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【連続テレビ小説】マー姉ちゃん (124)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

刷った本を持ってデパートに行くマリ子(熊谷真実)は、店の係長(真田五郎)に取次店について教わるついでに、500部買い取ってもらう。いつの間にか磯野家での些細な小競り合いも、家長として立派に取り仕切るマリ子の姿に、はる(藤田弓子)は亡き夫の面影を見る。翌日、日本一大きい取次店に乗り込んだマリ子は、見事全て在庫を買い取ってもらう。同居していた松枝たちも朝男(前田吟)の家に移り住み、年は暮れて…。

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サザエさん」単行本2万冊のうち、50冊を担いでマリ子は買ってくれそうな所を懸命に考えた末、思いついたのがデパートでした。

 

デパートの本売り場に行き、「いえ、あの、私が買うのではなくて、この本を買っていただきたいのですけれど」と女性店員に言うマリ子。

 

マリ子「たった今、出来たばかりのとても新鮮な本なんです」

店員「はあ…」

マリ子「全部で2万部ございますの。買っていただけませんでしょうか?」

店員「あ…あの、少々お待ちくださいませ。係長! すみません、係長!」

 

とってもいい声の係長。

マリ子「はい。あの奥付には発行日25日とありますけれど、それが5日も早くたった今出来たばかりの新鮮な品でございまして」

係長「あの、失礼ですが、野菜や魚介と違いまして書籍の場合、新鮮というふうには申しませんのですが」

マリ子「まあ、さようでございますか。それは大変失礼いたしました」

 

デパートの本屋の係長役の真田五郎さんはwikiの出演作を見たら「あぐり」の151話と書いてあったけど、どの人だろうな? 内容を見ると、恐らく報道陣の一人かな!? 声優もやってると知り納得。アナウンサー的いい声。

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係長「それにデパートも書店さんと一緒で店頭での仕入れは普通あまりやらないんでございます」

マリ子「まあ、どうしてですか?」

係長「あ…あの…失礼ですが、こういうご商売は?」

マリ子「いいえ、全くの初めてなんですの」

係長「それでいきなり2万部もお作りになったんですか!?」

 

マリ子「はい。実は作者の磯野マチ子は私の妹でございまして、この漫画はこの秋に『夕刊フクオカ』に連載してたものなんでございますのよ。おかげさまであちらでも大変好評だったんですけれど、今度東京に出てくる事情がございまして…。いえ、東京といっても全く初めてじゃございませんの。戦前には『少女倶楽部』に『仲よし手帖』という作品を連載しておりましたものですから。ただちょっと疎開していただけなんでございまして…」

 

係長「すいません、お話の途中で悪いんですが、本というものはですね、まず取次店へ持っていらしてですね」

マリ子「取次店? 何でしょう? それは」

係長「あ…問屋です」

マリ子「はあ」

 

係長「製造したものはですね、まず問屋に買ってもらい、我々がそれを買ってそれをお客様にお売りする。これがいわゆる流通経路というもんなんです」

マリ子「そうなんですか…」

係長「そうです。デパートは物を売る所で買う所ではございません」

マリ子「あの、それでは問屋さんっていうのは一体どこにあるんでしょうか?」

係長「はあ?」

 

磯野家

テーブルの上には出来上がった「サザエさん」が数冊。

マチ子「それでマー姉ちゃん、問屋さんまで押しかけたの?」

マリ子「ううん、行かなかった」

千代「なしてですか?」

マリ子「うん、その係長さんのお話を聞いてたら、あまりに私、何も知らなすぎるっていうことに気が付いたの」

 

はる「そうですね。本屋さんに持っていきさえすれば買ってくれるもんだと私も思うとりましたよ」

ヨウ子「だけどそうしたらどうすればいいの?」

マリ子「大丈夫よ。このマー姉ちゃんにドンと任せておきなさい!」

マチ子「本当に大丈夫なの?」

 

マリ子「大丈夫よ。私が問屋さんに行かないで帰ってきたのはね、足元見られてはいけないから頭の中をよく整理して改めて出直した方がいいと思ったから」

はる「もちろんですよ。その方がいいに決まっとります」

マチ子「でも、マー姉ちゃんに頭の中で整理なんかできるのかな?」

はる「マチ子」

マリ子「大丈夫、大丈夫。今、日本で一番大きな問屋さんが日配という会社だということも、ちゃ~んとその係長さんから聞き出しておいたもの」

 

千代「はあ~、問屋さんっちゅうとは会社なんですか?」

マリ子「まあ、バラックの問屋さんまでいろいろあるそうだけど、どうせ持ち込むんだったら、やはり日本一の取次店の方が気持ちがいいじゃない」

マチ子「うん! それはそうよね!」

マリ子「でしょう? だからついでにデパートで500部買っていただいちゃった」

マチ子「えっ!?」

 

マリ子「せっかくいろいろ教えてくださったんですもの。ついでにいくらか買ってくださいってお願いしたら、それじゃあ500部買ってくださるっていうことになって。フフッ! もう昭栄さんに配達していただきました」

マチ子「うわ~!」

千代「それじゃあ、売りつけたとですか?」

マリ子「まあ、変な言い方しないでよ」

マチ子「そうよ。何もおかしな品物であるはずがないんだもの」

千代「まあ…」笑い

 

マリ子「何にせよ、これが初商いの成果です!」

はる「商いね~」

マリ子「そうなんですよ。今まではもう本の仕上がりだけしか頭になかったけど早いところ売ってくださいって森田さんに言われ、この荷物を背負って歩きながら、私、初めてこれが商売なんだなって気が付いたの」

 

いやはや、なんということでしょう。

 

マリ子「でもね、森田さんもデパートの人たちもみんな言ってくださったわ。とにかく世間は本に飢えてるんだから出したら最後、必ず売れますよって」

マチ子「出したら最後なんて何か変ね」

はる「そんな言葉の切れっ端にこだわることはありませんよ。あんなに評判がよかった『サザエさん』ですもの。きっと皆さんに喜んで迎えられるに決まってますよ」

ヨウ子「そうよ、私もそう思う」

 

マリ子は「サザエさん」を持ち、賞状のようにマチ子に差し出す。

マリ子「はい、じゃあ、この第1冊目は著者であるマチ子に。はい」

マチ子「うわ~、どうしよう!」

マリ子「はい、それではこれにはお母様」

はる「あら、私は」

マリ子「いいえ、協会に寄付なさってもよろしいんですのよ。これで皆さんでこの喜びをきっと分かち合ってくださるでしょうし」

はる「まあ」

マチ子「お母様!」

 

続いて、ヨウ子、お千代ねえやにも。マリ子は自分でももらおうと思ったが、マチ子が「あら、駄目よ、それは!」と止める。もらう権利はあるというマリ子に「もちろんよ! だから、この第1冊目はマー姉ちゃんが受け取ってちょうだい」とマチ子がマリ子に差し出す。それなら私が、私が…はるたちが言い合う。

 

マリ子「お黙んなさい! この家の家長はこの私です。誰が何冊目だろうとこの私が決めたことです」

一同「(マリ子の迫力に驚く)はい」

マリ子「全く…何でこれぐらいのことで騒々しい家族なのかしら」

マチ子「すみません」

マリ子「そうよ。何のために鉛筆を挟んでるの? いつまでもお祭り騒ぎをしてたらまた原稿取りが借金取りみたいにワッと押し寄せてくるわよ」

マチ子「本当だ」

 

はる「まあそれにしてもなんてすばらしいんでしょう」

マリ子「はあ?」

はる「今のどなり方、昔のお父様そっくりだったわ。殊に『このうちの家長はこの私です』なんて言ったところなんか、お母様、うっとりしてしまったわ」

マリ子「冗談じゃありませんわ。私はお父様みたいにおひげなんかつけてません」

はる「あら、つけたかったらつけたっていいんですよ」

マリ子「まあ!」笑い

 

マリ子は「サザエさん」に所有者の名前を書いておくことと言った。「そうじゃないと、またまた混乱のもとになって、私は本当におひげをつけなくてはいけなくなりますから」。マチ子たちは早速名前を書き、マリ子は父の遺影に献本した。

 

朝、マリ子とはるが出かけようとしていた。そこに声をかけてきた朝男。後ろからタマも走ってきた。

はる「一番に届けさせていただきましたわ」

朝男「うれしいね~。俺は今、河岸から帰ってきたらね、うちの悪たればばあの野郎がね…」

タマ「何だって?」

 

朝男「何だ、いたのかい」

タマ「ああ、いたとも。お前が帰ってきたらね、お礼に伺おうと思って」

朝男「礼ならなにも俺が帰ってくるのを待つことはねえだろ」

タマ「バカ。留守番っていう大任がなけりゃあね、もうとっくの昔に飛んでくるよ。まあまあ、奥さん。この度はどうもおめでとうございます」

 

話が長くなりそうなところを千代がこれから出かける所だからと制した。

朝男「そうだった、そうだった。こいつは「とんだ所へ北村大膳」ってな」

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さて、ここは当時、日本で一番大きな本の問屋、つまり取次店の日配です。マリ子は迷わず、ここへ乗り込みました。

 

お次の方、どうぞと呼ばれ、受付へ。

マリ子「姉妹出版の磯野と申します。この度、私どもでこのような本を作りましたもので、お買い上げいただきますればありがたいと思いまして」

 

ツイッターで取次店の高瀬を「荒谷二中の教頭」だと指摘している人がいて、調べると、稲垣昭三さんは「3年B組金八先生」の第2シリーズの23話、24話に音羽教諭役として出演していることが分かりました。いや~、さすがに荒谷二中の先生は米倉先生と大山先生くらいしか覚えてなかったな。この間見たばっかりなのにね。

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笑いながら走って帰ってくるマリ子。

 

朝男「へえ~、するってえと2万部全部そっくりかい?」

マリ子「ええ!…と言いたいところだけれど厳密に言えば昨日、デパートで買ってもらった500部と、それとうちに持って帰ってきた50冊を入れて、あとは福岡の方たちや向こうの新聞社にも渡さなければならないでしょう」

マチ子「そうよ。お母様はきっと教会にご寄付なさりたいとおっしゃるでしょうし」

はる「ええ、もちろんですとも」

マリ子「それと合わせて1,000部差し引き、1万9,000部」

一同「わあ~!」

 

千代「やっぱり日本一の問屋さんですたいね~」

朝男「いやいや…ド素人のくせにね、そこまで持っていったね、マリ子さんの度胸を買うべきだよ」

千代「そげんこと、当たり前ですたい!」

 

マチ子「でも、大したもんだわ、マー姉ちゃん!」

マリ子「ううん、売るだけが能じゃありませんよ。このとおり横線小切手で…はい! ちゃんとお金も頂いてまいりました!」

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マチ子「きゃ~っ! 15万9,600円!?」

朝男「ほ…本当かよ!? おい…」

マチ子「6万円ももうかっちゃったの?」

マリ子「そうらしいのよ」

朝男「はあ~…バカらしい。魚屋なんて商売やってられねえや…」

 

はる「いいえ、人それぞれの天職というものがあるんですよ、天海さん」

朝男「へいへい。それは違えねえけどね、マリ子さん、よくやったよ、でも!」

マリ子「本当、お母様に言われた時は本当に一時はどうなることかと思ったけど、こんな簡単なものだとは思わなかったわ!」

はる「私だってそうですよ」

 

朝男「はあ~! まあしかしよかったよかった! 万歳~! だ~!」

一同「万歳~!」

 

万歳とはお手上げをも意味することだとは、この時、気付く余裕のある人は誰もいませんでした。ともあれ、お二階の同居人も天海さんの家へ引っ越していき、昭和21年の大みそかは一家水入らず、翌年の希望とともに静かに終わろうとしておりました。

 

マリ子は和服、ヨウ子も和服、日本髪。マチ子は洋服だけど髪をセットして帰ってきた。

はる「本当に品がいいこと。よう似合うわ、ヨウ子」

ヨウ子「でも、とても重たくて…」

マチ子「それよ、それ。その重たげな風情が何とも言えない感じ」

千代「ほんなこつお美しかですよ」

 

マリ子「マー姉ちゃんの言ったとおりでしょう。本当にきれいなのよ、ヨウ子ちゃん」

ヨウ子「はい」

はる「本当にね。見飽きないわ」

マリ子「あ~あ、明日から新年なのね」

マチ子「明日っていったって、もう…」

時計は23時59分。

 

マチ子「わあっ! もうそこまで来ちゃってるじゃないの」

マリ子「何が?」

マチ子「お正月よ。ねえ、そろそろいいんじゃないの? もう始めましょうよ」

はる「始めるって何を?」

マチ子「おそば! 年越しそば!」

 

大きなざるに真っ白いそば? 東北人の私からすると、うどんとかそうめんみたいにみえたけど、更科そばというやつなのかな?

 

除夜の鐘が鳴り始める。

 

108つの煩悩を払うという除夜の鐘です。

 

皆でおそばを食べ始める。

千代「まあ…何年ぶりでしょうかね。こうして皆さんと一緒に年越しそばを頂くのは」

マリ子「ええ…」

 

ブルーバックの「ただいまの出演」でつづく。

 

マリ子にだんだん貫禄がついてきた。まあしかし出版社を作って本を出すというのがすごいよなー。