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【連続テレビ小説】本日も晴天なり(35)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

難解な言葉と雑音で分かりにくかった玉音放送は、本多(山本紀彦)によって説明が追加され、人々は敗戦の事実を知る。放送を終え、元子(原日出子)が持ってきた一杯の水を本多が飲み干すと、堰を切ったように女子放送員たちは泣き出した。桂木家でも、敗戦に納得いかない宗俊(津川雅彦)は火鉢をたたき割り、彦造(森三平太)は耐えてきた怒りを叫ぶ。トシ江(宮本信子)や小芳(左時枝)たち女の涙は止まることがなかった…。

放送員室

立花、沢野、川西、16期生が起立してラジオを聴いている。

 

ラジオ「天皇陛下におかせられましては全国民に対し、かしこくも御自ら大詔(たいしょう)を宣(の)らせたもうことになりました。これより謹みて玉音をお送りいたします」

 

この声は本多さんじゃなく、キャスト表でいう情報局総裁の声 須永宏さんかな?

 

玉音放送「朕(ちん)深く世界の大勢(たいせい)と帝国の現状とに鑑(かんが)み、非常の措置を以(もっ)て時局を収拾せむと欲し、茲(ここ)に忠良(ちゅうりょう)なる爾臣民(なんじしんみん)に告ぐ」

 

当時の資料映像。焼け野原に立ってうつむいて玉音放送を聴く人々。今までの朝ドラなどでは正座して家の中で聴くシーンを見ることが多かったような。

 

玉音放送「朕は帝国政府をして米英支蘇(べいえいしそ)…」

 

アメリカ、イギリス、中国、ソ連の4国ということらしいですね。

 

玉音放送「…挙国一家(きょこくいっか)、子孫相(あい)伝え、確(かた)く神州(しんしゅう)の不滅を信じ」

 

吉宗前に整列して聞き入る宗俊たち。

 

玉音放送「任重くして道遠きを念(おも)い、総力を将来の建設に傾け、道義を篤(あつ)くし、志操(しそう)を鞏(かた)くし、誓って国体の精華を発揚し、世界の進運に後(おく)れざらむことを期すべし。爾臣民、其れ克(よ)く朕が意を体(たい)せよ」


ラジオ「謹みて天皇陛下の玉音の放送を終わります」

 

東島「敬礼!」の言葉にみんな深く頭を下げる。

 

しかし、みんな首をかしげる

彦造「ところで天皇陛下様は何をおっしゃったんでございます?」

友男「さあ、それはね…」

宗俊「バカだなぁ、決まってるじぇねえか」

彦造「えっ? すんません。ちいと耳が遠くなったせいか、あっしにはおっしゃってることがよく…」←こういう素直に分からないと言える人、いいなあ。

小芳「私もよく分かんなかったけど」

芳信「ありがたいことです。とにかくありがたいことです」←私、こっちタイプ(-_-;)

 

宗俊「おう…そうとも、な。『克く朕が意を体せよ』おっしゃってた。これはな、朕と一緒に頑張ろう、そういうお言葉なんだ。なあ、そうだろう、東島さん」

東島「ああ…そのとおり、まっこと恐れ多き極みばい」

トシ江「シッ」

 

ラジオ「…天皇陛下におかせられましては万世のために太平を開かんとおぼし召され、昨日、政府をして米英支蘇、四国に対し、ポツダム宣言を受諾する旨、通告せしめられました」

 

絹子「ポツダム宣言…」

 

ラジオ「かしこくも天皇陛下におかせられましては同時に詔書をかん発あらせられ、帝国が4か国の共同宣言を受諾するのやむなきに至ったゆえんをご宣示(せんじ)あらせられ、今日正午、かしこき大御心(おおみこころ)より詔書をご放送あらせられました」

 

放送室

本多「この未曽有の御事(おんこと)は拝察するだにかしこき極みであり、一億ひとしく感泣(かんきゅう)いたしました。我々臣民は、ただただ詔書の御旨(ぎょし)を必謹(ひっきん)、誓って国体の護持と民族の名誉保持のため、滅私奉公を誓い奉る次第でございます。謹んで詔書を奉読いたします」

 

正直のところ、玉音そのものの内容は難解なお言葉と雑音のため、全国民に明瞭には伝わらなかったのですが、本多放送員によって再度朗読された詔書をはじめ、37分にわたるこれまでの経過説明によって人々は事の真相を知ったのです。

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玉音放送そのものが結構なボリュームで、その解説ともなれば、結構時間を要したのもうなずけます。

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マー姉ちゃん」でもかなり長めに流したけど、「本日も晴天なり」は定番の「堪え難きを耐え」を外してんだね。共通してるのは玉音放送の最後の方を流しているところかな。「マー姉ちゃん」は玉音放送に合わせて、テロップも出してました。

 

太平洋戦争戦没者

戦闘員 230万人

非戦闘員  80万人

計   310万人

 

空襲等で失われた家屋 298万戸

罹災者 1,300万人

 

放送員室

無言で座っている元子たち。本多が原稿を持って部屋に入って来た。

立花「ご苦労さまでした」

頭を下げる本多。

川西「お疲れさま」

元子「すいません」水の入ったコップを差し出す。

本多は水を飲み、泣き出す女子放送員たち。元子ものぼると抱き合って泣く。

立花「これで全ては終わった。明日から何が始まるか分からないが、とにかく戦争は終わったんだ。まあ、いろんなことがあったが…いや、ありすぎたが、みんなよく放送員として頑張ってくれた。放送員室長として、みんなに感謝します」

立花を見つめる元子。

 

吉宗

宗俊「冗談じゃねえよ! ここまで来て戦争やめられてたまるかってんだ!」

家にあった火鉢を外に持っていって叩き割った。周囲から悲鳴が出た。

小芳「けど…天皇陛下がやめるって言ったんだから!」

トシ江と巳代子は火鉢を置いてたところを拭いている。

 

芳信「謀略だよ、これは謀略ですよ」

宗俊「ああ、そうだとも。これぁ、謀略に決まってらぁな! 天皇陛下はな、誰かに唆されたに決まってんだ」

友男「誰かって誰なんだよ」

宗俊「知るかい! そんなことは」

友男「だったらめったなこと言うもんじゃねえぞ」

宗俊「てやんでぇ! だったら何のために、え! 何のために今日まで苦しい思いをして戦ってきたんだ!」

 

彦造「ああ、そうだとも。みんな天皇陛下万歳って死んでったんだ。陛下だって、そうやって死んでった兵隊さんたちに顔向けできねえはずじゃねえですかい。こりゃ絶対謀略です」

友男「だからってもう両手上げちまったんだろ」

彦造「だったら、何でもっと早くに上げなかったんですかい。何でゆうべ、おキンばあさんが焼け出され、熊谷の人(しと)たちが焼け死ななきゃなんなかったんですかい」

友男「だ…だってよ、もう…。どうしようもねえじゃねえかよ。本当にもう…本当に」

 

彦造「だったら一体誰に言ったらいいんですかい! せめてソ連が攻めてくる前(めえ)にやめてりゃ、正大若旦那だって、すぐに帰(けえ)れたはずだ。せめて去年中にやめてくれたら、あんた、金太郎ねえさんだって、どこで骨になったか分かんねえみたいな死にざましねえで済んだんですぜ。この責任、一体誰が取ってくれんですよ、チキショー!」

トシ江「彦さん…」

彦造「わしゃね、善吉が出征する前の晩、このおキンばばあがせがれをそっと干し場に連れ出し生きて帰ってきてくれって泣いてたのを見てたんだ。誰が手塩にかけたせがれを戦地になんかやりてえもんか。だけど、お国のためだから手放したんだろ。陛下の赤子(せきし)だから明くる日は、このばばあ、つっぱらかった笑顔で送り出したんじゃねえですかい。陛下がその赤子を犬死にさせるなんてこたぁ、絶対あるわけがねえ」

トシ江とキンが泣きだす。

友男「だ、だけどよ…」

 

彦造「わしゃ嫌だよ。わしゃ勘弁できねえよ。あの大空襲の時だって赤ん坊をしっかり抱いたまんま黒焦げになった仏をこの手で片付けながら、お国のためだ、成仏してくれって、俺は言ったんだ。それが今、ここで戦争が終わったなんて涼しい顔して言ったなら、わしゃ、あの仏さんに何て言い訳したらいいんだね。え、どうなんですよ!」

宗俊「彦さん!」

彦造「バカ野郎が! 俺ぁ…俺ぁ…」奥に行ってしまった。

キン「彦さん!」彦造を追いかける。

宗俊含め、みんな涙。

 

耐えに耐えてきた人ほど敗戦のショックは大きかったのでしょう。混乱は各地でさまざまにありました。

 

夕方、放送会館屋上

のぼる「報道部で聞いたら、満州では佳木斯(チャムス)の局も興安放送局も局員の手で爆破したんじゃないかって言ってたけど…向こうの様子はほとんど入ってきてないみたい」

元子「とにかく…今日まで生きてさえいてくれたら…」

恭子「そうよ。悪い方にばかりとることないわ。戦争は終わったんですもの。きっと帰ってくるわよ」

元子、うなずく。

恭子「ごめんなさいね、こんなことしか言えなくて」

のぼる「しかたないわよ。私たちだってどうなるか分かんないんだし」

元子「そうよ、何がどうなるか分かってる人なんて一人もいないんですものね。ただ…」

恭子「えっ?」

 

元子「今、分かっていることは今夜から空襲で死なないで済むらしいってことだけ」

のぼる「つまり生き残ったんだわ、私たち」

元子「そう、生き残れたのよ、私たちは」

 

夜、吉宗前の路地を歩いてくる元子。扉は開け放たれ、明かりがもれている。

元子「電気が…」

 

絹子「こんなにひどい目に遭っちゃって」

洋三「大丈夫だよ、うん」

絹子「本当に…」

 

元子「叔父さん!」

巳代子「お姉ちゃん!」

元子「ただいま!」

洋三・絹子「お帰り」

順平「お姉ちゃん!」

元子「順平! お父さん…」

 

宗俊「ご苦労さんだったな」

元子「はい」

 

洋三の顔を見た元子。「どうしたの? その顔」

絹子「決まってるでしょう。『この非(し)国民!』ってひどいめに遭わされたのよ」

宗俊「何が非国民だ、バカ野郎が。あのビラは本当だったんじゃねえか、え」

トシ江「お帰り」と言いながら替えの手拭いを絹子に渡す。

絹子「あっ、すいません」

 

宗俊「おとついのうちに日本が負けたってのが分かってりゃ、お前、なにもうちの品物だって、ゆんべのうちに焼かずに済んだんだ」

巳代子「何よ、自分だって信じちゃいなかったくせに」

宗俊「てめえだって同じ口じゃねえか、バカ野郎」

 

トシ江「ねえ、だけどそれ骨接ぎに行かなくていいんですか」

洋三「いや、うちへ帰って風呂に入って、さっぱりと横になったら、それで」

彦造「いや、けど、打ち身はあっためちゃいけませんぜ」

洋三「ああ」

元子「体もひどくやられてるの?」

洋三「うん…」

絹子「大丈夫大丈夫って、この人、そればっかり」

洋三「とにかく全ては明日からですよ」

宗俊「うん、まあしかし…」

 

のぼる「こんばんは! おじさん!」

 

洋三「ああ六根、心配かけて悪かったね」

のぼる「うちへ帰ったら、こっちだって手紙があったもんですから」

トシ江「どうぞ、お上がりください」

のぼる「はい」

 

東島「こら! 何で明かりば漏らしちょる」

 

彦造「何だとぉ?」

東島「ええ? まだ警戒警報発令中じゃなかか!」

宗俊「ふざけんじゃねえや! このすっとぼけ野郎! え! 戦争に負けて何で警戒警報だ!」

東島「それは本官にも分からんが…」

宗俊「てやんでぇ! そういうな、手合いがそろってるから警報解除を忘れるんだ」

東島「ばってん、まだ飛行機は飛んどるじゃなかか」

彦造「だったら、その飛行機に言ってやんなせえ。もう戦争は終わったんだって」

 

宗俊「帰れ帰れ! てめえ、今日は気が立ってんだ。水、ぶっかけんぞ!」

トシ江「あんた!」

元子「お父さん!」

宗俊「帰れ! この野郎」

トシ江「あんた!」

東島「はい…」

 

灯火管制解除の通達が徹底しないうちにも、その夜、都内のあちこちでは何年ぶりかで覆いを外した明かりが見られました。

 

2階ベランダ

洋三「生きていたんだよなあ…。ご覧よ。あの明かりは、ここに人間が生きてるんだっていうしるしなんだ」

元子「ええ…」

洋三「それでね」

巳代子「はい」

 

洋三「生き残った者は亡くなった人たちの分まで生きていかなきゃならないというつとめを負うことになるんだ」

のぼる「はい」

洋三「明日からは、そりゃなまやさしい明日じゃないだろうけれども」

元子「ええ」

洋三「これだけ大勢の人が死んでやっと終わった戦争だものね」

元子「はい」

洋三「正大君もきっと帰ってくる。六根のご家族もきっと帰ってくるよ。それまでにご苦労さまでしたといって迎えられる何かをつくっておかなきゃね」

のぼる「でも…」

洋三「信じることだよ。そりゃ私にだって、この先どうなるか分かりゃしない。だけど、そうしなくちゃならないと思うなら、そういう自分を信じることだよ。それしか、この焼け跡から立ち上がる力は生まれてこないんだ」

元子「はい」

 

けれど、元子たちは、またこの翌日から狂乱の戦後を迎えることになるのです。

 

つづく

 

明日も

 このつづきを

  どうぞ……

 

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今日のオープニングを見て、昨日の謎が解けた。昨日、機転の利く女学生と一緒にいたのは情報部副部長の伊藤正博さんで、川西さんと放送室に入って来たのは技術部副部長の坂本由英さんだね。同年代の俳優さん。

 

伊藤正博さんは「マー姉ちゃん」22話の田中司祭とか「岸辺のアルバム」13話の部長とか「おもひでぽろぽろ」のタエ子の父とか…へ~。wikiだと22話となってたけど、田中司祭が出てたのは23話でした。はるにオネスト神父を紹介した人です。

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戦争が終わった…初回から6週かけて描くとは。でも、これくらいの分量は必要だった。知らないことばっかりだったもん。面白かった…が、元子の人生はまだまだ続く。