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【連続テレビ小説】マー姉ちゃん (69)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

ある日、険しい顔で新八郎(田中健)がやってきてのらくろが打ち切りになると言う。資材制限の中、売れ過ぎたことが原因だった。かけつけたマチ子(田中裕子)と細谷(下條アトム)を前に、田河(愛川欽也)は清々しい程覚悟を決めていた。幾度も細谷と軍の干渉を乗り切って、連載10年。田河と順子(三田和代)はのらくろを我が子のように思い、これまでの活躍を労う。だが、田河は均(渡辺篤史)の今後が心配で…。

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季節は夏になり、ある日、新八郎が磯野家にやって来た。マチ子は、はると麻布の伯母様の所に行って不在。新八郎はいつものように家に上がり込むことはなく、陽談社で「のらくろ」を打ち切るという話をした。文芸部ではなく社会部が情報を手に入れた。東郷はすぐに帰っていき、マリ子は塚田に確かめた。

 

陽談社ロビー。

塚田「いや、理由は簡単さ。紙だよ、紙。紙の制限だ」

マリ子「紙? だって紙のことでしたら私が児童物に移るとご相談した時、それは賢明だって言ってくだすったのは塚田さんじゃありませんか。それなのに児童物がなくなるなんてこと…」

塚田「いや、『少年倶楽部』はなくならんよ」

マリ子「だったらどうして? どうして『のらくろ』が?」

塚田「あれのために売れ過ぎてしまうんでね」

マリ子「それだったら結構なことじゃありませんか」

塚田「全くだよ! 非常時でなければ誰が打ち切るもんか。『のらくろ』は『少年倶楽部』の財産だし、ドル箱だ。皮肉なもんだよ、あれのために売れ過ぎて陽談社で受ける紙の配給量じゃほかの雑誌との釣り合いが著しく欠けるなんて理由は理由にも何にもならんからね」

 

田河邸。

水泡「元来ね、私はこの…非常に怠け者でね、そこんところをこの細谷君がお尻をひっぱたくもんだから、今まで忙しすぎたんだ」

順子「だからね、少しゆっくり休んでから別のものをって私も先生の意見に賛成なの」

マチ子「いえ、先生のことではありません」

細谷「君」

マチ子「先生が少し休まれることは私も賛成です。でも『のらくろ』を打ち切られた全国の子供たちは一体どうなるんでしょうか!」

細谷「いや…そ…それなんだよ。僕も頭が痛いのは」

マチ子「当然のことじゃありませんか。『のらくろ』が出なくなってしまった『少年倶楽部』なんて魅力はがた落ちです!」

 

水泡「うん。まあ、そこら辺りにもねらいがあるんだろう、きっと」

マチ子「ねらいって一体誰のねらいですか?」

細谷「いや、それはだね…」

マチ子「分かっています! でも…そういう圧力から先生を守るのが担当編集者としての細谷さんの務めでしょう?」

均「そうですよ。さっきから僕もそれを言いたくて…!」

 

水泡「やめなさい。均ちゃんもマチ子さんも」

マチ子「だって…」

水泡「いや、僕だってね、全国の『のらくろ』を今まで応援してきてくれた子供たちのことをまず考えたさ。ちょっと奥さん、あののらくろを取ってくれ」

順子「はい」大きなのらくろのぬいぐるみを持ってくる。

水泡「僕らにはね、子供がいないもんだから、僕も奥さんもね、こののらくろを我が子みたいに思ってるんだよ。だから軍の方の干渉も、この細谷君と何度もくぐり抜けてきた。軍隊がいけないっていうんだったら除隊させて満州にも行かせたし、探検隊なんかにもさせて続けてきたんだよ」

 

そういえば今日のめくりは「戰時中」だ。

 

均「そのとおりです。その間のご苦労はおそばにいた僕が一番よく知っています。それなのに…今更、そんな…。『のらくろ』そのものをやめさせるなんてそんな横暴許せませんよ!」

細谷「すまん。本当に僕の力が足りないばっかりに…。マチ子さんたちの言うとおりなんだよ」

 

水泡「そんなことはないよ、細谷君」

順子「そうよ。ゆうべ先生と話し合ったの。陽談社さんのおかげで『のらくろ』は10年続いたんですもの」

水泡「いや、この10月号で打ち切りなら10年と10か月だぞ」

順子「そうね」

 

マチ子「10月号って…もうそんなことまで決まっているんですか!?」

細谷「とにかく1か月でも2か月でもできる限り連載を続けたいと思ってるんだよ」

水泡「ありがとう、細谷君。それでもう十分。本当に君はよくやってくれた」

細谷「先生…」

 

水泡「10年って言やぁ、おい、10歳で『のらくろ』を読み始めた子供はもう二十歳になってるぞ。あの炭屋の三吉君なんかも立派な兵隊さんになって行ったんだろうね、マチ子さん」

マチ子「ええ…」

水泡「僕だってね、漫画家として『のらくろ』だけでいいってわけじゃないんだ。しかし、それにしてもこいつは随分親孝行だね。だってこのお父っつぁんを随分、稼がせてくれたもんな」

 

笑う田河夫婦と無念そうなマチ子。

水泡「どうしたんだ? こら。そんな顔はマチ子さんに似合わないぞ」

マチ子「だって…」下を向いて涙をこらえている。

 

水泡は細谷に話しかける。

水泡「僕はね、心配なのはもう一人の方のどら息子のことなんだ。この均五郎のことだ」

均「先生…」

水泡「いや、マチ子さんの方は心配いらんがね、均五郎はいずれ徴用に取られるだろう。今更ね、こいつが油まみれになって軍需工場でこき使われるかと思うとね、とてもやりきれないんだよ」

均「先生、僕のことでしたら」

水泡「だからって心配しないでいいってわけにはならんだろう?」

順子「そうよ。私からもお願いしますわ、細谷さん。徴用逃れって言うと聞こえは悪いけれど、この人、持病があるんですの。陽談社で整理係でも何でも使っていただけたら」

細谷「はい。先生とのこれまでのおつきあいもあります。僕もできるだけ努力することお約束します」

水泡「ありがとう」

 

やりきれなく部屋を飛び出す均。

マチ子「大宗さん!?」

均「はあ…」

マチ子「先輩!」

水泡「ほっときなさい、マチ子さん。『のらくろ』との別れをね、一番悲しがってくれているのはあの男なんだから」

マチ子「はい」

 

水泡「細谷君、打ち切りの時期なんか決まったらなるべく早く知らせてくれたまえ。僕ものらくろも子供たちに最後のご奉公だ。うんと頑張らなくちゃ」

細谷「はい!」

 

磯野家までマチ子を送ってきた細谷。

細谷「それじゃあ、4~5日したら原稿取りに来るから」

マチ子「細谷さん。私…今やってる連載をやめようかと思います」

細谷「一体、何年、僕とつきあってきたんだい? あの田河先生の画室で先生に初めて紹介された時、君はまだおさげの女学生だった。10年たてばのらくろも大人になるって先生はおっしゃったけど、マッちゃんのそういうところは昔のまんまだ。これは決して先生の受け売りじゃないが、君のなみなみならぬ才能と頑固なくらいの仕事に対する生真面目さをこれでも僕はずっと愛してきたんだからね」

マチ子「細谷さん…」

 

細谷「田河先生に殉じようっていうつもりなら僕は反対だ」

マチ子「でも…」

細谷「君が今、先生の分も頑張らないでどうするんだい。『仲よし手帖』は評判がいいんだし、君が今やめることに僕は反対だよ。いいね?」

マチ子「だけど、私…」

細谷「分かっている。君が描くものにまで規制や干渉が入るようになったら、その時、僕の方でやめさせるよ」

マチ子「はい」

 

細谷「雑誌ってのは読者のもんだからね。節操のないやつらの言いなりに漫画を描くマッちゃんの姿なんて僕だって見たくない」

マチ子「ありがとう、細谷さん」

細谷「それじゃあ、それまでは毎号僕をうならせるような漫画を描いてくれ。頼む」

マチ子「分かりました」

細谷「それじゃあ」

 

帰っていく細谷の後ろ姿はマチ子が初めて見る誠意と苦痛をしょい込んだ男の背中だったのです。

 

う~ん、今日の細谷さんは白いスーツも相まってかっこいいな。

 

家に帰ってマリ子とヨウ子に報告。

マチ子「すがすがしいくらいに覚悟を決めていらしたというか、私、もう何もそれ以上言えなかった」

マリ子「東郷さんも今日は妙にせっぱ詰まったような顔してらしたし、これからどうなっていくのかしらね」

マチ子「はあ…均五郎先輩のことも気になるし、本当に嫌ね…」

 

そこにやって来た新八郎。いつもの新八郎に戻っていた。

マチ子「マー姉ちゃん、それは心配してたんですもの」

新八郎「あっ、それは光栄だな。いや~、こういうのを天にも昇る気持ちっていうのかね」

マチ子「どういうの?」

新八郎「つまりね、心配されてるっていうのは愛されてる証拠だからね」

 

マリ子「東郷さん!」

新八郎「いや、これは僕が言ったんじゃなくて菊池先生の小説の中に…。いや、それにしても今の顔、たちまち地獄に落ちる思いだ…! ああ~!」頭を抱える。

マチ子「お忙しいことね、東郷さんも」

 

新八郎「あれ? お母さんは?」

マチ子「残念でした。情報のお礼にまた母の手料理にありつこうっていう魂胆だったんでしょうけど」

マリ子「マチ子、あなた、なんて失礼なこと言うの」

マチ子「案の定だわ」

マリ子「何が?」

 

マチ子「東郷さん、希望を持ってもよさそうよ」

新八郎「何が?」

マチ子「だって私がわざと悪口言ったのにマー姉ちゃんったらむきになって怒ったでしょう?ということは、東郷さんのこと憎からず思っているっていう証拠じゃないのかな~?」

マリ子「本当、なんてこと言うの、マチ子はもう…」

 

新八郎「でも本当によかった。みんなね、もっと深刻な顔してるんじゃないかと思って寄ってみたんだよ」

マチ子「ううん、内心はかなり深刻なのよ。でも東郷さんの顔を見たら」

新八郎「この顔が役に立つんだったらね、電話一本、いつでも飛んできますよ」

マリ子「本当に今日はどうもありがとうございました」

新八郎「いえいえ、どうしたしまして」

 

ヨウ子は新八郎に琵琶を弾いてほしいとお願いする。琵琶に聴き入る三姉妹。

 

この時、マリ子の胸に熱いものが流れ込んでおりました。

 

ヤミの料亭、ヤミのおかず、兵隊に志願した理由が貧困、徴用逃れ…戦時中を扱った朝ドラは数あれど、やはり戦争を体験した人にしか書けないものがあると思う。「澪つくし」のときの上等な国民服とかね。「純ちゃんの応援歌」も扱っている時代は戦後だけど、まだまだ戦争の影が色濃い時代の描き方が自然だと思える。だから昔のドラマに魅かれる。

 

今は今の描き方があるから、バブルの時代とか高度成長期とかせめて脚本家の人がリアルで知ってる時代を描けばいいのになーと思ってしまう。戦争中のことは語り継がないといけないというのなら昔の作品をもっと見た方がいい。私は、戦時中に作られた戦意高揚映画とか見てみたいけどなあ。

 

カンカン(「マー姉ちゃん」的には結城信彦)と加藤優。今まで見てなかったので話は分からないと思うけど、見てみよう。