徒然好きなもの

ドラマの感想など

【ネタバレ】わが子は他人 #1

TBS 1974年4月3日

 

あらすじ

会社を経営する福山大吉(松山省二)は、妻・紀子(音無美紀子)と長男・一郎(春田和秀)、母・ゆき(小夜福子)と弟・隆(喜久川清)の5人で暮らしていた。一郎の入学式の朝、一郎の名札に書かれた血液型を見た隆はある疑問を抱く。

2024.4.24 BS松竹東急録画。

 

事前に調べていて主題歌情報が出てこないと思ったら、男声コーラスだけの曲だった。

 

制作:木下恵介

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脚本:田向正健

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プロデューサー:飯島敏宏

        小梶正治

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音楽:木下忠司

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福山大吉:松山省二…太陽カッター社長。字幕黄色。

福山紀子:音無美紀子…大吉の妻。字幕緑。

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和泉和子:林美智子…元の妻。

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福山隆:喜久川清…大吉の弟。

隆の友人:桐原新

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京子:猪俣光世…一郎の同級生・克美の母。

鍋谷孝喜…太陽カッターの従業員。

田尻丈人…太陽カッターの従業員。

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福山一郎:春田和秀…大吉、紀子の息子。

和泉晃:吉田友紀…元、和子の息子。

ナレーター:矢島正明

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福山ゆき:小夜福子…大吉の母。

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和泉元(げん):杉浦直樹…中学校教師。

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監督:木下恵介

 

いきなり隆のドアップ独白から始まる。「ホントはさ、もうちょっとマシにいくかと思ったんだけど、なぜかダメだったんだよな。(鼻をすすりながら)浪人か。でもな…東大にストレートで入れるヤツなんて、そうザラにはいないんだからしかたがないってことだよ。いや、磯村のヤツは特別なんだよ。あいつは勉強以外になんにも知りやしねえんだから。単純なんだよ、あいつの人生は。あの…お茶でも飲みませんか? ねえ、お茶でもつきあわない? 君が好きだ。アイ・ラブ・ユー」鏡に向かってキス。

 

誰かが部屋のドアを開ける。

隆「何してんだよ、そんなとこで、おい、一郎! 一郎ちゃん、戻っておいでよ。いい物やるよ、叔父ちゃんが」階段を下りていく。

 

京子「お宅様じゃ一体お子さんにどんな教育なすってらっしゃるんざますか?」

紀子「はあ…」

京子「ホントにもう冗談じゃございませんわよ。いっつもいつも乱暴ばっかりされて。あしたの入学式に行くのはお宅のお子さんだけじゃございませんのよ。それをまあ、どうでしょう。ご覧あそばせ、これ。克美ちゃん! あんたがビクビクすることないでしょ。こっち来て、さあ、見せておあげなさい。さあ、ほら」

紀子「あら…」

 

鼻の頭に絆創膏を貼られた男の子。絆創膏に血がにじむ。京子は克美がなんにもしないのに一郎がいきなり飛びついて鼻の頭に嚙みついたとどなり込んでいた。紀子はしゃがみ込んで、克美に謝り、ホントになんにもしないのに噛みついたのか克美に聞く。

 

京子「あら、奥様。それじゃ私の言ってることウソだっておっしゃるんざますか?」

紀子「いいえ、そうじゃないんです。でも、うちの一郎だって、まさか…」

京子「どういうことでしょう。それじゃまるでこの子が悪いみたいじゃございませんの」

紀子「いえ、そうじゃないんです。いや、とにかくうちの一郎、呼びますから。一郎! 一郎ちゃん!」隆を見つけて、一郎を呼ぶように言う。「すみません。今、一郎が来たら謝らせますからね」

京子「当然ですわ」

 

最初は立ってる京子としゃがんでる紀子だったのが、立ち上がったら紀子さん、背が高いね。音無美紀子さんは164cmだそうです。

 

紀子「それであの…お医者様にはいらしたんですか?」

京子「もちろんですわ。噛みつかれたとき、どんなバイ菌入ったか分かりませんからねえ」

紀子「じゃ、とにかく、そのお医者様のお代だけでも、わたくしのほうでとりあえず…」

京子「あたくしはお金をもらいに来たんじゃございませんのよ」

紀子「いいえ、そんなつもりで…」

京子「この際、はっきり言わせていただきますわ。そりゃまあ、お宅様はご商売柄、お子さん荒っぽくお育てになってらっしゃるんざんしょうけど。あのガタガタガタッ。あれでございましょう? それはそれで結構でございますから外へは出さないでいただきたいんです。飛びついたり噛みついたり、あれじゃまるで飢えた狼ですわ」

 

作業着にヘルメット姿の大吉が帰ってきた。「よう」

紀子「あっ、あなた…」

大吉「ああ、こりゃどうも、いらっしゃい」ヘルメットを取ってあいさつ。

京子「今度何かございましたら、区議会の問題にいたしますからね。(克美の手を強く引く)いらっしゃい。子連れ狼にはかなわないわよ、ほれ」帰っていった。

 

ざあます言葉のご婦人なんて、ドラマや漫画でしか見たことない。

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見た目が今まで見たことのない猪俣光世さんだったな~。声が特徴的だから分かったけど。金八でも高橋健の母で教育ママっぽい感じだったな。「マー姉ちゃん」のお琴さんはそうじゃないけど。

 

大吉「なんだ? ありゃ」

紀子「失礼しちゃうわ、ホントに」

大吉「どうしたんだよ?」

紀子「またケンカしたのよ、一郎が」事務所のソファに座る。

大吉「ハハハ…どなり込まれたのかよ?」

紀子「笑い事じゃないわよ。私の身にもなってよ。大体ね、あなたがいけないのよ。ケンカには負けるななんて教え込むから」

大吉「泣いて帰ってくるよかマシじゃないか」

紀子「だって相手の子にケガさせたのよ。鼻の先、噛みついちゃったのよ」

 

鼻と聞いて、変なとこ噛みつくヤツだなと笑う大吉。

紀子「とにかく今日は少し叱らなくちゃ。このまま学校に入ったら思いやられるわ」

大吉「子供のケンカだよ。くよくよしなさんな」

 

被害者親はキーキー騒ぎ、加害者親がデーンと構える風に描くと、被害者が大げさに騒いだみたいな感じでイヤだね~。鼻の頭嚙むなんてひどいと思う。

 

紀子が茶の間に移動。大吉もついてくる。家の構造的に「たんとんとん」みたいに事務所と家が一体化したような造り。

 

大吉が一郎がどこに行ったか聞く。仕事はまだ終わってないが、一郎の靴を買ってきたので見せたくなって帰ってきた。

 

紀子「まあ…まあ、いいことはいいけど高かったでしょう?」

大吉「ステキじゃないか、おい、なあ?」

 

一番高いのを買ったという大吉。紀子は値段を気にするが、一生に一度のことだからケチケチするなと値段を明かさない。帰ってきた一郎にそばに来るように言う大吉。

 

大吉「どうだよ? この靴」

一郎「わあ、すごいや!」

大吉「なあ? よし、履いてみろ」

 

紀子「一郎ちゃん。今度ね、ケンカしたらおうちに入れないわよ」

大吉「いいじゃないか。子供のケンカなんだから」←うわ~(ドン引き)

紀子「いいことがありますか。子連れ狼なんて言われたんですよ」

大吉「言いたいヤツには言わしとけよ」

 

一郎「向こうが悪いんだよ」

大吉「なっ?」

紀子「どっちが悪くたってね、鼻に噛みついちゃいけませんよ」

大吉「それより手がなきゃしょうがないだろう」

紀子「まあ、あきれた」

大吉「よし、立ってみな。歩いてみろ。どうだ? 具合は」

紀子「ダメよ。畳の上でそんな物履いちゃ。お葬式のときだけですよ」

大吉「お前ね、あした、入学式なんだぞ。縁起でもないこと言うんじゃないよ」

紀子「だから早く脱ぐんです」

 

松山省二さんといえば「若者たち」の末っ子。そういえば浪人生だった。

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一郎役の春田和秀さんは売れっ子の子役だったんですね。映画「砂の器」では元浦秀夫役。この映画も1974年公開なので撮影もかぶってたのかな。

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春田和秀さんの「砂の器」撮影時のインタビュー。

www.promax.co.jp

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大吉の母・ゆきがたくさんの荷物を抱えて帰ってきた。高円寺のおばちゃん!

 

ゆき「紀子さん、ちょっと頼むわ」

紀子「はい! あら、お義母(かあ)さん、こんなに買ってきたんですか?」

ゆき「あの…お赤飯は頼んできたけどね。ごちそうをうんと作ろうと思ってね」

紀子「そんなにしなくたっていいのに」茶の間にいる大吉に話しかける。「おばあちゃんったら、あしたのお祝いにって、うんと買ってくるんだもの。ホントに気前がいいんだから」

 

親子そろって気前がいいのかな。

 

大吉「おい、一郎。学校行ったら勉強しなくっちゃな」

一郎「うん」

大吉「よし」

 

ゆき「大ちゃんも帰ってたの?」

大吉「うん。仕事の途中でね」

一郎が買ってもらった靴をゆきに見せる。

 

大吉「ヘヘッ。ちょっと奮発しちゃったんだ」

ゆき「こりゃまあ、上等舶来じゃないの。ねえ、ちょっと履いてごらんよ」

一郎「ダメだよ。お母さんが怒るよ。葬式のときだって」

ゆき「かまわないよ。ちょっとぐらい」

一郎「へえ。おばあちゃんのほうが話が分かるね」

 

⚟紀子「一郎、履きたかったら、お店で履きなさいよ」

 

一郎「ほ~らね」

 

紀子「お義母さん、お金足りたんですか。あんなに買ってきちゃって」

ゆき「足りなかったから借りてきたんだよ」

紀子「まあ…ホントに親子そろって、お金のありがたみを知らないんだから。大変ですよ。あれだけのお料理こしらえるだけだって。しょうがないわねえ」

 

大吉「何をそんなに買ってきちゃったの?」

一郎「僕、見てこよう」

ゆき「あした、近所にもパーっと配ろうと思ってさ」

大吉「いいのに、近所は」

ゆき「だって、お祝いだからさ」

大吉「今どきはやらないよ、そんなの」

 

ゆき「気持ちだよ。親の気持ち、おばあちゃんの気持ち」

大吉「他人は関係ないのにな」

ゆき「だから内祝いだよ。これで隆が大学に入れていたら、もっと盛大にやっちゃうんだけどね」

 

高円寺のおばちゃんに比べると、下町のおばあちゃんって感じだね。

 

大吉の父が亡くなったのは、彼が12のときでした。それ以来、2人の子供を抱えて苦闘するは母は、ただがむしゃらに生きてきましたが、今は彼が一家の柱となり、従業員5人の有限会社・太陽カッターの社長です。母と十(とお)違いの弟と、そして妻と一人息子と、この5人の家庭の幸せが彼の肩にかかっています。気になることといえば、弟・隆が今年の大学受験に失敗したことだけと言ってもいいでしょう。しかし、実はこの一家にとって青天の霹靂ともいうべき、あまりにも残酷な運命がすぐ近くに待ち構えていたのです。

 

大吉の仕事風景。機械でアスファルトを切っている。「おやじ太鼓」以降、60年代はサラリーマン家庭の話が多かったように思うけど、70年代に入ってから自営業花盛りだったんだな~と思う。

 

1974年に小学校に入学する一郎は1967~68年生まれ。大学に入学するはずだった隆は1955~56年生まれ。十違いということは一郎は1945~46年生まれの29歳。若いお父さんだね。一郎の父が亡くなったのは1957年。

 

そして、翌日は一郎の入学式でした。

 

一郎が2階に向かって叫ぶ。「お~い、早くしないと遅れるぞ!」

 

⚟紀子「はい! 今行きます」

 

紀子と一郎が階段を下りてきた。「さあさあさあ、鼻紙、ちゃんとポケットに入れたわね?」

一郎「うん」

紀子「手でこすっちゃだめよ」

 

一郎や紀子が出かける準備をしている。

大吉「おい、やっぱり馬子にも衣裳だな」

紀子「やあね。自分の子供がどうして馬子よ」

大吉「違うよ、お前のことだよ」

紀子「えっ…まあ、失礼ね」

 

紀子は風呂敷を探す。ゆきは自室の新しい風呂敷を持っていくように言う。

紀子「すいません。タンスの上置きですね」

 

一郎は自分で靴を履こうとするが、大吉が履かせる。「名前呼ばれたら、はっきり返事するんだぞ」

一郎「うん」

大吉「返事は『はい』。『はい』って言ってみな」

一郎「はい!」

大吉「そうだ。じゃ、お父さんの名前を聞かれたら、なんて言うんだ?」

一郎「福山大吉です」

大吉「よ~し、元気よくな」

 

玄関の下駄箱が昔、実家にあったのに似ていてびっくりした。

 

パジャマ姿の隆が起きてきた。「朝っぱらから大騒ぎだな」

大吉「なんだ、今頃起きてきて…(紀子に)おい、早くしないと遅れるぞ!」

 

紀子と一郎は入学式に出かけていった。

 

隆「一郎の胸にBって書いてあんの、なんなの?」

ゆき「血液型だってさ、交通事故が多いからだって。やだね、ホントに」

 

茶の間で新聞を広げる隆。大吉は自らお茶を注ぐ。

隆「大学もこの際、義務教育にならねえかな」

大吉「バカ。顔でも洗って、おばあちゃんのこと手伝え」

隆「そりゃそうと、兄さんの血液型はなんなの?」

大吉「O型だよ」

隆「そっか、やっぱりね」新聞を読むのをやめ、お茶を入れる。

大吉「何がやっぱりだ?」

 

隆「俺はB型だからさ。やっぱり違うわけだな、性格が」

大吉「違うから困ってんじゃないか。しっかりしろよ」

隆「一郎もB型だからね」

大吉「B型でもいろいろあるんだ」

隆「義姉(ねえ)さんは何型なの?」

大吉「A型だよ」

隆「A型か。なるほどね」

 

ゆきが隆に片づかないから早くご飯食べちゃわなきゃダメよと茶の間に来た。隆は顔を洗いに?に出て行った。

 

大吉「あいつ、本気で勉強する気でいるのかな? 来年もまた受けるって言ってるのに」

ゆき「あれで相当こたえてるからね。周りであんまりワイワイ言うのもね」

大吉「昨日だって一郎を捜しに行ったと思ったらさ、ほら、つい、そこの公園で田口っていう友達と2人でね、しょんぼり腰掛けてるんだからね」

ゆき「ああ、やっぱり入れなかった子と…」

大吉「みっともないったらありゃしないよ。通りかかった近所の奥さんがさ、わざわざ立ち止まって見てるんだもん。それも3人も」

ゆき「何が珍しくて見てるんだろう」

大吉「そりゃそうだよ。仲良く落ちた2人が一緒にいるんだもん」

 

和服の紀子と半ズボン姿の一郎が商店街を歩く。商店街のシャッターは降りてるから、早朝、エキストラたちと撮影したのかな。

 

一郎の胸の名札

 

1の2 B

福山一郎

 

嵐を呼んだのは、このBという文字からでした。

 

一郎より世代が下のせいか血液型入りの名札は見たことない。ついでに言うと、私は高校生になるまで血液型を知らなかった(調べてなかった)。

 

福山家

隆「母さん、いる? 母さん」本を持ってきてゆきに見せようとするが、料理をお重に詰めていて、おじいさんに届けるように言う。

 

隆「いいかい? 兄貴はO型だよ。義姉さんはA型だから…」

ゆき「いいじゃないか。AだってOだって」

隆「それがよくはないんだよ。大事件だよ」

ゆき「え~っと、ゴマの袋はと…」

隆「母さんったら!」

ゆきは赤飯の箱にのしをつけていた。

 

隆「O型とA型の両親からはO型かA型の子供しか生まれないんだよ。ということは一郎はB型だから、兄さんの子供じゃないってことになるんだよ」

ゆき「バカなこと言いなさい」

隆「だから、この本、見てみれば分かるんだよ」

ゆき「さあ、届けてちょうだい。パチンコ屋の裏の酒井さんだからね」

隆「赤飯なんか配っちゃって、あとで後悔するよ、きっと」

ゆき「イヤなこと言うね、お前は。何が書いてあるの? 一体」

隆は本を見せる。

 

太陽カッターの店の外にも従業員の歌声が聞こえる。

♪盆から先ゃ おらんど

盆が早よ来りゃ 早よ もどる

おどま かんじん かんじん

あん人たちゃ よか衆

よか衆 よか帯 よか着物(きもん)

おどんが内死(うち)ちゅて 誰(た)が泣(に)ゃて…

五木の子守唄

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壁に掛かったプレート

 

社長

福山大吉

社員

安田友二

上野進

立石圭介

岡田俊次

田村始

 

歌ってる人の隣にいる一郎の肩を組む反対側の人は「信濃路」のケン坊!?

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奥にはゆき、大吉、紀子、隆がテーブルを囲む。

ゆき「としちゃんもなかなか歌えるんだね」

 

歌ってるのは岡田俊次という社員か。田尻丈人という名前を調べると、1989年から同姓同名の演出やプロデューサーが出てくるんだけど、同じ人なんだろうか?

 

大吉「ハハッ、あれが出りゃ本格的だな」

 

ビールはあと2~3本、酒があと2~3合だと大吉に伝える紀子。大吉は今のうちに行ってもらって来いと言う。

 

大吉「さあさあ、飲んでくれ、飲んでくれ。今日は特別だからな」ビール瓶を持って従業員たちのいる席に行く。それにしても29歳にして貫禄あるなあ。和服だし。

 

紀子「(ゆきに)あれだものね。足りるわけないわよね」

隆「僕がもらってきてやるよ」

紀子「いいの、いいの。もう、私、済んだから。ああ、おいしかった」片づける。

 

大吉「さあ、じゃあ、次は誰の番だ?」

従業員A「社長の番じゃないんですか?」←この人、ケン坊だね。

大吉「おい、よせよ。その社長っていうのは」

従業員A「じゃ、大将、ひとつお願いしますよ」

従業員B「お得意のソーラン節」←さっき歌ってた人。

従業員C「よっ!」

大吉「いやいや、まだまだ酒が足りんよ」

従業員B「じゃあ、どうぞどうぞ」

大吉「ああ…」隣に座る一郎にお酌してもらう。

 

隆は、ゆきに聞かなかったのか聞く。ゆきは聞かなくても分かってる。「どっかで誰かの血液型が間違ってるんですよ。調べるときにトンマの先生がいたんだろう」

隆「それならそれではっきりしとかなきゃダメじゃないか」

ゆき「いいですよ、そんなもの。今日みたいなおめでたい日に言わなくたって」

 

大吉が歌うと言って、従業員たちも盛り上げる。

 

ゆき「お前もあっち行って歌いなさい」

隆「とんでもない」

 

大吉がソーラン節を歌いだす。

♪ヤーレン ソーラン ソーラン

ソーラン ソーラン ソーラン

従業員たち「ハイハイ」

♪鰊来たかと かもめに問えば

私しゃ立つ鳥…

ソーラン節

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台所に立っているゆきに話しかける隆。「だけどね、母さん。このこといろんな意味で重大なことなんだからね」

ゆき「バカだね、お前は。重大なことだからうかつに聞けないんじゃないか。重大なことぐらい、お母さんいくら年を取ったって分かってますよ。あんないい気持ちで歌を歌ってるのに、そんなとんでもないことをやぶから棒に聞けますか」

隆「そりゃ、血液型を検査するときに間違ってたらいいんだけど…」

ゆき「大吉は去年、日赤に献血するときに調べたばっかりだからね。紀子は確か、お産のときに血液型を見たからね」

隆「一郎のB型は保健所で調べたんだろ?」

ゆき「だから、間違ってるとすれば保健所だよ、きっと。小学校一校がいっときに調べるからね」

隆「そうか…そうだよね。きっと」

 

従業員たちのおだてられ、また歌いだす大吉。

♪木曽のナー なかのりさん

木曽の御嶽さんは ナンジャラホイ

夏でも寒い ヨイヨイヨイ

木曽節

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いくら70年代とはいえ、「おやじ太鼓」でいうなら三郎や幸子と同世代くらいの大吉が民謡を歌えるのが渋い。従業員たちはもっと年下だろうしねえ。

 

さて、ここでもう一組の夫婦をご紹介しておきましょう。中学校教員・和泉元(いずみげん)とその妻・和子。子供はやはり今年から小学校へ上がった晃です。この夫婦の話は、もう少し先になりますが、とりあえずご記憶に留めておいてください。

 

杉浦直樹さん、林美智子さん、初代あばれはっちゃくの吉田友紀さん。

 

翌朝、従業員たちが現場へ出かけていく。

 

大吉は隆の部屋に入り、隆を起こして血液型の本のことを聞く。

 

紀子は台所で洗い物、ゆきは朝食を食べる一郎と茶の間にいた。一膳でやめた一郎に「たくさん食べないと利口な頭にならないんだよ」と言うゆき。一郎は今日のおみおつけまずいよと文句を言う。ゆきはそんなことない、ワカメが嫌いだという一郎にそんなこと言うとバチが当たるからと注意する。

 

紀子「だけど、本に書いてあるとすると変ですねえ」

ゆき「だから、保健所が間違えてんのよ。立派な研究所だって大事な汚染のことで大ウソついてんだからね。何をしてるか分かりゃしないよ」

紀子「ホントに信用できることっていったらないんですもの」

 

本を広げたまま、慌てて階段を下りてきた大吉は一郎もいる茶の間にやって来て、紀子に本を見せる。「O型とA型の夫婦からはな、B型の子は、お前…」

ゆき「ちょっと待ちなさいったら。さあ、一郎、学校行くんでしょ? 今日からうんと勉強していい子にならなきゃね」

 

紀子も一郎と一緒に出掛ける。一郎は、いい靴を履きたがるが、紀子はよそ行きにするように言う。一郎は急いで帰ってきて保健所にどなり込めって…自分では行かないの?

 

大吉「大体ね、お前が不注意なんだよ。一郎はOかAに決まってるんだからな。万が一、事故にでも遭ってB型の血でも輸血されてみろ」

ゆき「ちょっと待ちなさいったら。一郎が何事が起きたかと思うじゃない」

 

紀子と一郎が出かけていった。

 

大吉「新入生500人も検査するんだからな。どっかで間違えたんだ、きっと」

ゆき「そうそう。それに決まってるよ」

隆が起きてきた。ゆきや大吉から早く起きなさい、真剣になんなきゃダメだぞと口々に注意される。

 

隆「ああ、眠い眠い。この本のおかげでとんだ迷惑だよ。起こされちゃって」

ゆき「何言ってんの。とんだ目に遭ったのはこっちのほうだよ」

 

タバコを吸う大吉の横顔。(つづく)

 

木下恵介アワーの最終作。これまでの木下恵介アワーは火曜9時、こちらは水曜10時の放送。高円寺のおばちゃんがいるものの、またガラっとメンバーが変わった感じ。高円寺のおばちゃんは「おやじ太鼓」2期終了から4年半ほど、ちょっと老けたかな。おばあちゃんの役だしね。

 

そういえばキャストクレジットの桐原新さん、どこにいた? 大吉の話に出てきた田口かな? 「太陽の涙」でおなじみ篠田清だよ!

 

大吉はデリカシーがない、オラオラ系の若い父親って感じかな。嫁姑は険悪な感じもないので、そこまで暗くない感じ。まだ1話だからね。

 

おやじ太鼓18話。神尾の祖母初登場だけど、前半は母の日特集。

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神尾の家に行く三郎と敬四郎。

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