1963年 日本
あらすじ
軍隊を「天国」だと思い、それもみな、天皇陛下のおかげと考え、天皇を素朴に愛し続けたことから巻き起こる悲喜劇を描く。渥美清、長門裕之、中村メイ子出演、野村芳太郎監督によるほのぼのとした人情物語。
山田正助は、幼い頃に両親と死別、悲惨な生活を送ってきた。そんな正助にとって、腹いっぱい3度のオマンマにありつけて俸給までもらえる軍隊はまさに「天国」だった。そして2年が過ぎ、正助は除隊の日を迎える。
2024.8.19 BS松竹東急録画したものがHDDから消え、2025.1.8に再録画。
松竹映画
消灯ラッパが鳴る。
♪新兵さんは
可哀想だねェー
また寝て
泣くのかよォー
新兵さんは
可哀想だねェー
また寝て
泣くのかよォー
「日本の青春」の中でも歌ってた。
でもこの映画だと♪新兵さんはかわいいよね、だった。
製作:白井昌夫
補:六車進
*
原作:棟田博
企画:市川喜一
高島幸夫
脚本:野村芳太郎
多賀祥介
*
山田正助(ヤマショウ):渥美清…字幕黄色
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博の妻秋子:左幸子
井上セイ子:中村メイコ
手島国枝:高千穂ひづる
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棟本博(ムネさん):長門裕之…字幕水色
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撮影:川又昻
音楽:芥川也寸志
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監督:野村芳太郎
岡山
昭和六年一月十日
棟本のナレーション。<私は岡山の歩兵第十連隊に入隊した>
衛生兵の前で全裸になる男たち。
<その日、私は初めて彼を見た>
ボロボロの服を着ている山田。身体検査を終え、軍服が少し小さいとこぼす。被服係下士官が少しくらい合わないなら体のほうで合わせろと言う。
中隊長の挨拶の途中、畏れ多くも…と言った途端、姿勢を正す。山田達入営兵たちはわけが分からず、キョロキョロ。
「今後、畏れ多くも天皇陛下に関するお話の場合、必ず不動の姿勢になる。分かったな!」と下士官に言われ、入営兵たちは返事をする。
中隊長が再び「お前たちは畏れ多くも…」と言いかけると、今度は不動の姿勢になる入営兵たち。山田もやや遅れて不動の姿勢になる。「天皇陛下の赤子(せきし)として、恥ずかしくない立派な兵隊にならねばならん」
山田は隣に立つ棟本に「赤子って何じゃ?」と聞くが、下士官に注意された。
ひとりひとり宣誓書に名前を書かされることになり、特務曹長に急かされ、山田は苦心して自分の名前を書いた。次に並んだ棟本は、まじまじと宣誓書を見る。
山ダショウスケ
兵舎に戻ると、山田は棟本に送り返すところがないから荷物を送ってほしいと頼んだ。山田は棟本とは軍隊に入って初めて口を利いた仲だし、力仕事は何でも引き受けると言い、部屋に貼られた団長や隊長の名前を全部カタカナにしてほしいと頼んだ。
第十師團長 陸軍中尉 本庄繁閣下
第三十三旅團長陸軍少尉 磯谷廉介閣下
第十聯隊長 陸軍歩兵大佐小畑敏四郎殿
第一大隊長 陸軍歩兵少佐水田一貫殿
第一中隊長 陸軍歩兵大尉堀江正義殿
同じ兵舎のベッドに寝転んでいた原は「読めるようにしたりぃな」と棟本に言い、山田を”カタカナはん”と呼ぶ。寝台が隣り合わせになっとる者は戦友だとタバコをくれた。棟本を”学校出”と呼び、タバコを渡した。鶴西という男が「ほまれ」を吸ったことがないと割り込んでタバコを受け取り、目の前で奇術を披露した。
渥美清さん、西村晃さん、桂小金治さん「南の島に雪が降る」出演者とかぶる。桂小金治さんはこの映画でも奇術をやってた。
鶴西だけは妻がいる。結婚したのは去年の暮れ。今夜から寂しいと素直に言い、軍隊はもっと怖い所だと聞いていたが、みんないい人ばかりで助かりますと感想を漏らした。
♪起床ラッパ
微妙にこのメロディじゃないんだよ~。
起きろよ 起きろ
皆 起きろ!
起きないと
班長さんに
しかられる――
不寝番たちが「起床! 起床!」と叫び、兵隊たちを起こす。
堀江大尉(中隊長):加藤嘉
浦上准尉:多々良純
棟本の伯父:森川信
副官:穂積隆信
鶴西:桂小金治
*
鶴西の妻:葵京子
津村映子
浦上の妻:小田切みき
井上セイ子の伯母:清川虹子
遊女:若水ヤエ子
*
朝鮮のとうちゃん:上田吉二郎
北竹章浩
髭の兵隊:玉川伊佐男
キャストクレジットが出ている間も体操したり、銃を持って行進したり…という兵隊たちの訓練の様子が描かれる。
情報部将校:井上正彦
山本幸栄
川村禾門
末永功
人見修
朝海日出男
高杉裕児
*
今井健太郎
千葉晃一
園田健二
国分秋恵
荒瀬友幸
草香田鶴子
大塚君代
水木涼子
*
遠山文雄
村上記代
小野千鶴子
後藤泰子
大久保敏男
舟川亨
荻田洋巳
南里宗太郎
♪食事ラッパ
正露丸のCM曲のメロディで
♪一中隊も 二中隊も
まーだ めし喰わぬ
三中隊は
もう めし喰って
食器上げたァー
棟本が食事を運んできた。原は、これまでの態度と急変し、鶴西や山田の銃の扱いに怒り、2人を殴りつけた。そして、鶴西に妻からの手紙を読み上げさせた。妻が、村から娘が何人も売られた話や借金の催促、お金は使わないで送ってくださいと書いており、最後のほうは泣きながら読んだ。
風呂に入りながら田舎は不景気だと話す山田。棟本は父が亡くなってから、伯父の仕事を手伝っている。山田は3つで母を亡くして、以来一人暮らし。元々父はいなかった。親戚からも冷たくされ、13で村を飛び出し、様々な仕事をしたが、軍隊は天国だと言う。雨が降っても三度三度飯が食える。あと2年は天国。
しかし、風呂あがり、山田の帽子が盗まれていることに気付き、トイレで用を足していた兵士から帽子を盗った。
♪万朶の桜か襟の色
花は吉野にあらし吹く
兵士たちが「歩兵の本領」を歌いながら歩く。
菊地少尉が初年兵を教練場に呼び出した。教官と死んでくれる者を募集した。腐敗堕落の特権階級者を倒そうと呼びかけ、鶴西に押された棟本と山田が前に出た。
この少尉は急病として姿を消し、翌年、5.15事件が起きた。
中島という遊郭へ行った棟本と山田。うちは新兵さんばっかりだと誘う客引きのおばさんと値段の相談。軍人は半額だがサービスによって値段が違う。しつこく女性に絡む原と知らずに声をかけた山田と棟本は原に見つかり殴られた。
山田は今夜、原二年兵を仇討ちすると言う。除隊満期の前夜と決めていたが、原は除隊間近となり、山田達にも親切に接するようになり、山田も食べ物も分けてもらい、ホントにやるのか?と思い始めた棟本と鶴西。
原の除隊前日、山田は営庭(えいてい)に原を呼び出したが、決心が鈍るが、山田は原に相撲勝負を挑んだ。倒れ込んだ原の腰をさする山田に原はいびきをかいて寝た。
1年経ち、2年兵になった山田達。初年兵に厳しく当たる鶴西や山田。
山田は酔っ払って帰り、門限に遅れ、重営倉5日。正座する山田の前に向き合って座る中隊長は毎日通って、山田に向き合った。
営倉から帰ってきた山田に中隊長は代用教員をしていた初年兵の柿内を先生にし、文字を教えてもらえ、柿内の言葉は中隊長の言葉だと命じた。カタカナも満足に読めない山田。棟本や鶴西が覗いてきて笑われ、山田は恥ずかしがる。
寝言でも教科書を読み上げ、柿内、これは何と読むんだ?と言っている山田。
山田は町の書店で「敵中横断三百里」があるか聞いた。
本屋の店主は「少年倶楽部」ですね、と本を渡した。棟本は読めるのか?と聞くが、山田は柿内から面白いと聞いて購入した。
初年兵は大変だろうと卵を差し入れた山田だったが、柿内は盗んだ物を頂くわけにはいきませんと断った。山田は卵を柿内の口にねじ込んで怒った。
その後、「のらくろ」にハマった山田。境遇が自分に似ていると感じた。
秋季大演習に陛下が来ることになり、中隊長だけでなく棟本たちも興奮した。
突撃ラッパが鳴る。
やってもやっても
ダメだァ―
やってもやっても
ダメだァ―
君が代ラッパが鳴り、馬に乗った陛下御一行が通り過ぎた。兵士たちは動きを止め、陛下たちを見る。何とも優しいお顔をしておると感激した山田は親しみを持つようになった。
柿内との勉強。山田は満期が来るのが憂鬱だと話す。前科者でシャバへ出てもいいことはない。ホントにいろんな境遇の人が集まってたんだな~。
中隊長は満期を迎える山田のために果樹園をやっている男から仕事を紹介してもらっていた。中隊長は朝鮮の竜山へ行くと言うと、山田はついて行きたがった。
山田は紋付袴に着替えて出て行く準備をしていた。柿内は弾薬庫勤務なので見送りにいは行けないと駆けつけたが、山田に手紙を書いてほしいと頼んだ。
満期除隊の日、棟本に果樹園まで送ってほしいと頼んだ山田だったが、棟本は母が首を長くして待ってると握手して別れた。中島へ寄っていくと言う山田にもう半額じゃないぞと送り出す。
岡山県 津山
昭和九年
故郷へ帰り、結婚した棟本。
東京
昭和十年
エログロナンセンスの時代。
東京音頭が流れ、トーキー映画が流れる。100円のブタを追いかけ、ブタが追いかけられたり、運ばれたり…雑な扱い、やめとくれ!! 人形をそれらしく動かせ!
長門裕之さんの妻が左幸子さん。「赤いシリーズ」では別の作品だから、共演なしだっけ?
棟本は売れない小説家、妻は内職に精を出す。街で上海事変の貼り紙を見ているのが本物の山下清さんなんだね。ほ~。
せりふあり。「こっちは戦争するって書いてあるし、こっちはしてないって書いてある。どっちが本当か迷って、僕にはさっぱり分からない」
そのうち戦争は終わるものと思っていたが、再び、赤紙が来た棟本。
岡山
点呼だ点呼だ
週番下士は
週番士官に
報告したか
まだかー
兵士が多く、周囲の民家に泊まらせるほどだった。中隊事務室は書類整理に追われ、棟本もその仕事をした。忙しい職場。棟本は名簿から”山ダショウスケ”の名を見つけた。
山田は補充兵の訓練をしていて、棟本は3日早く来ていて気付かなかった。鶴西は5歳を頭に4人の子持ちになっていた。面会に来た鶴西の妻はおはぎを持ってきた。棟本と山田は子供を預かり、夫婦は2人は病院裏へ消えた。恋人の逢引の場所。棟本と山田は5人目を作る気か?と冷やかす。
しかし、人が多すぎて失敗、棟本は妻の秋子を呼ぶまいと思った。
一緒に仕事をしている浦上准尉の家に行った棟本。浦上准尉は「可愛いスーチャン」を歌う。
突然、野戦行きが決まった浦上准尉。夜中に何か書類を書いている。ある日、妻が面会に来た。
浦上准尉は副官に提出する書類にびっしり自身の名前を書いていた。異変を察した副官は周囲に助けを呼ぶ。副官に軍刀を向けて追いかける浦上。副官の脚に刀を突き立てたが、妻の目の前で倒れた。事務仕事が忙しすぎておかしくなったってこと!?
南京陥落で国民は戦争は終わりだと湧きたつ。母ちゃんに会えるで!と喜ぶ者がいる一方、山田はイライラ。
ハイケイ
天ノウヘイカサマ
と手紙を書き始めた。
夜中、棟本が気付いて近づき、本気で天皇陛下に手紙を送ろうとしている山田の手紙を破こうとした。不敬罪で捕まるぞ!と怒ると、山田は戦争が終わっても残してもらいたいと訴えようとしていた。
しかし、戦争は終らず、棟本たちの野戦行きが決まった。半日の休みで遊郭に出かけた棟本。奥さんいるのにこういうとこ行くんかい!
北支戦線
昭和十三年
ちょっと火ぃ貸してくれとたき火をしている兵士たちのところへ来た山田。腕を燃やしているからかき回すなと言われて、驚く。明け方のゲリラでやられた兵士の腕だけ燃やしていた。腹をやられて3時間生きていた。
山田はそれなら「天皇陛下万歳」と言えたと安堵するが、他の兵士たちはそんなこと言ってられるかと反論。山田は、死んだ兵士にへなちょこ野郎だと罵り、周りの兵士たちと言い合いになった。この髭の兵士が玉川伊佐男さんか。
「思い橋」の北の会社のカルロス・ゴーン似の上司。
山田は前の中隊長は頭やられても「天皇陛下万歳」と3度も叫んだと言うが、棟本に止められた。その後、他の大隊に異動になった山田は棟本の前から姿を消した。
台児荘
同年五月十六日
夜の銃撃戦。棟本が兵士を引き連れ、進む。途中、倒れる者がありながら進み続ける。
それから三年
九州興南炭鉱
昭和十六年
棟本は「分隊長日記」が人気になり、兵隊作家になった。講演会でヒゲに眼鏡、スーツ姿の棟本に声援を送る山田がいた。
棟本は山田と食事の席を持った。まだ戦争に行きたがる山田。将校や芸者が棟本を呼びに来たが、棟本は宴会より山田と一晩飲み明かそうと提案した。
湖南省 長沙
昭和十九年
大東亜戦争勃発後、従軍作家として飛び回る棟本。
易俗河
昭和二十年
山田は中隊長・堀江正義の墓標に手を合わせ、泣き崩れる。
茨城県・土浦
昭和二十二年 春
大きな荷物を持って走る男女。
こじきのような格好で引き揚げていた棟本。秋子は売り食いと闇屋の手伝いをしていた。戦時中の兵隊作家に仕事はなく、大きな荷物を抱えた秋子が急いで帰ってきて、棟本のことをしつこく聞くひげもじゃの男に出会ったと話した。
山田と再会した棟本。髪やヒゲが伸びた山田が棟本とご飯を食べていた。内地のヤツは戦争に負けたことなどなんとも思っとらんと怒る。山田は好きなのは天皇陛下と棟さんだと言い、秋子に酒を持ってこさせた。
秋子は宿なしの山田に居座られたら困ると棟本に言うが、棟本は今晩だけとなだめた。
山田は棟本に小説を書かないのか?と聞く。今の小説はパンパン小説だと怒る棟本。山田は秋子に土方や闇屋をやっても棟さんを食わせると言う。
山田は秋子と売り食いに行くと、秋子は山田は力が強くて話が面白いと褒めた。
しかし、山田は棟本を喜ばせようと鶏を盗んできた。食べるための鶏とはいえ、扱いが…おもちゃでいいだろ、そこは!!
山田は自分の好意を示すためなら盗みも平気でするところが、周囲の人から引かれてしまうということが分からないんだよね。
棟本は盗みをした山田が許せなく、ケンカ別れをした。
また小説を書き始めた棟本は奥日光の開拓団へ取材に行き、山田と再会した。
昭和二十三年 春
農場で周囲の人の力仕事を手伝うようになった山田。棟本のところに遊びに来て、棟本の近所の国枝という未亡人に亡夫の知り合いのふりをした。
秋
国枝を好きになった山田。棟本や秋子から嫁にしたらどうかと勧められ、棟本に仲介を頼んだ。
1か月後、日光の農場を辞めたと山田が訪ねてきた。農場の仕事では家族を食わせていけないと役場職員になった山田。華厳病患者といって、華厳の滝に飛び込んだ自殺者を引き揚げる仕事をしている。給料の他に1人背負うと+100円。
秋子は隣の国枝を訪ねたが、国枝はきっぱり断ったつもりだと困惑していた。しかし、そのうち、あんな人、育ちが違うと非難し始め、秋子は誰かさんとのこと知ってるんですからね!と捨て台詞を吐いて帰った。
棟本と飲んだくれる山田。
東京・立川基地
昭和二十五年冬
千住の水道工事をしている山田と1年ぶりに再会した棟本と秋子。山田は井上セイ子という女性を連れていた。また戦地で亡夫と知り合いだったと話すが、今度は本物。結婚するつもりだと言い、デレデレしている山田。
ある日、新聞を読んだ秋子が棟本に知らせた。
酔った労務
者ひかれて
即死
という小さな新聞記事に山田正助(四〇)が大型トラックにはねられ即死と書かれていた。棟本は井上さんが知らせてくるはずだと信じない。警察へ行って確かめると着替える。
酔っ払った山田を送るセイ子は伯母に帰っておいでと言われ、店に戻った。
「君恋し」を歌い、野犬に追いかけられ、犬を追い払いながら、フラフラ歩く。
拝啓天皇陛下様
陛下よ
あなたの
最後のひとりの
赤子が
この夜
戦死をいたしました
ばんざーいと叫んで歩く山田。(完)
続編の軍犬部隊が不安になる動物の扱い。犬の名前がしっかり出てたので変な扱いはしてないだろうな!? そんなに軍隊がよかったら軍人になったらいいのにと思うけど、それはそれで難しいのだろうな。
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