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【ネタバレ】木下惠介アワー 3人家族(全26話)#25-#26(終)

1968/10/15~1969/04/15 TBS

 

あらすじ

TBS『木下恵介アワー』で歴代最高視聴率を記録した人気ホームドラマ。偶然の出会いから始まる大人の恋と3人家族の心あたたまる交流を描く。男ばかりの柴田家と、女ばかりの稲葉家の二つの3人家族の交流を軸に、ロマンスやユーモアあふれるエピソードを盛り込んで話は展開する。山田太一が手掛けた連続ドラマ初脚本作。1960年代、大家族ドラマものが流行る中で、シングルファザー、シングルマザーの世界がリアルに描かれたのも話題となった。

25話

学生服を着て♪愛しちゃったのさ 友達の恋人を~と歌っている健。西郷輝彦さんの「友達の恋人」という歌だそうです。名前が同じせいかちょっと似てる気がする。

玄関で立って靴を磨いていた。今日は大学の入学式。耕作は、しまのネクタイを探していたが見つからず。健は新しい靴を履いて玄関で1,2,1,2とその場で回って行進した。

耕作「育たないな、お前は」

健「えっ?」

耕作「小学校へ入ったときも新しい靴履いて同じことしてたぞ」

健「そういえば、お父さんも変わんないね、ちっとも」

耕作「お世辞を言うな。うん? そんな前からハゲててたまるか」

ちょっと笑ってしまった。

 

明子は家で大あくび。大学生になってもちっとも変わらないとキクに言われた。

明子「大学生なんてなってないもん。入学式だって済んでないもん」

キク「ちっともなんにも言ってこないね」

明子「うん。でもさ女の学校なのにわりとやるじゃない?」

キク「やりすぎですよ。女の学生が講堂占拠しちゃうなんて聞いたこともない」

明子「まあ、5月ね。5月に解決して新緑の入学式、変わってていいじゃない」

昭和44年に家政科のある大学(女子大?)で学生運動により入学式が延期になったところって本当にあったのかなあ?

 

キクはスーパーに行くといって出かけていった。その直後、電話が鳴り、「手紙をありがとう。嬉しかったよ」と父の兼一からだった。

兼一「ハハハ…羽田さ。今、着いたのだ。これからまっすぐ行ってもいいかね?」

そんなにすぐ来ると思っていなかった明子はびっくりし、ホテルが決まったらお母さんに分からないように電話をくださいって難しすぎる!

 

昼休み、敬子は沢野と会い、沢野の車へ。結局真っ赤な車に乗ってたのは1回だけだったな。沢野は敬子を車に乗せるが、昼休みは喫茶店が満員だし、2人だけで話したかったとそのまま話した。狭い車内でいきなりタバコか~。なんで恋人はいないといったのかという恨み言。好きになるまいと思っていたから「いない」と言ったという敬子。

 

沢野「未練たっぷりだが諦めますよ。僕の入り込む余地はないらしい。しかし、2年は長いからね。その間に気が向いたら電話をください。好きになってくれとは言わないがごちそうくらいはしますよ」

敬子「ありがとうございます」

沢野「バカだな、あなたは。2年間もあなたを放っとくヤツを好きになるなんてバカだ。僕はね、もの分かりのいい男じゃないんだ、本当は。2年間、恋人が遠くにいるなんて人には特に闘志が湧く。自分でもどうしようもないぐらいしつこいんだ。諦めませんよ、僕は。いや、諦める。一応は諦める。しかし言っとくが僕の存在は時がたつほど大きくなっていく。結婚して亭主にも飽きてくる。自分の青春はなんだったろうと考える。そのとき、僕のことを思い出す。あれほど自分を求めてくれた人はいなかったんじゃないかって」

 

敬子の顔を見ながら話す沢野だが、敬子は正面を向いたまま。

敬子「バカにしないでください」やっと沢野の顔を見る。

敬子「さようなら。いろいろとありがとうございました」

車を出ようとした敬子の腕をつかんだ沢野だったが敬子は「離してください」とピシャリ。沢野は「もっとかっこよく別れたかった」と寂しそうに笑うが、もう一度「さようなら」と言って敬子は車を出た。敬子と同世代の男ならちょっと気の毒かも? ただ40男と思うときもい感じ。このポジション、今なら年下男子だな。

 

雄一は同僚の佐藤と公園を歩いていた。佐藤は恋人と5月に結婚する。留学試験に落ちていいことはこれだけ。逃げ込む場所が欲しいだけ。独り者の年中自分ばかり見つめているような生活から女房や子供のために働くなんていう生活に逃げ込む。

 

雄一も2年たったら結婚する。しかし、面倒くさい理屈があるわけじゃない。

雄一「我ながらちょっとてれるがな、好きなんだよ、その人が」

佐藤「そりゃそうだろう」

雄一「好きな人と一緒に暮らしたいんだ。それだけなんだ」

佐藤「そりゃまたお前らしくないな」

雄一「ホレるべきか抑えるべきか、結婚すべきかせざるべきか、『べきかべきか』に飽きちゃったんだな」

佐藤「お前がそんなことを言うか」

雄一「ハハ…好きだから結婚する。それだけ。それしかないのがばかにいい気分さ」

佐藤「お前もやっと年頃か」

雄一「結局、俺はまいっちゃったんだな。好きになってなんだか分からなくなっちゃったんだ」

佐藤「そりゃおめでたいや、ハハハハ…」

雄一「アア…まったく春だな。春や春。『スプリング ハズ カム』か」

二人して大笑いして周りの歩行者にギョッとされる。雄一、浮かれてるなあ。

 

駅で吉本を耕作の名で呼び出したハルは喫茶店に連れていった。

ハル「あんた、覚悟はできてんだろうね?」

吉本「なんの?」

ハル「刑務所行く覚悟ですよ」

吉本「何を言いだすんだ。柴田さんは一体どうしたんだろう?」

ハル「狙うに事欠いて退職金を狙うなんて腹黒いにも程があるよ!」

吉本「こんな所で君…」

ハル「どこでならいいんだい? 警察でなら気持ちよく聞いてられるっていうのかい?」

吉本「よせったら」

ハル「ポプラ製作所ってのはなんのこと? 一体」

吉本「あっ、そりゃあんた、柴田さんに紹介した工場じゃないか」

ハル「確かに工場はあるわ。機械もあるわ。ちっぽけだけどね」

吉本「小さいの大きいのってぜいたく言われたんじゃ、あんた」

ハル「とぼけたって遅いの」

吉本「帰るよ、俺は」

ハル「済んじゃいないよ! まだ」

大声で言うので周りの客が見る。

吉本「うん? うん? なんだってまたそんな大きな声…」

ハル「潰れかかった工場をタネに退職金をとろうなんて太い了見だよ」

吉本「『工場の立て直しに柴田さんを』って」

ハル「100万やそこらでどうにかなる借金かい。初めっから潰すつもりでカネ借りたんだろう?」

吉本「俺はそんなつもりで言ったんじゃないんだ」

ハル「ああ、あんたはね手先のチンピラだよ。それにしても昔の先輩引っ掛けようなんてとんでもないよ」

吉本「いつ引っ掛けたっていうんだよ! いつ?」

ハル「引っ掛ける前にこっちがお断りだよ。柴田さんはねカンカンなんですからね」

吉本「俺だってね、あんないい人をね、どうこうするつもりはない」

ハル「どうこうしたじゃないか、現に」

吉本「バッタリ競輪場で会ってさ。ちょっとまあそういう話もあるってことをだね」

ハル「あげくに100万とられてたまるか。悔しいけど警察にも出しようないよ」

帰ろうとした吉本を捕まえて、ハルの言うとおりに手紙を書けと指示。ハルさん、やるなあ。

 

ホテルのロビーで再会した兼一と明子。14年ぶりだから分からないかと思ったが、5つのときとちっとも変わってないという兼一。明子も顔は想像と違ったけど分かったという。飛んで帰ってきたと言う兼一に手紙の半分は嘘だという明子。敬子と明子が父に会いたがっているのは本当だが、母は意地を張っている。敬子に結婚が決まり、キクは寂しくなっている。

 

想定より早く兼一が来たことに戸惑う明子に、大したお金はないが一人で使うには十分持っているという兼一。明子に会うための飛行機代など安いものという。その代わり、明子と敬子とキクを犠牲にした。

 

明子はキクが頑張ったため、普通のサラリーマンよりぜいたくなくらいで敬子はちょっとつらい目に遭ったらしいが、あんまり苦労したっていう感じがない。本当は会いたいくせに意地を張っているキクのために手紙を書いた明子。兼一に明るくていい娘さんになったと言われ、照れる。

 

耕作と健が入学式から帰ると吉本から切手も消印もない手紙が来ていた。外で飲んできて酔っ払っている耕作。雄一の大学より立派だと褒める。あれだけの建築はないな、いい学校へ入ったと誉めまくり。

 

耕作「角帽なんてのは大学生の象徴なんだから」

健「あんな変な帽子かぶれないよ」

 

耕作「あ~あ、時勢っていうものはなしようのないもんだ。息子が大学へ入ったら何よりも角帽姿が見たいっていうのが親心じゃないか。買ってやるというのに『いいんだ、いいんだ』とお前は」

息子が角帽をかぶったところを見たかった耕作さん。

 

今日の天ぷらはおいしかったという健に、耕作は吉本からの手紙を読んで返事をしない。最初は詳しいことを話そうとしなかった耕作だが、困ったことがあったら言ってほしいと健が言い、仕事が駄目になったといい、吉本からの手紙を読ませた。

 

「本当に申し訳ありません。お世話しようと思っておりましたポプラ製作所のことでございますが、念のため、改めて調査いたしましたら潰れかかりのボロ会社ということが分かりました。本当に申し訳ありませんが、このことは諦めてください。私のことも忘れてください。でも私は遠くのほうからあなたの幸せになることを死ぬまで祈っております。さようなら、さようなら、さようなら」 

 

耕作はこっちが文句を言う筋合いはない、騙されたわけじゃないから後味はいいという。しかし、健は「遠くのほうからあなたの幸せを死ぬまで祈ってる」なんてラブレターみたいで変だという。

 

耕作「おい、こんなこと、人に言うなよ」

健「言わないさ」

耕作「それでなくたってな、定年後どうするんだろうなんて隣近所じゃゴチャゴチャ言ってるんだろうから」

隣近所でそんなことうわさされるのか。結局そのまま退職してご隠居さんになれる人なんてごく一部ってことかな。

 

健はハルがポプラ製作所のことを興信所で調べると言っていたと耕作に伝えた。ハルには伝えた方がいいという健が夜遅くハルを家に呼んだ。ハルはしおらしくしていたが、家に上がった。耕作と吉本が駅前の喫茶店でしゃべっていたのを偶然、奥の席にいて聞いていて興信所で調べて、吉本を呼びつけて手紙を書かせた。言ってくれなきゃハルの親切が何も分からなかったという耕作の言葉にハルはすすり泣き、健もつられて涙。

 

そのころ、雄一と敬子は別れの日まで7日足らずの夜をひとときひととき惜しむようにいとおしむように過ごしていた。

 

バー?みたいなところで隣り合って座る二人。

 

そして兼一は帰りの遅い娘・敬子と妻・キクを待って街の灯の途切れた向こうにどこまでも続くくらい海を何かが見えてくるかのように見つめ続けていた。

 

明子、兼一をキクの承諾もなくマンションにあげる。

 

26話(最終回)

果たして人は14年間、妻と子を捨てて顧みなかった男を許せるものだろうか。自分のために生きた男が年老いて独りで死ぬことの孤独に耐えきれず許しを請いに来たからと言って、それを妻や娘は許せるものだろうか。

 

敬子も驚くが、お母さんのためにもいいという。

敬子「私もお父さんを歓迎します」

兼一「ありがとう」

敬子「お母さんだって本当は大歓迎だと思うんです」

 

ただ、この流れは男性側の願望みたいなのを感じるなー。兼一が今も仕事をしてて、それほどお金に困ってなさそうだからいいようなものの…というかキクがすごく頑張ってマンションを買って娘たちを大学へ行かせるような人だったから、兼一も会いに来たんじゃないかと思ってしまう。3人が路頭に迷っていたら助けてくれたのか? 一緒にアラスカに住もうといったのか?みたいな。

 

キクが帰ってきて、娘たちがあれこれ世話を焼く。

敬子「フフ…実はね、ほんとにただ事じゃないの。私と明子で…お父さん呼んじゃったんです。許してあげてほしいの。私たちには分からない事情があるんでしょうけど、私たち、お母さんがお父さんと一緒に暮らしてくれたほうがうれしいの。お母さんだけじゃ不足だっていうんじゃないのよ。生意気なようだけど、そのほうがお母さん、幸せだと思うの。お母さんが幸せなほうが私たちもうれしいの。そりゃ簡単に済むことじゃないでしょうけど。とにかく一度はお母さんに突き放されてアラスカに帰ったお父さんですもの。十分とは言えないのかもしれないけど制裁は受けてると思うの」

明子の単独行動なのに敬子が”私たち”と言って話を進める。

 

キクは娘にこんな話をさせて自分はそんなとこで待ってるんですか?と怒り、ベランダに出ていた兼一と話をしに行った。灰皿のタバコの吸い殻で時間経過を表現。ベランダから戻ってきた2人の結論。

キク「悔しいけどね、一緒に暮らすことに決めたよ」

明子は涙を浮かべた。

 

雄一と待ち合わせしていた敬子。健と会った明子はそれぞれ父のことを報告した。

雄一「それはおめでとう」

敬子「今日はお昼ごちそうするわ。うんと高くてもいいわ」

 

明子もまた大衆食堂っぽいところで健に丼物をおごっていた。敬子も明子もキクみたいな豪快さを持ち合わせてるのかもね。明子の大学はまだ講堂占拠していて入学式はできない。健のクラスは3分の2が女の子だった。明子よりカスばっかりだといい、明子を見直したという健。明子、うれしそう。

 

昼休みも終わり。

雄一「まったくいつもギリギリだな」

敬子「じゃ夕方」

雄一「うん、ごちそうさま…。じゃ」

敬子「ねえ」

雄一「何?」

敬子「歩きながらでいいわ」

雄一「遅れちゃうよ、君のほう」

敬子「タクシー捕まえる」

雄一「どうしたの?」

敬子「出発まで毎日こんなふうなの? こんなふうにしか会えないの?」

雄一「日曜があるよ」

敬子「日曜は母と会ってほしいんですもの」

雄一「そうだったね。父とも会ってほしいし。いっそ2人で両方一緒にごちそうしようか」

敬子「そうね。それはそれでもいいわ」

雄一「じゃどこか店決めとくよ」

敬子「私が言うのは2人だけの時間」

雄一「分かってるさ。日曜だって1日ごちそうしてるわけじゃないよ」

敬子「ええ…」

雄一「出発前の1日ぐらいは多分取れると思うんだ、休み」

敬子「1日?」

雄一「そういう会社なんだよ」

敬子「それであなた平気?」

雄一「平気じゃないさ。だからお昼だって帰りだってできるだけ一緒じゃないか」

敬子「2年間会えなくなるのよ」

雄一「うん」

敬子「ごめんなさい。ちょっとわがまま言いたかったの」

雄一「いいんだよ。とにかくできるだけ会おう。できるだけしゃべろう。2年分だからね」

敬子「ええ」

雄一「かわいいな、君は」

敬子にっこり

雄一「さあ腕を組もう」

敬子「いいの?」

雄一「どうして?」

敬子「会社の人に会うわよ」

雄一「かまうもんか。見たいやつは指をくわえてればいい」

敬子「まあ」

雄一「さあ皆さん、僕のかわいい人を見てください。僕が初めて心から好きになった人を見てください」

敬子「ウソみたい」

雄一「何が?」

敬子「初めて会ったときのあなたが違う人みたい」

雄一「そりゃそうさ。君に会って変わったんだ」

敬子「光栄ね」

クルッと回って今にも踊りだしそうな2人。

 

耕作は人に道を聞きながら、城西生命のビルに入って行った。職安の紹介で集金事務の面接に来た。

 

キクと兼一は港で話をしていた。

兼一「ベンチにかけたほうがいいかな?」

キク「優しいんですね」

兼一「うん? いや、ハハハ…」

キク「ごめんなさい、皮肉に聞こえました?」

 

兼一「そう簡単に元どおりにはならんね」

キク「元どおりにはもうなりませんよ。お互いにこんな年ですもの」

 

キクはずっと待っていてうれしいといい、出て行った兼一の気持ちも分かるという。兼一は仕事の都合でいつまでも日本にはいられない。私の方から行くというキク。2年たって敬子がいなくなり、明子が大学2年。そこまでくればアラスカだって北極だってどこへだって飛んでいく。見てる方は、明子が大学卒業するまではせめて…と思ってしまうけど、当時は二十歳過ぎたら一人前扱いかな。日本を発つ前に敬子の相手に会ってほしいというキク。気に入らなかったらはっきり言ってほしい。

 

兼一「そのとおりだ。ハハ…がっちり首実検してやろう」

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知らない言い回しがさらっと出てくる。

 

柴田家にはハルがいて耕作にお酒を注いでいた。仕事が早く決まったことを喜ぶハル。定年退職の人間だけを雇う方針だという会社で、月掛けの小口を毎月回って集める仕事。運動にもなる。保険会社だけど勧誘ではなく集めるだけ。退職金もあるんだし道楽半分だというハルだが、耕作は退職金は2年も持たないという。

 

ハルは耕作と結婚したいと思っていたことが今になるとバカみたいだと思うようになった。生きてきた世界が違い過ぎる。家政婦会の連中から耕作とハルが結婚したら誰だってあんまり釣り合わなくておかしいと笑われると言われたという。耕作もハルに酒をすすめる。最初は遠慮するハルだったが、耕作は構わずすすめ、たまには飲もうと笑う。

 

耕作「独り身が長かったから結婚なんてものがおっくうなんだね。でもね、おハルさん。ひょっとして私がその気になったら、そのときにはあんまり冷たくしないでもらいたいね」

ハル「さあ、さあ? それはそのときの話。私にいい人ができちゃってるかもしれませんからね」

耕作「そういうことだ」

2人で笑っていると、健と雄一が一緒に帰ってきた。ハルは健に入学祝を持ってきてくれていた。電気カミソリ。健が言うにはこれ買ったらハルの3日分の働きがパアになる。なかなか高額なんだね。

 

稲葉家4人と柴田家3人+ハルでの中華料理で食事会。ハルは遠慮したが健が立会人として参加させた。雄一と敬子のおごりというのでエジプト料理だと思ったという健。エジプト料理は帰ってきてから作るという雄一。兼一からもよろしくお願いしますと言われた。健は耕作にハルとの結婚をすすめる。

 

耕作「健には分からんだろうが、人と人との結び付くというのはなかなかどうして大変なことなんだよ」

キク「ええ、そうですとも」

耕作「1人の人間が1人の人間と心を通じ合わせるということは健たちが考えているよりもずっと難しいことなんだよ。だからこそこうやってお祝いをしてるんじゃないか。なあ?」

雄一「うん。まあ僕らはお父さんたちほど分かっちゃいないけど」

キク「ほんとに人間なんてみんな寂しいもんですもの。1人が2人になったってことはおめでたいことですよ」

耕作「うん、私もね…」

ハル「はあ?」

耕作「私も随分考えてるんだが」

ハル「イヤですよ、旦さん」

健「似合うよ、お父さん」

耕作「そうかな?」

キク「そうですよ、なかなかお似合い。(兼一に)ねっ?」

笑顔で笑い合うキクと兼一。

耕作「困るなあ、ハハハ…。今日は敬子さんと雄一ですよ、主役は」

キク「ほんと! ごめんなさい」

笑い声が絶えない。しかし、敬子と明子にとってはハルが姑になるかもしれないのはどうなんだ~!?

 

一人一人が2人になった。そのことの意味を思いがけぬほど深く受け止めて耕作もキクも兼一もハルもこの席を祝ってくれているのだと分かると雄一と敬子は胸が熱くなった。励まされる思いであった。

 

円卓→雄一→敬子→キク→兼一→明子→健→ハル→耕作という並び。

 

会食後、雄一と敬子が2人で歩いていた。

敬子「私ね」

雄一「うん?」

敬子「黙っていようかと思ったけど、やっぱり言っちゃうわ」

雄一「何?」

敬子「はっきりしたことじゃないのよ」

雄一「うん」

敬子「ローマの支社に行けるかもしれないの」

雄一「ほんと?」

敬子「センターの支社長に事情を話したの。だって2年間で一度も会えないなんて寂しいんですもの」

雄一「ローマならカイロは近いもんね」

敬子「ローマっていうのは私が希望したの。だってカイロへ行ってたら毎日会いたくなって仕事の邪魔になるでしょう?」

雄一「君らしいな」

敬子「ローマなら無理すれば1年に4回くらい会えるんじゃないかしらと思って」

雄一「そう…。そうなるといいね」

敬子「当てにはしないでね。ただ団体がたくさん来るんで人手が足りないって聞いたんで『できれば』ってお願いしてみたの」

雄一「ありがとう」

敬子「やだわ。『ありがとう』なんて」

 

行きずりの人であれ微笑むがいい。見知らぬ人であれ求めるがいい。誰もが寂しいのだから。誰もが強く生きたいのだから。

 

雄一の腕を組む敬子。2人が歩いているところで終わり。

 

あー、面白かった。変に○年後とかないのがいい! 絶対いい! ドラマも漫画もそのパターンばっかりなんだもん。敬子の行動力がすごい。しかし、明子は2年もしたら敬子もキクもいなくなってあのマンションに一人っきりってことになったら寂しいな。

 

全体を通して耕作の優しさが身にしみた。優しい分、騙されかかったりもしたけど、助けてくれる人も出てくる。これからはちゃんと家政婦代を払ってハルさんとはビジネスライクにつき合うのがいいと思うな。

 

耕作を演じた三島雅夫さんは1973年に67歳でこの世を去っている。そりゃ知らない俳優さんのわけだ。しかし、竹脇無我さんと栗原小巻さんが再共演して「二人の世界」が作られて、こっちを先に見てしまったけど、「3人家族」の続編で見たかったな。「二人の世界」の三島さんは2人が出会ったレストランのコックとして登場し、後に新メニューを考えたりしてくれた恩人ではあるけど、また雄一の父親として見たかったな。

 

ホームドラマ、いいなあ。山田太一さんの作品だけじゃなく木下恵介アワーの作品がもっと見てみたい。