TBS 1974年7月10日
あらすじ
一郎(春田和秀)と晃(吉田友紀)が仲良くなるにつれ、二組の家族の行き来が盛んになる。一郎の面倒を見る和子(林美智子)は小さな安らぎを覚えるのだった。しかし、その様子に大吉(松山省二)は複雑な思いを抱く。
2024.5.14 BS松竹東急録画。
福山大吉:松山省二…太陽カッター社長。字幕黄色。
福山紀子:音無美紀子…大吉の妻。字幕緑。
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和泉和子:林美智子…元の妻。
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原周造:森幹太…元の教え子・原京子の母の再婚相手。
ホステス:たくみさよ
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友二:鍋谷孝喜…太陽カッターの従業員。
洋介:田尻丈人…太陽カッターの従業員。
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福山一郎:春田和秀…大吉、紀子の息子。小学1年生。
和泉晃:吉田友紀…元、和子の息子。小学1年生。
ナレーター:矢島正明
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福山ゆき:小夜福子…大吉の母。
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和泉元(げん):杉浦直樹…中学校教師。
子供たちの交流が深まるにつれて親たちも忙しくなりました。送ったり、迎えたり、遊んだり、その度に自分たちの仕事を犠牲にするのでした。ただ、親とすれば子供たちが仲良くなっていく姿に小さな安らぎを見いだしていたのです。
三浦半島へ行ったとき、和泉親子が福山家に遊びに来たとき、夕方、福山夫婦が和子と晃を送ったときなどの回想シーンが流れる。
和泉家を訪れた紀子と一郎。晃は元気よく迎える。
一郎「工事できた?」
晃「うん!」
和子も明るい表情で迎える。
晃「ねえ、早く!」
一郎「うん」
和子「こんにちは」
一郎「こんにちは!」帽子をとって家へ上がる。
紀子も和子もニコニコ。
一郎「プラットホームこっちだよ」
晃「こっちのほうがいいよ」
紀子「一郎ちゃん、そんな、おうちの中、走り回っちゃダメでしょ」
和子は紀子に家に上がるように言うが、紀子は買い物に行きたいと言う。冷たい物でも飲んだらと勧める和子に一度落ち着いたらおっくうになるからと手土産の水羊羹を渡した。
和子「奥さん、お土産はお互いによしましょうよ、約束でしょ?」
紀子「いや、でもそれほどの物(もん)じゃないんですよ」
和子「ルール違反ですよ」
紀子「今日だけです。フフッ」
まあ、行き来するたびにお土産はきついね。
紀子「お母さん、ちょっと買い物行ってきますからね。おとなしく遊んでんのよ、いいわね?」
一郎「うん」
和子「大丈夫ですよ。一郎ちゃん、うちにいるときはとてもおとなしいんですよ、ねっ」
一郎「うん」
何となく真顔になっちゃう紀子。すぐニコニコ顔に戻す。
一郎「お母さん、早く行きなよ」
紀子「まあ…早く行きなよ、ですって」
和子「もう遊ぶのに夢中だわ」
それじゃお願いしますと出て行った紀子。和子のスッと真顔になる瞬間がちょっと怖い。
一郎「あっ、鉄橋だ、鉄橋だ!」
晃「ホントだ!」
プラレールに夢中の子供たち。和子は「一郎ちゃん、汗かいたでしょ」と冷たいタオルで顔を拭く。一郎も素直に目をぶつって拭かせる。今度は大吉が紙袋を持参してやって来た。
和子「もうすぐおいしいゼリーが出来ますからね」
同じタオルで晃の顔も拭く和子。晃にはちょっと乱暴。
大吉「こんにちは」
和子「あら」と嬉しそうな顔。
大吉「おい、仲良く遊んでるか?」
ふたりとも「うん!」と元気よく言う。
大吉は、ちょっとそこまで来たもんだからと作業着姿のまま。元はこの何日か家出した生徒のことで夜中まで歩き回っていると和子が言い、大吉を家へ上げる。大吉のお土産はアイスクリーム。何となく和子の顔が曇ってないか? まあ、ゼリーが出来るって言ってたしなあ(-_-;) せっかく作ってたのなら、かわいそうだよね。
和子はアイスクリームの入った紙袋を持って台所へ。一郎と晃は和子の両側に立ち、すぐガラスボウルに盛りつけられたアイスを食べ始める。大吉は晃が胸のあたりにこぼしたアイスを拭き、口にもいっぱいついてるなと口も拭く。そのハンカチで一郎の口も拭く。「2人ともこぼさないように食べなさいよ」
大吉「おいしいか?」
晃・一郎「うん!」
和子は大吉のアイスをお盆に載せて、台所からその様子を見ている。
周造の工場…電気関係かな。時々、青く光ってる。
アイスコーヒーを飲む周造。
元「今日も学校で生徒からいろいろ聞いてみたんですが、横浜でお嬢さんを見かけたっていう友達が多いんですよ。ボーイフレンドも何人かいたらしいですね」
周造「ええ、確かに男の友達から時々、電話がかかってました。それは私も知ってます」
元「名前、分かりませんか?」と聞くが、周造は1年前、娘の希望で部屋に電話を引いたため、一人も知らないと答えた。
親子電話じゃなく別番号ってことだよね? 「おやじ太鼓」も本宅と別宅に1つずつだから、すごく贅沢に感じる。今やだれでもそれぞれ電話を持ってるけどさ。
元「随分、お嬢さんを甘やかしたんですね」
周造「いや、私はね、どちらかといえば荒っぽい人間ですから、本来なら、そんな甘やかし方をしないんですが、母親とすればそうもいかないんですよね。自分が再婚したことを子供に後ろめたく思ってるんです。いまだにそうです。先生にはまた怒られるかもしれませんが、そういう親子の間に入るのは非常に難しいんですよ。何を言っても余計なことに聞こえるでしょう?」
小さく何度かうなずく元。
周造「そりゃまあ、時にはね、カッとして怒ったこともありましたよ。でも、そのあと変に気まずくなるし、必ず悪い結果が出るんですよ。口を利かなくなったり、夜遅く帰ってきたりで。それでまあ、家内と相談して、私が表面に出ないことにしたんですよ。血がつながっていないということは、やっぱり何かに欠けるんですね」
元の表情も曇る。
周造「正直言ってそうじゃないでしょうか?」
元「そう思い込んだら負けですよ」
アイスコーヒーを一気に飲み干し、氷を嚙み砕く周造の顔にカメラが寄る。
太陽カッター
電話を受けるゆき。「えっ? えっ、5センチの? 200メートルですか。あっ、ちょっと待ってください。今、書く物出しますからね。えっと…はい、どうぞ。えっ? 違いますよ。何センチの何メートルですか? えっ? そう、さっき言ったほう。10センチ? 今、5センチって言いましたよ。えっ? もしもし、も…」
まったく会話がかみ合わないところに大吉が帰ってきた。
大吉「どっから?」
ゆき「トンチンカンからだよ」
大吉「えっ?」
ゆき「まったく、わけ分かりゃしない」
大吉が電話を代わると、スムーズに話が運び、受話器を置いた。
ゆき「今の電話、誰だったの?」
茶の間
大吉「なんだ、相手も分かんないで話してたのか。大京土木の中島さんだよ」
ゆき「ハハハッ、どうりでわけが分からないと思ったよ」
大吉「両方で同じこと言ってりゃ世話ねえや」
ゆき「あの人、そんなこと言ってんの?」
大吉は、今、向こうのうちへ寄ってきたと報告。ゆきは紀子が行っているのにどうして行ったのか聞いた。
大吉「まあ、とにかくさ、ヤツらとっても仲がいいんだよ。ほら、俺が買ってやった汽車でね、結構楽しく遊んでるんだ。ハハハハ…」
ゆきは少しあきれたような表情をし、「よかったね」と台所へ行く。
追いかけて台所まで行く大吉。「どうしたのよ?」
ゆき「えっ? 別になんでもないよ」
大吉「おかしいじゃねえか、なんだか」
ゆき「だってさ、そんなに仲良くなっちゃって、あとのことが気になるからさ」
大吉「いやだって、こうする以外に方法がないじゃないか」
ゆき「そんなことは分かってるよ。でもね、大ちゃん、最終的にはどうするつもりなんだい? 今からそんときのことをよく考えておかないといけないよ。どんなに仲良くなったって、そのときになって気持ちが変わるってことだってあるんだからね。喜んでばかりもいられないよ」
大吉「なんだよ、人がせっかくいい気持ちになってんのに水ぶっかけないでくれよ」
茶の間に戻って座る大吉。従業員の一人(ケン坊)が戻ってくるが、様子がおかしい。
大吉「どうしたんだ?」
友二「帰ります」
大吉「もう終わったのか? おい、友二。どうしたんだよ? おい」
ロッカーの扉の陰に隠れていた友二の顔を見ると、アザだらけ。もう一人の従業員も帰ってきた。こちらの顔にもアザ。
大吉「なんだ、お前たちケンカしたのか? どうしたんだ? 説明しろ」
洋介「個人的な理由です」
大吉「格好つけんじゃないよ。はっきり言ってみろ」
洋介「こいつが悪いんですよ」
友二「お前じゃないか、先に殴ったのは」
洋介「当たり前じゃないか、人前でバカにしやがって」
友二「いつバカにしたよ? 仕事のやり方が違うって言っただけだろ」
洋介「お前に指図される覚えはないよ」
友二「あんな所にトラックを止めるヤツがあるか」
洋介「余計なお世話だ。バカ野郎」
友二「何がバカだ!」
洋介「なんだと!?」
大吉「まあまあ、まあ、待てよ、2人とも。しょうがねえなあ。で、現場どうしたんだ?」
洋介「途中です」
大吉「機械、放りっぱなしか?」
洋介「だから友二を連れに来たんです」
大吉「俺がちょっといないとすぐこういうことになんのか? とにかく現場戻ろう。なっ? 話はそれからだ。ほら、友二も」無理やり握手させようとするが、反発する2人。
小料理屋かな。座敷席に座る大吉、友二、洋介。
大吉「さあ、仲直りの乾杯だ。ほら、グッとやろう、グッと。一度や二度ケンカしたからって、そんな情けない顔するな。うん? ほら、乾杯、乾杯」
仕方なくビールで乾杯する友二と洋介。
大吉はビールを一気飲み。「俺もここしばらく現場にいたり、いなかったりしてるけど別に遊んでるわけじゃないんだよ。いろいろ用事があってな。まあ、去年と違ってセールスみたいなこともしてるんだよ。まあ、全体に今年は仕事が少ないんだ。だから、俺がいない間はさ、お前たちがちゃんと取り仕切ってくんなくちゃ困るじゃないか。一番古いんだぞ」
洋介「大体、友二がおかしいんですよ」
大吉「何が?」
洋介「社長といつも組んで仕事してるでしょ? 社長の次は自分だと思ってんですよ」
友二「いいかげんなこと言うなよ」
洋介「そうじゃないか。お前、現場へ来たら、いつも相手に指図ばかりしてるじゃないか。みんなイヤがってんだぞ」
友二「できないヤツには教えるしかないだろう?」
洋介「俺ができないっつうのか!」
大吉「まあまあ、待てよ。もういいじゃねえか、そんな話は。なんでお前たち2人、そんな仲が悪くなっちゃったんだ。うちの会社はな、5人しかないんだぞ。家族みたいなもんじゃないか。つまんないことでもめないでさ、もう少し仲良くやろうぜ」
泣きだす友二。
大吉「なんだ、お前は。泣くな!」
友二「くう~」泣いてる。
大吉「洋介、お前もお前だぞ。お前のほうが大きいんだからケンカすりゃ勝つに決まってるだろ。そういうときは謝るんだよ。つらいことも悲しいこともな、グッと耐えるんだ。それが男だぞ。なあ、友二。もう今日は泣くな。なっ? 飲もうよ、飲もう。おい、洋介、ついでやれよ」
洋介「おい!」ビール瓶を持つ。
大吉「もっと優しく言ったらどうだ」
洋介「俺ばかりが悪いんじゃないですよ」
大吉「分かったよ」
大吉はカウンター席に掛ける元を見かけた。大吉と目が合う元。
初回からずっと”従業員”とだけ出ていたけど、今回ははっきり名前が出た洋介、友二。5人従業員がいるけど、セリフがあるのは「太陽の涙」では信濃路のケン坊だった鍋谷孝喜さんと、初回で「五木の子守歌」を歌っていた田尻丈人さんだけ。
初回では壁に貼られたネームプレートが映し出されていた。
安田友二
上野進
立石圭介
岡田俊次
田村始
ん? 洋介なんていないぞ。
初回の田尻武人さんは、ゆきから「としちゃんもなかなか歌えるんだね」と褒められていた。
4話では給料をもらうときに「立石君」と呼ばれて返事したのは田尻丈人さん。立石圭介だと洋介とちょっと名前は似てる。
9話ではケガした大吉を連れ帰ってきたのが田尻丈人さん。字幕は”従業員”だったけど、帰ったあとに、紀子が「友二(ゆうじ)さんが近頃おかしいって言ってたじゃない」と言っていた。
11話でゆきが「あの子、よくやってくれるね。隆と大違いだ。同い年だというのに」と言っていたのが鍋谷孝喜さんのこと。今回、大吉からは古株の2人みたいなことを言われていたけどね。5人分のセリフを2人で賄ってるから矛盾が出てくる。でも、今回で固定されるかな?
別の店のカウンターで乾杯している大吉と元。「これでかれこれ1週間捜してますけどね、少し疲れました」
大吉「うちのほうでも、ちょっと目を離すと、もうケンカですからね」
元「仕事ってのは、そういうもんなんですね。他に気にかかることがあると必ず支障が起きるんですよ」
大吉「らしいですね」
新さんも「たんとんとん」のときはしょっちゅうけんかの仲裁してたもんね。
ホステス「あ~ら、いらっしゃい、社長。いらっしゃい」
大吉「ママは?」
ホステス「もうすぐ来るわよ。あっ、奥、お代わりね」
バーテンダー「はい」
元「よくいらっしゃるんですか? ここへは」
大吉「ええ、仕事のことで時々。こっちは下請けですからね」
元「大変ですね、ご商売も」
大吉「中にはイヤなヤツもいるんですよ」
元「そうでしょうね」ビールを一気飲み。
テーブル席についた大吉と元。大吉、女性、元、女性という席順。
元「僕たちはね、二十歳で死ぬつもりでいたんですよ。ちょうど終戦の年に召集されるはずになっていたからね。その当時はまだホントに本土決戦だと思ってましたよ」
大吉「そんときは学生だったんでしょ?」
元「ええ。勤労動員でね、毎日」
大吉「じゃあ、なかなか勉強なんかする暇ありませんでしたね」
元「ところが違うんだな。勉強しましたよ、みんな。明日死ぬか、あさって死ぬか分からない。そういうときになるとね、人間ってのは必死になって何かをつかもうとするんだな。僕だって毎日、工場(こうば)で働いてクタクタになっても、夜中にちゃんと本は読んでましたよ。当時は、なんかこう、毎日生きてるって感じがしたな。ハッ…それに比べて、近頃は、もうガタガタだ」
大吉「でも、よかったですよね、死ななくて」
元「そうじゃないんだな」
大吉「だって、死んだら終わりですよ」
元「いや、そうじゃない」
大吉「いや、でも和泉さん、生きてるからこそ、こうやって酒が飲めるんじゃないですか」
元「男にはね、死ななくちゃならないときってものがあるんだよ。長生きして酒なんか飲んでちゃいけないんだよ」
大吉「まあ、俺は戦争を知らないから、よく分からないけど、でも今になって考えてみれば、結局生きててよかったってことにならないんですか?」
元「ならないね」
大吉「じゃ、死んだほうがよかったんですか?」
元は黙ってお酒を飲む。
大吉「ハハハハッ。もうよしましょう。こんな話」
元「いや、君は分かっていない。僕たちは死ぬことに決まっていたんだ。ところが戦争が終わって、途端に今度は無限に生きていいことになった。それで民主主義だ。ハッ。そんな簡単に人生変わりゃあしないよ。手品じゃあるまいし。ねえ?」
ホステス「うん、そうね」←めちゃ軽い返事で笑ってしまった。
元「それにね、当時は生きていいっていったって食べる物がなかったんだから」
ホステス「うん」
元「今のアフリカと同じだよ。食べる物がないって、一体どんなことか分かるかい?」
ホステス「そうねえ…」
元「ハハッ、分かりゃしないよな」
ホステス「でも、よく覚えてるわね。戦争って30年ぐらい前なんでしょ」
元「うん」
ホステス「ハハハッ、やあだ。年がバレるわよ」
元「フフフフッ、そうだね」
ホステス「ハハハッ」
元「若いなあ」と和服のホステスの手を握る。うわっ! おさわり有り!?「若さを大切にするんだよ」
ホステス「うまい口説き方ね」
笑う元とホステス。「調子いいわね。いつもそんなことやってんでしょ」
今日、名前の出ていた女性は、さっきカウンターで「社長さん、いらっしゃい」と言ってたホステスか、元の隣にいた和服のホステスだろうけど、セリフの多さからいったら後者だろう。たくみさよさん、「赤い疑惑」の15話にも出てるらしいので、ちょっと楽しみにしておこう。
元は1926/昭和元年生まれ。召集された男性でなきゃ分からない心境なのだろう。大吉は恐らく終戦の年に生まれから、まったく戦争のことは知らないだろうし。こういう脚本が書けるのもこの当時ならではって気がするな。1974年は戦後29年、戦争を知る世代も徐々に年老いてきた、みたいな。
福山家
紀子は浴衣で「婦人画報」を見ている。
ゆき「ああ、いいお風呂だった。大ちゃん、まだ帰ってこないの?」
紀子「ええ」
ゆき「仲直りさせんのに手間取ってんだろ。あんたももうお風呂にはいったらどう? いつ帰ってくるか分かりゃしないよ」
紀子「そうですね」
ゆき「近頃よく本を読んでるね」
紀子「ええ。和泉さんの奥さんって短大出てるんですって。あんまりもの知らないと恥ずかしいから」
ゆき「じゃあ、勉強してるわけね」
紀子「泥縄だけど」
外から酔っ払い男性たちの歌声が聞こえてくる。
紀子は本を閉じて風呂に入ろうとするが、ゆきからお風呂の窓をちゃんと閉めたほうがいいと注意される。「ああいうバカな酔っ払いがのぞきかねないからね」
紀子「ええ」
戸をたたいて「お~い!」と呼んでいるのは大吉。「開けてくれよ!」
紀子が戸を開けると大吉と元が入ってきた。「ああ、奥さん、こんばんは」
紀子「はあ」
大吉「紀子、ちょっと手貸してくれよ」
元「いや…」
大吉「ちょ…先生、あんた重いんだからしっかりしてくださいよ」
元「分かってる、分かってる、分かってる」
大吉「大丈夫ですかい?」
茶の間にどーんと倒れ込む元。「あっ、お母さん。どうもこんばんは」
「岸辺のアルバム」でもしょっちゅうこんなシーンがあったな。役とはいえ、体の大きな杉浦直樹さんを運ぶ八千草薫さんが大変そうだった。
ゆき「ああ、いらっしゃいませ」
元「夜分遅く申し訳ありません」
ゆき「いいんですよ。さあ、どうぞ」
元「いや…もう私帰りますから」
いいじゃないですかと家に上げた大吉は紀子にビールを持ってくるように言う。この状態でまだ飲む!?
ゆきは元に座布団を勧める。「だいぶお飲みになったんですか?」
元「はいはい、もうたっぷり。ハハハハ…」
大吉が座るなり、「母さん、灰皿」と頼んだ。
元「おい、ダメだよ、君。お母さん、もっと大事にしなくちゃ」
大吉「はいはい」
ゆき「大丈夫なんですよ、私は」
元「そんなことありませんよ。あっ、いいお母さんだ」
ゆき「まあ…フフフッ」
元「いやね、こいつは幸せですよ(大吉の肩をたたく)。私の母親は3月10日の空襲で死にました」
ゆき「そうですか」
元「ええ」
紀子が元にビールを勧める。一気飲み。元の視線の先にはパジャマ姿の一郎。「やあ、一郎ちゃん」
一郎「どうしたの? おじさん」
元「君に会いに来たんだよ」
笑顔を浮かべる一郎。
元「やあ…こっちへおいでよ」
一郎「なあに?」
元「一郎君」顔を近づける。
一郎「わあ、お酒臭い」そっぽを向く。
元「申し訳ない」頭を下げる。
一郎「どうしたの? おじさん」
もう一度「申し訳ない」というと横に倒れ込んだ。
一郎「おじさん、おじさん。こんな所で寝ると風邪ひくよ、おじさん。おじさん!」肩を揺らしながら顔を覗き込む。「おじさん、泣いてるよ」
何も言えない大吉、紀子、ゆき。涙を流しながら寝ている元。
翌朝、従業員たちが作業着にヘルメットをかぶり、仕事の準備をしている。バリバリ二日酔いの大吉も顔を出す。
従業員「じゃ、トラック回しとくよ。なっ? 行こう」←友二、洋介以外もセリフあることはある。ノンクレジットだけど。
友二と洋介は大吉に会釈をし、笑い合う。仲直りしてる。
大きな声が頭に響く大吉。
紀子「あんなに飲むんですもの。和泉さんも申し訳ない、申し訳ないの連発だったわ」
大吉「俺、もう酒やめるよ」
まったく信じてなくて「ホント?」と笑う紀子。
一郎は学校へ行った。ゆうべのことを気にしてなかったか聞いた大吉に紀子は子供たちは親戚みたいなつもりだと言う。
ゆき「ねえ、大ちゃん。今ね、一郎と晃のことで変な噂を聞いたよ」
大吉「うん?」
ほのぼのしたオープニングインストバージョンがブツッと止まる。
驚く大吉の顔。(つづく)
「太陽の涙」って意外とこういう引っ張りをしないで、言うべきところは言って終わる感じがしたな。
「おやじ太鼓」32話。前回の感想を読み直していたら意味不明な言葉があり、改めて見て訂正。こういう間違いいっぱいあるんだろうな(-_-;)
この回は江幡高志さんが出るね! 小悪党な感じが好き。
「おやじ太鼓」の第1部がもうすぐ終わるなんて早い。あの挨拶シーンは保存しとこ。