公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
友達の女性の家に行くから10日ほど帰れないという大介(木下浩之)。親に相談もなく勝手に決めて、と元子(原日出子)は怒りで興奮するが、正道(鹿賀丈史)は、今は大介の言葉を信用するほかはない、と認めてやる。一礼して出て行こうとする大介を追う元子の前に道子(川上麻衣子)が立ちふさがり、元子は思わず道子の頬を叩いてしまう。どうしてこんなことになってしまったのか、元子はのぼる(有安多佳子)に相談するが…。
BSが見られない環境にいたので、遅れ視聴です。こちらは2023年3月7日(火)放送分。
前回の続きから
元子「で、もちろん、そのお友達っていうのは男性なんでしょうね」
大介「いえ、女性です」
前回の回想かと思いきや、セリフの細かい言いまわしが違う。
元子「大介」
大介「大丈夫だよ。母さんたちを困らせたりしないから」
正道「おい、それはどういう意味だ? 大介」
大介「だから、心配しないで大丈夫だということです」
元子「心配するなって、しないわけないでしょう」
正道「ちょっと待ちなさい」
元子「いえ…。で、あなたがこれから行こうとしてる所は、その女性一人(しとり)なの? それともサークルの合宿所か何かなの?」
大介「いえ、彼女だけです。彼女のアパートだから」
元子「で…そのお嬢さんと大介は特定な関係なの?」
大介「まあ…そうでしょうね」
元子「だったらうちへ来ていただきなさいよ」
道子「それは駄目よ」
元子「どうしてそこで道子が口を挟むの? あなたまだ高校生でしょう」
大介「高校生であることは関係ないと思うけど。これはお兄ちゃんの問題だから道子は黙ってていいんだよ」
道子「でも…」
正道「いや、そうだな」
元子「あなた…」
正道「なあ、大介、そこまで話してくれたんだから全部言ってくれないか。でないとな、お母さんが心配だよ」
大介「ですから、とりあえず今日から10日ほど僕は彼女のアパートへ行って、彼女と暮らすことになったわけです」
元子「なったわけですって、一体誰がそんなこと決めたんですか」
大介「だからつまり、僕と彼女とが」
元子「親にひと言の相談もなしに?」
道子「してるじゃない、ちゃんとこうして」
元子「これは相談なんかじゃありませんよ。大介!」
正道「落ち着きなさい」
元子「落ち着けですって? あなたどうしてそうやって落ち着いていられるんですか」
正道「いや、別に僕は落ち着いてるわけじゃないよ。しかしだな…」
元子「いいえ。大介は私たちがまだ一度も会ったことない女の人(しと)と一緒に暮らすって言ってるんですよ。1週間とか10日とか勝手なこと言って」
大介「いえ、事情によっては、もう少し長くなるかもしれません」
元子「事情って、どんな事情?」
大介「それは…彼女の名誉のために今は言えません」
元子「そう。だったら相手の親御さんは、そのことご存じなの?」
大介「知らせることができれば彼女にとって僕との同居なんか必要ないんだ」
元子「一体どういうことなの?」
大介「だから心配しないでいいと」
元子「いいはずないでしょう!」
正道「よしよし、それじゃ、お父さんから聞こう。なあ大介、お前、その人と、その…目下、恋愛関係にあるということか?」
大介「少なくとも僕の方は愛しています」
正道「それで、相手の方は?」
大介「分かりません。でも今は僕の気持ちを大事に考えたいんだ」
元子「冗談じゃないわ。自分の気持ちを大事にして押しかけられる相手の身になって考えてごらんなさい」
大介「いや、彼女は今、僕を必要としてるんです」
元子「さっぱり分かんない。愛してはいないけどもアパートには来てくれだなんて、一体、そのお嬢さん何考えてんのかしら」
正道「なあ、大介、お前、結婚の対象としてその人のことを考えてるのか?」
大介「分かりません」
元子「無責任ですよ、そんなこと」
大介「反対だよ。僕は今、母さんたちを驚かせるのを承知の上で僕の責任を果たそうとしてるんだから」
元子「10日間の同居でその責任が果たせるっていうんですか」
大介「今の時点ではそうです」
元子「親をバカにしないでちょうだい! 肝心なこと言わないで許してくれって方が無理でしょう。そりゃ結婚したいっていうなら親の同意は必要としない年ですよ。けどね、それは社会的にもう責任が取れる年齢になったっていう意味であって、あなたまだ学生なんですよ。まだまだ親がかりの身でありながら、しかも、結婚を前提ともせずに、たとえ10日間でも女の人と同じ屋根の下で住むなんてこと言語道断です! 何とか言ったらどうなの! 私はあなたの母親なんですよ!」
正道「よしなさい。そこでなにも親を持ち出すことはないだろう」
元子「あなた!」
正道「責任を果たすって言ったな、大介」
大介「はい」
正道「責任っていう言葉の本当の意味は、お前には分かってるのか?」
大介「はい」
正道「よし、それじゃ今のお前の言葉、信用するしかないだろう」
大介「ありがとう、お父さん」
元子「私、そんなこと認めませんよ。待ちなさい、大介」
正道「元子」
荷物を持って出ていく大介。
元子「大介! あなた…大介!」
正道「待ちなさい…」
元子「大介!」
道子「お兄ちゃんの言うとおりにさせてあげて!」
元子「大介!」
道子「お母さん!」
元子「子供は黙ってなさい!」道子にビンタ! とばっちり。
正道「元子! 謝んなさい。道子に謝んなさい!」
部屋を出ていく道子。
茶の間兼寝室
布団の上でタバコを吸い、考え事をしている正道。危ないなあ。
ダイニング
ノートを広げているが何も書く気がしない元子は廊下に出るが、寝室にいる正道に止められる。
⚟正道「道子なら今日はやめときなさい。とにかく今日はまだ興奮してるだろうし、君もね、もう少し冷静になりなさい」
寝室に入っていく元子。
正道「大介にしたってな、小さい時から自分のことは自分で責任を持ってやれって育ててきたんだ。あいつはあいつなりに我々のショックを覚悟でああやって自分の行動を説明して行ったんだから」
元子「あれが説明ですか?」
正道「うん…確かに説明不足だ。しかしな、大介も考えに考えた結果だろうし、こっちからもだな、我々がうっかりしてた部分を…」
元子「いいえ…。私はあの子を一生懸命育ててきたわ。うっかりなんかしていません」
正道「元子…」
元子「受験の時は、ちょうどどの大学も紛争の真っただ中で大学の在り方とか学問とは何かが問われ、大揺れに揺れていたわ」
昭和44年1月
ニュース映像というかアナウンスなしの映像だけ。それにしても成田空港強制代執行のときもそうだけど、水攻撃きつそう。本がめちゃくちゃになってるのが何だかなあ。
元子「私も夢中で取材をしたし、うちでもできるだけあの子を交えて大学紛争について話し合いました」
正道「うん、確かに大学とは何を学ぶのか原点から話し合ったよね」
元子「ええ。既成の概念をもう一度疑って考えてみるっていうのは僕も賛成だって、あなた、そうおっしゃったわ」
正道「うん」
元子「それをきっかけにあの子は考える子に育ったんだと思います。だから、大学に入ってベトナム戦争反対の運動に飛び込んでいった時もハラハラしながらもあの子がデモに参加しに行くのを決して止めたりしませんでした」
ベトナム戦争反対というと由利子を思い出す。同じような時代の出来事を描いた時代が違うせいか別物みたいに思ってしまうけど、元子と町子は同世代で大介と由利子は同世代なんだなあ。
正道「それだけ大介のこと分かってるんだったら、どうして君は…」
元子「でも、今度は別ですよ。今度のは男と女の話です。相手のいることなんだし、親としてもっと立ち入ってもいいはずだわ。まして相手は私と同性なんですよ。その人の考えだって、私は知りたいし、あなたみたいに物分かりのいい親の役割なんて、私にはとてもできません」
正道「おい、元子…」
再びダイニングに戻る元子。
元子ばかり怒鳴る役回りでかわいそうだなとは思う。正道さんの株だけが上がる展開。
女性時代編集部
元子「荒川事件ですけど、昨日、児童相談所の所長さんに頂いたデータによりますと、その後、幸男ちゃんを養子に迎えたいと言ってきてるのは全国で24名だそうです」
福井「『捨てる神あれば拾う神あり』とは、よく言ったもんねえ」
元子「ええ。で、行く前に乳児院の方にも寄ってみたんですけど、1か月半で体重は4.8キロ。発育は極めて順調です。もう声を出して笑いますし、あれで生まれたばかりで河原のゴミの中に捨てられていた子とは、とても思えませんでした」
福井「いいところが見つかるといいわね」
元子「ええ。で、幸男ちゃんのことは、もう少し追跡取材をしてからまとめたいんですけど、いかがでしょうか。あの、引き取り先が決まる時点でいいんですけど」
福井「一応、原稿は今日までのところでまとめてみてよ」
元子「そうですか…」
福井「幸男ちゃんについては、しばらく追跡を続けて最終的には『現代の母と子』というタイトルでまとめましょう」
元子「でも…このことは女性ばかりが責められる問題だとは、とても思えないんですけど…」←これはホントにそう思う。
福井「風邪?」
元子「いいえ」
福井「だって張り切りママさんライターとしては、今日は少し元気がないみたい」
元子「いえ、そんなことは…」
野村「大原さん、電話です」
元子「はい。すいません。はい、代わりました大原でございます」
のぼる「私よ、六根。ねえ、今日忙しい?」
元子「ええ…。でも、今日は別に」
のぼる「だったら聞いてほしいことがあるの。時間はガンコに合わせるからモンパリで会わない?」
元子「実はね、私もちょっと聞いてもらいたいことがあるのよ」
このモンパリ、店の名前は同じですが、3年前からマスターが代わっておりました。
カウンターにいるのは黒髪、黒い髭のマスター。
のぼる「じゃあ、おじ様は相変わらず?」
八木沢「ええ。週に2度はゴトゴトと東海道線でお見えになります。やっぱり銀座は忘れられないんでしょうかねえ」
のぼる「いいなあ。お店は任せて海の見える温泉つき老人ホームで悠々自適か。果たして私にそういう老後が過ごせるどうかよねえ」
八木沢「何をおっしゃいますか。あっ、お見えになりましたよ」
八木沢…中嶋英夫さん。中嶋しゅうという名前で舞台中心で活躍し、鷲尾真知子さんの夫。2017年、舞台公演中に舞台から転落死。
「マー姉ちゃん」でも独身のウラマド姉妹が年金を出し合って有料老人ホームを立ち上げるという話をしてるけど、小山内美江子さんの理想の老後だったのかな。候補地は湯河原だという話だったけど、洋三さんたちはウラマド姉妹が立ち上げた老人ホームにいるのかもね。「マー姉ちゃん」だと昭和23年の話だからね。
以前、ドキュメント72時間で見た「海が見える老人ホーム」が印象的だったな。こちらは神奈川県三浦半島。60代から入居して90過ぎまで入っている人多数。夫婦で入っている人もいたけど、仕事を頑張ってきた独身女性も多かった。
のぼる「あっち移るわ」
八木沢「どうぞどうぞ」
元子「お待たせ。コーヒー下さい」
八木沢「はい」
のぼる「無理したんじゃない?」
元子「ううん。私もちょうど六根の声を聞きたいなと思ってたとこだったから」
のぼる「何があったのよ」
元子「六根の方が先でしょう」
のぼる「うん…。配転を申し渡されたわ」
元子「配転?」
のぼる「資料部行きを命じられたのよ」
元子「どうして!?」
のぼる「ガンコいくつになった?」
元子「ん…並び」
昭和元(1926)年年末生まれだから、1971年の秋で44歳ということだね。
のぼる「私は46。お肌の曲がり角は21年前に曲がっちゃったってわけ」
元子「何のこと?」
のぼる「勧告の口実としては後進に道を譲れってわけよ」
元子「そんなバカな。だって六根は主婦として母親として脂が乗り切った実力派じゃないの」
のぼる「主婦っていわれると、だいぶ怪しいけど、私もね、この仕事はいくつになったってできる仕事だってそう思ってたわ」
元子「そんな勧告、はね返しちゃいなさいよ」
のぼる「だけどテレビなんだから、とみに容色の落ちたものは好ましくないって言われたら、私だって何にも言いようがないじゃない」
元子「あんまりだわ…」
のぼる「まあね、それは口実が半分。成田空港では私もかなり突っ込んだ番組作ったし。このまんま尻尾巻く気はないけど、なぜか最近、物が言いにくい感じになってきたのは確かなのよね」
元子「六根」
のぼる「それでね、私も書く仕事ができないかなって思って、ガンコの仕事ぶりや近況を参考に聞かせてほしかったの」
元子「ええ…」
のぼる「どうしたの?」
元子「大介ね…あの子、うちを出てっちゃったの」
のぼる「どうして?」
元子「結婚もしないで女の子と一緒に暮らすって」
のぼる「信じられない」
元子「私だって信じられないわ。私たち一生懸命生きてきたのにどうしてこういうことになるのかしら。六根だってそうでしょう? 私、今でも覚えてるわ。新しい仕事を持つ女性のパイオニアになるんだって、あなたが言った時のこと。あれから25年。私たち、ただ一生懸命働いて生きてきた。それなのにこんな年になって道に迷うなんて…」
のぼる「山で迷った時は動かずにいるか、または迷った所まで戻れっていうのが山歩きの鉄則ですってよ」
元子「けどね…」
のぼる「ううん。私はね、六根清浄、六根清浄って懲りもせず登り続けるつもりだからガンコも頑張って」
つづく
六根のモデルの来栖琴子さんの本。
ホント、違和感なく中年のおばさんを演じてるのがすごいなあ。六根は一時の華やかなヘアスタイルから戦時中のヘアスタイルに戻ったような感じになってるけど、ちゃんと老けてる。
学生運動に話し合う真面目家族。ただ、実際その世代の人で学生運動に参加したのはごく一部で多くはノンポリ(ノンポリティカル)だったらしい。
↑と、岡田裕介さんがインタビューで話してました。
昭和43年のドラマで浪人生の健と明子は翌年、無事に合格するが、明子の入学する女子大は講堂が占拠されて入学式が5月に延期された。だけど、2人ともそういう活動には全く興味なしという描写だった。「兄弟」でも授業がつぶれちゃった、くらいの感じだったし。
戦争で青春を奪われたヒロインと学生運動にのめり込む子世代というのが朝ドラのある種定番なのかねえ。