TBS 1974年7月31日
あらすじ
夏休みになり、子どもたちの提案を実行する日がやってくる。紀子(音無美紀子)は、楽しそうな一郎(春田和秀)を見て複雑な気持ちになる。その夜、酔っ払って帰宅した大吉(松山省二)は、ゆき(小夜福子)に叱られる。
2024.5.17 BS松竹東急録画。
福山大吉:松山省二…太陽カッター社長。字幕黄色。
福山紀子:音無美紀子…大吉の妻。字幕緑。
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和泉和子:林美智子…元の妻。
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福山隆:喜久川清…大吉の弟。浪人生。
田口:桐原新…隆の友人。
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友二:鍋谷孝喜…太陽カッターの従業員。
洋介:田尻丈人…太陽カッターの従業員。
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福山一郎:春田和秀…大吉、紀子の息子。小学1年生。
和泉晃:吉田友紀…元、和子の息子。小学1年生。
ナレーター:矢島正明
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福山ゆき:小夜福子…大吉の母。
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和泉元(げん):杉浦直樹…中学校教師。
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監督:中村登
17話や「思い橋」でも監督を務めた中村登さんは木下恵介さんと同年代の映画監督。ドラマの監督もするってすごいな、なんか。
夏休みに入り、子供たちの提案がいよいよ実行されることになりました。紀子とすれば、子供の本能が真実の親を見分けたのだと思ったりしたのですが、同時にわが子、一郎が和泉夫婦を選んだことに何やら嫉妬のようなものさえ感じるのでした。
線路脇を歩く紀子と一郎。チューリップハットでサッカーボールをヘディングする一郎を紀子は注意した。先を歩いていた一郎は戻って紀子の持っていたカバンの持ち手を片方持って歩きだした。
パーラーレモンで先に待っていた和子と晃。和子は熱心にメモを書いていた。
店員「ご注文はまだですか?」
和子「今、連れが来ますから、そのとき一緒にね」立ち去ろうとした店員に氷を入れた水をもう1杯下さいと頼んだ。
ため息をつく晃は、おなかがすいていた。和子はちゃんと朝ご飯を食べなさいと言ったことや、一郎ちゃんが来るまで待ちなさいとメモを書き続ける。
紀子たちが来店。和子は一郎の色が黒くなったことに気付いた。和子は晃が朝食をとらなかったため、おなかが空いていると何か注文しようと言うが、紀子は別の食べ物屋さんにでも行きましょうかという。晃に何がいいのと紀子が聞いたのに「サンドイッチかホットドッグでいいんですよ」と答えたのは和子。
晃はホットドッグと言い、一郎はアイスクリームとホットドッグと言う。
紀子「あんたは朝ご飯たくさん食べたでしょ」
一郎「食べたいんだよ」
晃も真似してアイスクリームとホットドッグと言う。和子がホットドッグだけ言えば、晃は「やだよ、食べるよ」。紀子がアイスクリームだけというと、一郎は「やだよ」。
和子 晃
テーブル
紀子 一郎
で座っていたのに、紀子が一郎を注意していると、一郎が晃の隣に移った。
紀子「一郎、ちゃんとここへ座ってらっしゃい」
一郎「やだよ!」
紀子「一郎!」
和子「お母さんの言うこと聞いて。ねっ? 一郎ちゃん」
一郎「ここのほうがいいもん」
気まずい紀子。
現場に到着した大吉。「おい、友二。あと何時間ぐらいで終わる?」
友二「ああ、社長」
大吉「社長なんて呼ぶなよ。この暑いのによ、何べん言ったら分かんだ?」
友二「あと2時間もすれば終わりますけど」
大吉「そうか。それじゃあさ、終わったら、ここの現場、行ってくんないか? (メモを渡す)鶴見駅前だよ」
友二「はい」
大吉は次の段取りとして、あれを電話して、片山さん…とウロウロ。
洋介「あの、トラックのクラッチがちょっとおかしいんですけどね」
大吉「ああ、分かった、分かった。じゃ、あと頼んだぜ」なぜか立ち去る。
洋介「なんだか落ち着かねえな」
まさしく大吉は落ち着かなかったのです。どこにいても去っていくわが子と近づいてくるわが子が目の前に浮かぶのでした。たとえそれを子供の気まぐれだと思ってみても無駄でした。子供の気まぐれにこそ真実が含まれているような気がしたからです。
バイクで疾走する大吉。
京浜蒲田駅前
和子は別れ際、晃の嫌いな物、勉強時間など気付いたことを書いたメモを紀子に渡した。A5くらいの紙2枚にびっちり書いてる。紀子も後でメモを渡すと言い、それぞれ荷物と子供たちを交換して別れた。
和子と一郎が踏切を渡って行くところを見ていた紀子は晃に促され歩き出す。紀子がもう一度振り返ったとき、電車が通過していて一郎の姿を見ることはできなかった。晃と手をつないで歩きだす紀子。
福山家茶の間
ゆきの作った浴衣に着替えている晃はプラレールを見ていた。
ゆき「速い速い特急だね、これは。どう? 面白い?」
晃「うん!」
ゆき「うん、よかったねえ」
仕事はとっくに終わったはずなのに大吉の帰りが遅い。
ゆき「あっ、ポイント切り替えたのね。晃ちゃんがそうしたの?」
晃「うん!」
ゆき「頭がいいね、いい子ちゃんね」
隆「変な声出さないでよ」
ゆき「どうしたの?」
隆「母さんの声が気になって勉強できやしないよ」
ゆき「2階まで聞こえるわけないだろ」
隆「筒抜けだよ。何か冷たい物ない?」
ゆき「自分で探しなさい」
紀子「ジュースが冷蔵庫に入ってますよ」
隆は何も言わずに台所へ。
晃は突然、汽車を止め、紀子にテレビを見てもいいか聞いた。
ゆき「ああ、いいともさ」
見たい番組があるわけではなく、なんでもいいらしい。
ゆき「うちじゃ見せてもらえないの?」
晃「うん」
ゆき「ああ…テレビぐらい見せてやればいいのにね」とテレビをつけると、珍しくテレビのはめ込み画面にヒデキ登場!
♪愛する二人は はなれていても
さびしくはないさ 夜も朝も
西城秀樹「薔薇の鎖」1974年2月25日発売
こういうのってこれ用の映像を撮ったのか、歌番組の流用なのか!?
ゆき「ねえ、果物食べる?」
晃「うん」
ゆき「そう、じゃ、おばあちゃんがね、おいしいメロンを切ってあげるからね。晃ちゃんのために買ってきたんだよ」
紀子は和子からもらったメモを見ている。
台所でジュースを飲んでいる隆。「なんだ、メロンなんかあるの?」
ゆき「晃ちゃんに買ってきたんですよ」
隆「俺も食べるよ」
ゆき「残ったらね」
隆「なんだよ」ジュース瓶を持ったまま、茶の間にいる晃に「ダメだぞ、夜遅くまでテレビ見てちゃ」と言い、立ち去る。
ゆき「なんてことを言うの、お前は。(晃に)いいのよ、いくら見てても」
紀子はゆきにメモを見せる。
・テレビは7時半までの子供番組
・寝る時間は8時半
と書かれている。
ゆきはうちにいる間は特別だと言い、あのうちは少し子供に厳しすぎる、うちにいる間だけでものんびりさせてあげたら?と紀子に言う。
ゆき「何、遠慮してんの? (晃を気にしつつ小声で)あなたの子供じゃないの?」
紀子は晃を見る。無言でテレビに見入っている晃。
和泉家
眠っている一郎。
和子「疲れたのね、子供ながらに」
元「うん」
和子「晃とは随分違うのね。よく食べるし、よく眠るし」
元「ああ」
はだけたタオルケットを一郎にかけた和子は「あなたに似てるわ」とつぶやく。「血がつながってるのね、この子とは」
元「うん。お前の産んだ子だよ」
和子「そうよ。私が苦しんで産んだ子よ」
血がつながっていると言われただけで、なぜ特別な感情に襲われるのでしょうか。晃と一郎の間に差があるはずはないのです。元はふと自分こそが血のつながりにこだわっているのではないかと思うのでした。
福山家
まだプラレールで遊んでいる晃。汽車は汽笛を鳴らすので地味にうるさい。紀子もゆきもちゃぶ台で頬杖をついて眠そう。
紀子「晃ちゃん、今日はもう終わりにしたら?」
晃「まだ眠たくないの」
紀子「だってもう11時よ。いつもは9時に寝るんでしょ?」
晃「うん。もう少しね、いいでしょ?」
ゆき「ああ、いいとも。(紀子に)まあ、しかたがないさ、最初の晩だから。」
大吉がようやく帰宅。箱を抱えて「晃、いるか?」と千鳥足。
紀子「どうしたの? そんなに酔って」
大吉「お~い、晃はどこで寝てんだ? お土産だぞ~!」
ゆきに促され、晃が大吉のもとへ。「おかえんなさい」
大吉「よう、晃! よく来たなあ」とお土産を渡す。明日開けなと紀子に寝かしてやるように言う。晃は「おやすみなさい」と言い、2階へ。
ゆきに水を求める大吉。
ゆき「今日は酔って帰る日じゃないよ」台所へ。
大吉「しらふで会えるかい」とつぶやく。
翌朝、晃が好きな五目ご飯を作った。
紀子「奥さんがね、事細かに書いてくれたのよ、いろんなこと」
ゆき「まあ、全部は守れないね。あそこまでいくと」
大吉「いや、だけどさ、五目ご飯とコーンスープじゃ、こいつはすごい組み合わせだよね。ハハハハッ」
紀子もゆきも笑う。
紀子「コーンスープも大好きなのよね?」
晃「うん、お代わり」
紀子「はい、たくさん食べてね。晃ちゃんのために作ったんだから」
ゆき「少食だって聞いたけど、そんなことないじゃないの」
紀子「そうですね、はい」
大吉「子供なんてのはな、気分で食べるんだからさ、好きな物(もん)食べさせてやんなくっちゃ。そりゃ少食になっちゃうよ。いいんだ、いいんだ…これで」
ゆき「今日は日曜日でよかったね。落ち着いて朝ご飯が食べられるから」
起きて来た隆は「なんだ、五目ご飯?」と不満気。
ゆき「イヤなの?」
隆「朝っぱらから食べる気しないな。白いご飯ないの?」コーンスープにも文句を言い、紀子に「白いご飯だけちょうだい」って。命令するな!
大吉「バカだね~、こんなにおいしいのに」
割と大きなお皿にレンゲですくって食べるコーンスープ。大吉がレンゲですくって飲むと、晃も同じようにして飲んだ。
大吉「おいしいね」
晃「うん」
ふたりをチラ見しながら新聞を読んでいた隆は「一郎のヤツはどうしてるかな?」とつぶやき、場を凍り付かせる。わざわざ言うことないのに。
福山家
10-4-3=2 とノートに書いている一郎。
元「うん? そうかな?」
一郎「違う?」
元「違うんじゃないかな。いいかい? 10から4引いたら?」
一郎「え~っと6」
元「そう。その6から3引いたら、いくつ残る?」
一郎「3」
元「そうだ。だから答えは?」
一郎「あっ、3だった」
元「そうそう。よくできるね、一郎ちゃんは。こういう問題はね、大きい数から1つずつ引いてけばいいんだよ。全部一度にやろうとしないでね。いいかい?」
一郎「うん」
なぜ杉浦直樹さんは先生っぽく感じるんだろう。髪型? んなわけない。このドラマ以外で先生役をやってるのは私は見たことないんだけどな。大体スーツを着たサラリーマンだけど、「たんとんとん」でも大工さんなのに先生っぽかった。
元「じゃ、今日はもうやめようか?」
一郎「もっとやる」
元「おっ、勉強家だな、一郎君は。驚いたよ、おじさんは。ハハハハ…」
一郎は鼻の下をこすってみせた。
和子が「一息入れたら?」と元にお茶を運んできた。それでも「いいよ」と勉強を続ける意志をみせる一郎に和子はエプロンのポケットからキャンディを渡した。すぐ口に入れる一郎。
元は書斎で掃除機をかけている和子のところへ行き、扉を閉めた。
和子「すいません、暑いから開けといてください」
元「和子、掃除機止めなさい」
元はテーブルの上に飴を置いたことについて「晃にはやらないのに、どうしてあの子にはやるんだ?」と聞く。向こうのうちでは、いつも食べさせてると答える和子。「あの子も好きなのよ」
元「晃だって甘い物は大好きだぞ。でも、お前、やらなかったじゃないか」
和子「どうしたの? 何怒ってるの?」
元「分からないのか?」
和子「一郎はずっと前から食べてるのよ。大好きなのよ」
元「そんなこと言ってるんじゃないよ」椅子に掛けていたが、立ち上がる。
和子「じゃあ、なんですか?」
元「お前が子供に甘い物を食べさせないのは歯に悪いと思うからだろ? 必ず虫歯になると思うからだろ?」
和子「ええ、そうですよ」
元「じゃ、なぜ一郎にやるんだ?」
答えられない和子。
元「甘い物が悪いと思うなら、子供を区別するな。そんなことであの子の歓心を買おうと思うな」
和子「それほど私、下品じゃないわ。あの子が欲しがってると思ったからあげたのよ。それだけよ」
元「それでも結果は同じことなんだ」
和子「じゃあどうしろっていうんですか?」
元「晃と同じにすればいいじゃないか。選ぶのはあの子のほうだ。僕たちじゃない」部屋を出て行き、和子はピアノの椅子にへたり込む。
夜、福山家
一郎もゆきの浴衣を着て、元と神経衰弱をして遊ぶ。
元「うん? いやあ~、負けた負けた」
一郎「おばさん、また勝ったよ!」
和子「うわあ、すごいわねえ」
一郎「おじさん、すぐ忘れちゃうんだよ」
和子「もう年なのよ」
一郎「え~、年なの?」
元「(和子に)何を言ってるんだ、(一郎に)もう一回やろう」
一郎「やろう」
元「よ~し、今度は負けないぞ」とトランプを切る。
一郎「おじさん、僕にもカード切らして」カードを切って並べる。
和子「さあ、一郎ちゃん、もう9時よ。寝ましょう」
一郎「僕はまだ寝ないよ」
元「もう少しいいよ。これから一勝負やるんだから。(一郎に)なあ?」
和子「晃はいつも8時半には寝てますよ」
元「いいよ、今夜は」
和子「晃と同じようにする約束でしょ?」
元「30分ぐらい遅れたって関係ないよ」
和子「時間の問題じゃありませんよ。自分で言いだしといて」
元「あれとこれとは別だよ、(一郎に)ねえ?」
一郎「おばさんも入んなよ」
和子「私が?」
元「そうそう。お前も入んなさい」
一郎「ねえ、おばさん」
和子「おばさん、まだ仕事があるのよ」
元「いや、仕事なんかいいよ」
一郎「やろうよ、3人で」
和子「そう? じゃ、ちょっとだけよ」
和子も元も気になりどころが違うんだよね。
福山家
大吉「おい! 買ってきたぞ」と帰ってきたが、紀子たちはテレビにくぎ付け。晃が食べたがったアイスクリームを買ってきたが、晃はもう寝ていた。
テレビ画面に映るのは時代劇。
(斬る音)
男「うっ!」
画面に映るのは林与一さん。
(斬る音)
男「ああっ!」
大吉はしかたなくみんなで食べようというが、紀子もゆきも隆もテレビに夢中で断った。
大吉「誰も食べないのか?」
紀子「じゃ、冷蔵庫しまっとく?」←冷凍庫ではないの?
大吉「いいよ、俺が食うから」
テーマソングが流れてる。
大吉が買ってきた紙袋には「FUJIYA’S HOME MADE」。不二家に行ったのかな。「食べるって言ってるだろ」という大吉に紀子が台所に立って準備をする。自分でやれ!
大吉「まったく夢中になって見てやがんだから」
目をこすりながら晃が起きてきた。寝るときはパジャマなんだね。
大吉「な~んだ、起きてたんじゃないか。買ってきたよ」
晃は、おしっこで起きてきたので紀子がトイレに連れていった。
大吉「隆、お前、テレビなんか見てていいのか?」
隆「ああ、これが終わったら行くよ」テレビに夢中。
大吉「まるでひと事だな、お前のは。大丈夫なのかよ? 来年」
隆「まあ、そう思ってやるしかないさ」
大吉「7月はもう終わりなんだぞ。じき、秋が来るんだから」
隆「脅かさないでよ」
大吉「大体、お前ちゃんと予備校行ってんのか?」
隆「ああ、行ってるよ」
大吉「来年が勝負なんだからな」
隆「分かってるよ。ダメなら働けっつうんだろ? ダメならなんでもするつもりだよ」
大吉「だから合格するんだよ。是が非でも」
隆「まあ、試験は運不運だからな」
大吉「何のんきなこと言ってんだ。1年間の遅れってのは大きいんだぞ。ほら、早くお前、2階上がってやれよ」
隆「もうすぐだよ。最後のいいとこ始まんだから」
大吉「母さん、テレビ消しちゃいなよ」
隆「ダメだよ」
紀子が戻って来た。晃は寝ぼけていておしっこは出なかった。大吉はせっかく起きたんだから食べさせてやりゃよかったのにと悔しがるが、紀子はもう遅いからと台所へ。
隆「義姉(ねえ)さん、ほら、見なさいよ」
紀子「えっ? ちょ…どうなった?」
大吉「なんだ。テレビが見たいために子供寝かしたんじゃねえだろうな」
紀子「そんなことするわけないでしょ」皿に盛りつけたアイスを大吉に渡し、テレビに集中。
テレビ画面には岩下志麻さんの横顔。
「でも、9年前、あんたに会わなかったら、お前さんと一緒になってたら、私はこんな女になんなかった。そうだ、きっとそうだよ。今頃、お前さんと所帯持って赤ん坊産んで、私だって当たり前の暮らしができたんだ」
どうやらこちらの映画らしい。
「必殺仕掛人 春雪仕掛針」1974年2月16日公開
この映画、村井国夫さん出てるね。
『必殺仕掛人』のテレビドラマ版は1972年9月2日から1973年4月14日まで毎週土曜日22:00~22:56に朝日放送と松竹が共同製作、TBS系で放送された時代劇。全33話。主演は林与一、緒形拳。20話ゲストは松山省二さん。
大吉「まったく、よくテレビなんか見てられるよ、こんなときに」
紀子「どうして晃を寝かせたことがそんなにいけないの?」
ゆきと隆はテレビに集中する中、言い争いになる大吉と紀子。
大吉「俺は遊びでアイスクリーム買いに行ったわけじゃねえんだからな」
紀子「だから行かないほうがいいって言ったじゃないの」
大吉「子供が欲しがってんだ。放っとくわけにいかねえだろ」
紀子「眠たかったのよ、晃ちゃんは」
大吉「お前、あのとき、そんなこと言わなかったじゃないか」
紀子「言いましたよ、ちゃんと」
大吉「ウソつけ」
紀子「自分が忘れたんじゃないの」
大吉「俺が忘れるわけないだろ」
紀子「大体ね、晃はね、うちにいるときだって、この時間には、もう、とうに寝てるのよ。それに夜、アイスクリームなんか食べさせたら、あの奥さん喜ぶはずないわ。あのメモにだって夕食後には甘い物(もん)食べさせないでくれって書いてあるんですもの」
大吉「どうして、そんなメモにこだわんだよ。関係ねえじゃねえか」
紀子「無視するわけにはいかないじゃないの」
大吉「一体誰の子だと思ってんだ? 自分の子供じゃねえか。あっちの奥さんのご機嫌取るためにうちに来てんじゃねえんだぞ」
紀子「そんなこと言ったって、いきなり新しい生活なんかさせられないわよ。混乱するじゃないの」
大吉「知ったようなこと言うな」
紀子「だってそうじゃない」
大吉「自分の子供には自分の子供に対する態度ってものがあるんだよ。お前のはただ遠慮してるだけじゃねえか。あんな紙切れ捨てちゃえよ。何も分かってねえんだから」
紀子「あなたは勝手なのよ」
大吉「何を?」
ゆき「大ちゃんいいかげんによしなさい」←まず、嫁じゃなく、息子をたしなめるからいい姑さんなのよ。
大吉「母さん、ちょっと黙っててくれ」
隆「うるせえなあ」
大吉「なんだ、お前。もういっぺん言ってみろ」
紀子「あなたは自分だけがあの子の心配してると思ってるのよ。あなただけじゃないわ」
隆「じゃ、俺も言うよ」
ゆき「お前は余計なこと言わなくたっていいんだよ」
隆「あの子のことだってさ、あんまりベタベタするのおかしいよ。一郎のことだってあるんだから」
大吉「なんだ、この野郎。お前に俺の気持ちが分かるか!」つかみ合いのケンカになり、隆を殴りつけた。ゆきや紀子が止める。
この一家にとって、晃の存在は、まだ大きな戸惑いを残していました。
晃の寝顔。(つづく)
大吉はまた仕事がおろそかになってないか!?
今、「赤い疑惑」の再放送を見ていて、そちらでも血液型ネタが出てきた。大体AB型よね。大映ドラマだと事故や病気で判明、輸血で絆を深めるみたいな描写が度々出てくるけど、それをしない木下恵介アワーは、表現方法が全然違うんだな。ドラマの中でも子供が怪我したり、病気になったりなんて見たくないもんねえ。
早くも…ってことはないけど、「幸福相談」のCMも見かけるようになりました。「太陽の涙」から「わが子は他人」に決まったときは、木下恵介アワー最後の作品でもあるし、これで夕方の木下恵介アワーが終わるのではと一瞬危惧したのですが、「幸福相談」につながってくれてよかった。でも、全17話だからすぐ終わっちゃう。
「太陽の涙」から続けて沢田雅美さん&小倉一郎さんのコンビ、山口崇さん、小夜福子さんの「おやじ太鼓」ファミリーが出演。そうなると残りのカラー作品は「おやじ山脈」と「炎の旅路」なんだけど、どこでも再放送されたことがないので、この2作品は全話残ってないんだと思ってます。あれば見たいけどねえ。
だから「幸福相談」のあとが木下恵介アワーや木下恵介劇場の白黒作品をやってくれるのか気になってます。私は木下恵介劇場の「記念樹」が見たいんだよ~!