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【連続テレビ小説】マー姉ちゃん (88)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

疎開先に引っ越すため、野戦食編さんの絵の仕事を終わらせたマリ子(熊谷真実)。契約期間よりも早めに済ませた上、プロの絵描きとして交渉をし、大金をもらう。疎開準備の日、大造(河原崎長一郎)や植辰(江戸家猫八)、ウララ(楠田薫)たちが手伝いにくる。そんな中、三郷(山口崇)は、病を患いながらも前向きなヨウ子(早川里美)に驚かされる。その晩、久々に一平(益田喜頓)たちが上京してくるが、ただならぬ雰囲気で…。

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帝大分室から請け負った野戦食糧植物編の仕事を終えれば、あとは直ちに疎開準備にかかるだけ。ヨウ子のために何としてでも寝台車がある3月中に片をつけなければならないのです。

 

マリ子は仕事を終え、帰ってきた。

マチ子「ええ~!? それじゃあ、もう今日のうちにお金ふんだくったの?」

はる「なんて人聞きの悪いこと」

マリ子「そうですよ。今週中には必ず終了すると前もって予告しておいたんだし、終了後、点検に合格したら当方の都合もあるので必ず請け負い金額はお支払いいただきたいと申し入れておいたんですもの。もらってきても当然でしょう?」

はる「ええ、当然のことですもの」

マチ子「あきれたわね~。マー姉ちゃんの押しの強さにはただただ頭を下げるだけです」

 

マリ子「あら? どうして?」

マチ子「だって私なんてお金のことなんて口に出せないわよ」

はる「…と思ったら直ちに改めなさい。やったことを要求するのは当然の権利ですよ」

マチ子「まあ、そこらへんが2人とも親子なのね」

マリ子「どういうことよ?」

マチ子「つまり堂々と言えるところ。ねっ?」

ヨウ子「本当に」

 

マリ子「まだ笑っちゃ駄目」

ヨウ子「えっ?」

マリ子「今日もらったくらいで驚かないでよ。お母様のおっしゃるとおり当然なんですもの。でも一体いくらふんだくってきたと思う?」

はる「(咎めるように)マリ子」

マリ子「ごめんなさい。でも今日は少しいい気分にさせて」

 

マチ子「う~ん…300円?」

マリ子「なんのなんの」

マチ子「本当に!?」

マリ子「どうしてどうして」

マチ子「じゃあ350円!」

マリ子「ケチ!」

 

マチ子「じゃあ…」

ヨウ子「400円!」

はる「450円!」

マリ子「まだまだ!」

ヨウ子「480円!」

 

マリ子「もう一声!」

マチ子「まさか…!」

はる「500円!」

マリ子は大笑い。

 

500円といったらこのころでも大金です。

 

マチ子「マー姉ちゃん本当なの!?」

マリ子「ご冗談でしょう」

はる「悪い人ね~、こんなことで人を担ぐなんて」

マチ子「そうよさんざん人を驚かせといて」

マリ子「ああ~ごめん、ごめん。だってもっとなんですもの、800円」

ヨウ子「えっ?」

 

マチ子「今何て言った?」

マリ子「800円」

はる「800円!?」

マリ子「そうですよ。8は末広がりといってさい先のいい数字ですからね」とモンペを脱ぎだす。

 

マチ子「ちょ…マー姉…マー姉ちゃん?」

マリ子「驚くのはまだ早い。お手洗いでしっかりとくくりつけてきたんだけどそそっかしいのが玉にきず。もしも落っことしてきたその時には、どうぞ皆さん白目をむいてひっくり返るなりみんなで一斉に驚くなり」と帯をほどく。

はる「まあ…!」

ヨウ子「嫌よ、心臓に悪いわ」

はる「マチ子、ねえ、お水持ってきといてちょうだいよ」

マリ子「駄目、駄目。こういう時こそ喜びも悲しみも分かち合うのが親子というもんでしょう」帯の間に挟んでいた封筒を取り出す。

 

ヨウ子「何でしょう、お母様まで」

マリ子「そうよ、明日のことを思い煩うな。お金のことでそんなにはしゃぐのははしたないことです」

はる「はい、申し訳ございまっしぇん」

マリ子「結構です」

マチ子「それにしたってマー姉ちゃんにあきれて物が言えないわ」

 

マリ子「どうして? ちゃんと無事に持って帰ってきたじゃないの」

マチ子「だって800円なんてお金…!」

マリ子「見損なったら困るわよ。私はプロの絵描きなのよ。プロならばお金の交渉はちゃんとするべきじゃない?」

マチ子「それにしたって相手がよく出したもんね」

マリ子「当たり前でしょう。私は安い絵描きじゃないわ。それに5ヶ月のお仕事をそれこそ夜の目も詰めて3か月で仕上げたんですもの。まあ経費の点からいったってあちらさんだって大喜びよ。ですから2か月分のお手当をここに上乗せしてもらい、200円上乗せしてもらい1,000円あります!」セリフを言いながらテーブルの上にお札を並べる。

 

はる・ヨウ子「ああ~…!」

マチ子「1,000円!?」

マリ子「やっぱりお勘定はぴっちりと端数がない方が気持ちがいいじゃない」

マチ子「いやはや、もう…」

はる「よくやりました、マリ子!」

 

マリ子「だから、お母様お願い。これは疎開のためのお金なんですからね。いくら気が大きくなってもお願いですから目をつぶって分かち合うことだけはやめて」

マチ子「お母様」

はる「分かりました。今度だけは目をつぶることにしましょう」

マリ子「はあ~助かった」

マチ子「助かったのはお母様の方よ」

はる「あら、どうして?」

 

マチ子「だってもしもお母様が首を横にお振りになったその時は、私、ヤモリを捕まえてきて…」手を広げてみせるふり。

はる「キャ~!」

三姉妹、笑う。

マリ子「マチ子ったらもう!」

マチ子「だって~!」

 

とにもかくにも金1,000円なりとは本当の大金だったのです。

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昭和19年 巡査の初任給が45円。

マチ子の絵が60円で売れた。

アップライトピアノが1,583~4,512円。

 

2021年 警察官の初任給21万~25万。

アップライトピアノ 50万~120万。

物の価値はそれぞれの時代で違うもんなあ…100万円くらいか?

 

さて、次の日曜となれば懐かしい人たちが別れを惜しみながら疎開の荷造りを手伝いにきてくれました。

 

大造と植辰と栄一が磯野家を訪れ、智正と挨拶。

植辰「荷物をほどいて迎える時はいいけどさ、こうやって荷造りして送り出すってえのはどうも切なくていけねえや」

大造「それは言いっこなしだろ、植辰さん」

栄一「どうもすみませんね。おやじも近頃、年のせいかめっきり愚痴っぽくなっちまって」

植辰「てやんでえ、薄情者! じゃあ、おめえは何か? 平気だってえのかよ? 奥さんたちを遠くへ送り出すってえことは」

栄一「別にそういうわけじゃ…」

大造「よさねえかよ! これ以上もめるんだったらとっとと追い返すぞ、2人とも! ええ?」

このチャキチャキの江戸弁ともしばらくおさらば!?

 

マリ子が顔を出した。

大造「ろくでもないやつだけどね、連れてきたからね。何でも言いつけておくんなさい!」

植辰「そのかわりさ、また帰ってきてくださいね。必ず、きっとね!」

マリ子はお礼を言い、おおまかなことは智正に聞くように言う。栄一は均の姿が見えないことを不思議がる。

マリ子「大宗さんは私たちの切符の手配や荷の送り出しのことで走り回ってくだすってるんです」

 

家の中ではウラマド姉妹やタマがこまごました荷造りを手伝う。ウラマド姉妹はフリフリのエプロンでお手伝い。ヨウ子は2階で寝ている。

 

はるはお酒の道具は向こうに行ったら新聞社や雑誌社の方々も来ないから大造たちにあげようという。

マリ子「それは構いませんけれど」

マチ子「また始まったわ、例の病気が」

マリ子「かえって割れたりしたらつまんないじゃない」

はる「そうよ。だからね、そう、この備前焼のそろいを酒田さんにね。それそれ、この唐津焼の方は植辰さんにもらっていただきましょうね。それから三郷さんには…」

 

大造「いやいや…! 奥さん、それはいけません!」

植辰「いけませんよ。あっしら今までもたっぷりお世話になってるんですから」

智正「でも、いいじゃありませんか?」

大造「えっ?」

栄一「だけど…」

 

智正「いやいや…しかし、ここのところは気持ちよく頂いてですね、そのかわり、磯野さんの今後のお暮らしに役に立つようなものをみんなで考えましょう!」

マドカ「は~い、私も賛成ですわ! そうした方がよろしいと思います」

大造「そうですか? それじゃあそういうことで」

植辰「どうも申し訳ありませんね。へえ~結構なものをまた」

三郷さん、分かってるなあ~。

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お金がなくなり、この家に引っ越す時だって、お金がないことをその場で知ってすぐに蓄音機を譲ってほしいというなど、いちいちやり方がスマートな三郷さん。

 

2階で寝ているヨウ子の所に智正、大造、栄一がやって来て荷物を運び出す。病気で寝ているところを見られたくないよなあ…。大造と栄一が荷物を運び出し、智正はヨウ子の近くで本を束ねた。それを見ているヨウ子。

 

ヨウ子が呼び掛けたので作業の手を止め、枕元に座り直す智正。

智正「どんなに遠くへ行ってもどんなに離れても、私たちはお友達ですよ。いいですね?」

ヨウ子「はい」

智正「そしてね、私たちがこの東京でお友達になれたように新しい土地に行ってもまた新しいお友達が生まれます。人生ってねそんなに捨てたもんじゃないと私は思ってるんですよ」

ヨウ子「はい」

 

智正「そして、体だけは十分気を付けてくださいね。そして一日もよくなってほしい。これが今の三郷さんの気持ちです」

ヨウ子「大丈夫です。私、決心したんですから」

智正「決心?」

ヨウ子「ええ。母や姉たちがみんな私のことを考えて一生懸命やってくれているのが、こうして寝ていても痛いほどによく分かるんです。だから…決してめそめそしてはいけないって。だって、母や姉たちにできる感謝のしるしはそれだけしかないんですもの」

智正「そう…」

 

ヨウ子「丈夫になれるかどうか分からないけれど、私自身が最後まで諦めてはいけないと思って」

智正「そうですよ。本当にそうですからね」

ヨウ子「私も書きますから、三郷さんも時々お手紙下さいね」

智正「ええ、もちろん書きますとも」

 

ヨウ子「私ね、寝ていていろんなことを考えているんです」

智正「いろんなことって?」

ヨウ子「例えば、丈夫になったら何をしようかな。そんなことですけれど。おかしくはないでしょう?」

智正「おかしいどころか立派です。希望を捨てないということほど大切なことはありません」

 

ヨウ子「三郷さん…」

智正「はい、ヨウ子ちゃん」

ヨウ子「私、なりたくてなった病気ではないのに何もかも途中で駄目になって挫折感はありました。でも、姉たちのことを考えたら挫折感なんてものはまだ早いんじゃないかと思って」

智正「そう…そうですよ。そうなんですよ。いや~、三郷さんね、今ドキッとするぐらい恥ずかしい思いです」

 

ヨウ子「うれしいわ。やっぱり三郷さんはお友達でいてくださったんですね」

智正「ず~っと友達ですよ! ヨウ子ちゃんが迷子になった時から、ず~っとず~っと友達です!」

ヨウ子「はい!」

何なんだ、この20離れた男女の友情は…と思いつつ、三郷さん素敵なのでそれはそれでいいのかと納得させられる。普段は年の差とかすごく嫌いな設定なんだけど。

 

隣人、友人たちのおかげで疎開準備は全て完了。あとは均五郎青年手配するところの汽車の切符を待つばかりとなったその晩のことです。

 

男「ごめん。磯野さんのお宅はこちらかな?」

女「もしもし、こんばんは」

 

玄関に飛び出すマリ子、マチ子、はる。玄関にはお千代ねえやとお隣のおじいちゃまが立っていた。

はる「夢ではないんでしょうね、お二人とも!」

千代「はい、夢でもなければ幽霊でもありまっしぇん! ちゃ~んとうちもご隠居様も足の2本ついとります」

マチ子「だったらどうして知らせてくれなかったの?」

マリ子「ひどい、ひどい。私たち、もう少しで行き違いになるところだったのよ」

 

一平「そげんこつで2人は取るものもとりあえず上京してきました。ばってんひどいのはあんたらの方じゃなかとですか!?」

はる「はあ?」

マリ子「じゃあ、とりあえず上がってください」

千代「はい、上がらせていただいて一晩かかっても、うちらの言いたいことだけはちゃんと言わせていただきますけん」

 

お千代ねえやと一平おじいちゃまは一体何を言いにはるばると上京してきたというのでしょうか?

 

怒ってる!?一平と千代。マリ子たちは戸惑いの表情。

 

この流れで福岡に行くことになるんだろうとは思うけど、細谷さんがせっかく道を作ってくれた佐久行きはどうなるんだろう。均ちゃんも一生懸命切符を用意してくれてるのにね。細谷さんや塚田さんの思いが無駄にならないような展開になればいいな。

 

たまたま録画したものをブルーレイに焼いていたのを見つけたので、2013年にフジテレビで放送された「長谷川町子物語」を昨日、見ていました。長谷川町子尾野真千子さん。毬子が長谷川京子さん、洋子が木村文乃さん。CMカットして1時間56分ほどで晩年までを描いているので、「マー姉ちゃん」で何日もかけて描いたエピソードも一瞬。当然だけど、細谷さんや三郷さんは出てきません。

 

お金がなくなったと毬子が母に言われるシーンもあったけど、その場になぜか毬子の恋人(「マー姉ちゃん」で言う東郷新八郎)もいて、お金がなくなった事より「この人誰?」という感じで、さらっと流れていき、ドラマ全体通して、はるさんみたいなヤバいお母さん感はありませんでした。こちらのお母さんは松坂慶子さん。

 

それにこちらはあくまで町子が主役。漫画のネタに苦悩する姿や実際の作品も出てきました。恐らく「マー姉ちゃん」で描かれたのは、このドラマの2/3ほどでこのドラマの独自エピソードとしては、町子が元々ファンだった九代目市川海老蔵に取材して(演じたのは十一代目市川海老蔵さん)、その後も銀座でばったり再会するシーンや海老様に妻子がいたことにショックを受け、それをネタに漫画を描いたことや、晩年の姿など。それと、父が生きていた頃の昭和2年あたり(町子7歳)のエピソードも描かれていました。

 

ブルーレイに残していたほどだから当時は面白く見ていたんだろうけど、全然ストーリーを覚えてなくてそこにびっくりした。長谷川家のほかに「マー姉ちゃん」と共通しているのは田河水泡(三浦友和さん)と菊池寛(セリフなしの一瞬)、毬子の夫(チュートリアルの徳井さん)くらい。こちらのドラマはすでに亡くなった父(イッセー尾形さん)が何度も回想で出てきます。魅力的なご近所さん、編集者も出てこず、仕方のないことだけど物足りなさは感じた。今やってる疎開エピソードも一瞬で決まったし。「カーネーション」が好きだったから尾野真千子さんの演技が好きで残していたのかもしれない。

 

同じエピソードでも時代によって伝え方が違うのは面白い。フジ版だと教会に通いたいとか神の御言葉とか恐らくキリスト教徒なんだろうなと思わせるけど、神父様が出てくるわけでもなし。ドラマの初めは「マー姉ちゃん」と同じく上京する昭和9年から始まっていて、町子14歳だから妹の洋子は恐らく8歳。なのに演じているのは当時20代の木村文乃さん。そこは子役使えばいいのにとは思った。昨日全部見たけど、今後の「マー姉ちゃん」のエピソードと照らし合わせたくて感想はもう少し先にしたいと思います。