徒然好きなもの

ドラマの感想など

【ネタバレ】思い橋 #16

TBS 1973年7月17日

 

あらすじ

北(藤岡弘)は叔父の専務(土紀養児)から、会社にいる限り「二上」には手を出さないと言われ、会社に留まっていた。しかし、多美(上村香子)のためにも「二上」を観光チェーンの旅館にしようと決意する。

夢は流れて

夢は流れて

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2024.3.1 BS松竹東急録画。

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北晴彦:藤岡弘…トラベルチェーン開発課の社員。

*

二上桂(かつら):松坂慶子二上家の次女。字幕緑。

*

中西良男:仲雅美…鶴吉の息子。

*

二上多美:上村香子…二上家の長女。字幕黄色。

大須賀伸(しん):荒谷公之…織庄の一人息子。

*

山下幸子:望月真理子…自殺未遂後、「二上」で働きだす。

静子:相生千恵子…仲居。

*

竹子:大橋澄子…仲居。

社員:木村賢治…織庄の同僚。

日高ゆり子

*

吉野:玉川伊佐男…トラベルチェーン開発課の課長。

*

西鶴吉:花沢徳衛…「二上」の板前。

 

課長「どうしてこんな家のためにそんなに力入れなきゃならないんだ? 第一、ここをどう改善してみたところでたかが知れてるじゃないか」

北「そうかもしれませんね」

課長「実にバカげてる」

廊下で話していたが、せせらぎの間へ入る。課長は浴衣姿だから、お風呂に入ったのかな?

 

北「そのたかが知れてることをやってみたくなったんです」

課長「仮にここの経営がうまくいくようになったとして君になんの得があるんだい?」

北「なんにもありません。しかし、なんにもならないことをするのって、とても気分のいいもんですね」

課長「えっ? どういう心境の変化だい?」

 

コップを運んできた多美はせせらぎの間の会話が耳に入ってしまう。

 

⚟課長「なあ、もう一度思い出してみないかい?」

 

せせらぎの間

課長「君の男としての一生に関わる問題だよ、これは」

 

聞き耳を立てる多美。

 

⚟課長「君が我が社の社員として残るという条件で専務はここの買収を諦められた。そうだろう?」

 

せせらぎの間

北「買収できるんだったらやってみたらどうですか? 僕はこのうちの立場に立って防戦します。会社が勝つか、僕が勝つか、どうです? 関ケ原の合戦ならぬ思い橋の合戦といきませんか?」

課長「なんてことを言うんだ。君はそんな男だったのか? これは僕の口から言うべきことじゃないが、君がここまでやってこれたのは一体誰のおかげだと思ってるんだい? みんな専務のおかげじゃないのか?」

 

まだ廊下にいる多美は座り込んで聞き入る。

 

⚟北「だから、おじさんの肩の荷を下ろしてあげようと思ってるんですよ」

⚟課長「それでこの古ぼけた旅館の主人におさまろうっていうのかい?」

⚟北「誰もそんなことは考えていませんよ」

 

せせらぎの間

課長「君はここの娘に気があるっていうじゃないか。聞いてるぞ」

北「誰がそんなことを…これはあくまでも無償の行為です」

課長「無償の行為?」

北「課長も一度おやりになってみたらどうですか? なかなか気持ちのいいもんですよ」

課長「男の一生を棒に振ってまでかね? いいかい? 君。君はゆくゆくは我が社の専務、社長にもなろうっていう人なんだよ。それをなんでこんなことのために?」

 

多美はお盆に載せたコップと岡持ち?のようなものに入ったビール瓶を持ってロビーに戻った。ビールを運んで行ったのね。

 

桂の部屋

良男「えっ!? なんだって? さっちゃんに赤ちゃんが?」

桂「シーッ。そんなおっきな声、出さないでよ」

良男「これが出さずにいられるかよ。ホントなんだろうな? ホントじゃないとしたら、これこそ人権無視もいいとこだぞ」

桂「待ってよ。まださっちゃんに確かめてみたわけじゃないんだから。ホントによっちゃんがそうじゃないって言うんなら、そうじゃないのかもしれないわね」

良男「俺はよっぽど疑われてたんだな」

桂「だって他に考えられないじゃない」

良男「殴るぞ!」

桂「だって、よっちゃんより親しくしてた人いる?」

良男「いや、そりゃそうだけどさ…」

桂「だったら他に考えられないじゃない」

良男「いや、でも待てよ。喜ぶべきか怒(いか)るべきか一応考えてみなきゃな」

 

桂「さっちゃんに変なこと言うんじゃないわよ」

良男「それを言うのはこっちのほうだよ。彼女が妊娠してるだなんて、いや…一体、そんな女だなんて、誰がそんなこと言いだしたんだい?」

桂「だからひょっとしたらって…」

良男「ひょっとしたらってさ、ひょっとするわけないだろう。さっちゃんが」

桂「そう祈りたいわね」

良男「聞いただけで耳が汚(けが)れたような気がするよ。ああ~、イヤなこと聞いた」頭をかきむしる。

 

まあ、まずさっちゃんに確かめるべきだったよね。

 

ロビーのテレビで若い男女がそれぞれブランコをこぎだすというシュールなドラマを見ている幸子に良男が声をかけた。「さっちゃん」

 

ドラマ

女性『思い出してたの。去年まではこのプールで夢中になって泳いでいたの』

 

良男「面白そうだね」と隣に座る。

 

女性『そう。ミヨコがスターターで次がキョウコ、そしてヒサコ。アンカーがサナエで…つい昨日のことみたい』ブランコを降りた男性が女性の背中を押す。なんなんだ、このシュールすぎるドラマは!

 

良男「さっちゃん」と再び話しかけたものの、鶴吉が「ああ、いい湯だった」と登場。立ち上がった幸子に「早いとこ入ってきなよ」と言う。立ち上がった幸子は「冷たいお茶でもお持ちしましょうか?」と厨房へ。

 

「そいつはありがてえな」と幸子に笑顔を向けた鶴吉だったが、幸子がいなくなると良男をにらみつけ「暇さえありゃくっついてやがる。みっともねえマネするんじゃねえや」と注意。

良男「親切にしてるのが何がみっともないんだよ」

鶴吉「先様じゃ迷惑だっつってるよ」新聞を広げる良男に「見えねえじゃねえかよ!」と新聞をぶった切る。ドラマが見たかったのね。

 

帳場

考え込む様子の多美に話しかける桂。お母さんのことでしょ?と聞くと、多美はそうねと答えた。桂は多美の座っているテーブルの斜め前に座ると、多美は「お母さん、今頃何してるかしら?」とさりげなく立ち上がり場所移動。桂は別のことだと勘づく。

 

幸子がお茶を入れに厨房へ。「鶴おじさん全権任されたら急に威張っちゃってんのね」と笑う桂。さっちゃん、否定して。

 

桂「北さんとこ遊びに行ってこよう」

多美「ダメよ。お客さんだから」

 

多美は雑誌に出ていた身の上相談として、ホントに愛してたとして、愛してる人が自分と結婚すると一生を誤ることになるがどうすべきか、それでも結婚するのが本当なのか、愛する人のために身を引くべきかと桂に聞く。

 

一生を誤るとは会社を辞めさせられて、せっかく築き上げてきた男の人生が崩れてしまうこと。

 

桂の回答は本当に愛してるんなら、その人のために一番いいようにしてあげるべき、だったが、多美は別れることだと解釈。しかし、桂はそんなのは古い。すべからく現代女性は何がなんでも奪う。多美の相手の人がどうなってもいいのかという問いにはホントに愛してたら、そんなこと言ってられない。相手の人に悪いんじゃないか、不幸にさせるんじゃないか、そんなこととても考えられないはずという答え。

 

桂に人生相談の回答者はなんて言ってるの?と聞かれ、多美は「ええ、まあ。桂ちゃんと似たり寄ったりね」と取り繕った。桂は人生相談の回答者ぐらいできるわね、とどこまでもポジティブだなあ。

 

ボイラー室

誰かが風呂に入った物音を聞き、「さっちゃん」と話しかける良男。ヤダーッ!

 

良男「さっちゃん、怒らないでくれよ。世の中にはとんでもない想像をするヤツがいるんだ。さっちゃんが本屋で気持ち悪くなったっていうの、ホントかい?」

 

良男はギターを持ち出し、歌いだす。

♪少しは私に愛を下さい

全てをあなたに捧げた私だもの

一度も咲かずに散ってゆきそうな

バラが鏡に映っているわ

少しは私に愛を下さい

少しは私に愛を下さい

少しは私に愛を下さい

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3話では一節しか歌わなかったけど、今日は長め。めちゃくちゃ歌がうまい。

仲雅美さんは1971年の木下恵介・人間の歌シリーズ「冬の雲」の挿入歌「ポーリュシカ・ポーレ」が大ヒット。この間見つけた「思い橋」の思い出を語っていた動画の後編で田村正和さんの弟役をやってたと話してたのは、「冬の雲」の話だったんだな。


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仲雅美さん、作品をいろいろ見ると私が前から見たいと思っていた 花登筺脚本の朝ドラ「鮎のうた」(1979年後期)ではヒロインの夫! ますます見たくなった。

 

仲雅美さんが当時歌ってた曲はiTunesにはない。

クゥタビレモーケ

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良男が歌い終わりに「さっちゃん」と話しかけた途端、CMに入り「お母さん」ってなるのやめて!

 

裏庭でバーベルを持ち上げる良男。

多美「おはよう。随分張り切ってんのね」

良男「体、鍛えなくちゃ」

 

多美が玄関に入ると、バーベルを持ったまま良男もついてきて、多美の目が真っ赤だと指摘。多美はゆうべちょっと眠れなかったと言い、良男は桂のコーヒーのせいにする。

 

桂も出勤のため、玄関に出て来ると、良男は話があるという。

桂「はあ、伺いましょう。賃上げ要求?」

良男「みっともねえ。そんな資本家ぶるなよ」

 

通りかかった幸子に「オッス」と声をかけたが無視された良男。

桂「話って彼女のこと?」

うなずいた良男にバスの中で伺うという桂だったが、そんなとこで話せるような話じゃないと断られた。

 

割烹旅館二上のバスが走っていく。

 

せせらぎの間

課長「お前さんの言うのも分からんじゃないな。いやさ、こんな静かな大自然をわざわざ大きなビルを建てて壊すことないもんな」

北「そうでしょう? 何よりも一番壊してはならないものは素朴な人情なんですよ。ここの人たちは我々がGNPだとか買い占めとか言ってる間に失いかけていたものを今もちゃんと持ってるんですよ。それは決して豊かとは言えませんけどね。しかし、心ん中は実に豊かなもんです。我々はその豊かさを測る物差しを忘れかけていたんですよ」

課長「うん。しかし、僕はまだ諦めたわけじゃないよ」

北「課長の立場は分かります。生活がかかってますからね」

課長「そう。俺は定年まで今の会社で頑張ってマイホームの一つも建てなきゃならん」

北「そのためには専務の言うこともご無理ごもっともで聞かなくっちゃ…ですか?」

課長「無理ばっかりとは言えんさ。専務には専務の立場があるんだ」

北「そうですかね」

 

多美と幸子が朝食を運んできた。

課長「やあ、元気でやってるかい?」幸子は無視して出ていった。

 

多美が挨拶をしてテーブルの上を拭こうとすると、北がテーブルを拭いたり、食器を机の上に並べる手伝いをする。仕事ぶりを見ている課長。「北君、この人かい?」

北「課長…」

 

厨房に戻った多美に鶴吉は「女将代理はドデーンと帳場に座ってなよ」と言う。

 

せせらぎの間

課長「おい、お前の話とだいぶ様子が違うじゃないか」

北「課長がいるからですよ。そういう人なんです」

課長「そういうもんかね」

 

当たり前じゃないかよ。なんで人前でイチャイチャするんだよ。

 

厨房

多美「さっちゃん、あの人ね?」

うなずく幸子。

多美「大丈夫ね?」

幸子「はい」

 

織庄

良男が隣で待ってるから出勤早々出かけたいと伸にお願いする桂。伸は良男とあいびきのためだと思い、「とても許せんな」と一蹴。桂は幸子のことで、どうやら相手がよっちゃんじゃないってことだけは突き止めたというものの、相手は不明。

 

桂「まさか伸ちゃんじゃないでしょうね?」

伸「フフッ、分からんぞ」←こういうとこ、割と好き。

 

なぜか伸も喫茶店についてきて、コーヒーゼリーを注文。

 

良男はゆうべはごめんと謝り、ホントのことを言えなかったと暗に幸子の妊娠を認める。桂は真実?を知って良男に幻滅。いちいち口を挟む伸に「あんたは黙っててください」と制する良男。

 

桂「さっちゃんもさっちゃんよ。見損なったわ」

良男「彼女には責任ないよ。俺がみんな…」

伸「じゃ、強姦!?」

良男「あんた黙ってろっつってんのに!」

店にいたアベック2組が一斉に振り返る。

 

二上

階段を上ろうとした幸子が気分が悪くしゃがみ込んでしまい、静子が「さっちゃんどうしたの?」と声をかけた。外へ走り出した幸子の様子を見た静子は、帳場にいた多美に報告。「間違いないと思いますよ、私は」

多美「ホント? 私、どうしよう」

静子「お嬢さんがどうしようってことはありませんよ」

多美「お母さんは留守だし、おじさんじゃね…」

静子「ひょっとしてよっちゃんかもしれませんからね」

 

鶴吉「なんだい? なんの相談だい?」

静子「いえ、なんでもないんです」

 

「さっちゃんどうかしたのかい?」と鶴吉に聞かれた多美は「さっちゃん…どうしたのかしら?」とその場を後にした。

 

茶店

コーヒーゼリーを食べてる伸と桂。

良男「そんなことできないよ」

伸「じゃ、産もうっていうのかよ?」

良男「一つの命が芽生えているんだよ。そんなかわいそうなことできるかよ」

桂「さっちゃんもそう言ってんのね? 結婚の約束はできてるんでしょうね? それもまだなの?」

良男「今にするさ」

桂「よっちゃん、ホントによっちゃんの子なんでしょうね?」

良男「何言いやがる。バカにすんなよ」

伸「威張ることじゃないだろ」

 

厨房に入ってきた幸子を呼び止める多美。昼花火の音が聞こえると笑顔になる。「浦山のお祭りよ。獅子舞が出るの。見たことある?」

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見たことがないという幸子に私も見たいと誘う多美。

 

昼花火が上がり、祭り囃子が聞こえる。獅子舞が練り歩き、「新日本紀行」的な映像だな。ドラマのためにやってもらったのかな。

 

幸子「あの踊りどんな意味があるんでしょう?」

多美「さあ、深くは知らないけど」

幸子「とっても怖かったわ。いえ、あの頭(かしら)がじゃなくて、人間の業っていうのかしら」←字幕は「とっても怖かったわ」まで黄色だったけど、幸子のセリフ。

多美「長い間、貧しい生活の中で伝えてきたもんですもんね。あるいは伝えてきた人たちの怨念が込められてるのかもしれないわね」

 

幸子「お嬢さん」

多美「いや、お嬢さんなんて言わないで」

幸子「ご存じなんでしょ? 私のこと」

多美「ええ。さっちゃん話してくれるんじゃないかと思って」

幸子「あの獅子舞を見てて分かりました」

多美「差し支えなかったら話して。そして2人でこれからのこと考えましょう」

幸子「申し訳ありません」

 

多美「おなかの赤ちゃん、何か月?」

幸子「4か月とちょっと」

多美「えっ…じゃ、うちに来る前から? じゃ、結婚したっていう人の?」

幸子「私、一人で育てます」

多美「そう。そうだったの。でもね…」

幸子「それだけは意地でも私…」

 

厨房

長ネギを刻む良男。

 

茶の間

仏壇の前でうなだれる鶴吉。「彩さん。良男のヤツがとんでもねえことしでかしちまったよ。なんて言ってわびをしたらいいか…」

 

河川敷を歩く多美と幸子。

多美「でもね、さっちゃん。さっちゃんの一生はまだまだ長いのよ。これからよ。意地なんか張らずにもっと素直に生きたほうがいいんじゃない? 私も今、とってもつらいこと考えてるの。人を愛するって、ホントにつらいことだと思うわ。でも私、自分に素直に生きることに決めたの。たとえ、どんなにつらくても自分で決めた道なら諦めもつくもんね」

幸子「北さんのことですか?」

多美「私ってそういうふうに生まれついていたと思えばいいんだわ」

 

せせらぎの間

北・心の声「無償の行為。ここの人たちには我々がGNPとか買い占めとか言ってる間にもちゃんと失わずに持ってるものがある。素朴な人情だ。それを壊してはいけない」

 

厨房

鶴吉「まったくとんでもねえことしてくれたな」

良男「クヨクヨしたってしかたがねえじゃねえか。できちまったものはできちまったんだから」

鶴吉「バカ野郎!」

良男のアップでつづく。

 

女将さん不在回。今までの木下恵介アワーのドラマだと主要キャストでも他のドラマや映画と掛け持ちのあまり、極端に出番が少なったりいなかったりが割とあったけど、このドラマは主要キャストが毎回出てたから珍しい。これが普通なんだけどね。

 

今回のキャストの木村賢治さんと日高ゆり子さん、どこにいた? アベック客は無言だし、女性はおそらく喫茶店のウエイトレス? いや、幸子と良男が見てたテレビドラマの女性かな。まあまあセリフあったし。

 

木村賢治さんは織庄で桂の隣の席だけど、今回の織庄のシーンは桂と伸しか映ってなかったしな~。時々、キャスト欄が正確じゃないような。「たんとんとん」みたいに役名も出してほしかった。