1983年 日本
あらすじ
14歳の少年が、兄を訪ねて天城峠を越える旅に出た。「清張版・伊豆の踊子」ともいうべき甘酸っぱい舞台の上で、思春期の少年の揺れる心と、招いた不条理な殺人事件を描く。 静岡で印刷屋を営む小野寺(平幹二朗)は、ある日、田島(渡瀬恒彦)と名のる老人の訪問を受ける。その男性は、県警の嘱託で「天城山殺人事件」という刑事調書の印刷を依頼に来たのであった。その原稿を見て、小野寺は激しい衝撃を受けた。
2024.10.3 BS松竹東急録画。まだまだ清張作品録画してます。NHK版視聴済み。
演出として長時間無音になるシーンがあるという注釈つき。
松竹・霧プロ提携作品
サングラス・マスクをし、足を引きずった男が横断歩道を渡りきり、汗を拭く。スピーカーから流れる音楽と踊る竹の子族。ホント、1980年代になると一気にガチャガチャうるさくなる感じがするんだよな。
田島松之丞:渡瀬恒彦…字幕黄色
*
大塚ハナ:田中裕子…字幕水色
*
小野寺建造:平幹二朗…字幕緑
足を引きずった白髪混じりの男・田島老人がうたた寝している女性事務員のいる印刷会社へ。田島老人は事務員に名刺を差し出した。
静岡県警本部
嘱託 田島松之丞
〒420
静岡市追手町九番六号
電話〇五四二(54)四三五一番
内線三五一一番
*
製作:野村芳太郎
宮島秀司
*
脚本:三村晴彦
*
音楽:菅野光亮
*
監督:三村晴彦
うわ! 加藤剛さんがお医者さん! 診察を受ける建造。印刷所に戻ると事務員から田島という男が来たことと安倍川餅の箱に入った原稿を見せられた。書き出しを読んだ建造の顔色が変わる。血みどろの男の回想シーン。これはグロい描写があるかも!?
印刷所のシーンから誰も歩いていない山道のシーン。そこから黄色い着物を来た少女と中学生くらいの男の子が出てきた。
小野寺建造は当時14歳の鍛冶屋のせがれ。尋常高等小学校高等科1年でゴム裏草履で下田から峠に向かっていた。家族には黙って家を出た。
マムシに棒を向ける建造少年に構っちゃいけないよと注意する行商の菓子屋の男は坂上二郎さん。途中で道を別れ、今度は行商の呉服屋の男と出会う。柄本明さん。呉服屋の男には家出と見抜かれ、家に帰るように言われた。
途中、目つきの怖いの男とすれ違う。呉服屋の男は流れ者の土工だといい、注意するように言う。修善寺まで行くと言っていた呉服屋の男とも途中で別れた。
夕方、鳥の鳴き声にビビる建造。
昼、港町に到着した小野寺。誰もいない大きな家に入る。2階では建造の叔父と建造の母のラブシーン。これは家出前の出来事?
岸壁にいる建造に抱きついて泣く母。うーん。
印刷所で原稿が印刷されていた。
天城山の土工殺し事件
事件発生当時の状況
昭和15年6月29日午前10時、上狩野村湯ヶ島巡査駐在所より
ドラマ版、原作は舞台が大正時代。
下田署の刑事・田島が赤池巡査から殺しという電話を受けた。自転車で現場に向かった田島刑事たち。
現場検証
山中に法被、カバン、番傘などが見つかった。発見した運転手の黒田は腹を下して山の中に入り、遺留品を見つけた。死体はない。
製氷所の氷倉に足跡発見。足跡は九文半=23cmなので女のものだろうと推察した。
雨の中、死体を探す捜査員たち。
田島刑事が耳の遠い老婆に話を聞くが話が噛み合わない。
雑貨屋の女将から大男の証言を聞く。大男は終始しゃべらなかったこと、その前に草履を帯の後ろに突っ込んだ裸足の女が通りかかったことを話した。
番傘に書かれた土谷良作の家に行った女将と田島刑事たち。土谷は激しい夫婦喧嘩をしていた。幼い女の子が5人いる。
良作は酔っ払って5人の男たちと並んで小便をしたが、その先に大男が寝ていた。お金を出し合って宿屋へ連れて行ったが、宿屋ではいくら言っても宿帳を書いてくれなかった。よく眠っていて、起きてきたが、かわいそうに思った宿屋の主人が1円札に「この人ヨロシク」と書いて渡した。
田島刑事は建造少年を訪ねた。5日前、6月28日、天城を登ったねと確認。一緒にいた女性は誰だか知らないと言う建造。女性の名前はハナ。田中裕子さん、色っぽいねえ〜。土工風の男とは女と別れる前に会ったと建造が言う。
現在
建造が県警広報課係長を訪ねた。中野誠也さん! 井波さーん!
田島刑事は歴戦の強者だと聞かされ、建造がエレベーターに乗ると田島刑事と乗り合わせた。
原稿
死体発見・検視等の状況
7月10日 死体発見。腕の刺青から土工風の男と断定でき、解剖の結果、他殺と断定、犯人は鍛冶屋のせがれが見た女を最も有力な容疑者と見、捜査は、その女に絞られた。
夜、建造は母の遺影をチラ見しつつ、校正をしていた。
建造はハナが刑事たちと歩いていく姿を見ていた。
田島刑事から取調べを受ける大塚ハナ。大正9年6月2日生まれの23歳。現住所は知らない。土工を殺していないと言う。ハナの前に建造が連れてこられた。「あにさん」と顔を輝かせたハナだが、建造がハナと土工風の男が一緒だったと証言すると、すぐ出て行った。もっとあにさんに話を聞いてよ!とハナが叫ぶ。
氷倉のおがくずの上の九文半の足跡をハナと決めてかかる田島刑事と山田警部補。ハナは足抜けして虎の子の1円札を持っていたと話すが、田島刑事が「この人ヨロシク」と書かれた1円札を見せた。古池旅館に泊まったハナを悪い病気を持っているのではないかと旅館の者が受け取った1円札を別にして消毒していた。
はばかりに行きたいと言うハナを殴り倒した田島刑事。ハナは「人でなし」と言い、失禁した。
夜、建造の母は腹を壊した叔父の下宿に行くと出て行った。
新聞記事
酌婦大塚ハナ犯行を自供
天城山土工殺し事件解決
建造は雨の中を走った。
大塚ハナは匕首で斬りかかり、男を谷底に落とした。衣類を脱がし、1円札を奪ったとと供述した。
移送する前、ハナの前に建造がいた。笑顔で首を横に振ったハナは報道陣、野次馬に囲まれる中、車に乗せられた。
印刷所
足を引きずった田島老人が階段を上り、建造に会い、事件の話をする。凶器の発見ができぬまま、容疑者を押送したことが失敗だと語る。大塚ハナは裁判で証拠不十分で無罪。最大の失敗は最初からハナを犯人と決めつけていたこと。ハナの証言で合っていたのは男に1円札をもらって売春行為をしたことだけ。九文半は男にもある。14、5歳の少年ならちょうどそのくらいだろうと田島は言う。
ハナと同行していた少年は14歳。湯ヶ島まで行って引き返したところでハナと出会っていた。少年が下田の家に帰ったのは29日の午後。事件当日28日の晩、少年はどこにいたのか。刑事たちは14歳の少年だから事件とは無関係と思っていた。
田島老人は氷倉にいたのは少年ではないかと言う。氷倉にハシゴを敷いて寝ると快適だという話を後日聞いた。あの時、気付いていれば…後悔先に立たず。もう40年以上経った昔の話でとっくに時効。
建造は時効とは何かと田島に尋ねた。罪そのものに時効なんてないと田島は言う。大塚ハナは無罪になったが、肺炎で死亡し、シャバに出られなかった、死に顔は菩薩のように美しかったとさらに続けた。
帰り際、田島は少年の動機が知りたいと建造に話して帰って行った。田島が帰った後、吐きそうになる建造。
山道で裸足で歩いていたハナを見かけた建造は後をついて歩いた。「あにさん、ここどこ? あんたどこへ行くの?」と話しかけられ、下田に行くと言うと連れてってと一緒に歩き出し、お互い自己紹介をした。建造はマメができて右脚を引きずり、ハナに脚を見せるように言われた。建造は野宿用に持っていたマッチ箱をハナにあげた。ハナは手拭いを裂いて、建造の足に巻いた。
今夜、野宿する?と誘うハナは建造にも裸足で歩くように言う。
一緒に「大利根月夜」を歌いながら歩く。
前から土工風の男が歩いてきた。ハナは、あの人に話があるから先に行ってちょうだいと建造に言い、建造は走り去ったが、トンネルで振り返り、2人を見ていた。
山中で2人の行為を見ていた建造。長いよ、このシーン! ハナが1円札を受け取って去っていき、建造は握りしめていた匕首を男に向けた。血まみれ、うわー。男をしつこく追いかけ刺し続ける建造は男を裸にし、川へ。川の深い部分に男は沈んだ。
この土工風の大男は目撃者からしゃべらない不気味な男と表現されていたけど、しゃべれないし、字も書けないのだと思う。これはドラマ版とはちょっと違う感じかな。大男でもなかったし。
現在
手術中、建造は手に握っていた匕首を落とした。廊下のベンチに座って待っていた田島老人に看護婦が渡した。なんで田島老人が手術に立ち会ってんだ。
ハナが「大利根月夜」を歌う。
田島松之丞:渡瀬恒彦
*
大塚ハナ:田中裕子
*
建造の母:吉行和子
大男の土工:金子研三
小野寺建造:伊藤洋一 (中学時代)
*
良作の妻:樹木希林
建造の叔父:小倉一郎
土谷良作:石橋蓮司
旅の呉服屋:柄本明
*
県警広報係長:中野誠也
山田警部補:山谷初男
印刷所事務員:榎本ちえ子
黒田運転手:車だん吉
江藤署長:佐藤允
*
芝三郎
船場牡丹
明石多佳子
久保澄恵
櫛田純男
増田再起
*
小森英明
荘司肇
林悦子
城戸卓
中真千子
河合絃司
*
雑貨屋のおばさん:石井富子
団長:阿藤海
吉岡美智子
吉田麻子
渡瀬ゆき
宿屋の主人: 汐路章
*
旅の菓子屋:坂上二郎
*
国立病院医師:加藤剛 (特別出演)
*
小野寺建造:平幹二朗
*
音楽:菅野光亮
主題歌:「季節のない森」
歌:後藤啓子
編曲:岩間南平
ディレクター:田村充義(ビクターレコード)
*
撮影協力:伊豆天城湯ヶ島町
伊豆天城観光協会
伊豆湯ヶ島
温泉旅館組合
今の天城峠をけたたましいバイクが走り去っていく。
監督:三村晴彦
画面いっぱいに”完”
渡瀬恒彦さんと田中裕子さんといえば「おしん」。この映画公開は1983年2月、「おしん」は1983年4月スタート。松本清張作品はエロを際立たせるタイプとそうじゃないタイプがいて、NHK版のほうがもっとそれぞれの人の背景を描いていたように思う。とりあえずエロいシーン入れとけみたいなの嫌い。