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ドラマの感想など

【ネタバレ】岸辺のアルバム 第10話

1977/09/02 TBS

 

あらすじ

東京郊外の多摩川沿いに住む中流家庭。一見すると幸せそうに見える家族4人。しかし、実はそれぞれが問題を抱えていた。母・則子(八千草薫)は良妻賢母型の専業主婦。だが、見知らぬ男から電話がかかってくるようになる。はじめは知らん顔をするも、やがてその男と会うようになり…。父・謙作(杉浦直樹)は有名大学出の商社マン。しかし、実のところ会社は倒産寸前の状態だった…。娘・律子(中田喜子)は大学生。なかなかの秀才で大学も簡単に合格したはずだったが、ここ一年は家族に対して心を閉ざしている。やがて、アメリカ人男性と交際するようになるのだが…。息子・繁(国広富之)は大学受験を控えた高校生。決して勉強のできる方ではないが、心の優しい性格の青年だ。だが、両親や姉の異変に気付き、思い悩むことに…。

 

第10話

律子(中田喜子)はチャーリーの友人から乱暴され、妊娠していた。誰にも相談できずに悩んだ律子は、繁(国広富之)の高校時代の担任・堀(津川雅彦)に相談する。

2022.9.7 日本映画専門チャンネル録画。

Will You Dance?

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物語も後半なんだな~。

peachredrum.hateblo.jp

先週末で繁は浪人確定で予備校に通いだしたんだから、春先? しかし、今回冒頭は「寒いんだよ、結構」なんて言ってて、もう秋? まさか。

 

机に向かいつつ、うたた寝していた繁の部屋に律子が入ってきた。繁の机に日本史と英語問題集2冊をドサッと置くとさっさと出ていった。ツンデレだな~。

 

繁は1階に下りると、アイロンがけしている則子に「突然変異」だと言って律子の行動を報告する。繁が「もうちょっと優しくなれ」と説教したのが効いたんだと嬉しそう。

 

2階に戻った繁は珍しく鍵のかかってない律子の部屋に入り、お礼を言う。しかし、律子は繁に頼みたいことがあるという。

 

いつものスナック(喫茶店風の店)。店から出てきた客の足元が映り、店先に段ボール箱に入った3匹の子犬が映し出される。ん~? 捨て犬? この時代、微笑ましいシーン?みたいな感じで段ボール箱に入った子犬を置くなんて、こういうところはやっぱり今と感覚が全然違う。

 

店では繁が堀先生と向かい合って座っていた。日曜日。律子が堀先生に会わせてほしいということで待ち合わせたのだが、律子が来ない。堀先生は英語担当(外語出身)なので英語の相談だと思う繁。20分遅れで律子登場。店に来るなり、繁に帰るように言う。子供だから帰れという律子に2歳違いだと怒る繁。あれ? 年子じゃないの?

 

繁が怒りだし、堀先生は仲裁する。律子は待たせたことを謝り、お願いしたけど迷っていた、ここでは話せないと外へ出た。多摩川の土手。

 

律子「実は行っていただきたい所があるんです」

堀「ええ」

律子「おととい、思い切って1人で行ってきたんです。なんだかんだ意地悪言うんです。もう一度また一人で行く勇気がないんです。もう耐えらんないわ…」

堀「どこへいらしたんですか?」

律子「病院は他でもいいんです。おとといの病院はもうやだわ。別の病院でいいんです」

堀「病院ですか?」

 

口を挟もうとする繁を「黙ってて」と制する律子。「全身麻酔じゃないけど全身管理を必要とするし、まかり間違えば命に関わりがあるし、1人で来たのをはいはいってすぐ手術できないって言うんです」

堀「手術ですか?」

律子「立派な手術だって言うんです。優生保護法がどうとかって根掘り葉掘りしつこく聞くんです。『結構です』って帰ってきちゃったわ」

堀「優生保護法っていうと…」

 

優生保護法で全てを察した繁は、そんなこと先生に頼むなんてあんまり恥知らずじゃないか!と律子を責める。他にいないんだもの!といって、走り去る律子。堀は妊娠してるってことだね、堕ろしたいっていうことだねと繁に確認。繁は乱暴された、アメリカ人にひどいことされたとあっさり告白。繁は堀先生に謝り、走って帰っていった。

 

家に帰った繁は堀先生を利用しようとした律子を責める。大学の同級生には頼めないという律子に、繁は2~3度会っただけの先生に頼むなんて羞恥心がない、全然問題にしてないから恥かいたってかまわないと思って頼んだのだとさらに責め、則子に話すように言うが、律子は謙作がわめき、ひっぱたかれて、則子が泣く姿が目に浮かぶと抵抗。

 

乱暴されたのは律子のせいじゃないと繁は言うが、律子は親に弱みをつかまれたくない、お母さんに言ったら死ぬとまでいう。

 

その話をしているとき、繁が則子に呼ばれた。田島家は1階が土手から丸見えで、その土手にずーっと座って見ている人がいる。則子が気付いてから40分以上。繁は窓を開けて、その人に「よう、俺んちに何か用かよ」と声をかけた。座っていたのは絢子。用なのかよ?と聞くと、首を横に振る。なおも、どっか行ってくれと言い続けている繁。

 

そこにチャイムが鳴り、堀先生が訪ねてきた。繁は、家に上げようとしたが、堀先生は散歩をしようと繁を誘い出す。

 

産婦人科の土井のもとへ律子を連れていく堀先生。土井役の草野大悟さんは、何か見覚えあるような…?と思ったんだけど、wikiで作品一覧を見てもピンとこない。1991年に脳内出血で51歳で亡くなっている。文学座で同期が樹木希林さん、寺田農さん、橋爪功さん、北村総一朗さんってすごいメンバー。

 

土井は堀先生の高校時代の友人で、律子を妊娠させたのは堀先生だと思っていて、詳しい話を聞こうとしない。2度は助けないぞと明るく笑う。友人に頼むのはヤバくないか!? 土井の病院は隅田川沿い。多摩川とは全然違うだろうと笑う。

 

珍しく家にいる謙作。あ、日曜日か。繁は帰ってない律子を映画にでも行ったんじゃないかとごまかす。

 

堀先生のアパートで休んでいる律子。タクシーに乗っている時間が長く、気分が悪くなったという。律子の布団の近くで体育座りをしていた堀先生がタバコを吸いかけるが、我慢する。

 

律子「初めにお目にかかったときから、ステキな優しい方だなと思ってました。今度困って、あの先生ならって、とっても自然に先生のことが浮かんだんです」

堀「そんなことは言ってはいけない

律子「どうして?」

堀「君のようなキレイな娘さんがそういうことを言えばイヤな顔をする男はいないだろうが、そんなことは言っちゃいけない」

 

なぜだと問う律子にウソだからと答える堀先生。「君は初めて僕に会ったとき、ステキだとも優しいとも思わなかったし、今度困って自然に僕のことなど思い出したりはしなかった。僕もおんなじさ」

律子「同じ?」

堀「優しくも親切できない。まあ、そんな顔をしてるがそうではない。君に初めて会ったとき、キレイだと思った。しかし、僕のような30を過ぎた独り者の薄汚い高校教師を君が相手にするわけがないと思った。諦めてた。しかし、君は下りてきた。妊娠して困っているという。そうなれば雲の上の存在ではない。僕にも手の届く女になった」

律子「よして」

堀「恩を売っておけば、こっちもいつかいい目を見るかもしれない」

律子「ワルがってるんだわ。どうしてそんなイヤらしいこと言うのかしら?」

堀「事実だからさ」

律子「事実じゃないわ」

結局タバコを吸い始める堀先生。おいっ!

堀「少なくとも…ステキで優しい先生におすがりしたら先生は親切に助けてくだすったというお話よりは事実に近い。僕はゆがんでるのかもしれないが、ウソが嫌いだ。ウソのつきあいが嫌いだ。手ひどくウソをつかれたことがあったんでね。ウソをつかれるのが嫌いだ。そう。君に野心を持ったってのはあまり正確じゃない。そんな気持ちがないわけじゃないが、ちょっと大げさに言いすぎてる。役に立ってよかった。これから会うことがあったら…事実だけを言ってほしい、というのは無理かもしれないが、見え透いたことを言うのだけはやめてほしい」

 

薄汚い高校教師にはとても見えないけどね~。何か心に深い傷を持っている様子。この先生が竹脇無我さんだったら…? どっちも見てみたくなる。

 

階段の下から律子に声をかける則子。階段を上って律子の部屋に入ろうとしたが、やはり鍵がかかっていた。則子は律子の体調を心配しているのだが、律子は頭が痛いから多分、風邪だといい、黙って一日ぐらい寝かしておいてくれたっていいじゃないとドアを開けて言うと、すぐにドアを閉めた。

 

則子「優しくなんかありゃしない…」

 

律子の則子に対する態度に繁は文句を言いに行った。律子は愛想よくすればどんどん入ってくる、入ってきたらバレると反論。そして、今でも浮気して発散してるという。繁は浮気はやめてる、大抵家にいて内職をいっぱいやっている、お母さんはいつだって1人だという。

 

繁「正直言うと、俺、ずーっとお母さん探ってたよ。本当はやめたのじゃないかも分からないって、なんとなくしょっちゅう気にしたりしてたよ。でも、お母さん、いつでも1人だよ。電話だってかかってこないし、ものすごく1人だよ。まっ、同情することはないかもしれないけどよ、俺だって1人だし、俺のがかわいそうかもしれないけど…」

 

内職している則子。電車に乗っている繁。ベッドで寝ている律子。

 

夕方になってもミシン掛けをしている則子。

 

夕食

謙作「文句言うな! 文句を!」

則子「文句じゃないわ」

謙作「毎日遊んで遅いわけじゃないよ」

則子「『どんな仕事?』って聞いただけじゃない」

謙作「なぜ急にそんなこと聞くんだ?」

則子「雑談よ」

謙作「仕事の話なんかしたくない。仕事の話なんかさせないでくれ」

則子「どうしたのよ…」

 

謙作、完全なる逆切れだなあ。謙作が布団に入っても、則子はダイニングでスクラップ!?している。

 

電車

徳永「そりゃもう皆さんのような家庭の主婦が、どんどんそういうお気持ちになってくださるのが一番なの」

則子「はあ…」

徳永「たった月3回よ。3回ぐらい老人ホームや子供の施設のために労働奉仕ができないはずないじゃありませんか」

女性「ホントに」

徳永「私もどこ行っても言ってるの。子供が大きくなって暇を持て余すなんてとんでもない。勉強しようと思えばいくらだって勉強することはあります。人のためになろうと思えば労働奉仕を求めてる施設はいくらだってあります。夫の帰りが遅い、結構じゃない。昔はね『亭主は達者で留守がいい』って言ったもんよ。亭主なんかいないほうがいいのよ」

 

車内で徳永夫人の話を聞いていた則子は近くで北川が本を読んでいるところを目撃する。則子が視線を送り続けると、北川も気付いて会釈。則子も笑顔で会釈する。ん? しかし、なんだか北川がそっけなく感じる。

 

徳永「人のためになること、そういうことに熱中すれば『亭主が遅い』なんてぼやくのがいかにぜいたくなことか身にしみて分かるはずだって言ってるのよ、ハハハ。皆さんがボランティアに参加してくださること大歓迎。うれしくてしょうがないの、私。初参加の人がいると、いつもこうやってはしゃいじゃうのよ。フフフ…とにかく主婦がうちに1人でいるなんてことはよくないのよ。人のためになり、人に喜ばれることがどれほどすばらしいことか、そういう経験をしたらセックスの不満なんて小さい、小さい。亭主なんて帰ってこなくたって結構。ハハハ…」

徳永夫人、結構あけすけに言うよね~。

 

主婦たちは旅館のような建物で掃除をする。則子もバケツを持って廊下を歩き、窓を拭いたりした。

 

家に帰っても窓ふきをする則子。意味ありげに何度も映し出される電話。久しぶりに再会したのだから北川から連絡が来ると期待してたんだろうな。

 

夜、酔っ払って帰ってきた謙作。いつものように玄関に倒れ込む。運ばないからと怒る則子。「どうしてそんなに飲むの?」

謙作「あー」

則子「ホントに飲まなきゃ仕事にならないの? 飲めない人はどうするの? 飲ませて自分は飲まなければいいのよ」

謙作「あー…」

則子「それとも発散しないから? 仕事のストレスが消えないから? それならうちで飲んでください。帰ってきて飲んでください。話らしい話、しないじゃない。ちょっと仕事のことを聞けばカッとなるし相談しようと思えば面倒くさがるし、愚痴をこぼせば『ぜいたくだ』って言うし…。お父さん」

そのまま寝ている謙作。

則子「どうしてこんなに飲むの? どうして?」

やっと起きた謙作の返事は「飲みたかないがな」

則子「ウソ」

謙作「飲んじまう…ハハ…飲んじまうんだな」

結局寝ちゃう。

 

翌日、ガス台を磨いている則子。律子は夕方人に会うから夕飯要らないと則子に言った。分かったとあっさり返事する則子に「誰に会うって聞かないの?」と思わずつぶやく律子。

 

則子がベランダで洗濯物を干していると、繁が信彦と成城で落ち合って行くと言ってきた。信彦は「大学なんかホントにつまんない」と繁にぼやいている。

 

内職をしている則子。電話が鳴り、ハッとする。すぐには出ず、ようやく電話に出た。

則子「もしもし、田島でございます。もしもし」

北川「北川です。約束を破ってかけてしまいました」

則子「こんにちは」

北川「正月にスーパーで…」

則子「ええ」

北川「昨日は驚きました」

則子「ええ。あんな時間に電車に乗ってらっしゃるなんて」

北川「会社が契約している西ドイツのバイオリニストが日本へ来てたんです」

則子「ええ」

北川「お供して2週間、日本中を歩いて、おとといの夜、ようやく羽田で見送りましてね」

則子「そう」

北川「遅い出勤だったんです」

則子「そうですか」

北川「PTAか何かですか?」

則子「あっ、私?」

北川「ええ」

則子「そうじゃないの、ボランティア。施設へ労働奉仕に行ったんです。柄じゃないでしょ? ハッ…」

北川「いいえ」

則子「いけないと思ったの。うちの中で1人でいると余計なことをいろいろ考えて…体を動かして何かをしなきゃいけないって、わりあい、本気で考えたの。もっと広い世界に顔を向けなきゃいけない。不満とかそういうものを人のためになることをして解消するというようなことが必要じゃないかって(徐々に涙声になる)…本気で…私…もしもし? もしもし?」

北川「ええ」

則子「渋谷へ行くっていうようなことで解消してはいけないと思ったの。それで人に聞いて申し出に行ったの。月に3回だけですけど」

北川「すみませんでした」

則子「えっ?」

北川「お見かけして懐かしくて」

則子「ええ」

北川「雑談ぐらいなら許されるような気になって」

則子「ええ」

北川「忘れようとなさってるのに」

則子「いいえ」

北川「ごめんください」通話が切れた音

則子「あっ、もしもし? もしもし」

 

いつものように買い物に行き、帰ってきて、電話のことを思い出して顔を覆う則子。

 

いつものスナック

律子は堀先生に会い、この間借りた中絶費用を返した。下訳のバイトで前借りし、早く忘れたいし、決まりつけたいと律子は言う。2000円のお釣りを渡そうとした堀先生に、律子は利子だと最初は拒絶したが、しかし、堀先生が2000円もらうのも変なもんだと返した。

 

律子の顔色がよくなったと言った堀先生。

律子「私、乱暴されただけじゃないんです」

堀「ん?」

律子「その前に別のアメリカ人と性的なつきあいもあったし、たばこどころかマリファナも知ってるし、ひどい娘なんです」←タバコじゃなかったの!?

堀「どうしてそういうことを言うのかな?」

律子「なんだか急に…先生が『ウソをつくな』って言ったからかもしれないわ」

堀「フッ」

律子「驚いたでしょう?」

堀「いや」

律子「どうして?」

堀「もっと意外な目に遭ってるんでね」

律子「そう…」

堀「大抵のことには驚かない」

律子「でも、イヤな気はするでしょ?」

堀「んー、僕は自分がだらしないせいかどんなふうに人が生きたっていいと思ってる」

律子「そう…」

堀「ただ死ぬこととか孤独とか誰かを好きになることとか人間の根元にあるような問題を小バカにしたような生き方は好きじゃない。そういうことと真面目に向き合ってる生き方ならどんな生き方でもいいと思ってる。まっ、そんなことを言いながら、実はいろんなことを紛らわしながら生きてるんだがね」

 

何があったんだよ、堀先生…。

 

寝室

隣で謙作が寝ているのに、布団から起き上がっている則子。

 

翌日、則子は電話をかけていた。

則子「もしもし、制作第一課の北川さんをお願いしたいんですが」

北川「北川です」

則子「私…です」

北川「10分待っていただけますか? こちらからおかけします」

 

則子は庭でポリバケツを洗ったり、台所の床を拭いたり。

 

則子「もしもし」

北川「電話を頂けるなんて思ってもいませんでした。もしもし?」

則子「この間、あんまりぶっきら棒だったなと思って。ハハッ…」

北川「そうですか」

則子「もしもし?」

北川「はい。もしもし?」

則子「明日、3時から4時までどうでしょうか? ルミエールで。もしもし…もしもし? もしもし…」

 

床掃除をしていた則子が電話を思い出して、ずーんと落ち込む。

 

雨の中、缶を蹴りながら帰ってきた繁。家の前には絢子がずぶぬれで立っていた。土手から家を覗いて人だと気付く繁。絢子は「惨めだわ」とつぶやき、繁に抱きついて泣き始めた。戸惑う繁。

 

あんなに丁寧な口調で紳士だった北川さんが…もう則子のことはどうでもよくなったって感じかなあ? 切ない…