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【連続テレビ小説】純ちゃんの応援歌 (76)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

美山村の様子がわからず、落ち着かない大阪のもも(藤山直美)たちだが、あき(伊藤榮子)はこんな時にじたばたしても仕方ない、運を天に任せるんだ、と諭す。純子(山口智子)が興園寺家で炊き出ししていると、金太郎(高嶋政伸)が泥だらけでやって来て、秀平が車ごと川に流された、と言う。失意の純子は、秀平が流されたという沢へ行くと泣きながら訴えるが、つや(白川由美)はあなたが行ってもどうにもならない、と止め…。

この回は年が明けて1989(昭和64)年1月4日(水)放送。

 

昭和28年7月17日から近畿地方を襲った豪雨は殊に和歌山県一帯に深刻な被害をもたらしました。正太夫の所属する劇団かもめ座の公演を見るために4年ぶりに美山村を訪れた純子は、そのまま陸の孤島となった美山村に閉じ込められてしまったのであります。

しかも、雑誌「ザ・ワールド」の契約カメラマンとして4年ぶりにアメリカから帰った速水秀平はその日の朝7時に大阪をたって美山村に向かったというのですが、翌18日の朝になっても姿を見せず、純子の不安は募るばかりであります。

そして村では何軒もの家が流され、犠牲者まで出たとあって小学校に避難した村人たちの間にも重苦しい空気が流れているのであります。

 

だからこそ、長めのナレーションで説明してたのね。避難所で炊き出しのおにぎりを食べ続けるうめ。

 

ラジオ「続いて和歌山県下の被害状況…」

 

純ちゃん食堂にいるももは気が気ではない。あきも心配そうな表情。昭と雄太も帰ってきた。

雄太「今日は開会式だけであとの試合は流れてしもた」

あき「そうか」

昭「和歌山はえらいことになってんで」と新聞を広げる。ももはひったくるように新聞を見る。

 

和歌山縣下に豪雨

 各所で被害・鉄道も不通

 

紀勢西線寸断さる

   ”黒潮”など運休

 

もも「美山村のことは載ってないけれどもな」

あき「電話線も切れたて書いてあるから、どないなってんのか分からんのと違います?」

 

ぬひもびちゃびちゃになりながら帰ってきた。

ぬひ「あのな、御坊辺りでは流木につかまって海に流されてる人がおるそうやで」

もも「ばあちゃんや金太郎らどがいしてるやろなあ。ちょっとうちこがにしてられんからな、美山村行ってくらよ」

あき「行くって、ももさん…」

昭「だって、汽車も止まってるって話やで。歩いていく気か?」

もも「ほやけどなあ…」

 

あき「ももさん。こういう時はジタバタしてもあかんの。大丈夫、なんとかなってる。そう思て落ち着いてる方がいいんです」

もも「いや、ほら、ほやけどなあ…」

雄太「速水さん、どないしはったんやろなあ。もう美山村に着いとんのやろか」

あき「そやな」

 

もも「ああ…こんな時はもう何も手がかりないさかいもう、うち気ぃもめてなあ」

ぬひ「そやけどなあ、雨だいぶ小降りになったさかよかったな」

もも「とんでもない。山の中はこいからが怖いんやら。土砂崩れはある。川の水は雨やんでもますます増えてくる。ほんまにおとろしいのはこいからなんや」

 

あき「ももさん。こういう時にぴったりのええ言葉があるやおませんか」

もも「何な?」

あき「運を天に任せる」

もも「奥さん、落ち着いてますなあ。感心するわ」

あき「そやないけど、今、私がここで一人で心配してイライラしてもしょうがおませんやろ。こういう時はうそでも落ち着いてる方がええんです」

もも「いや~」

 

あきは客が来たので作業に戻る。

もも「あかん。うち、心配で頭おかしなりそうや」

 

雨漏りを受ける鍋の下に新聞紙と鍋の中にも布を置いて雨漏りが飛び散らないようにしている清原家。地鳴りがし、清彦が様子を見に来て、避難を促すものの、もうしばらく様子を見るという清原。清彦は裏山に登ると言って行ってしまった。

 

清原「(澄の手を握り)大丈夫だからね」

いやいや、早く避難しよー!

 

台所でおにぎり作りをする興園寺家の人々と純子。そこに泥だらけの男が転げるように入ってきた。

つや「誰や?」

金太郎「牛山金太郎…」

純子「金ちゃん?」

 

髪の毛まで泥だらけで水を求めた。

金太郎「純ちゃん。速水さん、あかなんだで」

一の沢を抜ける所で車と一緒に流されたという金太郎。信じられない純子。しかし、金太郎の目の前で車が流れて行ったという。昨日の3時ごろ、御坊の町で金太郎が雨が激しくなってきたのでしょうゆ屋を早引きして傘をさして走っていると秀平に会って、車に乗せてもらった。

 

乗せてもらったが、途中の道がズタズタで2人で何回も車を降りて押したり引っ張ったり苦労して、ようやく一の沢までついた。しかし落石があり、金太郎が車を降りて石をどけに行ったが、道が崩れて、車が川に引きずり込まれた。秀平はドアを開けて抜け出そうとしたのが見えたが、間に合わなかった。上半身を車から乗りだすようにしていたが、そのまま車と一緒に流された。金太郎も追いかけた。

 

金太郎は中から放り出されるように落ちたというカメラを純子に差し出した。カメラのストラップにはトーマス・S・ハヤミというタグが付いていた。泣き出しそうな純子はたらまずその場を去った。

 

テーブルの上に泥だらけのカメラを置いて、豪雨の中立ち尽くす純子。つやが家に上がるように言い、つやはタオルで純子の体を拭く。

つや「久助が言うてたやろ。野球はな、9回の裏ツーアウトになったかて諦めたらあかんて。ほんま、分からんのやさか」

 

泥を落としてさっぱりした金太郎が来た。

金太郎「純子ちゃん、許いてほしいわ。わいな、途中で何回も引き返そうて言うたんや。これ以上無理や言うてな。ほやけど速水さん何が何でも美山村へ行く言うてな。純子ちゃんがどがいしやるか心配やさか言うてな」

純子は首を横に振る。

金太郎「わい、力ずくでも止めたらよかったんやな。許いてな」

つや「金ちゃん。あんたがなにもそんな謝ることないよ。しかたがないことなんやから」

 

純子「金ちゃん」

金太郎「何な?」

純子「速水さんの車が流されたのは一の沢や言うたね」

金太郎「そうや」

純子「私、行ってみる」

 

金太郎「あかん、あかん! わいかて命からがら来た道やで。男でも歩けん道どがにして行くんな!」

純子「行く!」

金太郎「死ぬで! 純ちゃんが死んだら昭や雄太はどがいなるんな!」

純子「何としてでも行くんや!」

 

金太郎「何言うんな!」純子を突き飛ばす。

純子「何でや! 何で行ったらあかんのや!」

金太郎「何でて…」

 

つや「純ちゃん。純ちゃん、あんたの気持ちはよう分かるけどな、今、あんたが行ったからってどうなるわけでもないやろ!」

純子「そやかて…」つやの胸で泣く。

つや「ここはな、辛抱や。なっ? 辛抱するんや」

 

おにぎりを握るつやたち。つやが視線を送った先では純子が一生懸命火をおこしていた。

 

車ごと川に流されたという速水秀平の身の上を思うと純子の涙は止まらないのであります。純子の安否を気遣ってしゃにむに車を走らせたと聞けば、純子の胸はなおさら張り裂けそうになるのであります。

 

純子と速水さんは村の中ではもう公認カップルという感じだね。速水秀平と牛山金太郎が車に乗ってるとこ見たかったなー。明日は今年最後の放送であり、昭和最後の回でもあります。ドラマも転換点で時代も転換点だったとは。