1961年 日本
あらすじ
俳優・加東大介の太平戦争中の体験を映画化。感動の戦争秘話。
ニューギニア・マノクワリに配備された日本兵たちは、補給が途絶え全滅の危機に瀕していた。 戦意を鼓舞しようと演劇分隊が結成され、手作りの劇場が作られる。
しかし、戦局が好転することは無く、敵の空襲も激しくなる中でも公演が続けられるが…。
2010.7.16 日本映画専門チャンネル録画。この映画は、20年以上前に渡辺いっけいさんが「はなまるマーケット」出演の際にまた見たい映画?であげていて知った映画で、出演者もタイトルも分からないけど、2010年にCS環境を整えた時に、あらすじを読んで、この映画だ!と録画しました。ブルーレイに残しといてよかった。一緒にブルーレイに入っていたのは「墓場鬼太郎」。「ゲゲゲの女房」視聴中の時期でした。
その後に原作も読みました。原作だと出征する前の様子や戦後のことも書かれてありましたが、映画はマノクワリのみ。女性が一人も出てこない。カラー作品。
この映画を観た2010年からこのあと、多少古い映画やドラマを見てきたので、この映画のキャストの豪華さがすごい!
浅川中将(マノクワリ守備隊軍司令官):志村喬
特別出演
森久男大尉(中隊長):森繁久彌
小林伍長(ワルパミ地区隊):小林桂樹
坂田伍長(ワルパミ地区隊):フランキー堺
加東大介さんは長門裕之・津川雅彦兄弟の父の弟でもあり、沢村貞子さんの弟でもある。昔から小太りだったけど、原作本にあった戦時中の写真も体型が変わらなかった。
オランダ領
西部ニューギニア
昭和18年暮れ
補給も途絶えがちで味方からも見捨てられた兵隊たち。ガリガリの男たちが道路工事の作業中にフラフラと倒れ込む。栄養失調、赤痢やマラリアで野戦病院もいっぱい。
その上、敵機来襲され、ビラもまかれる。空襲シーンは結構大がかり。
日本の兵隊さん
無用な抵抗は
おやめなさい
降伏しないなら
二月十四日を期して
一齊に上陸を開始
します
米英濠蘭聯合軍
このビラを神経作戦だと思う浅川中将。志村喬さんはこの頃もう白髪なんだな~。長期戦の作戦を立て直すとか言ってる場合じゃないよ。
兵隊たちは食料確保するため、サツマイモを植える。日本人ってどこ行っても働き者だな。畑には看板が立てられた。
故なくして
芋畑に入るものは
日本人と雖(いえど)も
銃殺に處す
マノクワリ支隊司令官
芋2本と木の箸。兵隊たちはケンカになる。
ブリキ?で作った三味線を器用に弾き、けがをした者たちがソーラン節を歌ったり、踊ったり。
衛生兵の加東軍曹は、重病人を見回る。ガリガリに痩せた兵士は青森の生まれで雪が見たいとこぼす。ほんっとにガリガリでおじいさんみたい。役作り?
はあ~、それにしても当時は字幕を付けてなかったのが後悔…。早口なんだもん。
加東軍曹が役者だったことは上官にも知られており、浅川中将の前でソーラン節を踊っていた兵士と芸を披露した。加東軍曹は他にも芸人がいることを知っていたのでいずれ使うだろうと三味線を持ってきたことを浅川中将に話した。皮はジャングルの湿気で破れたため、甲板のブリキで代用した。
兵士の慰安と士気高揚のため、演芸隊が編成される。各隊から要員を集め、将校集会場で芋の葉っぱの弁当持参でのど自慢、腕自慢が集まった。浪花節、歌謡、漫才、腹芸…などなど。
オーディションは浪曲を披露する者が続いて、将校たちはウンザリ。大沼一等兵は、浪曲を披露する予定だったが、その場で奇術を披露する。桂小金治さんといえば「それは秘密です!!」。タレントのイメージだったけど、映画やドラマもたくさん出てたのね。
僧侶の篠崎曹長は顔にお面?のようなものをかぶり、博多弁で漫談。曹長が軍曹の下はいるのはおかしいという話になるが、演芸に関しては加東軍曹が上ということになる。他にも、カツラを作れる者、舞台装置に興味のある友禅染のデザイナーなど続々集まる。
東北なまりの節劇役者、鳶山一等兵。伴淳三郎さんは何の作品見ても志村けんさんに似てると思う。加東軍曹は、自分たちのやりたい芝居とは違うと一旦不合格というが、鳶山一等兵が目の前で自決しようとするので補欠合格とした。
〇六、〇〇 起 床
〇六、一五 奌 呼
〇六、三〇 朝食班内整理
〇七、〇〇
〇八、〇〇 農 耕
一一、〇〇
一二、〇〇 晝 食
一三、〇〇 公 演 準 備
一五、〇〇
一七、三〇 夕食班内整理
一八、〇〇
一九、〇〇 公 演 準 備
二二、〇〇 消 燈
それぞれハーモニカや三味線の練習。最初にソーラン節を踊ってたのは西村晃さんだったのか。菊池寛の戯曲集を持っていた者がいた。ピアノやミシンは倉庫や接収された屋敷から持ってくる。鳶山一等兵は女方がやりたいという。何かとからかわれる鳶山一等兵をかばう篠原曹長。
仕立屋の息子だった大沼一等兵が針仕事をする。
ある日、ピアノが運び込まれた。
前田上等兵が指一本で「日のまる」を演奏。兵隊たちは、その曲に合わせて歌う。
それを見ていた見知らぬ兵隊が「俺にも弾かせてくれんか」とやってきた。フランキー堺さん。右手の甲に傷を負っているが見事な演奏をする。兵隊たちは静まり返り、演奏に聴き入る。クラシック、悲しげな曲(この曲は聴いたことがあったけど曲名が分からない)、一転楽しそうな曲、夕焼け小焼けなどなど。
演奏を終えた兵隊はワルパミ地区隊の生き残りだという。17名生き残ったが、7~8名が動けるくらい。加東軍曹は演芸隊に入らないかと誘うが、余計者が入ったってご迷惑かけるばっかりで…といって遠慮し、杖をついて帰っていった。ジャングルで食糧不足にあえいでいるとは思えないほどムチムチなんだけど、演奏は見事! 調べると、フランキー堺さんは元々はジャズドラマーなのね。器用だな。
ワルパミ地区隊の者たちは生きている英霊…日本軍が全員全滅と発表したら死んだことにされてしまう。
配役
黒田賢一郎 叶利明上等兵
弟 新二郎 北川一郎兵長
母 おたか 篠崎龍照曹長
父 宗太郎 鳶山留次一等兵
前田上等兵が看護婦が残していったおしろいと口紅発見。女の匂いがする、母ちゃんの匂いがすると喜ぶ兵隊たち。
鳶山一等兵は、型の決まった芝居をしていたので自然な芝居ができない。加東軍曹は歩き方から稽古をつける。
夜中、一人で芝居の稽古をする鳶山一等兵。
演藝分隊㐧一回公演
将校集会場にはたくさんの兵士が詰めかける。
幕が開くと背景に歓声が上がる。女形の鳶山一等兵が着物におしろい、カツラをつけて踊る。メイクすると芸者コントの柄本明さんに似てる気がする。俺の母ちゃんそっくりと歓声が上がる。
次は「勘太郎月夜唄」に合わせて篠原曹長が芝居。この歌を歌ってた人、上手! すごくいい声。
次は体中を黒く塗った兵士がビキニ姿で「酋長の娘」に合わせて踊る。唇や乳首が白く塗られている。今なら大問題? ビキニを取ったりしてちょっとストリップっぽいが筋肉質のいい体!
第一回公演は大成功。西村晃さんと伴淳三郎さんは女形してると小柄でよく似てる。前田上等兵は差し入れにお酒をもらい、みんなで回し飲み。司令官より砂糖の差し入れ。
そして、演芸部隊のための劇場を作ることになった。本格的な広い劇場。常設で芝居をする。
一人でも玄人の役者が欲しいとエノケン一座にいたという青戸上等兵(如月寛多)に召集をかけるが、断ってきたので、上官が転属を命じた。昭和20年3月、青戸上等兵と顔を合わせた加東軍曹は如月寛多の偽物であると気付いた。上官に相談すると、生きて帰れるか分からないんだから内地の長谷川一夫より偽物の如月寛多だという。
エノケンのサイン、高峰秀子の葉書を見せびらかす青戸。渥美清さんが新人のチョイ役なんて新鮮。
坂本一等兵と前田上等兵がケンカ。坂本一等兵が砂糖をなめたのを前田上等兵が見つけたせいだった。暴力は禁止だという加東軍曹。
本格的なマノクワリ歌舞伎座完成。セットと思えない立派な建物! 紅白幕が垂れ下がり、緞帳も立派。島に2つしかない発電機を1つ使う。楽屋には観客の兵隊が芋など差し入れを持ってきた。
緞帳の前で羽織袴の加東軍曹が口上をした。照明がつき、兵隊たちは久しぶりに電気を見て感動。
今日の演目は森の石松。セットの桜、だんごにいちいち歓声が上がる。そんな芝居のさなか、敵機来襲。
関の弥太っぺ上演中、空襲で舞台中止。
しかし、翌日も芝居は上演されることになった。空襲で死んだ馬の尻尾をもらってきてカツラを作ることになった。肉より尻尾、みんな芝居にのめり込んでいた。
加東軍曹は鳶山一等兵の身の上話を聞く。山形の旅一座で生まれた鳶山一等兵は芝居をしていると旅巡業している頃を思い出すという。しかし、戦争のおかげでリアルな芝居ができるようになったことを感謝していた。お互いに生きて帰ろうと約束する。
夕方の浜辺では兵隊たちが肩を組んで「ラバウル小唄」を歌う。
芝居の稽古
髭ぼうぼうの男が入って来た。小林桂樹さん。ワルパミ地区隊から来たと聞いて、この間来た兵士のことを聞く。坂田という売り出し中のピアニストだったが戦争にきたら味噌もくそも一緒だと笑う。
あの人どうしました?と聞くと、何でもないように「あいつ死にました」。←これがねえ、今の芝居では出せないところ。もっとドラマチックに泣かせに来るところをすごくあっさりしてる。
生涯で最高の演奏だったと言っていたが、あれから間もなく死んだという。ワルパミでは雑草を食べている。芋をもらうと、喜んですぐ食べる。しかし、すぐに仲間に持って帰ると帰ろうとする。今度、芝居を見に来てくださいというが、それまで持たんでしょうと明るい。うちの連中にも芝居を見せてやりたいなと帰っていった。
ワルパミ地区
いたるところに墓が建ち、髭ぼうぼうガリガリの仙人みたいな男たちが体を洗っている。原始人みたいな描き方。
一方、マノクワリ歌舞伎座では大沼一等兵の奇術が行われていた。
そのあとは歌。それにしてもこの人歌がうまい。誰だ? 字幕ないと不便だな~。北川兵長の佐原健二さん?
芝居の前、鳶山一等兵がサソリに刺されてしまった。バボへ転進前の森大尉が楽屋に来て応急処置をしてくれたが頼みがあるという。
芝居が始まるとセットの柿の木、水車に感動する兵隊。出てきたのは子守姿の森大尉で歌を歌い始める。
森繫久彌さんの若いころの顔もいろんな作品を見るうち、だいぶ見慣れた。加東軍曹たちにお礼を言い、去って行く森大尉。見送った後、あの人たちとはもう会えんでしょうなあと話し合う。
落下傘部隊のパラシュートを見つけ、舞台で雪を降らせようと盛り上がる加東軍曹たち。
そのころ、ワルパミ地区隊の面々も川を渡り、途中で野宿しながらマノクワリ歌舞伎座を目指して歩く。これ、現地でロケしたのかなあ。所々はセットっぽいけど、自然の風景は本物っぽい。
ワルパミ地区隊は出発前から体調の悪い兵士もタンカに乗せて何とか到着。
今日の演目は「瞼の母」。舞台袖からワルパミ地区隊が来ていることを知る。セットの障子を開けると、雪が降っている。女形の芝居が上手だなあ。普通に女性に見える。
再び幕が開くと、今度は外のセット。雪景色、雪も降っている。舞台を見ている兵隊たちの目から涙が流れる。ワーワー泣くんじゃなくてただ静かに涙が頬を伝う。
芝居が終わり、ワルパミ地区隊からタンカでやって来た兵士はなくなる。舞台に上げて、もう一度雪を降らせ、篠原曹長が読経する。
昭和21年6月に復員船が来るまで芝居を続けた。(終)
やっぱり面白いし、好きな映画だった。また日本映画専門チャンネルで夏の戦争映画特集の時にやってほしいんだけどな。ここ数年やってない。字幕ありで見たいんだよ~。
↓こちらは原作の感想なので映画のクライマックスとは違います。原作はいつも上演して歓声のあがる雪が降るシーンで、ある時、いつものどよめきが起きず、兵隊たちがみんな泣いていた。その兵隊たちは東北の部隊だった。
原作は出征前のエピソードや戦後の話もあります。南方で夫を亡くした妻からこんなに楽しいことがあったのなら救われますという手紙をもらったとか、節劇からリアル芝居をするようになったので、再び節劇に戻るのに苦労したとか…本が手元にないので忘れてしまったけど、とにかく文章が面白くてあっという間に読めました。電子書籍で出してくれないかなあ。
上映された昭和36年ならほとんどの人が戦争経験者。こういう映画をたくさん見たい。