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【連続テレビ小説】マー姉ちゃん (153)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

出産のため入院したヨウ子(早川里美)。家で待つことになったマリ子(熊谷真実)たちの元に、朝男(前田吟)や植辰(江戸家猫八)も駆けつける。夜、無事に女の子が生まれたと連絡が入ると、正史(湯沢紀保)やはる(藤田弓子)は我先に会いに行こうとしてマリ子に止められる。明日まで会えないもどかしさから、感情的になってしまう正史たち。やがて赤ん坊は正子と名付けられ、骨抜きにされた磯野家は皆、正子にべったりで…。

夜、磯野家

正史はネクタイを緩め、はるはダイニングテーブルをコツコツ指で打ち、お琴さんも同じテーブルについている。マチ子はウロウロ歩き、客間では天海一家もじっと座っていた。タマと朝男が隣に座り、向かい側にお千代ねえや。

 

そこに電話の音。

マリ子「はい、もしもし、磯野です! えっ? 上寿司3人前? あの、うちはお寿司屋さんではありません!」昭和の定番ギャグ。マリ子とマチ子は顔を見合わせ、マリ子は階段に座り、マチ子は客間に戻る。

 

朝男「畜生! 完全看護が何だってんだ、ええ? お体裁ぶりやがって! 追い返された身にもなってみろってんだよ。ハラハラ、ハラハラ…心臓が止まっちゃうぞ、これじゃあ、もう」

千代「まあ、だからって、そんなどなることはないでしょう」

タマ「そうだよ。やっぱりペテンだったんだよ。大体ね、お産が痛まないわけがないじゃないか!」

 

正史「そうです! そもそも無痛分べんなんて言いだしたのはどこのどいつなんでしょう!」

マチ子「正史さん、あなたでしょう?」

正史「いや、僕はそれを信じ、ヨウ子に勧めただけで提唱したのはどこかの医者です」

 

それにしても、正史やヨウ子が言う無痛分娩って何なのだろう? 昭和20年代にも今と同じ意味の無痛分娩もあったはずだけど、スピリチュアル方面?の無痛分娩もあったのかな? 「無痛分べん 精神論」で検索しても、日本では、痛みに耐えてこそ母という考えが根強く、無痛分娩が広まらないという記事しか出てこない。

 

マリ子「それにしてもですよ、あなた以上に私たちは何でも信じやすい体質なんです。おかげで当のヨウ子だって陣痛が来てるのに盲腸だの神経痛だのって、全然気が付かないありさまだったんじゃありませんか。ちょ…お母様!」

マチ子「どこへいらっしゃるの!?」

 

はる「ちょ…ちょっと病院へね」

正史「駄目です! 夫の僕でさえ追い返されたほどですから」

はる「だから、病院の表で待ってるんですよ。そしたら様子がすぐに分かるでしょう」

マリ子「お母様、駄目だってば!」

 

植辰「あ~、駄目ですよ…奥さん。こういう時は落ち着かなきゃ駄目なんだ。お産なんてものはね、潮の満ち引きに関係があるんだとさ。ねっ? 相手は一流のお医者さんでしょう。デンと任せておきなさいよ。お産なんて病気じゃねえんだから」

はる「でもね、あの子は小さい頃から体が弱かったんです」

植辰「そういう時はね、ほら、奥さんのお得意のやつがあるでしょう。ねっ? 『黙って座れば赤ちゃんは産まれるんですよ』。これですよ」…座して祈れば道は開けるだね。

はる「植辰さん…」

 

植辰「さあ、腹が減っちゃあ戦はできねえんだ。ねっ? いざご対面になった時にへばっちゃ何にもなんねえんだよ。ねっ? はばかりながら、このお寿司はね、植辰さんが差し入れますから、さあ、どうぞ、遠慮なくやってくださいよ。おい、天海ばあさん」

タマ「えっ?」

植辰「お前さんまで一緒になってぶっつわってちゃ駄目だよ。ほかの人とは別なんだから、お前さんは。このガキを産んだんだろ?」

朝男「ガキ?」

 

植辰「おうさ。ほらほらほら…はいはいはい。さあさあ、召し上がってくださいよ」

マリ子「ちょ…お母様! どうなさったの、お母様!」

はる「本当に私…どうしたんでしょう…」心臓を押さえる。

 

終始、背骨が一本ピンと入っていたはるが、この日を境に孫に対してだけはメロメロのおばあちゃんになってしまうとは、一体、誰が予想できたでしょうか。

 

はる「あなたたちが悪いんですからね! 本当にみんなあなたたちが!」

マリ子「お母様…」

はる「やれ、男がいいだの女がいいだのと生まれてくる前からもう勝手な注文つけるもんだから赤ちゃんがどっちで産まれていいか考えて迷ってるんですよ」

正史「そんな!」

 

はる「無事に産まれてくれさえすれば、どっちだって構わないじゃありませんか! それなのに、それなのに、あなたたちは…」

マチ子「お母様、落ち着いて、落ち着いて」

はる「落ち着いてなんかいられません! ヨウ子、ヨウ子…」

マリ子「お母様…」

はる「ヨウ子、ヨウ…ヨウ子!」

 

分娩室

ヨウ子「ううっ! ああ~っ!」

医者「そうです。気張って。もうひと息!」

ヨウ子「うう…うっ、ああ~! お母様~!」

 

この出産シーン、「3年B組金八先生」第1シリーズを思い出した。浅井雪乃も「お母さん」じゃなかったかな。調べたら「助けて、お母さん」だそうです。

 

磯野家に電話がかかってきて、マリ子が慌てて出る。「はい、もしもし、磯野です! はい、世田谷の磯野です! はい。はい。そうですか! はい! はい、分かりました。それで、ヨウ子は? はい。はい、分かりました。どうもありがとうございました。はい。それで…」

マチ子「産まれたのね?」

マリ子「うん」

はる「無事に産まれたんですね?」

マリ子「はい!」

 

正史「それでヨウ子も?」

マリ子「ええ」

植辰「よかったよかった! おめでてえじゃねえか、奥さん!」

朝男「で…どっちだい? どっちだい?」

千代「それはあんたが聞く役割じゃないんだから」

 

朝男「あっ、そうかそうか。君だ!」

はる「正史さん! 早くあなたが聞かないと、みんなで聞いてしまいますよ!」

正史「あの…どっちですか?」

マリ子「女の子よ。すごい美人の女の子ですって!」

正史「やった~! 万歳~!」

周りにいた人たちは拍手と歓声を送る。

 

正史「やった~! 植辰さん、やった~! やった~!」と言いながら玄関から客間へ。「あっ! お琴さん、お琴さん! ちょっとこのお寿司包んでください! ヨウ子に持っていきます!」

お琴「はいはい」

 

マリ子「駄目です! 今、駆けつけたところでヨウ子とも赤ちゃんとも会えません!」

はる「どうして!」

正史「だって産まれたんでしょう? 赤ん坊は!」

マリ子「産まれましたよ。でも今何時だと思ってるんですか」

マチ子「まだ9時よ!」

 

マリ子「9時だったら、病院は寝る時間だっていうのはマチ子が一番よく知ってるはずでしょう」

マチ子「それは…」

マリ子「いいえ、それにヨウ子には今、一番、休養が必要なんですって。たった一人で何時間も頑張ってきたんですもの。今はゆっくりと寝ることが一番大事なんですって」

 

正史「だけど、赤ん坊は…!」

マリ子「同じことでしょう。赤ちゃんだってヨウ子と力を合わせて一生懸命産まれてきたんですもの。それにあなたが今、慌てて駆けつけたところで、あなたが誰か分からないでしょうよ」

正史「そんな…それは最大の侮辱ですよ! 僕は絶対その子の父親です」

マリ子「そんなこと当たり前でしょう」

 

正史「だから!」

千代「正史さん、落ち着きましょう。ねっ?」

正史「しかし、お千代さん…!」

マリ子「しかしもヘチマもありません。明日9時になったら会わせてくれるそうです。赤ちゃんと対面させてくれるそうですよ」

 

はる「そんな、あんまりですよ! みんなでこんなに心配していたというのに…」

マリ子「お黙んなさい!」

はる「マリ子…」

マリ子「私だって、みんなに負けないくらい会いたいわよ! いいえ、みんながいなかったら私一人で駆けつけてるところだわ! だけど明日、先生がいらっしゃいって言うんだから、しかたがないじゃない!」

マチ子「そうよ、マー姉ちゃんの言うとおりよ」

 

植辰「まあまあ、ここは私の言ったとおり寿司でも食ってさ」

朝男「そうそう」

千代「奥様」

タマ「とにかくおめでとうございました」

朝男「おめでとうございました」

お琴「おめでとうございます、大奥様! おめでとうございます、旦那様!」

 

正史「あっ…どうもありがとう!」

マチ子「(インタビュー風に)パパになったご感想をどうぞ!」

正史「はい、感激です。(マチ子の手を握りしめ)ただひたすらに感激です!」笑い

 

マリ子は手で口を押えて玄関へ行き、一人涙を流す。

マチ子「マー姉ちゃん

マリ子「女の子ですって」

マチ子は涙を流し、うなずく。

マリ子「ウフフフッ! 女の子ですって!」笑い

マチ子「うん!」抱き合ってくるくる回る。

マリ子「マチ子、女の子ですって! 女の子! 女の子…!」

 

さて、一騒動の一夜が明けました。

 

病室

ヨウ子「お母様! マー姉ちゃん!」

はる「入ってもいいかしら?」

ヨウ子「もちろんです。待ってたんですよ、私」

はる「(マリ子に)ほら、ご覧なさい。(ヨウ子に)どうなの? あんばいは」

 

ヨウ子「私、だまされました」

はる「えっ?」

ヨウ子「お産は決して痛くないだなんて、あれは真っ赤なうそでした。私って単純だから頭から信じ込んでいたのに」

マリ子「いいえ、そういうのは単純っていうんじゃなくて素直っていうのよ」

 

ヨウ子「ううん、いずれにしたって痛かったのは事実です。ひどいわ」

マリ子「そんなこと、私に当たったってしかたがないでしょう」

ヨウ子「でも、いいの」

マリ子「えっ?」

 

ヨウ子「もう死ぬかなって思ったけど、あの子が産まれる寸前、空っぽになった頭の中にお母様の顔が浮かんできたんですもの」

はる「まあ、私の顔が?」

ヨウ子「こうやって、お母様も私を産んでくださったんだなって」

はる「ヨウ子…」

ヨウ子「お母様…」

 

はる「ごめんなさいね。あなたの時は3度目だったでしょう。だから、マリ子の時ほど大変ではなかったの」

マリ子「まあ」

ヨウ子「めっ!」

マリ子「何でしょう、ヨウ子ったら」笑い

 

ヨウ子「正史さんは?」

はる「ええ、それがね新生児室の前から離れないのよ」

ヨウ子「まあ。じゃあ、もう赤ちゃんを?」

マリ子「ええ、ガラス越しのご対面でしたけどね」

 

はる「一目見てすぐに分かりましたよ。鼻はね、ヨウ子に似てスッと高いし、目は正史さんかしらね、色白で新生児室の中では一番の美人だったわ」

マリ子「うそよ。お猿さんみたいにシワだらけで真っ赤だったじゃありませんか」

はる「あんなふうにきれいに赤ければね、大きくなってから、ちゃんと色白になるんですよ」

マリ子「なんたる親バカ…ううん、孫バカっていうのかしら」

 

はる「何とでもおっしゃいよ。ええ、あの子はね、大きくなったら、きっとすごい美人になりますよ。正史さんもそう言ってたわ」

ヨウ子「まあ、あの人まで?」

マリ子「そうよ。お母様と一緒に根比べみたいに、もうぴったりとガラスに張り付いちゃって夢中なの。おでこもお鼻もぺっちゃんこなのをガラスの向こうから見てみたかったわ」

はる「ええ、どうぞどうぞ。きっと幸せに輝く天使みたいだったでしょうよ」

マリ子「まあ」

 

ノックの音がし、正史が花束を抱え、後ろにマチ子もいて一緒に入ってきた。

マリ子「さあ、入ってちょうだい。入って、ヨウ子に何か言ってあげて」

はる「さあ、ほら、正史さん」

 

正史は花束をヨウ子のおなかの上に置き、ヨウ子の手を取った。「ありがとう」

ヨウ子「あなた…」

正史「本当にありがとう。本当に…。ヨウ子…よくやってくれたね」

ヨウ子「はい」

 

マリ子「お母様」

はる「何ですよ? 一体…」

マリ子「マチ子も」

マチ子「何よ、私、ヨウ子にひと言…」

マリ子「いいから2人にしておくの。母親なのにどうして気が付かないの」

はる「だって…」

マリ子「いいから…」

 

お琴さんが庭におしめを干している。

 

さあ、凱旋将軍が磯野家に帰ってきたのは、出産後10日目のことです。名前は正史の一字を取って正子(まさこ)と名付けられました。

 

命名 正子

昭和三十年四月一日

 

はる「まあまあ、大変失礼いたしました。ごめんくださいませ」

 

ヨウ子と正史の部屋

ヨウ子は赤ちゃんとベッドに寝ている。

マチ子「でも、分かるな~。あのじょう舌家の正史さんがその場で口もきけなくなった気持ち。私だって不思議でしょうがないもの。この愛すべきちっちゃな生き物が一体どこからやって来たのか、まさに生命の神秘ですもんね」

マリ子「私はそんな難しいことは分かんないけど、もうとにかくかわいくてかわいくて食べちゃいたいくらい」

マチ子「マー姉ちゃんったら」

マリ子「いいの。これはあふれるほどの愛情の表現なんだから」

 

はる「まあまあ、あなたたちはまた入り浸り?」

マチ子「お母様だって」

はる「私はね、今まで正史さんのおかあ様のお相手をしてたんですから当然ですよ。ほらほら。私にとっても初めての孫なんですからね~」

マチ子「ほらほら」

 

はる「何でしょう。『ほらほら』はマチ子の方ですよ。お引き受けしたお仕事があるんでしょう」

マチ子「ひどい…」

はる「マリ子、あなただってそうですよ。取次店さんからいろいろとお電話があったじゃありませんか」

マリ子「駄目だわ、マチ子。ちゃんとしないとお母様に赤ちゃん独り占めされちゃいそうよ」

マチ子「そうはさせるもんですか」

 

はる「おあいにくさまでした。私はね、3人の子供を育てたという経験があるんですからね。正子ちゃんにはね、この私がついてるのが一番なの」

マリ子「それが心配なんです。それが」

はる「『それが』とは何でしょう?」

マチ子「駄目だ、マー姉ちゃん。全然通用しそうもないもの」

マリ子「あ~あ」

 

はる「構いませんよ、そんなこと」

マリ子「これから先が思いやられそう」

赤ちゃんの泣き声に一斉に反応するマリ子たち。

 

本当にこの調子では先が思いやられます。

 

おとといの回の最後の方が昭和30年4月1日の朝

peachredrum.hateblo.jp

昨日の回は昭和30年4月1日の昼

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で、生まれたのは昭和30年4月1日の夜9時過ぎ。日曜日だという話だったけど、ネットで日付を調べると、昭和30年4月1日は金曜日でした。誕生日が本当で、日曜日で病院はやってないというドラマ性を重視したのか。

 

着々と終わりに近づいてるのが寂しい。完全看護って父親まで締め出すところが昭和だな。