徒然好きなもの

ドラマの感想など

【ネタバレ】たんとんとん #14

TBS 1971年8月31日

 

あらすじ

文子(榊原るみ)の縁談を巡り、竜作(近藤正臣)と健一(森田健作)は仕事場で大ゲンカをする。安さん(太宰久雄)から話を聞いたもと子(ミヤコ蝶々)はふたりを叱りつける。子どものことに親が口出しをするなと健一はムッとするが…。

君のいる空

君のいる空

  • 森田 健作
  • 謡曲
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

2024.1.23 BS松竹東急録画。

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尾形もと子:ミヤコ蝶々…健一の母。字幕緑。

*

尾形健一:森田健作…大工見習い。字幕黄色。

*

江波竜作:近藤正臣…先輩大工。

石井文子:榊原るみ…竜作の恋人。

*

生島とし子:松岡きつこ…新次郎の妻。

安さん:太宰久雄…建具屋。

*

堀田:花沢徳衛…棟梁。頭(かしら)。

*

生島新次郎:杉浦直樹…健一の父の下で働いていた大工。

 

尾形家の木戸を開け、そっと玄関ドアを開ける安さんに続く健一と竜作。

安「とにかく2人連れてこいっていうんだからしょうがねえよ」

健一「黙ってりゃ分かんなかったんだよ」

安「そりゃそうだけどさ」

健一「おしゃべりなんだよ、安さんは」

安「いや、俺だってなにもね、告げ口する気はなかったよ。たださ、あんまりすげえからさ、お前らのケンカ…」

 

⚟もと子「安さん」

安「は? はい!」

 

もと子「2人とも一緒やろね?」

安「へい、もう、ちゃんと」

もと子「上がってちょうだい」

安「へい! 今」

 

茶の間に入ってくる健一と竜作。

もと子「入んなさい、お座り」

健一「ノルマはちゃんとやったからね」

もと子「いいから、お座り」

健一と竜作がもと子の正前に正座する。

もと子「2人で何をした? 現場で何を…したのだ?」

 

安「いや、ねえさん。私はね、電話でちょっと大げさに言ったんですよ。私はほら、カーッと頭に、ほら、血が上るほうだから。ハハハハ…いや、ケンカっちゅうとね、すぐ興奮しちゃって大げさにしゃべっちゃうんだなあ。大したことなかったんだよな? ホントは。2人とも手は上げなかったか? ただちょいと、あの…ヒョイヒョイとどなり合っただけだったな」

健一「うん…そうなんだよ、母ちゃん」

もと子「何が母ちゃんだ」

健一「別になんにも壊したわけじゃないしさ」

 

もと子「安さん」

安「はい」

もと子「じゃあ、電話のあんたの話、あれ、みんなウソ?」

安「いいえ、あの…なんて言ったっけなあ」

もと子「あんた言ったじゃない。ねえさん大変だ。ねえさん大変だって、あんた、まず言ったでしょ?」

安「は? そうですか? そうかなあ」

もと子「えらいケンカになりまして、もう止めても聞かないんですよ。雨戸1枚、雨戸1枚踏み抜いちゃったんですって、あんた言ったじゃない」

安「いえ、ねえさんね、あの雨戸はね、2人がね、弁償するって言ってんですよ。あの…既製品だし、大量生産だし、あの…安いやつだし」

もと子「へえ~、口だけのケンカで雨戸が壊れんの?」

安「いえ、あれは、つ…つまずいてね、あの…つまり、この…地べたにこういうふうに、この…置いといて…あの…」

 

もと子「健一」

健一「うん?」

もと子「お前、安さんにとりなしてもろて、だんまりで逃げるつもりか?」

健一「すいませんでした」

もと子「すんませんで済むかい。現場でやな、取っ組み合いのケンカをするような職人はな、職人の風上にも置けないんだ、この野郎!」

健一「だから謝ってんじゃないか」

 

ここで安さん、もと子が手にしていたテーブルの上の物差しをそっと自分の背中に隠してた。

 

もと子「原因はなんだよ?」

健一「そいつは言えないよ」

もと子「お前な、母ちゃんをナメとんな? ナメたら承知せんぞ!」

健一「殴れよ。殴りたきゃ殴れよ」開き直ってあぐらに腕組みで目をつぶる。

もと子「バカ。こいつはどうしようもないバカだな、こいつは」

健一「何が?」

もと子「何がって…」物差しがないのでテーブルに上り、健一に手を伸ばして頭をたたく。「バカ」

健一「イテッ…痛(いて)えな!」

もと子「痛いように殴ってるんだ! なんだ? その格好は。ちゃんと座れ。正座をしろよ、正座を!」

健一「か…加減しろよ、ホントに」

 

もと子「こいつは全然反省の色がないんだな」テーブルから降り、立つ。

健一「もうやんないよ、ホントに」

もと子「ダメだ。徹底して私は殴ってやる」

健一「ムチャ言うなよ」

もと子「口答えすんな! 安さん、出しなさい。なぜ隠すんだ? 出せって、安さん。出せって言ってんのよ」物差しを取り返し、正座をする。「竜作さん」

竜作「はい」

 

もと子「私はね、あんた方のどっちがええか悪いか、そんなことは私は知りません」

竜作「俺が悪いんです」

健一「俺だよ」

竜作「いや、俺ですよ。ホントに」

もと子「いや、どっちでもいいです。どっちでもええけども職人が現場でケンカするということは恥ずかしいと思わんのですか? 竜作さん」

竜作「はい」

もと子「私はね、人さんの子供を殴ったりはしません」

竜作「いいえ」

もと子「そうや。あんたはとりあえず、今んとこ殴り手がない。だから、あんたのお父さんの代わりに私が健一と一緒に並べて殴らせてもらう」

竜作「どうぞ」

もと子「これからこんなことしたら半殺しやぞ!」

竜作「はい」

 

もと子「分かったか? ほな、四つんばいになれ」

健一「えっ? や…やだよ、そんなの」

もと子「イヤなことすんのもお仕置きのうちだ。四つんばいになれ!」

安「いえ、それはねえさん、その…」

もと子「ほな、あんたもなるか?」

安「いえいえ」

もと子「ほな、あっち行って。ややこしい。なれ、早(はよ)う、早くしろ!」

健一「どうとでもなれ、もう」

 

もと子に尻を向けて四つん這いになる健一と竜作。

もと子「これからたるんどったら、いつでもこうやぞ。分かったか? 『はい』と言え、『はい』と!」

竜作「はい!」

健一「はい」

 

あんなに止めてたのに安さんはもと子の斜め後ろで腕組みしてニヤニヤしながら見てる~。

 

もと子「では、いくぞ。ピシーッ!」自分で効果音も言っちゃう。「これからだ、この野郎!」物差しで尻をたたく。

健一「アイタッ」

もと子「分かったか? お前もだぞ!」

竜作「アイテッ!」

 

新次郎のマンション

堀田のコップにビールを注ぐ新次郎。「そうですか。ハハッ、物差しでね」

堀田「ああ…ありがとう。安さん、すっかり興奮しちまってさ。おっかないね、あねさんって人はどうもって」

2人は笑う。

堀田「うちへ来て大変だよ」

新次郎「そうですか、ハハッ」

 

堀田「で、まあそこでだ」

新次郎「はあ」

堀田「安さん帰ってから、うちのヤツとも話したんだけどもね。まあ、安さんって人はちょっと見当違いなところのある男だから、そいつをネタに言うわけじゃないけどもね、ちょっとこりゃどっか間違ってんじゃないかな」

新次郎「は?」

 

堀田は新次郎がとし子が病気で休みを取っているときに、健一と竜作が現場で仕事をしていてケンカになった。それを見た安さんが電話をかけるのは、順序から言うと新さんのところではないのか。もと子が2人を呼んで物差しでひっぱたく。これも新次郎が2人の頭(かしら)なんだから、もと子にすれば新次郎に叱ってくれと頼んでくるのが筋道じゃないのかと新次郎に言う。

 

堀田「そのうえ、なんだい。安さんがそいつを話しに来たのが鳶職の俺んとこだ。これじゃ、新さん、いつまでたったって…だい」

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堀田さんは鳶職だったのね。高所作業や足場を組んだり。今までよく分かってなかったよ。大工仲間ならなんで中西さんを連れてきたんだろうな~とは思ってた。そのあとの「いつまでたったって…だい」の…は分かりません!

 

堀田の言葉は続く。安さんのは気まぐれで、もと子は自分の子供を叱っただけとも言える。しかし、新次郎がはっきり2人の頭(かしら)になってないと正直思った。新次郎が普段から2人にハッパかけていれば、安さんは黙っていても新次郎の所へ一番先に電話をかけてくる。もと子も新次郎がちゃんと叱ってくれると思えば自分で殴るようなことはしてなかったと思う。

 

堀田「こんなことは言いたかねえけども、尾形のうちと新さんのために言うけどね。新さん、あんたはもう棟梁なんだから、棟梁なら棟梁らしく2人ぐらいの手下(てか)は抑え込んでおかなくちゃ」

新次郎「はあ」

堀田「あねさんが叱ったから、もういいってもんじゃないよ。あした会ったらね、あんた。あんたからもガーンとどなりつけとかなきゃダメだよ」

新次郎「はあ」

 

ふすまが開き、ネグリジェ姿、髪が乱れたとし子が出てきた。

堀田「やあ、腹痛(はらいた)だって? としちゃん」

とし子「ああ、うるさい。うるさくて暑いわ」

新次郎「おい、とし子。いらっしゃいぐらい言いなって」

とし子「だって頭へくるわよ。人が病気で寝てるうち来て、ビールを飲んで亭主に説教することないじゃない、誰かさん」

新次郎「何を言うんだよ、お前」

とし子「フン!」トイレ?の扉を閉める。

 

堀田「なんだい、新さんは。(新次郎の口調をまねる)おい、とし子、いらっしゃいぐらい言ったらどうだい? 甘いってね、程度問題だよ。それじゃ、新さん、世間があんたを見くびるよ。なるほど、健坊たちを取りしきれねえわけだい。てめえの女房一つ、てめえの思いどおりにできねえようじゃ、世間の信用を落とすよ、あんた、ホントに」

新次郎「いや、俺だって…」

堀田「殴る? 殴っちゃいねえじゃねえか、この前だって。俺はあんとき言ったろう? かみさんの恥はあんたの恥だ。ぶん殴ってでも世間並みの挨拶ぐらいできるようにしなよって言ったじゃねえか、俺が」

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新次郎「いや、だけどね、頭(かしら)」

 

ドアが開き、とし子が顔を出す。「ちょっと」

堀田「なんだよ?」

新次郎「とし子」

とし子「言いたいこと言わないでよ!」

堀田「な…なんだい? そりゃ」

新次郎「とし子、寝なさい、お前」

とし子「おじさん」

堀田「なんだよ?」

とし子「何よ、偉そうに。私を殴れとは」

 

堀田「俺はね、新さんのためを思って言ってるんだぞ」

とし子「余計なお世話です!」←そうだ、そうだ!

堀田「あんたがちゃんとしてりゃ、俺だってこんなこと言わなくていいんだい」

とし子「ちゃんとしてるじゃないよ!」

堀田「ちゃ、ちゃ…ちゃんとったってねえ、あんた」

とし子「私がいつ子供殺した? 私がいつ火事起こした? それでもちゃんとじゃないなら、ちゃんとって何よ? ちゃんとって」

 

堀田「あんたね、世間ってものはね…」

とし子「世間なんて知らないわ。そんなもんどうでもいいんだって、うちのパパ言ってるわよ」

新次郎「いや…いや、俺はだからさ…」

とし子「この間、言ったじゃない。世間なんてどうでもいいんだって」

新次郎「いや、当てになんねえって言ったんだよ」

堀田「ちょっと待てよ、新さん。それはどういう意味だい?」

新次郎「いやいや、ちょっと待ってください。頭(かしら)のこと言ってんじゃないですよ」

とし子「なにもへりくだることないわよ。お金もらってるわけでもないのに」

新次郎「とし子!」

 

堀田「新さん、俺はね…」

新次郎「いや、それはね、それは私だってこいつがいいとは思ってませんよ」

とし子「いいって言ったじゃないのよ」

新次郎「いや、だからちょっと、ちょっと黙ってろよ、お前は。なっ?」

堀田「甘いのも結構だけどもね。女房なんてものは一旦つけあがらしたら、なかなか直るもんじゃねえんだよ」

新次郎「ええ、いや、それはあの…私だってこいつの悪いとこは知ってますよ」

 

堀田「だったらてめえの女房じゃねえか。一度ぐらいガツンとやって世間並みの挨拶のできるようにしてやるのが亭主ってもんじゃねえのかい? 新さん」

とし子「ちょっと、ねえ!」

新次郎「いや、ちょっと待てって。ねえ、頭(かしら)、そりゃね、私だって世間ってものは分かりますよ。そりゃ、生きてんですからね。で、世間に合わせなきゃいけねえなとも思いますよ。だけどね、世間体ばっかり考えてね、うちん中、不幸にしちゃいけねえと思うんですよ」

堀田「そんなことは俺だって、そう思ってるよ。だけど、このかみさんが少しでも世間に合わせようとしたためしがあるのかい? 人が心配して来てるってのに、うるせえの、ビール飲んでるのって言われたんじゃ、私だって、そうそう円満な顔しちゃいられねえんだよ」

新次郎「いや、それはあの…こいつは確かに甘いかもしれませんね。いや、しかしね、私はそれでいいって思うんですよ。いや、そりゃたとえ世間がなんて言おうとね、こいつ一人ぐらいは俺の力でかばってやって自由にさしといてやりてえなって」

 

堀田「俺は帰るよ」席を立つ。

新次郎「いや、ちょっと、頭(かしら)。それは…それはいけませんよ。このまま別れたんじゃ後味悪くって、ねえ?」

堀田「俺はね」戻ってきてテーブルの上のタバコをつかんで腹巻に入れて玄関へ。「てめえの利益でこんなこと言ってるんじゃないんだよ。あんたのためを思って夜になって疲れた足を引きずって階段上ってわざわざやって来てるんじゃねえか。それをうるせえのなんのって言われたんじゃ…」

新次郎「ええ、だからその点はホントに重々」

堀田「新さん、俺にわびることはねえんだよ。一度でいいからかみさん、ガツッとやってやんなよ。甘(あめ)えにも程があらあ」ドアが閉まる音。

 

とし子「ごめんね」

新次郎「いや、まあ頭(かしら)がああいうふうに言うのは無理もないけどな」

とし子「殴ってもいいよ」

新次郎「俺はね、人に言われて、お前、殴ったりしないんだよ」

とし子「だけど、殴られんの、そんなイヤじゃないような気がする」

新次郎「フフ…それじゃ、余計、殴ったってしょうがねえじゃねえか」

とし子も少し笑顔になる。

新次郎「俺はね、お前ののんきな並みのかみさんみたいじゃないとこが好きなんだよ。それをお前殴って世間並みにさせたって、誰がホントに喜ぶっていうんだよ? そりゃ頭(かしら)は褒めてくれるかもしんないが、頭(かしら)に褒められたってしょうがねえや、フフッ。いいんだよ、お前は。今のまんまでいいんだよ」

とし子「おなかすいちゃった」

新次郎「えっ? あっ、そう? あっ、じゃ、治ったかな」

とし子「親切だったもんね、一日」

新次郎「しおらしいこと言うな」

とし子は新次郎のコップにビールを注ぐ。新次郎はビールを飲み干し、とし子と見つめ合って笑う。

 

何だかんだ幸せそうだよね。昭和一桁生まれの新次郎がどうしてこんなマインドになったのか知りたい。

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同じく昭和一桁生まれの謙作は妻子を殴ってたけどね。

 

現場

ラベンダー色の日産チェリーが到着。運転席、新さん。助手席、健一。後ろに乗っていた竜作が助手席を倒して車から出てきた。

 

窓ガラスに丸で囲んだ”ガ”の文字が書かれている。健一が窓を開ける。

 

新次郎「仕事に入る前に話しとこう。なんの話か分かってんな?」

健一「ああ」

新次郎「お前ら、何かっていうともめるんで、かみさんも頭(かしら)も俺にぶん殴れって言ったよ。だけどな、俺がぶん殴ったからって仲直りできるもんじゃねえや。俺はお前たちに仕事教えて、うんといい大工になってもらいたいと思ってたんだ。だけどな、根性とか入れるってんで、はり倒したりどなったりすんのは俺の性に合わねえんだよ。健坊は俺を煮えきらないって言った。男らしくないって言った。俺はな、どなったり、根性、根性ってわめき散らすのが男らしいとは思ってないんだよ。仕事教えるのは俺だ。教わるのはお前らだ。だけど、他のことは対等でいきたいじゃねえか。俺はな、どなったり、黙って俺についてこいなんてのは照れくさくてしょうがないんだよ。それをなんだよ、ええ? 俺にそんなお説教みたいなことさせるなよ。なんだよ、現場でケンカするなんて見損なったぞ、お前ら」

健一「すいません」

竜作「すいませんでした」

 

新次郎「どうだい、ケンカの原因っての教えてくれないか?」

健一「えっ?」

新次郎「こうやって毎日一緒に働いてんだよ。2人のもめた原因ぐらい知りたがったっていいだろう。よかったら相談にだって乗りたいもんな」

健一「竜作に惚れてる子がいるんだよ」

竜作「余計なこと言うなよ」

新次郎「なんだよ、原因は女か」

健一「俺は関係ねえよ」

竜作「大したことじゃねえんですよ。もうケンカしねえよ」自分の持ち場へ。

 

新次郎「まあ、いいだろう。女なんかいっくらだっているんだからな。つまんねえ取りっこなんかすんなよ」

健一「俺がいつ取りっこしたよ?」

新次郎「いや、違ったらごめんよ」

健一「当たり前じゃないか」

新次郎「そんな怒るなよ。いや、俺も若いころはよくやったからさ。仲間の女のほうがな、どうもよく見えたりしてなあ、ハハハ…」

健一「俺は新さんと違うよ」

新次郎「そりゃまあそうだ」

健一「俺があいつの彼女に惚れるわけないじゃないか」

新次郎「ハハハハ…」

健一「バカにしないでくれよ」自分の持ち場へ。

新次郎「健坊、健坊!」

健一「人をバカにしやがって! ちくしょう!」壁をたたいて穴を開ける。

 

新さん…女好きだよね~。殴らないという立派な信念があるけど、酒飲みだし、ギャンブラーだし、聖人君子じゃない。堀田さんもいちいちうるさいこと言うけど悪い人じゃない。

 

夜、尾形家

繕い物をするもと子。「何時に帰ってくんのよ?」

健一「何時だっていいだろ」

もと子「そうはいきませんよ。戸締りだってあるんですからね」

健一「台所の鍵持ってるよ。寝ててよ」

もと子「健一!」

健一「俺はね、時間のこと聞かれんの一番頭にくんだよ。いいじゃないか、何時だって」

もと子「フン。そんならそんなけったいなウソつかんとき」

健一「えっ? ウソってなんだよ?」

もと子「竜作さんの恋人とかなんとか」

健一「そうなんだもん。しょうがないだろ」

もと子「遊びに行くなら行くって言えばいいでしょう。相談乗るとか乗らないとか何よ?」

健一「だってそうなんだもの」

もと子「それにしたら、よう相談に来るわね」

健一「母ちゃん、母ちゃんもそんなふうに思うのかい?」と怒り出し、そんなら行かないと玄関に出て、すぐそこで待っていた文子に「俺はね、あんたと竜作の心配なんかもうたくさんなんだよ。俺んとこ相談しに来ないでくれよ。つまんないこと、みんな言いやがって、面白くねえんだ、俺は。俺だってね、恋人ぐらいいるんだから、他んとこ行って相談してくれよな」とまくし立て家の中に戻ったが、玄関の靴箱にもたれかかって腕組みしている。

 

もと子がどうしたのよと様子を見に来ると、再び外へ。

健一「文ちゃん」

もと子「何が文ちゃんや」

 

帰ろうとした文子にごめんよと言い、夜の街を歩く。文子は今日、今度のお休みに一家で熱海へ行こうと誘われたと健一に話した。行っちゃいけないよと健一が止めるが、文子はあのうちは私をとても大事にしてくれるという。健一は人手不足だからどこだって大事にされるとぶっきらぼうに返した。

 

文子は親がいなかったから、家族の一人みたいにされるととっても弱い。愛している人と結婚出来ればそれに越したことはないが、竜作は(そば屋と)結婚しろと言う。

 

健一「まだ若いじゃないか。なぜ結婚、結婚って言うんだい?」

文子「寂しいのよ。肉親とか親戚とか、そういうふうに呼べる人が欲しいの。そりゃ、おそば屋のあの人は人がいいだけで魅力だってないわ。愛してはいないわ。だけど、一家が望んでくれれば結婚したくなったって無理はないでしょ?」←益夫さん…(涙)。

 

健一はこれから竜作の所へ行こうと言うが、文子は断る。

 

健一「俺、あんたがそんなふうに嫁さん行っちゃうのがどうしてもイヤだったんだ」

文子「ありがとう」

健一「俺が18じゃなかったら、25とか30だったらどんなによかったかと思うよ。そしたら俺、あんたを嫁さんにしちゃってるよ」

文子「そんなこと言って。恋人に怒られるから」

健一「ハハ…そうだな」

 

文ちゃん、年下の男の子にする相談じゃないでしょ。もと子に相談するほうがまだいいような気がする。

 

尾形家

まだ繕い物をしているもと子。11時に帰ってきた健一はお土産に人形焼きを買ってきた。男物の着物を仕立てているもと子。安さんのもので、このごろは和裁をやる人が少なくなり、賃仕事。一月(ひとつき)前から仕立物屋を始めた。

 

健一「よせよ、そんなこと」

もと子「どうしてよ?」

健一「どうしてって、俺、なんだかやだよ」

もと子「何言ってんの」

 

もと子の夫が生きてる頃は請負も手広くやっていたが、今、何もすることがなく暇。趣味と実益を兼ねている。2人の食い扶持は健一の働きで十分だし、請負のお金もちゃんと入ってくる。

 

もと子「だから、これは母ちゃんの道楽と思ってよ、ねっ? 1人でボサーッとしてるよりお金が入る道楽やってんだからいいでしょ」

健一「うん」

 

母ちゃんがやってることになんで息子が文句言うんだよ!?

 

買ってきた人形焼きと酒を飲もうかと健一が言う。

もと子「いいよ。お前、バカ。お前、まだ未成年じゃないか」←一応、酒飲んじゃいけないとは思ってるんだよね。飲むシーン多いけど。

 

もと子はお茶を入れ、2人で人形焼きを食べ始める。相談の内容を気にするもと子。内容を言わない健一にのけ者だと寂しがる。健一が話してくれなくてつまらない。いつか2人で旅行しようと健一が言う。「ジェットで北海道なんていいじゃないか」

 

優しくて気持ち悪いと言うもと子とお茶を飲み合う健一だった。(つづく)

 

新次郎さん、ホントに素晴らしいよ。当時の人から見りゃ変わり者扱いだったのかな? とし子も客前だけはしおらしくそれっぽく見せれば世間は簡単にだまされちゃうんだからそうしちゃえばいいんだよ。

 

昨日から始まったらしい…1話見逃しちゃったけど、Tverで見られるらしいので見てみようかな。

 

2話以降は一応録画予約しました。2019年以降、BSやCSを見られる環境になって、BS12だか前もどこかで再放送してたことがあったんだけど、その時はなんとなくスルーしてしまってました。今度は完走したいな。