公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
大介(田島理司)の高校入試の朝となった。元子(原日出子)と正道(鹿賀丈史)は緊張する大介を励まして送りだすが、初めての子の高校入試で、自分たちの方が気が気ではない。受験を終えた大介は、松江の波津(原泉)や邦世(磯村みどり)、陽子(田中美佐子)にも電話で報告。そして見事、合格となる。夜、お祝いのケーキを食べようとした時、友人の母親(草村玲子)が来る。不合格になった友人が家に帰っていないという。
今日はいよいよ大介の高校入試の朝です。
大原家ダイニング
元子「はい」
正道「はい、ありがとう」
元子「大介、お代わりは?」
大介「うん…」
正道「ほら、もっと食べなさい。昔からな、『腹が減っては戦はできぬ』っつって入試とは自分との戦いなんだぞ」
大介「はい…。はい」元子にお茶わんを差し出す。
元子「我も人なり、彼も人なり。言ってごらんなさい」
大介「えっ?」
正道「うん、言ってごらん」
大介「え…我も人なり、彼も人なり」
正道「よ~し。大介に難しかったら、ほかの受験生にも難しいってことだ。問題を見てもな、慌てるなよ」
大介「はい」
元子「じゃあ、頑張って」お代わりを渡す。
大介「はい」
「我も人なり、彼も人なり」は金八シリーズでは受験前のお説教で出てくるワードでおなじみ。大介役の田島さんがいた第1シリーズ16話が初登場と調べたので、16話を見てみた。黒板の日付は2月8日(金)。田島さんは1話では坊主、16話では髪も伸びて今の大介に近いけど、やっぱり2年前だとまだ幼い。
元の言葉は”彼も人なり我も人なり”だし、金八先生も”彼も人なり我も人なり”と言ってました。元子のアレンジだったのね。
元子「おばあちゃんのお守りは?」
大介「うん、ポケットの中」
道子「お兄ちゃん、頑張ってね」
大介「うん」
山田木工所
正道「もうそろそろかな…」
山田「えっ?」
正道「あっ、ハハ…いえいえ」
山田「あっ、そうか、今日は坊ちゃんの入試でしたね」
正道「ハハ…。『人事と尽くして天命を待つ』。おやじが今更ジタバタしてもしょうがないんですが」
山田「ハハハハハ…そりゃそうですとも。え~っと、それで今日は?」
正道「あっ、これなんですけどもね…」
大原家ダイニング
ぼんやりしたり、時計を気にする元子。
初めての子の高校入試となれば、やはり気になる方が当たり前でしょう。
原稿用紙に”合格”などと書いて丸める。原稿に向かおうとするが、足音が聞こえ、元子は立ち上がる。
大介「ただいま!」
元子「お帰り!」
松江・大原家
電話が鳴る。
陽子「はい、大原でございます。あら、大介君。試験どげだったかね?」
大原家茶の間
大介「うん、自己採点ではかなりいけてると思うんだ。『人事を尽くして天命を待て』って、お父さんから言われてるから、目下、天の声を待ってます。でも、あの、ちゃんちゃんこを着て頑張ったから大丈夫だと思うんだ。ひいばあが心配してると思ったから電話しました」
松江・大原家
邦世「もしもし、私だよ、おばあさんだがね。ああ、ああ…大介のことだけん、きっと頑張っただないかと思うちょったよ。うん…ああ、みんな元気だわね。ひいばあですかいね? ひいばあちゃま、ちょっと風邪気味で休んじょられえけんね。だども、大介のいい知らせ聞きなされたら、きっと風邪も吹っ飛んで元気になられえですわね」
大原家茶の間
大介「ひいばあ、風邪だって」
元子「ちょっと代わって。もしもし、元子でございます。おばあちゃまのお風邪、いかがですか? ええ…それだったらいいんですけど。はい、春休みになったら一度みんなで松江にも顔見せに行こうって話してたところなんです。それまでにはお元気になってらしてくださいとお伝えくださいませ。えっ? 仕事ですか? うまくお休みがもらえるように編集長に頼んでみます。けど、大介ももう高校生になるんですし、私が駄目でも道子と2人で行けると思いますわ。はい、自信がないようでしたら首に荷札をつけてやりますから」大介に肩パンされる。「ええ…」
実際には姉弟くらいの年の差なんだよね。最後笑いあった時が素の笑いっぽかった。
松江・大原家
布団に横になっている波津。「そげかね…。大介…あの綿入れ着て気張ったと言っちょうましたか」
邦世「はい。元気な声でしたけん、ああなら、合格間違いああませんわね」
波津「ほんなら私も気張って早いとこ風邪を治さんといけんねえ」
邦世「そげですわね。元子さんも休みを取って来(く)うと言っちょられたけんね、また久しぶりににぎやかになあますわね」
波津「ああ…」
陽子夫婦には子供はいないんだろうか?
さて、果たして天の声は大介に何と答えたのでしょうか。
大原家ダイニング
元子がすし飯を作っている。
道子「ただいま!」
元子「あっ、お帰りなさい。どうしたの? ハアハア言っちゃって」
道子「お兄ちゃん、どうだった?」
元子「分かんないかなあ、お母さん、ごちそう作ってるの見て」
道子「わあ! それじゃ合格ね」
元子「そうよ。それとね、今日はまたおひなさまと一年間お別れする、そのごちそうと一緒」
道子「ばんざ~い! お兄ちゃんは?」
元子「うん、人形町へ知らせに行ったっきり帰ってこないのよ」
道子「ずるいなあ、一人で行くなんて」
元子「しかたないでしょう。おばあちゃまだって首長くして待ってたんだから」
道子「うん。ねえ、昨日がお節句だったのに、どうしてもう今日は、おひなさましまってしまうの?」
元子「うん、お出しする時はね、早くてもいいけど、しまう時はモタモタしてたらいけないんだって」
道子「どうして?」
元子「おばあちゃまの言い伝えなんだけどね、いつまでも締まりなく飾りっぱなしにしてると、道子もね、なかなかお嫁さんに行けなくなっちゃうんだって」
道子「道子、お嫁になんか行かなくてもいいもの」
元子「おやおや。けど、ごちそうを作るのは手伝ってくれるんでしょう?」
道子「うん」
元子「うん。じゃ、手洗って」
道子「ねえ」
元子「うん?」
道子「松江のおひなさまも今夜はごちそうよね」
元子「道子、覚えてるの? あのおひなさま」
道子「覚えてるわよ。だってひいばあのおひまさまですもの」
電話が鳴る。
道子「はい、大原です」
大介「あっ、僕、お兄ちゃん。捕虜になっちゃったんだよ!」
道子「えっ?」
吉宗
順平に押さえ込まれてる大介。「お祝いならこっちでみんなでやろうって、順平叔父さんが聞かないんだもん」福代が大介に受話器を当てている。
巳代子「そうよ。大介君は絶対合格するって信じてたから、叔母さん、材料うんと用意して待ってるのよ」
大介「ほら、巳代子叔母さんまでこんなこと言って…助けてよ! 下手なこと言ったら僕、絞首刑にされちゃうよ!」
巳代子「大丈夫よ。今夜は水入らず、みんなでお祝いできるように叔母ちゃんのごちそうが出来たら持って帰ってもらうから」
大介「はい…いってえな~、もう」
物騒なワードが飛び交う。
大原家ダイニング
大きな手作りホールケーキに祝合格のプレート付。断面が見えてるのが時代を感じる。上に挟まってるのがイチゴなのは分かるけど、横のはバナナ?じゃないよなあ。茶色い円形のものに見える。
元子「はい」
正道「お~、すごいな、このケーキは」
元子「巳代子の張り切りようが目に浮かぶようだわ」
大介「だって僕、これが焼き上がるまでは、ものすごい捕虜だったんだから」
元子「ちょっとそんな国語力でよく高校が受かったもんだわね」
大介「だってほかに言いようがないくらいなんだもん」
正道「ハハハ…まあみんなに喜んでもらえてよかったな、大介」
大介「はい」
道子「松江のひいばあも待ってるから春休みになったらすぐにいらっしゃいって陽子叔母ちゃんが」
正道「今度はな、大阪まで新幹線だからぐっと楽だぞ」
大介「お母さん、ちゃんと休み取っといてよね」
元子「はいはい」
⚟女「ごめんくださいませ」
元子「は~い」
玄関
元子「まあ、中屋君のお母様」
文乃「夜分申し訳ありません。隆がお邪魔してるんではないかと思って伺ったのですけど」
元子「いいえ、お見えになってませんけれども…どうかなさったんですか?」
文乃「いえ…。あの、それで大介君は?」
元子「あっ、ちょっとお待ちくださいませ。大介! 大介! 中屋君のお母様よ」
大介「中屋君、どうかしたんですか?」
文乃「それがまだ帰ってこないの」
大介「まだって…?」
文乃「あの子、駄目だったんでしょ?」
大介「えっ、ええ…」
文乃「お昼過ぎだったけど、一度、電話があるにはあったんだけれど」
元子「それじゃ、そのまま、まだ?」
文乃「はい。だから、大介君にもしや心当たりがないかと思って」
大介「僕たち、5人で発表見に行ったんです。初めは僕たち万歳しちゃったんだけど、すぐに中屋君のことが気が付いて一緒に帰ってきたんだけど」
文乃「一緒にって、どこまで?」
大介「中屋君の家まで。で、大丈夫って言うから、僕たちそこで手を振って別れたんだ」
元子「じゃあ、隆君、そのままおうちへは入らずに…」
文乃「どうもすいませんでした。バカなことしないうちに捜さないと」出ていく。
元子「奥さん! 奥さん…」
中屋の母…草村礼子さん。1940年生まれだけど、ドラマに出演しだしたのは1970年代の終わりから。それまでは舞台中心だったみたい。「おしん」の旅館の女将とか「はね駒」のりんの妹・みつの姑とか、有名なのは「Shall we ダンス?」のたま子先生かな。「はね駒」の役は未だに印象に残ってるけどね。「おしん」のお清みたいな激情型じゃなくのらりくらりしてるわりに最強の姑でした。
しかし、朝ドラいっぱい出てる人でも「本日も晴天なり」が出演歴に書いてない人多すぎ。
大介「意気地なしなんだよ、あいつ」
元子「大介」
大介「だって僕たち、本当に元気づけたんだぜ。それなのにあのまんま家に入んないなんて」
正道「大介は自分の名前がなくても、ちゃんとうちへ帰ってこられたのか?」
大介「僕は…帰ってきたよ」
正道「うん、そうか」
大介「とにかく心当たりのとこ捜してくる」
遠くでサイレンが鳴る音
玄関を出ていく大介と顔を見合わせる元子と正道。
大原家ダイニング
手つかずのホールケーキ。
時計の時報が1回ってことは深夜1時!?
電話が鳴る。
正道「はい、大原です」
警官「あっ、こちら上野警察です」
正道「警察?」
警官「ええ。今、お宅の息子さんとその友達をこちらで補導しましたので連絡しますが」
正道「はい」
警官「いや、といってご心配なく。事情は息子さんから聞きました。ただ友達の方がまだ興奮状態なものですから、息子さんがもう少しついていてやりたいと言うもので、いや、むしろ、こちらからご両親にご了解を得たいと思ってお願いしてるんですが」
元子「は…はい。はい、では、よろしくお願いいたします。はい」
警察官(声)…山崎満さん。68話ではトシ江を診察した医者役でした。
まずは友達が無事で一安心と言うべきでしょう。
その翌日、3月5日のことです。
女性時代編集部
野村「とにかくゆうべの羽田は霧がすごかったらしいんです。それで着陸を誤ってコンクリートの防潮堤に激突したんだろうと関係者は言ってるんですが」
福井「それにしたって全くなんてことなの。前の事故からたった1か月よ。一体これはどうなっちゃってるの」
冬木「しかも同じ金曜日ですよ。魔の金曜日」
福井「そんな迷信みたいなことはどうだっていいの。けどよ、今年になってから2度も飛行機が海へ突っ込んだり、防潮堤にぶつかったり…。何かがどうかしてるんじゃない?」
冬木「何かって何ですか?」
福井「そんなこと自分で考えなさいよ。問題はこの事件をどうまとめるかだわね」
元子「女性時代でやるんですか?」
福井「取り上げ方いかんによっては、ちゃんとした読み物になると思うの」
冬木「しかし、うちは月刊の婦人雑誌だから…」
福井「その編集長が先月の事故で、しかも、仕事で死んだとなったら立派に取り組めるはずでしょう」
野村「そういうことで少しむきになっておられるんじゃないですか?」
福井「むきになって何が悪いの? 便利だということが果たして人間を幸せにしてるかどうか、ここらで考え直してみた方がいいんじゃないの?」
元子「ええ」
福井「それに便利が優先されてはいないか、それに便利だということでみんながその危険性を忘れてはいないか。そうよ…確かに交通事故とは違って飛行機事故はめったに起こるもんじゃないわ。でも、だからといって運が悪かったで済ませていい問題じゃないと思うの」
元子「ええ…」
戸が開く音
船田「また落ちた」
元子「えっ?」
船田「今度は富士山」
冬木「富士山?」
船田「ああ。今、ニュースで富士のどこかで墜落した飛行機の翼らしいものが見つかったってやってたよ」
元子「それ、本当ですか?」
船田「うん」
福井「悪い冗談、やめてちょうだいよ」
船田「いえいえ」
元子は電話をかける。
福井「一体、日本の空どうなっちゃってるの」
船田「うちでやりますか?」
福井「そうね」
元子「もしもし、女性ニュースのデスクですか? あの、私、大原と申しますけれども、立山のぼるさんいらっしゃいましたらお願いいたします。はい。やっぱり何だかか相当ガタガタしてるようです」
野村「ということはやっぱり…」
元子「もしもし、六根? 私。今、社の人(しと)がニュースでまた飛行機が落ちたって…。ええ、ええ…はい、分かりました。忙しいとこごめんなさいね。それじゃ」受話器を置く。「まだはっきりしたことは分かってないそうなんですけれども確認され次第、取材班の人は現地へ飛ぶ支度にかかってるそうです」
船田「お~」
福井「分かったわ。じゃあ、あなた、すぐおうちへ帰って出発できる準備をしててちょうだい」
元子「編集長…!」
福井「情報が入り次第、すぐに車を出すから、お宅へ寄って、あなたを拾っていきます」
元子「でも私、今日…資料を取りに来ただけですから」
福井「お子さんが高校へ入ったら外へ出てもらうこともあるって言ったじゃないの」
冬木「編集長」
しかし、元子は初めての地方出張取材がこのような形でやってくるとは思ってもいませんでした。
つづく
昭和41年の2件目、3件目の飛行機事故。昭和41年はこれで終わりじゃないから怖いよなあ。戦争だと○月○日に何が起こったかは分かるけど、昭和30年代以降のこういう事故って過ぎてしまうと分からないもんだねえ。この間取り上げた鉄道事故とか。
しかし、前半は金八先生を感じられる回だったな。大介は彼も人なり我も人なりを金八からも元子からも聞いたんだね。
大河ドラマアンコール4月からはBS4Kで放送か…まさか朝ドラも?
はあ~。4Kテレビは無理だ…。BSプレミアムでやってよ~。