ「ですから、それを持ちかけるのがあなたのお仕事ではありませんの?」

 

井関「はい…例えばどんなふうに?」

ウララ「例えばですね、あなた、これから帰って切符の手配をしてくだされば、その返事がある明日の朝までにはマチ子さんもお宅の原稿に関してだけは例えば、徹夜してでも大傑作描き上げておくとか」

井関「アハハハハッ、なるほど~」

マドカ「そう思ったら直ちに行動は開始すべきですわ」

井関「はい。では、行ってきます」

 

マドカ「ただし、『切符は手に入りませんでした』なんて言っていらっしゃったら、お宅の原稿は絶対に渡してはいけないとマチ子さんに申し上げますわよ、私」

井関「先生…」

マチ子「いざとなったら塚田さんに泣きついてください」

井関「えっ、編集長にですか?」

マチ子「そうよ。締め切りまでに原稿が入らず、かつ、私が福岡に帰ってしまったりして一番困るのは編集長ですもの」

井関「ハハハハハッ、なるほど、ハハハハハッ! 分かりました!」

井関が飛び出していき、マチ子たちは手を取って喜び合った。

 

かくてマリ子とマチ子が出版準備と東京進出のために上京すること延べ6回にわたり、いざ引っ越しという時までで既に消化したお握りが総計144個を数えることになりました。そしてまたまた荷造りです。

 

荷造りしているメンバーは磯野家、お隣の牛尾家、村田さん、石井先生、トミ子の夫の仙造、協会のご婦人かな。

 

前回に比べて荷造りが簡単に終わってしまったと男性陣。

はる「はい、みんな食べてしまったからでございましょう」

マリ子「本当。掛け軸から額までよく胃袋に入れてしまったものですね」

村田「ほんなことおいたわしいことで…」

マチ子「また始まった」

村田「いやばってん…」

 

マリ子「いいえ、村田さんには本当にお世話になりました。これからこういうご面倒はもう二度とおかけしませんからね」

村田「めっそうもなか。またいつでん帰ってきてください。私の目の黒いうちはどげんことをしてでもお世話いたしますけんね」

はる「ありがとう。でもね、今度は私たちがご恩返しをする番ですよ。戦争も終わったことだし、皆様! 皆様、東京へおいでの節は是非とも私たちがお宿をさせていただきますわ」

川村夫人「はい、マリ子さんもマチ子さんもますますご成功あそばされることでしょうけん、是非伺わせていただきます」

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↑川村夫人は前回の上京時にも駅までお見送りに来て賛美歌を歌った人。

 

千代「今度はうちも一緒ですたい。まあ、お台所の家事はしっかりと責任を持って預かりますけん」

はる「余計な責任まで背負い込まなくてもいいのよ、お千代は」

千代「ばってん…」

 

軍平「ハハハッ、よかでっしょう。皆さん、張り切っとりなさる証拠たい。なあ、マリ子さん?」

マリ子「はい。でもどうなりますか。ただ一生懸命元気にやるつもりです」

加津子「きっとですばい。うちも必ず母を捜しに参りますけん」

マリ子「おば様…」

 

石井「ヨウ子ちゃん、体はくれぐれも大事にせにゃあね」

ヨウ子「はい」

 

そろそろお茶に…というところでトミ子が訪れた。マリ子はトミ子と共に外へ。赤ちゃんをおんぶしたトミ子とよく行った城跡へ。

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トミ子「いよいよなんやね…」

マリ子「うん…」

トミ子「あれからいろんなことがあったとやね」

マリ子「そうね。トミ子さんには天神様の筆をもらいながら、今度は私は出版屋をやるために東京に行くんですもの。あなたとの約束を破ったこと、ずっと心のどこかに引っ掛かってたのよ」

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トミ子「何ば言うとるとね、マリ子さん」

マリ子「だって…」

トミ子「見てんしゃい、この福岡ば。あん時とは何もかんも変わってしもうたとよ。町には大の男がまだどう生きていってよかと分からんでうろうろしとるとに出版ばやるためにおなごが東京に乗り込んでいくなんてやっぱ大したことばい」

 

マリ子「ばってん、今度はもう帰ってくる家がなくなってしまった」

トミ子「うちの家があるやないね」

マリ子「トミ子さん…」

トミ子「今はバラックだけれど、必ずお父ちゃんと力ば合わせて、もういっぺん戸田海運の看板ば上げるつもりたい。だけん錦ば飾って里帰りしてきてつかあっせ」

マリ子「ええ」

 

トミ子「うちだってもう昔の女学生やなか。マリ子さんがこれから乗り出そうとしている船の行き先が並大抵のことやなかということもよう分かる。けど、大丈夫たい。うちは信じとるよ、マリ子さん」

マリ子「トミ子さん…」

トミ子「あんたならきっとやれるばい。こん福岡からうちが成功ば祈っとるけん、それば覚えとってね」

マリ子「ありがとう。あの時もトミ子さん、そう言ってくれた」

 

トミ子「今はうち一人じゃなかとよ。お宅で命拾いしたこん子も入れて今じゃ4人のお母ちゃんたい。それにお父ちゃんもみんなあんたの応援団ばい」

マリ子「フフッ、すごいわ。応援団なのね」

トミ子「そうたい! あん時、命ば落としとったらと思うたらどんなことだってできるばい!」

マリ子「本当だわ…本当にそうだわ、トミ子さん」

 

トミ子「ばってん体だけには気ぃ付けて」

マリ子「トミ子さんもよ」

トミ子「うん」手を取り見つめ合う。

 

夜、磯野家

磯野家の面々と牛尾家、新八郎の両親とでささやかな宴会。

軍平「しかし、マリ子さんが新聞記者とはね」

マリ子「はい、もう東京行きのエンジンはかかってしまったものですから。それにほかに方法がありませんし」

一平「いやいや、結構結構。それが若さというもんたい。東京へ行ってもその調子でどんどん前へ進むこった。ええ? わしは期待しておるばってん。のう、マリ子ちゃん?」

マリ子「はい、ありがとうございます」

 

鹿児島から新八郎の両親が磯野一家の見送りに駆けつけてきておりました。

 

ヨウ子は一平におせん別の歌をリクエスト。

一平「じゃあ、おじいちゃんの一つ覚えの『黒田節』ばな」

 

♪酒は飲め飲め 飲むならば

日の本の一の 此の槍を

飲みとる程に 飲むならば

これぞ 真の黒田武士

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お千代ねえやの結婚式に行かなかったマチ子、ヨウ子が一平に聞かされた歌。

 

隆太郎がマリ子に目配せをし、マリ子がはるを見ると、はるは笑顔でうなずく。隆太郎、貴美に続いてマリ子は隣の部屋へ。

隆太郎「マリ子さん」

マリ子「はい」

隆太郎「あん、ご老体が言われたとおりでごわす。あたいもおまんさあがどんどん前に進んでいくことを期待しておりもす」

マリ子「はい」

 

隆太郎「じゃっどん、東京はまだまだ混乱しちょるっち話でごわんそ。そん東京で慣れん出版の仕事をするっちいうことは並大抵の苦労ではなかと思うておりもす」

マリ子「はい」

隆太郎「しかも、そん仕事は新八郎をあくまでも待つ覚悟からち母上から聞きました。マリ子さん、新八郎に代わってこんとおりでごわす」

マリ子「お義父様…」

貴美「じゃっどん、体には気を付けてたもいやんせな」

マリ子「お義母様…」

 

隆太郎「うむ。おまんさあにならできる。見事戦ってきやんせ。かなわん時はあたいら2人、いつでん味方をしに駆けつけもんでな」

マリ子「はい」

 

軍平の「あれ? マリ子さん、どこ行ったと?」と呼ぶ声に部屋に戻る。一平の歌はまだ続く。

 

翌朝、磯野一家はお千代ねえやを加え、再びこの福岡へ別れを告げたのです。

 

当時は痛快なエピソード扱いだったものも今の感覚で見たらなんだそりゃなことはそりゃああるよ。楽しいイメージだったクレイジーキャッツの映画ですらそういうのあったもん。でもそれを含めて面白いと私は思ってしまう。

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昔のドラマや映画が好きだけど、決して昔はよかったとは思ってないです。むしろ、こういう作品を見ると、生きてるのが今でよかったな~とつくづく思うこともあるのです。だけど、古い作品は世界観とか好きなんですよねー。

 

時々、マリ子は鹿児島に行かなくていいのか?というのをツイッターで見かけるけど、新八郎は名前からも分かるように長男ではなく、長男一家が家を継ぎ、新八郎の両親は実家ではなく隠居宅で2人のんびり暮らしているので、マリ子に嫁の務めとか関係ないと思うんだけどなあ。

 

新八郎も元々新聞記者で東京に住んでて、そのまま結婚して東京で暮らしてたんだから関係ないよね。だけど、今日の話の場合は、新八郎はもう死んだんだとはっきり言わない義両親が?だった。

 

長谷川町子物語」だと夫を亡くして泣き暮らしていた毬子が町子が描いた「サザエさん」を見て久しぶりに笑うというシーンがありました。2013年のドラマなので炎上しそうなシーンはうまいとこ省略してたんだなー。そのかわり近所の交流が一切ないので物足りなさは感じます。炎上避けのドラマなんて、私はつまらない。