徒然好きなもの

ドラマの感想など

【ネタバレ】秋日和 デジタル修復版

1960年 日本

 

あらすじ

亡夫の七回忌を終えた美しい未亡人と、婚期を迎えた娘の間に起きる小さな心の波風を繊細に描く名作。取り巻きの紳士たちのユーモアに監督・小津安二郎の余裕に満ちた練達の技が見える。 夫の七回忌を終えた未亡人の秋子とその娘・アヤ子。そこで持ちあがったのが美しく育ったアヤ子の縁談話。しかし、残される母のことを考えるとアヤ子は結婚はできないと思い始める……。

2023.5.9 BS松竹東急録画。

 

昭和35年度芸術祭参加作品

青空の中の東京タワー。

 

上野の本牧亭の横っちょのビフテキがうまいという話をしている男たち。三輪のいう男の七回忌で寺に集まっていた。

 

笠智衆さん演じる三輪周吉は亡くなった三輪の兄。もう白髪なんだね〜。

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この頃と全然変わりなく見えるんだが!? あ、でも全部白髪というほどではないか。

 

遅れて宗一(佐分利信)がやってきた。

 

法事が終わり歓談。亡くなった三輪の妻・秋子(原節子)が字幕黄色で、娘のアヤ子(司洋子)が緑。アヤ子は現在24歳になり、秋子は宗一たちにアヤ子の結婚相手をお願いする。秀三(中村伸郎)は大林組の29歳の男を紹介すると約束し、秋子たちは先に帰った。精一郎(北竜二)と宗一、秀三の3人は三輪とは大学時代からの親友で薬屋の店員だった秋子がマドンナ的存在だったらしい。

 

男たちが秋子とアヤ子どっちがいい、40過ぎてるけど秋子の方がいいなどとゲスい会話が繰り広げられる。しかし、美人の奥さんをもらったから早死にしたんだという話から接客に来た料亭の女将(高橋とよ)に「あんたの亭主は元気だろう、長生きするだろう」などとディスる。気持ち悪い会話!

 

家に帰って秀三はアヤ子に紹介したい男の話を妻・のぶ子(三宅邦子)に話すが、もう結婚相手は決まってしまった。嫁いだ娘もしょっちゅう帰ってそうだし、娘も息子もパパ呼びで富裕層って感じだな。

 

アヤ子の結婚相手を探している秋子は宗一の会社を訪れた。宗一は宗一の会社の後藤という大学でバスケ部だった男を紹介するという。

 

家に帰った宗一は妻・文子(沢村貞子)や娘・路子(桑野みゆき)に相談。後藤は早稲田の政経出身で家に来る人の中じゃ一番いいというお墨付きをもらう。

 

秋子は今日のことをアヤ子に話すが、好きな人がいるわけではないが、お母さんと一緒にいたいのでまだ結婚はしたくない、話も断ってほしいという。

 

桑田服飾学院

フランス刺繍を教えている秋子。オシャレな娘さんばっかり。授業が終わり、院長の種吉(十朱久雄)と妻の栄(南美江)からアヤ子の見合い相手の写真をもらうが、まだお嫁に行きたくないと言っていると断った。十朱久雄さんは十朱幸代さんのお父さんか〜。南美江さんはおばあさんになってからの姿しか知らないなと思ったけど古い映画を見ていた。

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トウコウ商事

会社の事務?をしているアヤ子に電話した秋子。アヤ子の同僚の百合子(岡田茉莉子)が水色字幕だった。タイプライター打ってる人もいたけど、アヤ子と百合子は鉛筆で何か書いてる。

 

宗一の会社を訪れたアヤ子。ちょい役の事務員が岩下志麻さん! アヤ子は父が使っていたパイプを宗一に渡しに来て、偶然、後藤(佐田啓二)に出くわした。宗一はこの人が君を振った人だよと紹介。

 

秋子とアヤ子は映画鑑賞後、食堂で食事し、ふたつきに一度でもこうしましょうと話し合う。アヤ子は今度山好きの同僚が結婚するため、同僚数人とハイキングに行く。秋子は自分たちの時代なら考えられないと言う。

 

家に帰った秋子とアヤ子は父と旅行した修善寺の話をする。アヤ子は池の鯉にバターピーナッツを幾つも食べるので与えていたら翌朝、白いお腹を出して浮いていたという話を笑いながらしていた。微笑ましいエピソードじゃないっての!

 

アヤ子は同僚と男女数人でハイキングに出かけた。山小屋で男性たちと麻雀する百合子。三和商事の後藤の見合いを断ったんだってなと同僚の常男(渡辺文雄)に言われたアヤ子。後藤が知り合いだと言ってたのはこの人か。

 

同期入社で結婚していった重子(千之赫子)は電車の窓から手を振るという約束をしていたので会社の屋上で電車を待っていた百合子とアヤ子。しかし、電車はそのままいってしまい、忘れられたんだろうと寂しく思う。千之赫子(ちの・かくこ)さんは「3年B組金八先生」の加藤優のお母さん!

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ゴルフショップで買い物をした宗一はそのまま通りの向かいの喫茶店へ行き、コーヒーを注文。偶然、店に後藤、アヤ子、常男が来た。映画帰りだったらしい。

 

アヤ子だけ宗一の席に着く。常男からの紹介で後藤と初めて会ったというアヤ子に後藤はどう?と宗一はしつこく聞く。好きってことと結婚は別に考えたいと言うアヤ子。

 

ゴルフ場のカフェ? オシャレなカウンター席に宗一、秀三、精一郎が並んで座る。アヤ子が母親を気にして結婚できないのなら秋子を再婚させようと話し合う。妻を4年前に亡くした精一郎に勧めるが、不道徳だと断る。勝手に結婚話を進めるな!

 

精一郎の家

お手伝いさんと息子・幸一(三上真一郎)がいる。精一郎がお父さんが再婚したらどうする?と聞いた。結婚の話をした時、僕のお嫁さん?と聞くくらいだから成人してるんだろうけど、相手が三輪のおばさんと聞くと賛成する。幸一が結婚する時、お父さんがついてきたら邪魔だからという理由。はっきり言うねえ〜。ちょっと元気になる精一郎。乗り気じゃないか。

 

宗一の会社に行った精一郎は自分から再婚の話をする。一人でいると何かと不便…家政婦がいるじゃないかと宗一に突っ込まれるが、そういうことではなく、かゆいところに手が届かないらしい。

 

宗一はすぐ秀三の会社に電話をしたが、秀三は不在だった。なるべく早くな、とノリノリの精一郎。

 

バーで待ち合わせた宗一と秀三。秋子に話をしに行った秀三だが、三輪のノロケ話ばかりされ、精一郎の話が出来ずじまい。秀三は秋子にリンゴをむいてもらったとかパイプをもらったなど宗一に自慢する。かゆいところにはメンソレータムでも塗ればいいと投げやり。

 

遅れて精一郎来店。焦っちゃいかんとだけ宗一は言う。

 

のぶ子と文子は、精一郎の再婚話を笑いながらしていた。帰ってきた宗一に先にアヤ子の結婚から進めた方がいいとのぶ子と文子たちが言うので、宗一はそうすることにした。

 

アヤ子を食堂の座敷に呼び出した宗一は結婚話を進める。秋子を気にするアヤ子に秋子の再婚話をするが、考え込んでしまい、相手は精一郎だと伝えると沈んだような表情になる。

 

家に帰ったアヤ子は無言。秋子は終戦後にお世話になった鴻巣の闇屋のおばさんに電車で偶然会い、すっかり立派になっていたと話したが、アヤ子は秋子の再婚話を責める。何も知らない秋子にそういうの大っ嫌い! 汚らしい! 不潔よ!と拒絶し、家を飛び出した。

 

アヤ子は寿司屋をやっている百合子の家へ。百合子はアヤ子が勝手だと諭し、お母さんはお母さんでいいじゃないと言う。百合子も実母が亡くなった後来た人で関係性がいい。百合子の服装オシャレだな。透け感のある紫のセーターに中は白いタンクトップ。下はカーキ?のパンツ。部屋着でスカートでも着物でもない人いたんだ。

 

寿司屋にいたハマがいいとハマグリを注文していた客の菅原通済(つうさい)さんのwikiを見たら、肩書きが俳優じゃなく実業家となっていて驚き。小津安二郎監督のタニマチ的存在で小津作品7本含め、23本の映画に出ている。へえ〜、すごい時代だね。演技は上手いから俳優だと思ってた。

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この映画にも出ているのか!

 

家に帰ったアヤ子に秋子は後藤のことを隠していることを指摘。

 

トウコウ商事

百合子はお母さんと仲直りしたか聞くがアヤ子は無視。

 

昼休み

屋上でバレーボールに興じる人もいる中、アヤ子は手すりにもたれて電車を見ていた。

 

次のシーンではラーメン屋のカウンター席で後藤とラーメンをすするアヤ子。後藤はケンカしちゃいけないなと諭す。後藤も早くに母を亡くしていて、中3の時、飯ができてないと怒り、伏見の泥人形を壊し、母に悲しい思いをさせ、その秋、母は亡くなったと言う。こういう母に反抗する息子みたいなのすごい嫌い!

 

当時の平均寿命のせいか早死にしてる人ばかり。アヤ子の父、精一郎の妻、百合子の母、後藤の母、いずれも30〜40代くらいか?

 

アヤ子の家に行った百合子。アヤ子はまだ帰っておらず、家に上がって秋子と話をする。百合子は再婚した方が重荷にならないんだから、再婚を反対するアヤ子はズレてると話す。邪魔かしら?という秋子にちょっと邪魔かなと面と向かって言う百合子は精一郎は大学の教授だし、友達ならなおいいと勧めるが、本当に何も知らないと秋子が言うとバカにしてるわねと秋子に同情する。

 

宗一の会社を精一郎が訪れた。応接間に秀三も来ていると言うので行くと、百合子が来ていた。秋子の再婚話を勝手に進めたことを怒っている百合子。ところで百合ちゃん…となれなれしく話しかける宗一に百合子とおっしゃってください!と言い返す。かっこいい!

 

秋子に再婚の意思があると百合子から聞いて、喜ぶ精一郎。嬉しくてウロウロ。

 

百合子は宗一たちを実家の寿司屋に招待する。実家とは言わないので、こんな場末のちゃちい寿司屋が案外うまいんだなどと勝手なことを言われる。そのうち、百合子の継母(桜むつ子)が帰ってきて宗一たちに挨拶をする。宗一はトロ、秀三はハマグリ、精一郎は赤貝を注文した。

 

会社の屋上で話す百合子と常男。会社を休んで周遊券を使ってデート!? 百合子も宗一たちと会うために昼から早退したと言うし、自由だね〜。

 

秋子とアヤ子は周吉の旅館「俵屋」へ泊まりに行き、アヤ子の結婚、秋子の再婚を報告する。アヤ子より秋子が心配だったと周吉が言う。旅館は修学旅行生でいっぱいで騒がしかったが、静かになった。

 

秋子は以前、アヤ子に言われた汚らしいという言葉を覚えていて、結婚はこりごりだと話した。今更、麓から山に登りたくない。でもアヤ子には後藤と結婚してほしいと言うと、アヤ子は泣き出した。

 

修学旅行生が山をバックに写真を撮り、秋子とアヤ子は、ゆで小豆を食べながら食堂で父の思い出話をする。アヤ子の疎開先に日曜日ごとに食べ物を届けていた優しい父。

 

アヤ子と後藤の結婚式

出席している精一郎はちょっと気まずい。アヤ子と後藤の2ショット撮影。

 

料亭に集う宗一たち。アヤ子が幸せになったけど、精一郎はいいダシに使われたとちょっと面白くない。宗一の娘はどうする?と言う話にお前たちには頼まないと笑う。

 

結婚式後、ドレスのまま秋子のアパートを訪ねた百合子。2次会は銀座。これからもちょくちょく来ていいかと尋ねた。

 

一人になった秋子。しみじみと思いに耽る。(終)

 

昔ってほんと本人の意思など関係なしに独り者には相手をあてがえとばかりにくっつけまくる。秋子はみんなのマドンナなので再婚してほしいようなほしくないようなという宗一、秀三の思いが通じたんだね。これからも何だかんだ秋子をフォローするんでしょう。美人は得だとのぶ子や文子が話してたもんね。

 

総じてみんな富裕層だったな。宗一は商事会社社長、精一郎は大学教授、秀三も電気会社の社員らしいし、秋子も夫を亡くしたとはいえ、綺麗なマンション暮らし。映画の中ではアパートと言ってたけど、小綺麗だし広い。「3人家族」で敬子たちが住んでたマンションと同じような作り。後藤も実家は伏見の造り酒屋だし。

 

味わい深く面白かったけど、今の価値観とはまるで違うということがよく分かった。