TBS 1972年7月11日
あらすじ
南(沢田雅美)と道夫(小倉一郎)の結婚話は一向に進展しない。悪口ばかり言い合う夏目(倍賞千恵子)と一郎(山口崇)が、実はお互いに好意を持っているのではないかと思った南は、ふたりを鉢合わせさせることを画策する。
2024.6.6 BS松竹東急録画。
松田夏目:倍賞千恵子…昼はOL、夜は占い師の28歳独身。字幕黄色。
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松田南:沢田雅美…夏目の妹。19歳。
新田道夫:小倉一郎…新田家の五男。20歳。
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新田研二:倉石功…新田家の次男。
新田麗子:木内みどり…精四郎の妻。
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新田精四郎:山本コウタロー…新田家の四男。
新田英三:鹿野浩四郎…新田家の三男。25歳。
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佐山:中井啓輔…道夫の働くレストランのコックのチーフ。
妙子:西条まり…夏目の同僚。
課長:水橋和夫…夏目の上司。
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新田サク:小夜福子…新田家の母。
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監督:川頭義郎
タイトルバックが変わった。
新田家茶の間
トーストにバターを塗って一郎に渡す道夫。それくらいじぶんでやりなさい。
一郎「ねえ、なんで急にパン食にしたの?」
麗子「糖尿とコレステロールの予防なんです」
一郎「はあ~」
サク「お前たちもそろそろ年だろ。麗子が心配してるんだよ」
英三「バカ言ってらあ。俺まだ25だよ」
サク「だからって安心できないよ。一郎なんか一度、成人病の病院で検査してもらうといいんだよ。研二もそうだよ」
研二「ああ?」
英三「ハァ…おみおつけかけてサラサラっといきたいな」
1970年代はとにかく和風より洋風って感じだったのかな? 和食がいいよ。
精四郎が起きてきた。
麗子「歯磨いた?」
精四郎「夜中にトイレ起きたときに磨いといたんだよ、なあ?」
麗子「あっ、お義母(かあ)様。あの板、とっても具合がいいんです。なんだかこう精神まですっきりしちゃってね。枕もくだすったでしょ? あれもとってもステキ。私、なんだか西式の信者になっちゃいそう」
えー!? 木だよ。脚本家が西式信者なのかってくらい毎回出てくるね。
サク「そうかい。そりゃよかったね。だけど、さっき道夫の部屋をのぞいたら同じような物を見たけどね」
麗子「あっ、あの、それはね、道夫君がそんなに具合がいいんだったら貸してほしいって言うもんだから。ねっ、道夫君、調子いいでしょ?」
道夫「うん、調子いい。おかげさまで」
サク「そんなにいいんだったら、もう一組もらってこようか?」
麗子は慌てて交代で使うと道夫に同意を求める。
「今度の日曜は山本さんの結婚式だったね」と一郎に話しかけるサク。
一郎「今度じゃないよ。その次の週だよ」
サク「ねえ、お前もそろそろどうだい?」
何の事か分からない一郎にサクが「お嫁さんのことさ」。
ハッとする一同。朝食はトースト、サラダ、牛乳かな。
サク「不思議でしょうがないんだけどね、あんたほどの二枚目が独りでいるなんて。友達ん中じゃ、あんた一人だろ?」
一郎「高島がいるよ」
サク「あの人は病気だろ」
一郎「ああ」
サク「あの人なんかいいと思うんだけどね」
一郎「誰? 母さん、また」
サク「あの松田夏目さんって人。母さん、いいと思うよ。占いなんかやってるけど、優しい人だよ」
一郎「優しい? ハハハハッ、まさか。だけどさ、母さん、そんなこと、みんなの前で話すことないじゃないか」
サク「かまわないじゃないか。もっともあちらさんでは、あんたのことを頑固で勝手だと言ってたよ」
一郎「母さん」
サク「当たってると思うよ」
英三は夏目が道夫の相手の姉さんだからイヤなのか一郎に聞いた。そんなことは無関係だと答えた一郎に、だったらいい話だ、兄弟と姉妹(きょうだい)の結婚ってのはいくらもあるし、うまくいく例も多いと言う。
姉妹を”しまい”を読むのって、意外と最近?…と言ってもここ40年くらい(^-^;
この映画は「むねかたきょうだい」と読む。これは1950年代だからと思っていたら
1981年のドラマも「ちょっといいきょうだい」なんだよね。
英三は、大兄さんが弟が大勢いすぎて婚期を逸していて、ちょっと気の毒だと言う。研二も結婚に賛成。しかし、英三には、何か思惑がありそうで純粋に取れない。働き者(もん)の嫁さんが来たら、仕事が楽になるぐらい考えてんじゃないかと推察。
研二「いや、とにかく、この際、俺たちの犠牲になるなんて考えはよしてさ…」
一郎「バカ! 黙れ! 誰がお前らの犠牲になんかなるもんか。さあ、仕事だ!」立ち上がる。
一郎が店のシャッターを開けていると着信音がして、精四郎が出た。英三も店に出てくる。
一郎「おい、英三。大島さんの納品、確か今日だったな?」
英三「うん、任しといてください」
一郎は洗面所で髪をセットしている道夫に声をかけた。「ちょっといいか?」
道夫「うん、10分ぐらいなら」
一郎はパチンコの景品を母さんに返すよう頼んだのか聞いた。道夫は研二に頼んだと答えた。一郎は更に南とケンカしたのか聞いた。仲直りはまだだと言う道夫。
一郎「フン…いや、何度もくどいようだが、俺はお前たちの結婚には断固反対なんだ。お前は女をよく知らんし、第一、他人を扶養できるわけがない」
道夫「そんなこと分からないだろ、誰にも」
一郎「一人口は食えんが二人口は…なんてえのは苦労人の言うことだ。お前には当てはまらん。いや、それにしてもあの姉さんだよ。一体全体どうして、ああ、かみつくような、ものの言い方をするのかなあ。こっちが一言、ものを言うと二言も三言も言い返してくるんだ。あんな女はいないぞ」
言ってることは最低なんだが、やっぱり顔がカッコいい。だから顔アップが多いのか!?
夏目の働くオフィス
夏目「お願いします」
課長「あっ、松田君。この間の会議での君の発言だがね、ほら、あの部長に対して君が食ってかかった…」
夏目「あの、それは…あたくし、別に部長に文句を言ったわけではありません。建設的な意見をとおっしゃられたんで…」
課長「いや、怒ってるわけじゃない。部長が君のことを褒めてたんだよ。なかなか活発ではっきりしてていいって。貴重な存在だって言ってた」
夏目「はあ」
課長「いや、わしも鼻が高いよ。エヘヘヘ…」←特徴的な笑い声
夏目「どうもありがとうございます」
課長「ああ、ハハハハ…」
席に戻った夏目。
妙子「ねえねえ、なんか課長にお小言?」
夏目「ううん」
妙子「あの豚まんのヤツ、いい気になって。『エヘヘヘ…』」とモノマネ。
道夫の働くレストラン
南がおしぼりを運んできた。道夫がいつも通り使用済みおしぼりを渡す。
道夫は佐山に「あの…チーフは女に詳しいですか?」と聞き、すいませんと店を飛び出した。
佐山「なんだあいつ。おい、お前、女に詳しいか?」
田中「へへへー、ちっとは」
佐山「バカ。にやけるな」
車に乗り込もうとした南に「おう」と声をかけたものの、何も言わない道夫。南はそばに行ってせきばらいをする。
道夫「ごめん、謝るよ。まだ怒ってんのかい?」
南「バカね」
道夫「よかった。もうダメかと思ったよ」
南「ううん」
道夫「ヘヘッ、ねえ、今度の日曜、ヨットに行かないか?」
南「ヨット? すごい。道夫君、ヨットなんかできんの?」
道夫「違うよ。そうじゃなくて、麗子さんが…」
クラクションを鳴らされ、「行くわ、絶対」と道夫に行って車に乗り込む南。店から道夫の同僚も出てきた。南が車に乗り、運転手が車を出した。
道夫はスキップしながら佐山と田中の間をすり抜ける。
田中役の人、セリフもあって顔も映ってるのにノンクレジット。セリフはないけど、顔がばっちり映ったおしぼり屋の運転手も同様。
夏目のアパート
編み物をしている南。
夏目「ただいま。ハァ~、くたびれた」
南「どうしたの? 随分、早かったじゃない」
夏目「はい、水ようかん。どういうわけか今日はお客が一人もつかないのよ。バカバカしくなって早じまいしちゃった」
南「へえ~、じゃ、今晩の伊勢佐木町には科学的人種があふれてたってわけだ」
夏目「違うわ。幸せすぎる人か、お金のない人たちばっかりだったのよ」
南「へえ、いろんな言い方があるもんですね」しゃべってる間に包みを開けて水ようかんを食べ始めている。
夏目「バカ。冷やさなきゃまずいわよ」
南「オツな味ですよ。これは」
夏目「食いしん坊ね、もう」残りを冷蔵庫へ。
手が離せないからジュースを出して、と夏目に頼む南。ジュースを持ってきた夏目は「暑苦しいわねえ。そんなカーディガンなんてよしなさいよ」と言う。南は彦根から来た税務署の人とはどうしたのか聞いた。
夏目「どうしたって、あれっきりよ」
南「だって、あの人、お婿さん候補でしょ? お姉さんの。お母さんがわざわざさ、彦根の占いの先生、派遣してさ」
夏目「南には関係のないことよ」
南「そうかなあ。重大関心事なんだけどな。お姉さんにね、早く結婚してもらわないとね、いろいろ困るのよ」
夏目はストレッチ中。「南が困ることないでしょ」
南「それが困るんだな。お姉さんね、独りでいると、どうもヒステ…やめとこう」
夏目「そうね。やめといたほうが賢明なようね」
南「ねえ、お姉さん、一体どういうつもり? ゆっくりゆっくりなんて言ってるけどさ、あんまりゆっくりしてるとね、シワシワのおばあちゃんになっちゃうわよ」
夏目「いいでしょ、人のことは。大きなお世話です」
南「ねえ、お姉さんってさ、こう、男性を寄せつけない香水でも使ってんのかしら?」
夏目「何言ってんの?」
南「いや、だって、一人だっていないじゃないのよ。男性が寄ってくる」
夏目「ご心配なく。ちゃんといますから」
南「あっ、彼か」
夏目「彼?」
南「道夫君のお兄さん」
夏目「道夫君? んっ…じょ…冗談…冗談じゃないわよ。あの人ったらね、失礼しちゃうの。母が何を言ったか知らないけどね、君と結婚するなんてとんでもない。誤解しないでくれだって。すごいうぬぼれ屋ね。あんな頑固で自分勝手で強情な人、見たことないわ。だから、私もね、私もあなたなんかと、とんでもない。真っ平ですって言っちゃった。自分はもう誰にでも好かれると思ってんのかしら、もう」瓶ジュースを飲む。
南「随分、よく並べたね、悪口を」
夏目「そう? そうかしら? でも、当たり前よ。あんなにもう頑固で…」
南「でも、同盟してんでしょ? お姉さんたち。私と道夫君、結婚させないために」
夏目「んっ…そんな、同盟なんてヤな言葉。そりゃね、あの、その点だけはあの人とも同意見だけど、もっと細かい点になったら違うのよ。私が言ってんのはね…」
南「お姉さんさ、悪口ばっかり言うけど、でも、ホントはあのお兄さんのこと好きなんでしょ?」
夏目「なんですって?」
南「図星でしょ? 違う?」
夏目「バカバカ。何言ってんのよ、南のバカ。とんでもないわ。南こそ、何よ? やってける当てもないくせに、あの、結婚するとかなんとか。そんな姉さん、からかう暇あったら、もっと働きなさい」
南「お姉さんのお世話にはなりません。そんならいいでしょ?」
夏目「よくないわよ。どうせできっこないもの」
「できます」「できません」と言い合い、そっぽを向く2人。
雨の日に電車に乗っている南と道夫。
南「オーストラリア行きのヨット。そのコック、格好いいじゃない」
道夫「でも、船長は女なんだってさ」
南「アハハッ、格好いい」
道夫「どっちが格好いいんだよ?」
南「そりゃあ…道夫君」
道夫「フン。でも、麗子さんも無責任だよな。雨だから来ないなんて」
ヨットハーバー
レストランはガラーンとして道夫と南だけ。
道夫「天気がよければ泳いでる人も多いのにね」
南「目指すヨットは伊豆で座礁。何しに来たんだか分かんないわ。おまけに雨で」
道夫「でもさ、なかなかイカすよ、雨の海も。しゃれてるよな、ロマンチックで」
南「『パリは雨にぬれて』」
1971年公開のフランス映画をもじった?
道夫「『シェルブールの雨傘』」
1963年公開のフランス/西ドイツ映画
これは見たことある。若い男女の出会いと別れ。
南「『雨のエトランゼ』」
1971年公開のフランス映画
道夫「『雨の訪問者』」
1970年公開のフランス映画
音楽が出てきたわけじゃないけど調べたらいい音楽ばっかり。
南「お兄さん、どう?」
道夫「うん」
南「全然ダメ?」
道夫「兄貴に人一人どうやって養っていくつもりかって言われて頭にきちゃった」
南「養ってなんてもらわないわ。私たちね、成人式も済ませた立派な大人なのよ。仕事もしている独立した人間よ。あなたのお兄さんってつまんないこと言うのね」
道夫「でも、いろいろ考えちゃうな」
南は夏目がすごく一郎の悪口を言うってことは関心があるからだと言い、一郎はどうかと聞く。
道夫「さあ…思い出すと猛烈に腹が立つらしいよ」
南は、2人が仲良くなってくれたら、あんまり私たちのことをうるさく言わないんじゃないかと考えていた。
道夫「そんなことより…それよりも僕らの決心のほうが先だよ」
南「それは大丈夫よ。道夫君、自信ないの?」
道夫「違うよ。ただ…決意なんて形がないもんだろ? 時間がたつと…ねっ?」さらに「君の姉さんとうちの兄貴の前で宣言するんだよ。2人して」と続ける。
結婚の決意だと道夫に言われた南はグッときて目を潤ませる。
夏目のアパート
スタンダールの「恋愛論」を読んでいた夏目は南が帰ってきたので本を閉じた。
夕飯は食べてきたと言う南だったが、テーブルの上のハンバーグを食べようかしら?というが、あした食べれるから冷蔵庫に入れといてと言う夏目。お土産はサザエ。
夏目「この雨ん中、海行ったの?」
南「そう、だ~れもいない海」
この歌が思い浮かんだ。1971年6月1日発売だから知っててのセリフ?
南は「恋愛論」を見つけて、夏目をクラシックだとからかう。最近、恋の占いが一番多い、仕事だと言い訳する夏目。
お土産をおめでたい昆布(こぶ)か鮑にしようと思っていた南。昆布は、よろこぶ。鮑は磯の鮑の片思いで2つとも縁起物で、結納のときの目録につける。
「おやじ太鼓」でイネさんが「座頭の妻じゃなくって磯の鮑(あわび)の泣く夜ですよ」って言ってたのを調べてたら「磯の鮑の片思い」と言う言葉が出てきた。南もあまりよくないと言ってたけど、片思いの話なんだよね。
なぜ、縁起物をお土産にしようと思ったのか? それはお姉さんにいい縁談がありますようと思ったから。じゃれ合う姉妹。
本日休業の札が下がる新田厨房工事店
英三はプールに行った。スーツに着替えた道夫を「イカすじゃないか」と褒めるサク。東京へ出かけると言う道夫に、一郎が山本さんの結婚式へ出ているから、コウヨウ会館へ製図の入った封筒を届けてほしいと頼んだ。世田谷の下田さんに届けるのを一郎が忘れていた。
駅構内のお店が並んだ通り?を歩いている南と道夫。どちらも正装って感じ。道夫は回り道になるけど、封筒を一郎に届けると南に言う。南もまた夏目と4時に待ち合わせていた。一緒に帰ろうと思っていた道夫はガッカリ。
お中元の福引でロードショーのアベック券があり、夏目は担ぎ屋なので、券を無駄にするのをとてもイヤがる。
南「お姉さんとアベックじゃ感じ出ないけど、まあたまにはつきあってやんないとね」
道夫「じゃ、僕は兄貴とアベックで帰んのかい?」
南「年寄りは、いたわんなくっちゃ」
納得するな、道夫よ。
公園で待っている道夫と南。一郎がセカセカ歩いてきた。ここは木下恵介アワーではおなじみ?日比谷公園らしい。
一郎「よう。待ったか、すまん」←弟には謝れるのにね。
しかし、下田さんからあしたにしてくれと、今連絡があったと言う。銀座でも行くかと誘う一郎。道夫はここで南を紹介。南は自己紹介し、一郎も道夫の兄ですと頭を下げた。道夫は汗をぬぐってしゃべり出そうとしたが、一郎は歩いてくる夏目を見つけた。目が合って会釈して近づいてきた夏目。「先日はどうも失礼いたしました」と頭を下げた。
一郎「いや、こちらこそ」
南にどういうことか聞く夏目。いつの間にか一郎、夏目が並び、向かい合うように道夫、南も並ぶ。南は、道夫は一郎と用があり、南自身も夏目と約束していたからこうなったと説明。
道夫「さっき、南君とも話し合ったんだけど…」
南「え~、お兄様とお姉さんがおそろいのところで私たちやっぱり結婚の気持ちに変わりありませんってこと言いたかったの」
顔を見合わせる夏目と一郎。
道夫は封筒を一郎に押しつけ、南は映画のチケットを夏目に渡して、腕を組んで去っていった。残された2人は公園のスツールに1つ離れて座る。話しかけようとした夏目は一郎の顔に見惚れる。一郎もまた夏目の横顔を見つめる。道夫のフォローをする一郎だったが、つんけんした態度の夏目を責める。「あなたね、どうしていつも、そう切り口上で女らしくないんですか?」
夏目は一郎に映画の切符を押しつけて立ち去って行った。(つづく)
山口崇さんくらいの顔面じゃないと通用しない話だぞ、もう! なんで「太陽の涙」の加藤剛さんみたいなイケメンキャラにしてくんないんだよ。ケンカップルにしないと話が終わっちゃうから? この顔ですごくカッコいい役を見たかったよ。
「おやじ太鼓」45話。やっぱり第二部は少し悲しい感じがする。
今日の回はこれから見ます。