公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
正道(鹿賀丈史)の回復は順調に進んだ。元子(原日出子)は家でできる仕事を見つけようと、婦人雑誌社の冬木(中平良夫)という編集者に会う約束をとりつける。しかし約束の時間になっても冬木は現れず、元子は意を決し、雑誌社の編集室に突撃する。すっかり忘れていた冬木は、元子の勢いに押され、編集長の福井(三木弘子)に元子を紹介する。女性が編集長という事に驚く元子だが、私に何か書かせてください、と申し出る。
今日は新しい登場人物が多い。宗俊は出番なし。
正道の回復も順調で4人部屋へ移る日がやってきました。
いつものフランクな口調の看護婦さんがストレッチャーで正道を運んでいたが、廊下の窓の近くで止まる。
看護婦「今日はいいお天気ですねえ。こういう日を秋日和っていうんでしょうねえ」
波津「そうがどげしましたか?」
看護婦「同じ病室をかわるにもこういうお天気の日に移ると、その患者さん、必ず早くよくなることになってるの。本当にいいお天気でよかった」
笑顔の正道。横になってるのにかっこいい。
元子「まあ、そうなんですか」
看護婦「そうですよ。『天高く馬肥ゆる秋』ってね。秋はいいなぁ。ねっ、大原さん」
正道「はあ。ハハ…」
看護婦「そこ、左に曲がりますね」
元子「はい」
病室
看護婦「はい、入りますよ。よいしょ…はい、着きましたよ。ここが今日からのお城です。皆さん、今日から一緒の大原さんです」
元子「大原です。よろしくお願いいたします」
看護婦「隣が平井さんで奥が山田さん。ここはおととい退院したので空き」
元子「はい」
山田「足ですか」
波津「はあ、よろしゅうどうぞ」
山田「大変ですねえ」
看護婦「それじゃあいきますよ。ちょっとの辛抱ですからね」
正道「はい…」
看護婦「おばあさんと奥さんは私が声をかけたら、この台を引き抜いてください」
元子「はい」
看護婦「はい、いいですか。いきますよ。1、2の3…」
ストレッチャーからベッドへ移動。正道、痛そう。
看護婦「はい、ちょっと響きましたね。大丈夫、生きている証拠」
元子も波津も苦笑。明るい看護婦さんだな。
平井…山崎猛さん。「おしん」や刑事ドラマ、時代劇などに出演。「大地の子」も出てる。
山田…江藤潤さん。単発だけど準主役くらいのドラマを見たことがあった。いやあ、でも、同姓同名の別人? 山田は後ろ姿だったけど、明らかにじいさんぽい。当時の江藤潤さん、まだ若かったはずだし。
↓1980年のドラマでは浜木綿子さんの息子役だもん。別人だな。
病室にいたもう一人の看護婦…野村智恵子さん。情報は出てこず、野村萬斎さんの妻が野村千恵子さんと知る。もちろん別人。
女性時代編集部
電話が鳴る。
編集員「はい、編集部」
元子「もしもし、私、大原と申しますが、冬木さんおいでになりますでしょうか」
編集員「冬木ですか。ちょっと待ってください。冬木さん、電話、電話」
編集員…佐々木良行さん。プロフィールに「本日も晴天なり」を書いてた。
編集員…大木裕司さん。2003年公開の映画「輪舞曲RONDO」が引っかかるくらい。
ということで元子は懸案の婦人雑誌社へ働きかけを開始しました。
病院の廊下
元子「私、今月号に主婦の随想を書きました大原元子でございます。その節はいろいろとありがとう存じました。あの、実はですね、今日はちょっと、ご相談がありまして、お電話申し上げたんですが」
冬木「はあ、どんなことでしょう?」
元子「ええ、原稿のことです。もちろん時間その他は冬木さんのご都合のよろしい時で結構なんですけれど、あの、一度、お話を聞いていただくわけにはまいりませんでしょうか」
冬木「そうですね、う~んと…じゃあ、明日3時に社の方へおいでください。いや、向かいにロンという喫茶店があるんでそこで待っていてください。すぐに分かりますから」
元子「ロンですね。分かりました。ありがとうございます。失礼いたします」
大原家台所
洗い物をしている波津。
元子「あの、約束は3時ですから5時ごろまでには戻れますので夕飯の支度は…」
波津「いや、大丈夫だわね。私にもそのぐらいできますけんね」
元子「そうですか。でも、遅くなりましたらね、電話入れますけど話が早く済んだら病院へ寄って5時半ごろまでには帰れると思います」
波津「そぎゃん心配はいりませんけんね。それに早(はや)に終わあようなことだったら、それは不首尾だったということになあだないですか」
元子「あら、本当ですわね」
波津「『断じて行えば鬼神もこれを避く』。真心を持って、あんたは一生懸命やってごしなさい。必ず道は開けますけん」
元子「はい。では、行ってまいります」
病室
トシ江「だからって、そんなにうまくいくものかどうか…」
正道「ええ…。あっ、すいません。しかしね、先方は会ってくれるって約束したそうですから」
トシ江「まあ…こんな時に。あの子がこれほど無鉄砲だとは思わなかったわ」
正道「どうも申し訳ありません、しかし、元子の思うようにさせてやってもらえませんか。まあ、といって、相手のあることですし、果たして仕事がもらえるかどうかもまだ分かってないんですからね」
トシ江「ええ…けど、モンパリのこと、私、決して悪い話じゃないと思うんですけどね」
正道「本当にご心配かけて申し訳ありません」
トシ江「あっ…まあ、何言ってんですか、まあ…やだわ、私。ご病人さんに余計な愚痴こぼしたりして…」
正道「ハハ…。それでお義父(とう)さん何ておっしゃってますか?」
トシ江「ええ、正道さんとおんなじようなことを言ってました。まあ、せっかく仕事をもらえてもね、決してなまやさしいことにはならないだろうって」
隣のベッドの患者は上体を起こし、ポータブルラジオをイヤホンで聞きながら、読書。
ロン
待っている元子。
ウェイトレス「いらっしゃいませ」
元子は立ち上がって客の顔を見るが、冬木ではない。店の時計は午後4時4分。
ウェイトレス「よろしいですか?」コーヒーカップを片づけようとする。
元子「あっ、はい…。すいません、お電話お借りしたいんですけど」
ウェイトレス「どうぞ」
元子「すいません」
ウェイトレス…緒方英子さん。同姓同名っぽい人しか引っかからないな。
喫茶店の内装は割とおしゃれ。
電話をかける元子。「もしもし」
編集員「はい、女性時代編集部」
元子「あの、私、大原と申しますけれども冬木さん…」
編集員「冬木は外出中です」
元子「えっ…? でも3時にロンで待ち合わせのお約束なんですけれど」
編集員「だったらもう少しお待ちください。戻りましたら伝えておきますから」
元子「あの…」
電話を切られた。
大原家
大介「ただいま。ひいばあちゃん、ただいま!」
波津「ああ、お帰りになったか」
大介「何してたの? そんな格好で」
波津「お風呂場の掃除だわや」
大介「そんなこと、僕がやるって言ったでしょ」
波津「今日は早かっただね」
大介「うん。お母さん、どうなったかなと思って」
波津「もう5時だけん、間もなく帰ってくるだわや。おなかすいちょうだけえ? 今、即席ラーメン作ってあげえだけんね」
大介「うん、でも大丈夫。自分で作れるから」
波津「そぎゃんこと遠慮することはないがね。そのため、ひいばあが残っただないかね。あっ…」台所の上の棚に手を伸ばして腰を痛めた。
大介「ひいばあ!」
波津「だ…大丈夫…ちょんぼし腰が…」
大介「だから留守番してるだけでいいといつもお母さんが言ってるのに」
波津「大丈夫、大丈夫…年は取っても、まだまだ」
大介「道子は?」
波津「今、使いに行ってくれたわね。ひいばあが行くっていうのに自分で行くっつって、ああっ…」
大介「駄目だよ、じっとしてなきゃ。今、僕が布団を敷いてあげるから」
波津「そげな大げさな…。いたたた…」
ロン
時計は午後4時56分。
元子は女性時代編集部に直接向かう。
女性時代編集部
元子「あの…」
女性のデスクの周りに編集員が集まっている。
元子「あの…冬木さんはお帰りになりましたでしょうか! 冬木さん!」
冬木「あっ、ごめんなさい! ごめんなさい、大原さんでしたよね?」
元子「はい。『週刊毎朝』応募手記特選の折は、ご丁寧な原稿依頼を頂きました大原元子でございます。その節はいろいろとありがとう存じました」
冬木「編集長、その大原さんです」
福井「福井です。その節には、すばらしい原稿をありがとうございました。…何か?」
元子「いえ…編集長さんが女性の方だとは思わなかったものですから」
福井「原稿料はすぐにお送りしたと思いますけれども掲載したものに何かございました?」
元子「いえ…。実は今日はお願いがあって参りましたの。私に何か書かせてください」
福井「冬木君」
冬木「あっ、はい」
元子「放送された作品1本のほか、児童文学新人賞候補、『週刊毎朝』手記特選、新聞婦人欄投稿1編、作品といえるものは以上で全部ですが、そのほか放送モニター、PTAの広報係では新聞作りもしました。校正も少々できます。無論、専門家の方から見れば素人に毛が生えたようなものだということは承知していますが、主人が大けがをいたしまして、子供は中学生の長男と小学生の長女2人。さきざきのことを考えましても、私、どうしても仕事したいと思っています。突然のお願いで厚かましいことは重々承知いたしておりますが、私に書けるものだったら、どんなものでも結構なんです。仕事を下さい。一生懸命やります」
福井「分かりました。じゃ、ちょっとお待ちください。今、打ち合わせ中ですから」
元子「はい…」
福井「だからさ、さっきも言ったように…」
福井…三木弘子さん。またしても金八ファミリー。川村用務主任。そして、「マー姉ちゃん」のマリ子の義母。川村さんはいつも笑顔の人だったな~。
「私の八月十五日」の特選発表直後、原稿依頼で大原先生と呼んでくれたのとは、えらい違いです。
別に大原先生とまでは呼ばれてないけどね。
大原家ダイニング
大介がコロッケ?をお皿に載せ、道子も配膳の手伝い。
大介「遅いなぁ、もう6時半だよ」
波津「遅んなあ時は電話すると言っちょうなったどもね」
道子「お母さんって忘れん坊だから」
大介「バカ、ふだんとは違うんだぞ。事故でもしてたらどうするんだよ」
道子「お兄ちゃん」
波津「そぎゃん縁起でもないこと…」
大介「ひいばあは腰が痛いんだから動かないで!」
波津「大介…」
女性時代編集部
時計は午後7時3分。
福井「とりあえず、これを読めるように書き直してきてください」
元子「はい?」
福井「主婦の応募手記なの。これ、当然、感想文じゃなくて実話の読み物ですからメリハリをつけて読んで、とにかく面白くしてほしいのね。できますか?」
元子「はい、やってみます」
福井「『みます』じゃ困るわね。やってくれなくちゃ」
元子「はい、やります」
福井「そう。じゃ、明日の夕方5時、いや、6時に持ってきてください。じゃ、ご苦労さん。原稿料はその時に決めます。じゃ、お疲れさま」
元子「どうもありがとうございました」
福井「お礼ならものになってからにしてもらいましょう」
元子「はい」
病室
看護婦「大原さん」
正道「はい」
看護婦「今、奥さんから電話があってね、仕事はもらえましたからって」
正道「あ~、そうですか」
看護婦「その打ち合わせで寄れなくなったけれど心配しないでくださいってことでしたよ」
正道「どうもありがとうございました」
看護婦「変わりありませんね?」
正道「はい、ありません」
看護婦「はい」
看護婦「山田さん、気分は?」
山田「気分は良好です」
看護婦「はい。平井さん、ごはん残したら駄目よ。頑張って食べなくちゃ」
平井「は~い」
看護婦「はい」
大原家
大介、道子とダイニングに入ってくる元子。「ごめんなさい。本当にごめんなさい」
波津「お帰りになったか」
元子「あっ…」
大介「僕たち本当に心配したんだから」
元子「ごめん。最後はね、編集室で待たされちゃったのよ。だから、仕事もらいに行ったのに、うちにああだこうだって電話するわけにはいかなかったの。分かってちょうだい。ねっ」
大介「けど、ひいばあなんかごはんも喉に通らなかったんだから」
元子「まあ」
道子「あれはお兄ちゃんが悪いのよ。事故かもしれないなんて言うんだもん」
大介「だって何の連絡もないんだもの。そう思ったってしかたがないじゃないか」
元子「ごめんなさい。本当にごめんなさい」
波津「やれやれ、ほんによかった」
大介「でも、明日の6時までにはできるの?」
元子「できなくてもやらなくちゃ」
大介「だったら早くごはん食べちゃいなよ。後片づけは僕と道子がやるから」
波津「いいや、そのくらい、このばあが…。痛っ…」
元子「おばあ様!」
大介「腰を痛めたらしいんだ。病院で診てもらった方がいいんじゃないの?」
波津「何言っちょうだや。病人は、お父さん一人でたくさんだけん」
元子「お疲れが出たんですよ。さあ、もう今日はお休みになった方が」
大介「そうだよ、寝た方がいいよ」
波津「大介…」
元子「お願いします、おばあ様。大事にしてくださらないと正道さんや陽子さんに申し訳が立ちませんから」
波津「すまんのう。ほんじゃ、寝込んでしまってもいけんけん…」
元子「ええ。さあ…」
大介「僕につかまって、ほら」
波津「だんだん…」
元子「道子、お布団」
元子がありついた仕事は、いわゆるリライターといって、いくら健筆を振るっても大原元子の名前は出ないのです。けれど、体当たりでもらった初仕事。あの女性編集長に認めてもらうためにも元子は全精力を込めて書かなければならないと思いました。
夜中、ダイニングテーブルでリライト作業する元子。
病室
正道は枕元に置いていた家族写真を見つめる。
つづく
今日はちょっと早めに終わって、ブルーバックの「ただいまの出演」
明日も
このつづきを
どうぞ……
山田役の江藤潤さんをもう一度調べてみたら、江藤漢斉さんの旧芸名であることが判明。しかも、当時、じいさんじゃなかったし(失礼)。「おしん」にも出演。
「澪つくし」では緒方巡査として「銚子素人将棋名人戦」で久兵衛と対戦。
「はね駒」では桂庵(ハローワーク)の主人。
川村さんと石津さん(元子に「本日も晴天なりだよ」といった放送局の芦田さん)は金八先生の桜中学の職員室にいつもいた。川村さんは金八の1、2シリーズに出ていたけど、石津さんは2だけだったんだね~。川村さんとは全く違う役柄。
波津さん、腰痛めたら、寝ても痛いだろうな…。