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【連続テレビ小説】マー姉ちゃん (115)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

塚田からの仕事の依頼の新聞広告を見て、はる(藤田弓子)は再び東京行きを宣言。早速、フクオカ新聞の小田(織本順吉)を訪ね、「サザエさん」の打ち切りを約束させるマリ子(熊谷真実)。一方、はるはあっという間に家を売るなり、半金を持って帰ってきて、その金で「サザエさん」を出版するようにマリ子に命じる。出版を知らないマリ子とマチ子(田中裕子)は東京へ偵察へ行くが、世田谷の家はすでに別の家族が住んでおり…。

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磯野マリ子さん

磯野マチ子さん  

 仕事を依頼したし   

 至急連絡を乞う

  陽談社

   塚田編集長

 

土曜日とは別カットのダンスシーン。マリ子とマチ子、はると千代がタンゴ?を踊り、ヨウ子が手をたたいて見ている。

 

東京は磯野マリ子とマチ子を必要としていると派手に怪気炎を上げたはるが再び東京行きを宣言したので、さあ、磯野家の全員は急に浮き足立ってまいりました。

 

朝、マリ子が出かけていき、続けて千代、はると出かけていった。

 

夕刊フクオカ新聞社に行ったマリ子。

小田「東京へ!?」

マリ子「はい、東京へです」

小田「で、どのくらい?」

マリ子「はい、全員です」

小田「いや、その、期間のことですたい。『サザエさん』は連載ものだけんね。そりゃあ行くのは構わんが、その間の分を書きためといてもらわんと困るんだよ」

 

マリ子「はあ、誠に申し訳ありません。私たちずっと行ってしまうつもりでおりますんですが」

小田「ずっと?」

マリ子「はい、落ち着く所が見つかり次第、東京に引っ越したいと思っています」

小田「引っ越す!?」

マリ子「はい」

 

小田「ちょ…ちょっと待ちんしゃい。そしたら『サザエさん』は一体?」

マリ子「マチ子の申しますには結婚したことにして終わらせてしまってはどうかと」

小田「そげなことば急に言うてもらっても、君…」

マリ子「あっ、別に明日結婚させるわけではございませんから」

 

小田「それは当たり前ですたい。こっちにはこっちの段取りっちゅうもんがあるとですから」

マリ子「ですからこうして前もってお願いに上がりましたの。まず一度、東京に様子を見に行ってから、それから引っ越しの準備にかかることと思いますので、その間にどうか後の人を見つけてくだされば、とてもありがたいのですが」

小田「しかし…」

マリ子「はい?」

小田「あのサザエさんが結婚をね…」

マリ子「はい!」

 

マチ子、「サザエさん」の最終回を描く。

3コマ目

舟「サザエ!!」と呼ぶ。

 

4コマ目

マスオがモーニング、サザエが花嫁衣装で手を振る。

「めでたし めでたし」

マチ子は”おわり”と描き込む。

 

マリ子が帰ってきて、マチ子が描き終えた原稿を見せた。

マチ子「ねえねえ、出来たわ! 見て、ほら!」

マリ子「まあ、気が早いっていうか手回しがよすぎるっていうか」

マチ子「え~!? それじゃ敵は素直にうんと言わなかったの?」

 

マリ子「たとえ素直に言わなかったとしても、このマー姉ちゃんが一回でも引き下がってきたことがあった?」

マチ子「それじゃあ! ウフフッ!」

マリ子「最後には東京でのご健闘を祈るとか何とかおっしゃってくださったわ」

マチ子「あの小田部長さんが?」

 

マリ子「ただし、いくら何でもこの原稿をはいと渡して明日やめてしまうわけにはいかないわよ」

マチ子「やっぱり…」

マリ子「結婚させてしまうっていう案には賛成だったけど、せっかく好評なんだから今月いっぱいは連載してほしいっていうの」

マチ子「ええ~!?」

 

マリ子「慌てることはないじゃない。描きためたらいいんですもの」

マチ子「まあ、人のことだと思って…」

マリ子「いいんですよ? そのぐらいの芸当ができないんだったら、マチ子は後でゆっくり一人で引っ越していらっしゃい。ねっ、ヨウ子?」

マチ子「意地悪」

 

マリ子「何言ってんの。敵は少なくとも今の調子だったら、あと1年は連載させたいと思ってたらしいのよ」

マチ子「本当?」

マリ子「そうよ~。やばいんだから『サザエさん』って。知らないの?」

この”やばいんだから”の使い方が現代(ドラマ放映時より今)っぽい。

 

お茶を出してくれたヨウ子にお礼を言うマチ子。

マリ子「あら、私には言わないの?」

マチ子「えっ?」

マリ子「打ち切りにしてもらってきてあげたのよ」

マチ子「ああ…どうもありがとう」

マリ子は笑い出す。「だって普通なら打ち切りを止めてもらってきてありがとうって言ってもらえるのに逆だわね。景気がよくていいじゃない!」

 

マチ子「そうよ。ヒトラー死すとも独裁政治は消えず。我が家の独裁者が『目指すは再び東京』と叫んだんですもの」

ヨウ子「夢のようだわ。また東京へ行けるなんて」

マリ子「でもヨウ子の出発は少し遅れるかもしれないわよ」

 

ヨウ子「分かってます。でもまた新町のあのおうちを借りられるようになったらいいわね」

マチ子「本当ね! 私たちが行ったらきっとびっくりなさるわよ。天海さんもウラマドのおば様たちも!」

マリ子「ああ~、胸が高鳴る!」

ヨウ子「私も!」

マチ子「私も!」

 

はる帰宅。「それじゃあ『夕刊フクオカ』の方は?」

マリ子「はい、きっぱりと話をつけてきました」

はる「そう、それはよかったこと。お母様もねきっぱりと話をつけてきましたよ」

マチ子「あら? お母様、教会へ行かれたんじゃなかったんですか?」

はる「いいえ、このうちを売ってきたんですよ」

三姉妹驚く。

はる「どうかしたの?」

 

マリ子を呼び、テーブルの上に風呂敷包みを置いた。

はる「ここに10万円あります」

マリ子「10万円?」

はる「東京へ行ったらあなたはこのお金でとりあえず出版をやりなさい」

マリ子「出版って…この私がですか?」

はる「そうですよ」

 

マリ子「でも私、出版のことなんか何も分かりません」

はる「私にだって分かりませんよ」

マリ子「だったらどうして私に出版を?」

はる「まあ、なんということでしょう」

マリ子「えっ?」

 

はる「あなたは何かをやりたいって言っていたじゃありませんか。体ごとぶつけていけるような何かをって」

マリ子「ええ、それは…」

はる「だからね、とりあえず出版はどうかと思ったのよ」

マリ子「はあ…」

はる「そうすればあなたがエンマコオロギのように心配していたこの磯野家の家名が立てばそれで結構。でも初めっからそんな大目的のために押し潰されてしまってはしょうがないから、あなたは何か好きなことをやればいいじゃありませんか」

マリ子「でも…」

 

はる「フフッ、でもね、ヤミのブローカーみたいなまねはいけませんよ」

マリ子「あ…それはもちろんです」

はる「それでね、私はあの森田さんのことを思い出しのよ」

マリ子「森田さん?」

はる「ええ。あの奥様が空襲の時に焼け出されてうちでお世話をしたでしょう?」

peachredrum.hateblo.jp

マリ子「あ…はい」

はる「あの方のおいとこさんが東京で製本をなさっているということを思い出してね。それでお母様はこのお金を見た時に出版はどうかしらって思ったの」

マリ子「でも出版っていったら本ですよね? 一体何を出版すればいいんですか?」

 

はる「『サザエさん』はどうかしら?」

マリ子・マチ子「ええ~っ!?」

はる「そうよ『サザエさん』を出版なさい。マチ子が描いたものをマリ子が出版して世の多くの人々に読んでいただくんですよ。そうすればマリ子のエンマコオロギも解決がつくし、このうちだってちゃんと役に立つわけでしょう?」

マチ子「それじゃあ、お母様、本当にこのうちをお売りになっていらっしゃったんですか?」

 

はる「ええ。教会でね、佐藤さんにお話ししましたところ、ちょうど会社の寮を探しているというところがあってね、早速行ってお話をつけて半金を頂いてきたのよ」

ヨウ子「そうするともう私たちこのうちにいてはいけないんですか?」

はる「いいえ。あとの半金はこのうちを明け渡す5日前に頂くことになっているから1か月ぐらいは十分余裕を見てくださるでしょう」

マチ子「それにしたって…」

 

はる「『善は急げ』というでしょう。切符が取れ次第、マチ子はマリ子と一緒に東京に偵察に行っていらっしゃい」

マリ子「偵察って一体何の?」

はる「出版とはどういうふうにやるのか。それから私たちが住む家を探してくるんじゃありませんか。必要ならばこのお金を持っていきなさい。そしてこれでよしとなったら前金を払っていらっしゃい」

 

マリ子「あ…あの…これ本物の10万円ですよね?」

はる「そうですよ。何なら数えてごらんなさい」

マリ子「あ…いいえ…」

 

ヤミ屋、ブローカーの類いは別としてまっとうに暮らしている一庶民が10万円という現ナマなどめったにお目にかかる時代ではなかったのです。

 

マチ子「それであのお母様、このうちを一体いくらで?」

はる「23万円で買っていただきました」

マリ子「23万!?」

マチ子「23万とはいい値ですよ」

 

マリ子「そうよ。だって前までは5万円だって買い手のない家がたくさんあったのに」

はる「それは戦争中のことでしょう。空襲のさなか、5万円でも焼けてしまったらおしまいじゃないの。でももう戦争は終わったんだし、このうちは古いけれども木口はいいし、お部屋数だってたくさんあるでしょう」

マチ子「参った!」

はる「何がです?」

 

マチ子「お母様、不動産屋さんをおやりになったらきっと大成功の素質がおありですよ」

はる「バカなことをおっしゃい。私たちは東京へ行くためにお金が必要だからこのうちを売ったんじゃありませんか」

マリ子「それにしても23万とは…」

マチ子「すご腕です!」

はる「あら、そう?」

 

一発勝負と世間知らずの強みを発揮することは、はるの最も得意とするところだったのでしょう。

 

お千代ねえや帰宅。「ただいま。話はつけてきました。今度こそお千代も一緒に東京へお供ばさせていただきます」

マリ子「本当?」

千代「はい。またまたお金がのうなったら大変ですけん一緒に行ってしっかり目ば光らせとらんと心配やち、おっ母さんも賛成してくれたとですよ。はい。あっ、奥様といういわけで、あの、何が何でもお千代は一緒に行かせていただきますけん」

はる「はい、それじゃあ早速支度にかかってちょうだい」

 

汽笛

ぎゅうぎゅうの汽車内

 

見てください。これがそのころの旅行といわれる風景です。定員オーバーは常識。どの駅でも復員兵や疎開先から帰る人でごった返し窓から乗り込み、窓から降りるのが当時のエチケット。それにあぶれると完全冷房の屋根の上ということになるのです。

 

マリ子とマチ子は大きなおにぎりを頬張る。

 

懐かしい東京の路地。

 

ともあれ、第1次偵察隊が上京してきました。

 

マリ子「懐かしいわ~! やっぱりオネスト様のおっしゃったとおりね! 残ってたのね、このうちも!」

 

家の前で遊んでいた男の子に声をかけた。

マチ子「ねえ、僕たちここのうちの子?」

男の子「うん」

 

マリ子「はあ…空き家であるはずがないわよね…」

マチ子「うん…」

マリ子「とにかくウラマドのおば様をお訪ねしてみましょうよ。ねっ?」

 

マリ子が前島家に声をかけるが不在。

マドカ「あら! マリ子さんじゃなくって!?」

マリ子「はい!」

ウララ「マリ子さん!」

マドカ「マチ子さん!」

農作業姿をしたウラマド姉妹がマリ子たちを見つけて駆け寄ってきた。

 

マチ子「おば様!」

マドカ「一体、いついらっしゃったのよ? 一体、これは…これは夢ではないのでしょうね? マリ子さん」

マリ子「いいえ、夢じゃございませんとも。どうぞほっぺたをひねってみてください」

マドカがマリ子のほっぺをつねって、歓声を上げて抱き合う。

 

まさに感激の再会でした。

 

ブルーバックで出演者紹介でつづく。

 

今とはいろいろと感覚が違う。私が子供の頃読んでいた80年代の「りぼん」は地方在住者の漫画家が多かったという印象。それで地方者の私でも漫画家になりたいなと思ったりもしたんだけど、やっぱり当時は何をするにも東京って感じなのかな。

 

ウラマド姉妹が無事でよかった。