1951年 日本
あらすじ
日本初の長編カラー映画として公開された作品。信濃高原、浅間山麓でのロケによる美しい風景と、その中に潜む笑いと風刺とが見事な世界を構築する。
ある日、平和な北軽井沢の牧場に一通の手紙が届く。この牧場の娘で、3年前に家出したおきん(高峰秀子)からのものだった。東京で有名な舞踊家となったおきんが、故郷に錦を飾りたいというのである。それから数日後……。
2024.3.26 BS松竹東急録画。
以前、ラジオ番組で木下恵介作品が紹介される中にあったので見たいと思っていました。でも、ブログに記録してなかったけど、2013年あたりに当時のBSプレミアムでこの時代の松竹映画をたくさんやっていた時期があって、見たことあった気がする。
松竹映画
三十周年記念
日本映画監督協会企画
総指揮:高村潔
富士写真フィルム株式会社
フジカラーカラーフィルム使用
音楽:木下忠司
助監督:小林正樹
二本松嘉端
川頭義郎
主題歌
「そばの花咲く」唄・渡辺はま子
ビクター児童合唱団
衣裳提供・高島屋
田口春雄:佐野周二…字幕緑
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校長先生:笠智衆
田口光子:井川邦子
青山正一:坂本武
丸野十造:見明凡太郎(大映)
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小川先生:佐田啓二
マヤ朱美:小林トシ子
岡信平:三井弘次
青山ゆき:望月恵美子
村の青年:山路義人
青山一郎:磯野秋雄
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村の老人:高堂國典
桑原澄江(俳優座)
高松栄子
小藤田正一
縣秀介
城沢勇夫
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大杉陽一
高瀬進
谷崎純
野戸晃
横山準
金子駿介
山本多美
秩父晴子
脚本・監督:木下恵介
草原
馬の世話をしていた正一のもとに娘のゆきが走ってきた。家出したゆきの妹でもあるきんがリリィ・カルメンと名乗る芸術家として、友達を連れて田舎に帰ってくると言う。
ゆき役の望月恵美子さんは望月優子さんの別名か。
ゆきの夫・一郎は養子の僕が口出すことじゃないと校長先生に相談した。一郎は子供たちと「ふるさと」を歌っていたから先生? オルガンを弾いているのは小川先生役の佐田啓二さん。
校庭の隅に盲目の男性が座っていて、オルガンを聴いていた。校長先生が声をかけると自身のオルガンは丸十のおやじにとられたと言う。春雄に学校のオルガンを弾きませんか?と誘う校長先生。
校長先生は青山夫婦と帰って行った。笠智衆さんと望月優子さんは「サラリーマン目白三平」では夫婦役だったな〜。
小川先生が春雄の手を引き、オルガンの前に連れて行った。春雄は最近作った「ああ我が故郷」を弾き語りする。タイトルが違うけど、歌っていたのは主題歌の「そばの花咲く」。めちゃくちゃ暗い曲。
牧場
正一「待ってた亭主はめくらになって帰ってくるし…」って、映画は無音にならずにはっきり言うのね? 光子は春雄の妻で牧場で働いていて、オルガンのために馬を売ろうとも考えたが、配達が出来ないので踏みとどまった。その馬が病気になったと思って、正一のところへ連れてきていた。正一は働いてまたオルガンを取り返せばいいと励ました。
校長先生は、きんは芸術家なのだから笑って迎えてやりなさいと正一を説得した。山はいいなあと浅間山に向かって大きな声で歌う校長先生。
北軽井沢駅
汽車の先頭に丸十が乗ってる!? 汽車じゃなくトロッコ列車的になもの?
汽車から降りてきた、きんは真っ赤なドレスで友達のマヤ朱美も黄色と黒の蜂みたいなドレスで登場。校長先生、ゆき、一郎と青山夫婦の息子の直吉が出迎えた。汽車に乗っている人たちも派手なリリィ・カルメンたちに釘付け。丸十も声をかけてきた。
丸十が馬車を用意してくれ、リリィ・カルメンは主題歌でもある「カルメン故郷に帰る」を歌う。馬を引いているのは光子。馬車を降りたカルメンは光子にチップを渡そうとしたが、丸十が500円請求するように言っていたため、光子は500円を受け取った。カルメンは光子に100円札を渡そうとしたんだろうね。
高原を走り回るリリィ・カルメンとマヤ朱美。カルメンは一人踊り出す。
「おとっつぁーん」と呼びかけられても、照れて一礼しかできない正一。
丸十の社員の岡がカルメンが帰ってきたことを住民たちに話していた。そこへカルメンたちが通りかかり、写真撮影を始めた。丸十が来るとみんなの前でケチねと言い、笑いものにした。
翌日になるともう退屈になる朱美。失恋したのでカルメンが連れてきていたのに男に会いたいと言う。通りかかった青年はカルメンたちをパンパンだと言う。
小学校の校庭で春雄と再会したカルメン。春雄は先生だったのか。春雄はカルメンを踊り子と思っているけど、カルメンはレビューとかチャチなものじゃない、芸術的なものだと説明した。同じ校庭では小川先生は朱美にナンパされて困っていた。
正一とゆきが牧場の仕事をしていた。正一は足がチラホラ見える服を着ないようにゆきから注意しろと頼んだ。
秋季
大運動会
北軽井沢小学校
玉入れ…じゃなく、くす玉割りなのね。楽団が演奏し、ゆきたちも直吉を応援していた。派手な衣裳で運動会に来たカルメンたち。ゆきの服も高島屋のもの。
楽団を指揮していたのは丸十。カルメンたちが来たので「リンゴの唄」を演奏した。
テンポがどんどん速くなるので、一郎が止めた。楽団員はグッタリ。次は、春雄の新曲「ああ我が故郷」の演奏で、その前に校長先生の挨拶。校庭にオルガンが運び込まれ、春雄の弾き語りに光子、息子の清が一緒に歌う。
歌の途中で丸十が隣に座っていた朱美の手を握り、驚いた朱美が立ち上がると、履いていたロングスカートが落ち、ショートパンツ姿になったため、周囲の人たちが太ももがあらわになった朱美を見て大騒ぎになり、春雄の演奏どころではなくなった。
春雄は演奏をやめ、帰ろうとしたので校長先生たちが止めているとカルメンが謝りに来た。しかし、校長先生はカルメンたちに帰るよう怒鳴った。悪いのは丸十なのに!
カルメンは朱美に怒り、校庭を出て行き、春雄も光子たちと帰った。
高原にいる朱美はつばの大きな麦わら帽子と白いワンピース姿。カルメンも同じ麦わら帽子とで白いビキニとショートパンツ姿で白いパーカーを羽織っている。スタイルいいね!
帰りたいという朱美にみんなに踊りを見せてあげようとカルメンが提案する。
歌い出したカルメンは白いパーカーを脱ぎ、白いビキニと白いショートパンツ姿になり、朱美はピンクのビキニとショートパンツで歌い、踊る。
児童たちと写生していた小川先生は児童たちを連れて慌てて帰った。カルメンたちは踊り子ではない、芸術…ストリッパーだよね!?←劇中では一度も言及されず。
丸十は岡に二人に踊ってもらえるよう交渉に行った。あさって帰るから明日中にしてねと承諾したカルメンたち。
丸十の倉庫で踊ることになったと馬を引いた光子が荷台に乗った春雄と話していた。知っている顔が少ないという春雄に結婚して1年で兵隊に行ったから、私の顔を一番知らないわねと寂しそうな光子。春雄に途中で会った校長はカルメンたちのポスターをけしからん!と怒り、正一のもとへ向かっていた。
校長先生はカルメンたちを呼んだことを後悔し、練習していた小屋まで突撃しようとしたが、正一がおきんが一番かわいい娘だと泣いた。春雄もあんまり利口な子じゃない、正一も頭の足りん子と言ってたし、美人だけど、東京の悪い男に騙されてストリップを芸術だと思ってるってことかなあ!?
丸十に校長先生と正一が行き、正一は文化だの人のためだの言っているがカルメンを笑っている、金儲けのためだろうと丸十を責め、おきんの顔を見るのがつらいと校長先生の家に泊めてほしいとお願いした。校長先生は一郎、小川先生も誘う。
丸十はトラックの側面に「ハダカ美人の乱舞」「裸芸術」と横断幕を張り、チラシを配った。子供たちが後を追いかける。
キュピッド楽団の演奏で踊るカルメンたち。上ビキニ、下はパレオで踊っている。丸十の指揮はまたは速くなる。ロングスカートを脱ぎ、足だけのアップ。女性もそこそこ見に来ている。のちのムーディーなストリップとは違う感じ。本物を見たことないけど。
校長先生の家
正一は、おきんがみんなの前で裸になっていると想像して泣き出し、小川先生も一郎もうなだれている。校長先生は庭に出て浅間山に向かって歌…っていうか吟じてるというのかな?
カルメンは正一にお金を置いて家を出た。お父さんが受け取らなかったら、お姉さんに半分あげると言われて喜ぶゆき。ゆきは全編通して、おきんの活動に肯定的。
駅に到着すると丸十がいて、朝から飲んで酔っ払っていた。カルメンたちに儲けさせてもらったと機嫌が良く、カルメンたちを馬車で連れてきた光子に子供が飽きたから春雄にオルガンを返すと言う。
正一は、おきんにもらったお金を学校のためにと校長先生に渡した。校長先生は春雄の借金を返すと言う。
カルメンたちが帰って行き、丸十と岡が「蛍の光」で送り出した。バイバイと明るく手を振るカルメンたち。
「バカ野郎だよ、あいつは」とバカ笑いする男たち。散々楽しんだくせにバカはお前だ! まあ、カルメンたちも田舎者だとバカにしてんだけどね。
春雄は校庭で「ああ我が故郷」を演奏し、子供達が踊る。光子も春雄の側に立ち、涙を拭きながら歌う。
カルメンたちは楽しそうに帰って行った。(終)
改めて見ると、度々リリィ・カルメンが知的に問題がありそうな話をしてたんだね。正一が言うには牛に蹴られたことがあるらしい。画面は明るいけど「ああ我が故郷」といい、割と暗い感じもあった。カルメンが底抜けに明るいところはよかったね。