公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
時は流れ、昭和45年春。徳永家では長女の由利子(邑野みあ)が17歳の高校生、長男の清志(榎田貴斗)は中学3年の受験生になるなど、子どもたちの成長が著しい中、町子(藤山直美)は相変わらず執筆活動を猛烈に続けていた。そんな折、思春期まっただ中の由利子が最近、日曜日になると反戦歌やメッセージソングを歌う集会に行くようになる。由利子が集会に出かけたその夜、11時を過ぎても連絡もなく、帰ってこない…。
徳永家の玄関前
健次郎「変な顔しなや~」
町子「はい」
健次郎がカメラを構え、町子と子供たちが並ぶ。
健次郎「そうそうそう。いくで」
町子「はい、はい」
健次郎「はい」
タイマーをセットして健次郎も町子の隣に並ぶ。桜の花びらが舞っているのだから4月? 先週まで描いていたのが昭和43年の年明けなので、4月になったら清志はもう中学生になってるんじゃないかな~とは思うけど、そこはまあ、ね。春休みなんだろう。
その写真から今の子供たちへオーバーラップ。
隆「あかん。僕、目つぶってもうた」
昭和45年 春
子供たちが変わったのでずいぶん時が経ったように思うけど、2年。しかし、2年後と思うと、隆と亜紀がでかくなったなー。
町子「何をしてんの~」
健次郎「もう一回いこう。もう一回」
町子「もう一回、もう一回、もう一回」
1970年、昭和45年は大阪で日本万国博覧会が開かれた年。その一方で、日本各地では安保反対、ベトナム反戦の学生運動が繰り広げられ、フォークソングブームが起こり、若者たちの心を捉えていました。
大阪市内を走る市電は既に姿を消し…時の流れは徳永家にもさまざまな変化をもたらしていました。
徳永医院の古びた看板が電気がつくの新しい看板になっている。
健次郎の父・喜八郎が亡くなり、奄美大島に帰ったイシも、その翌年に病気のため、他界。
仏壇には喜八郎、イシ、澄子の写真が並ぶ。イシさん、早かったね~。70過ぎたばっかりよ。
長男の清志は中学3年の受験生。三男の隆はリトルリーグで練習に明け暮れ…
茶の間で勉強する清志。
隆「今日、二塁打2本打ったで」
そして、次男の登は…
顔に傷を作って帰宅した登。
清志「また負けてきたんか」
登「うるさいわ。今日の相手は8人やねんぞ」
隆「お姉ちゃんにそっと繕うてもらいな。町子おばちゃんに怒られる前に」
その町子は忙しさに追われ…
仕事部屋で執筆する町子。純子の気配に気づく。
町子「もうちょっとですから。もうちょっと待ってください。もう出来ますから。もうちょっとです」
純子「あの…『小説あかつき』の鶴田さんの方は最終便でお帰りになりたいそうなんです」
町子「飛行機、ちょこ~っとここまで寄ってくれたらよろしいのにねえ」
純子「ねっ」
徳永医院待合室
紙が貼られている。
編集者の皆様
患者様がいらっしゃった
時は、お席をお譲り
ください。
花岡町子秘書
矢木沢純子
亀山「鶴田さん、花岡番になってどれぐらいですか?」
鶴田「5年ほどになります。亀山さんは今日が初めてですよね?」
亀山「そうです。いつもここで原稿を待つんですか?」
鶴田「応接室で待つこともありますけど、家の中でウロウロしてるとプレッシャーになるといけませんし、それに…」
待合室の椅子も新しくなってる~。
受付には新しい女性が入りました。
亀山「花岡先生ってどんな感じの方ですか?」
鶴田「いい方ですよ。でもたった一つ遅いということだけ除けばね」
鯛子「ヤブちゃん、あと何人?」
藪下「患者さんは終わりました。あとは…(小声で)鶴亀」
鯛子「これ! ちゃんとお名前で言いなさい」
鶴田「出来ましたか?」
純子「あと半ページです。大丈夫ですよ」
鶴田「よかった。心臓に悪い…」
亀山「いつもこんな感じなんですか?」
鯛子「大丈夫! いざという時は徳永先生と私どもがついておりますから」
ほっと一安心しかけるが、亀山「え?」
台所
自分でごはんをよそう隆。
茶の間
亜紀のアメリカンクラッカーの音が響く。
健次郎「お前、最近そればっかりやな」
次女の亜紀は小学校2年生になりました。
廊下からアメリカンクラッカーの音がして、町子が登場。
健次郎「あんたもかい!」
町子「亀山さんにもろたのよ。これでも案外難しいねんよ」
健次郎「亀山さんて新人の人か?」
町子「うん。『女の人にしてください』てお願いしたの。女の人の方が気が合うから」
健次郎「ふ~ん。何か頼りない感じするけどな」
町子「そうかなあ…。このごろ、男の人の方が頼りないの多いと思うけど」
登「あ~、おなかすいた~」
レコード「友よ」の音が聴こえてくる。
この歌、何か聞いたことあるな~と思ったら、1992年のフジドラマ「愛という名のもとに」で使われた曲だそうで…あの時代、野島伸司脚本が好きで、野島脚本には必ずと言っていいほど少し前の曲が使われてて、好きになった曲も多数あります。カーペンターズとかABBAとか。
清志「お姉ちゃん、帰ってたんや」
亜紀「さっき帰ってきたみたい」
自室でレコードを聴いている由利子。
亜紀「お姉ちゃん」
そして、17歳になった長女・由利子はまさに青春の真っただ中にいました。
17歳の由利子役・邑野みあさんは「永遠の仔」がめちゃくちゃ印象に残っている。
80年代生まれの子役の子って役とはいえ結構過激なことをやってたよね~。「永遠の仔」の役とか今だったら絶対許されないようなことなんじゃないかな。しかも映画とかじゃなく連ドラだしね。子役だと拒否権なさそう。
茶の間
健次郎「由利子、レコードの音、もうちょっと小さいかけなさい」
由利子「ちっちゃしたら歌詞、聞こえへん」
健次郎「それと8時以降は禁止や」
由利子「そんなん早いわ。亜紀のテレビの時間と一緒やん。お父ちゃんらは夜中までペチャペチャしゃべってるくせに。大人はええね」
町子「いや、それでもちょっと8時は早いと思うわ」
健次郎「早ない!」
町子「はい…。由利子ちゃん誰のレコード?」
由利子「友達に借りてん。岡林信康」
町子「えっ、クラスメート? 岡林君て」
町子「千春ちゃんて…中学校一緒やった千春ちゃん? 今、学校違うのに仲ようしてんの?」
由利子「ギター弾いてやんねん。私も欲しいなあ」
健次郎「弾けもせんのに買うてもしゃあないで」
由利子「分かってます」
町子「登君、どうしたん? このけが」
由利子「どうせけんかや」
登「うるさいな!」
町子「こないだ先生から電話かかってきたばっかりなのよ。誰もけがなんかさせてないでしょうね」
清志「まあ、今日は負けたみたいやからな」
登「うるさい!」
隆「また負けたんやなあ」
子供の頃も同じようなやり取りがあり、町子はイシの「ヤンチャばっかりして! お友達は、けがせえへんかったの?」という言葉にハッとする。今は町子が同じような言葉を自然と発している。
亜紀「お父ちゃん、日曜日、万博連れてって」
健次郎「お前、もう何べんも見に行ってるやん」
亜紀「そうかて、もいっぺん月の石見たいねんもん!」
健次郎「何べん見ても形は一緒やで」
亜紀「お父ちゃんにはロマンがないなあ」
町子「ハハハハハ…! けど、よう考えたら私、月の石てまだいっぺんも見てないわ」
亜紀「ほな、町子おばちゃん行こ」
町子「ごめんね、亜紀ちゃん。日曜日、おばちゃんね、お仕事せないかんの」
健次郎「由利子、お前、時間あんのやったら…」
由利子「私も行くとこあんね…」
町子「亜紀ちゃん、おばちゃんね、お休み見つける。で、一緒に月の石を見に行きましょ。ねっ。約束やから」
茶の間
ひとり晩酌をする健次郎。
由利子「内海さんも来はんの? 何も喜んでへんよ。ほな、日曜日ね」ウキウキしながら電話を切り、部屋を出ていった。
町子「最近、日曜日もよう出かけてやんねんよ」お盆になにかを乗せて台所から持ってきた。
健次郎「ふ~ん…そうか」
町子「けど、まあかいらしいもんよ。男の子やったらヘルメットかぶって火炎瓶投げたりしてへんかなて心配せなあかんとこやのにね」
健次郎「普通に育てとんのやから、そんなけったいなことにはならへんて」
町子「うん」
町子「あ~、お帰りなさい」
晴子「ただいま」
健次郎「ごはんは?」
晴子「食べてきた。はあ、しんど…。あっ、私も一口頂戴」
町子「はい」
健次郎「おう」
町子「あっ、ありがとう」健次郎が焼酎を注いでくれる。
またしてもレコードの音。
健次郎「あいつはもうまた!」
町子「そんな目くじら立てんと。なっ」
晴子「そういうたら『フォークの集会見に行った』て、うれしそうに言うてたわ、こないだ」
町子「集会?」
晴子「反戦歌とかメッセージソングいうの歌うらしいで。やっぱり興味持ってるんやねえ。どないする? ヘルメットかぶって暴れたりしたら」
健次郎「そんなことなるかい」
晴子「ゆうべも病院に学生運動の子、運ばれてきてて、デモで機動隊と衝突して頭殴られたんやて」
町子「そんな脅かさんといてよ」
晴子「若い子はな、正しいと信じたら周り見えへんようになるからねえ。お風呂入ってこ。ああ…」おちょこ1杯飲み干すとそのまま部屋を出ていった。
健次郎「何や年寄りみたいな口ぶりやったな」
自室で「フォークソング歌集」を見ながらレコードを聴いている由利子。
そして、日曜日。由利子は朝からいそいそと出かけていきました。
鼻歌を歌いながら出ていく由利子。すれ違う女性が由利子の顔をまじまじ見る。
みすず「あれ? 由利子ちゃんやね。えらいご機嫌さんやねえ」
お! 久しぶり。
応接間
みすず「フォークの集会か…。年頃やねえ。あ~、新宿なんかにようけ人集まっとったもんねえ。私なんかも若かったら絶対行ってたな。ベトナム戦争反対のプラカード持ってメッセージソング歌うねん。ボブ・ディランやジョーン・バエズみたいに」
町子「みすず、そんなんに興味あんの?」
みすず「うん。今は仕事ほったらかしで行かれへんやろ。学生やから時間があるから行くねん」
町子「由利子ちゃんもその集会に興味あんのかな」
みすず「高石ともや、岡林信康から始まって、五つの赤い風船、ザ・ディランなんか人気あんねから」
町子「全然知らんかった」
みすず「けど、新宿の集会は機動隊が出るほどの騒ぎになって学生のけが人もようけ出たらしいよ」
町子「そう…」
教会っぽい建物
千春「由利子!」
由利子「千春」
千春「早かったね。まだ始まってへん」
由利子「うん…」
蔵本千春役は林明日香さん。
ススム「えっと…由利子ちゃんやったっけ?」
由利子、うなずく。
千春「よかったね。今日、何もあらへんかって」
由利子「もうちょっとで妹、万博に連れていかされるとこやったけど」
ススム「妹さんいてんの?」
千春「下に弟が3人、一番下が妹」
ススム「5人きょうだい?」
由利子「千春! うちのことはええやんか」
♪友よ 夜明けまえの闇の中で
集会が始まり、ステージで歌う。長髪の派手な若者たちの間に牧師さん?が交じっている。菅原和人役の大塚まさじさんはザ・ディランIIのメンバー。へえ~。
以前お知らせした連続テレビ小説「芋たこなんきん」の再放送の時代が1970年になり、当時実存した新森小路教会のフォークスクールが劇中に名前を変えて登場します。
— 大塚まさじ (@masajiotsuka) July 3, 2022
そこの牧師役で少しですが出演しています。
7/4の月曜日、BSプレミアムで朝の7:15からです。https://t.co/13PoM0AEwH
♪友よ 斗(たたか)いの炎をもやせ
夜明けは近い
今度は千春が歌う。
♪We Shall Overcome
千春の歌に拍手を送る由利子。
ススム「千春、よかったで、今日も」
千春「ありがとう」
ススム「おう」
菅原「あんたはどう思た?」
由利子「私は…強いメッセージがあってすごいなと思いました」
ススム「ハハハ、優等生の由利子ちゃんに褒められたで」
由利子「そんなんと違います」
ススム「あれ? 何でむくれてんの? 君、どんな歌が好きなん?」
由利子「あ…『禁じられた恋』かな」
ススム「『禁じられた恋』か。何かかわいらしいな。さあ、ほな、喫茶店でも行こか。なっ」
由利子「え? あ…あの…」
千春「あっ、遅なったらお父さんに怒られるか」
ススム「君、お嬢様なんや」
由利子「違います!」
ススム「自立しよう思たら、親だますくらいの気概が必要やで。ほな、行こか」
千春「行こか」
茶の間の時計は午後11時過ぎ。
待っている健次郎と町子。「由利子ちゃん、まだ?」
健次郎「電話もなしや」
町子「大丈夫やて。お友達も一緒なんやから」
健次郎「何を言うてんのや。高校生の女の子がこんな時間まで」
町子「いきなりどなったりせんといてね」
健次郎「言わなあかんことは言う」
初めて連絡もなしに帰宅が遅くなった由利子に心配と不安が渦巻く町子たちでした。
ミニ予告
純子「いけません!」
町子「♪『ユ~』」
明日が変装する回かな?
イシさんが亡くなり、子供たちが大きくなり、やっぱり最初はなじめない。どの朝ドラもそう。「純ちゃんの応援歌」だって唐沢寿明さんの出番を待っていたはずが、すっかり子役の昭と雄太に愛着がわいてしまったし、「マー姉ちゃん」だってヨウ子だけが変わっただけでも最初は違和感あったしね。
「純ちゃんの応援歌」や「マー姉ちゃん」はヒロインのきょうだいだけど、「あぐり」のジュンノーちゃんもでっかくなってごつくなって…「ゲゲゲの女房」や「カーネーション」もヒロインの子供たちがヒロインと同じ歳ぐらいの俳優になるあたりが一番、話に乗れない。でもすぐ慣れるけどね。