徒然好きなもの

ドラマの感想など

【ネタバレ】生きる

1952年 日本

 

あらすじ

巨匠・黒澤明の世界的名作。市役所の市民課長・渡辺(志村)は29年11ヶ月無欠勤の模範的な役人だったが、ある日自分が胃ガンに冒され余命少ないことを悟る。渡辺は今までの人生を振り返り、人生の最後に本当に市民の役に立とうと公園建設に情熱を注ぐ…。非人間的な官僚主義に対しての批判と、人間が生きる上での哲学がストレートに表現され、志村の鬼気迫る演技が作品に深い感銘を与えている。ベルリン映画祭においても受賞に輝いた。

2023.3.30 日本映画専門チャンネル録画。軽部さんの解説付き。

 

東宝創立20周年記念映画

昭和27年度 藝術祭参加作品

 

ゴンドラの唄が流れる。

ゴンドラの唄

ゴンドラの唄

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映し出されるレントゲン写真。

これはこの物語の主人公の胃袋である。噴門部に胃がんの兆候が見えるが、本人はまだそれを知らない。

 

市民課長の渡辺勘治は20年ほど死んだように生きている。一体これでいいのかと思いつつ、地位を守るため、何もしないで仕事をしている。

 

公園を作りたいという主婦たちの訴えが市民課→公園課→保健所の環境衛生課→予防課→免疫係→虫疫係→市役所・下水課→道路課→都市計画部→区画整理課→消防署→区の教育課の児童福祉係→市会議員→市民課とたらい回しにされた。

 

結局、市民課に行かされた女性たちは、にべもなく土木課に行くように言われ怒りを爆発させた。女性数人のうちの一人、赤ちゃんをおんぶしてるの菅井きんさんだ!

 

来月30年間無欠勤になるはずの課長が休んだ。最近、食事の箸をちょっとしかつけないと噂し合う同僚たち。

 

病院に行った勘治。待合室にいた男が胃がんの症状を次々に話し、身に覚えのある勘治は震え上がる。男の言う通り、医師から軽い胃潰瘍で手術の必要はないと言われ、本当のことを言って欲しいと懇願するが、願いは聞き入れられなかった。

 

勘治が帰った後、医師同士で後半年くらいだろうと話していた。今は告知が当たり前のせいか、言って欲しいという人になら話していいと思うんだけどなあ。

 

真っ暗な家に入って行った若夫婦。散々、父である勘治の悪口を言い、退職金を担保に家を買おうと話している。勘治の退職金60~70万。恩給が月1万2~3000円。電気をつけると、ぼんやりしている勘治がいてビックリ。

 

私たちの部屋で何してたの?と息子の光男の妻・一枝はまた悪口を言う。光男役は金子信雄ってあの?って思うくらい、私のイメージにある金子信雄さんと違う。

 

回想

光男が小さい時に妻を亡くした勘治は兄の喜一から大きくなって光男の嫁に邪魔にされるから再婚したほうがいいと勧められていた。光男の大学野球を応援に行ったり、出征した光男を送り出したり…光男たちの部屋にいたのは病気のことを話したかったんだろうな。

 

温かい木下恵介アワーばかり見てたから一枝みたいな嫁、やだなあ。妻の言いなりの光男も。

 

勘治が無断欠勤をしており、光男は伯父の喜一の元へ行く。4日ほど前に訪ねてきたと言うが、顔を見るなり借金ならお断りだと言っていた。5万円引き出していることから欠勤してるのは女のことだと推理。妻・たつは痩せていて肌もカサカサで何か言いたいことがあったのではと気にする。浦辺粂子さんだ〜。

 

飲み屋で酒を並べるだけで飲んでいない勘治を不審に思った小説家に身の上話をした勘治。飲み代はおごると店を出て、パチンコ屋、バー、女性たちがたくさん立っている通りを歩いて帽子を取られたり…。

 

落ち着いたバーへ。上品そうなマダムは丹阿弥谷津子さん。こんな若い時は初めて見たかもしれない。実生活では金子信雄さんと夫婦? へえ〜!?

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りんのおばあさん。

 

ピアノの弾き語りのあるバー。勘治は「ゴンドラの唄」をリクエストする。大正時代のラブソングですな、とピアノの演奏を始め、涙をいっぱい浮かべた勘治が歌う。

 

ストリップを見に行った勘治の目は輝く。

 

次に行ったのはホールいっぱいに人がいて男女が密着しながら踊る店。どこの店に行っても生演奏でいいねえ。

 

勘治、小説家、派手な女性2人とタクシーと乗っていたが、勘治は途中で降りて吐いてしまう。再びタクシーに乗り込むと、辛気臭いと英語で歌を歌い出す。

Come On-a My House

Come On-a My House

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朝、偶然、市民課の若い女性・とよに出会う。1年半我慢してきたけど市民課を辞めたいというとよは課長の判子がないと辞められないと言うので、家に連れて行った。

 

光男と一枝は若い女性を連れてきたと陰でコソコソ。

 

とよの辞表に判子をついた勘治は自ら欠勤届を書き、判子をついて提出するように頼むが、わしも一緒に、と外へ出ていく。

 

親しそうに歩いていく勘治ととよを2階の窓から見ている息子夫婦。とよもまた腕まで組んじゃってなあ。

 

とよは課長の家が羨ましいと言い、自分の家は二間に3家族が住んでて戦国時代みたいだと話す。立派な息子さんにきれいなお嫁さんがいるんでしょうと言われ、なんとも言えない勘治。とよが家に上がった時に靴下に穴が開いていることに気づいた勘治は靴下を買い、プレゼント。

 

茶店で向かい合って話す。とよは同僚たちにあだ名をつけていたと楽しそうに話す。色気のない無邪気な若い女性という感じがとてもいい。勘治につけたあだ名はミイラ。勘治は辞表を出すのは明日でいいとパチンコ屋、映画などに連れ出す。最後の料亭で食事が進まず、顔色が悪い勘治は息子の悪口を言い、どこの親も同じだととよに言われた。しかし、息子さんのことが一番好きなんですねと言われて笑顔になる。

 

家での夕食。和室じゃなく、テーブルとイスなんだね。弾まない会話。勘治が病気のことを話そうとしたが、分かってますよ、こういうことは事務的にと若い女と放蕩してることを強く責められ、何も言えなくなった。

 

勘治が欠勤して2週間。市民課では様々な噂が流れる。

 

工場で働き始めたとよを訪ねた勘治。とよは工場の仕事が忙しく毎晩連れ回されるのが嫌だと断ったが、今晩だけよと付き合ってくれた。

 

オシャレなレストラン。とよはごちそうしてもらって悪いけど課長さんともう話すことはない、老いらくの恋ならお断りだとハッキリ言う。勘治は若くて活気のあるとよと一緒にいれば、何か分かるかもと詰め寄る。距離が近い。とよは玩具工場でうさぎのおもちゃを作っていて楽しいと言う。課長さんも何か作ればと言われ、やる気になった?勘治は、とよを残して店を出ていく。

 

2週間ぶりに出勤した勘治は同僚に黒江町婦人連合会から出されていた「暗渠修理及埋立陳情書」を見せ、市民課が主体となり、実地調査をしようと始業のベルが鳴ると同時に役所を出た。

 

それから5ヶ月後、渡辺勘治が死亡。え!

 

葬式には新聞記者が来た。公園設立に尽力してきたのは勘治なのに助役が手柄を取ったこと、勘治がその公園で亡くなったことを指摘する。助役は勘治は自殺ではないし、凍死でもない。胃がんの内出血だというのは病院でも確かめられると突っぱねた。

 

助役は新聞記者というのは役所のことが分かってないと言い、部下たちは助役がすごいのだとゴマをする。

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助役の中村伸郎さんは「秋日和」の田口。

 

黒江町婦人会の女性たちが泣きながら勘治の遺影に手を合わせ、兄夫婦、息子夫婦も涙を拭く。

 

助役たちは時計をチラ見して帰り支度。兄夫婦、息子夫婦、市民課の同僚たちが残った。なぜ勘治があんなに熱心になったのか、胃がんだと知っていたのでないかと話し合う同僚たち。しかし、胃がんだと聞かされていなかった光男は父は胃がんと知らずに死んで幸せだったと言い、喜一は艶種があったと若い女がいたと言うようなことをいい、納得させる。

 

市民課係長の大野役の藤原釜足さん、市民課職員・小原役の左卜全さん、下水課職員の長浜藤夫さん。みんな若い。

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長浜藤夫さんは木下恵介アワーの常連。

 

勘治の熱心な仕事ぶりを話す同僚・木村もいたが、あれは偶然だと笑い合う者たち。しかし、ひとりひとり勘治がそれぞれ各所で頭を下げ、反対派の強面たちにも一歩も引かないところを見ていた。頬に傷のある加東大介さん!

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南の島に雪が降る」にも志村喬さん出てたな。

 

話し合ううち、勘治は胃がんのことを知っていたのではないかと言い合う。我々もそうなりゃやるだろう、いやいや、渡辺さんのようにできるか? 報われずに死んだ勘治を思う同僚たち。公園に落ちていた帽子を届けに来た警官も焼香に来た。

 

焼香を終えた警官は11時ごろ新公園で見かけたが、酔っ払いと思い、そのままにした、職務怠慢だったと頭を下げた。あんまり楽しそうに歌っていたと言う。雪が降る中、ブランコに乗って「ゴンドラの唄」を歌う勘治。

 

公園に行く前に光男あてに通帳を残していたと知り、なぜ胃がんのことを話してくれなかったんだろうと一枝に話す光男。

 

同僚たちはこれからは渡辺さんのような仕事をしようと熱く語り合うが、いざ仕事が始まるといつも通り訴えを土木課に仕事を回した。納得できず立ち上がった木村だが、何も言い出すことができなかった。

 

仕事帰り、新しくできた公園で子供たちが遊んでいる。その公園を眺める木村。(終)

 

はあ〜、いい映画だった。

 

軽部さんの後説もあり。「七人の侍」の5人が揃っていて、他にも黒澤組キャストがたくさん出ている…と言っても、私は知らない人が多いなあ。いつか見ないとな。志村喬さんが当時47歳には驚いた。定年間際の50代設定かもしれないけど、それにしたってだよ。

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だって「男たちの旅路」が1970年代だもんねえ。長いことおじいさん。


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イギリス版「生きる」。2月に放送してたのに録画してなかった〜。