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【連続テレビ小説】マー姉ちゃん (150)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

磯野家で話し合った結果、マリ子(熊谷真実)たちは、マチ子(田中裕子)に仕事を辞めて農業を勧めてみるが、仕事の意欲が湧き始めているマチ子は断固拒否する。脳と胃は兄弟のようなものであると話す正史(湯沢紀保)だが、今回の手術で胃痛の心配がなくなったとわかった磯野家は、漫画廃業の案を廃案とする。マチ子の退院の日、今度はヨウ子(早川里美)が倒れてしまう。子供ができたとわかり、磯野家はお祝いムードになり…。

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病室でぼんやりしているマチ子。

ヨウ子「ここでいい?」

マチ子「うん?」

ヨウ子「でも、こっちの方が寝ていてもよく見えるわね」

マチ子「うん」

ヨウ子「じゃあ、この花瓶と取り替えてみるわ。その方が気分も変わるでしょう」

 

マチ子「ねえ、マー姉ちゃん、どうかしたの?」

ヨウ子「えっ?」

マチ子「だってゆうべもとうとう帰ってきてくれなかったでしょう」

ヨウ子「あら、私じゃ用は足らないの?」

マチ子「ううん、そんなことはないけど、でも疲れてダウンしてしまったんじゃないかと思って…」

 

ヨウ子「誰が?」

マチ子「マー姉ちゃんがよ」

ヨウ子「まさか! マー姉ちゃんに限ってそんなことあるわけじゃないじゃない」

マチ子「ねえ、本当のこと言って」

ヨウ子「まあ! 病気になったらマッちゃん姉ちゃまの疑り深くおなりになったこと」

 

マチ子「いや、だってヨウ子に来てもらってると正史さんにだって申し訳ないでしょう」

ヨウ子「あら、今度は随分遠慮っぽいのね」

マチ子「そんなことはないわよ」

ヨウ子「じゃあ、申し上げますけれども、そもそも、この病院は完全看護なのよ。うちの者も誰もつかなくて構いませんっていう建て前なんですからね」

マチ子「ヨウ子…」

 

ヨウ子「ほら~、そういうふうにすぐ鼻声出して悲しがるから、私たち、ついていてあげてるんじゃない」

マチ子「いいわよ。ヨウ子がそんな恩着せがましくて冷たい人だとは思わなかった」

ヨウ子「マッちゃん姉ちゃま~…」

 

マリ子「おはよう! 気分はいかがかな?」

マチ子「マー姉ちゃん!」

マリ子「どうしたのよ? またどこか具合でも悪くなったの?」

マチ子「ううん、会いたかったの!」

マリ子「ん~、子供じゃあるまいし」

マチ子「だって…」

 

マリ子「よしよし、分かりましたよ。そのかわり、今日はいいものを持ってきましたからね。東郷のお義母様からね、お見舞いにってこれが着いたの。ほら」

ヨウ子「わあ、かるかん。懐かしい!」

マチ子「教えちゃったの? 私の胃が5分の1しかなくなったことを」

マリ子「ううん、知らせたわけじゃないけど、皆さんが心配してあちこちから伝わってしまったらしいのよ。でも、ありがたいじゃないの。頑張って早くよくなってくださいってよ」

マチ子「うん!」

 

マリ子「よかった。変な声出すから心臓がびっくりしてしまったじゃないの」

ヨウ子「マー姉ちゃんが疲れて寝込んじゃったんじゃないかって、もうそれはうるさかったの」

マリ子「何だ~」

マチ子「ひどいわね、病人が心配してるのに『何だ』ってことはないでしょう」

 

マリ子「まあまあ、そんなに怒りたもうな。ゆうべは何にも考えず、久しぶりにぐっすりと寝たことは確かです」

マチ子「何よ、『何も考えず』って、私のことも考えなかったの?」

マリ子「ううん、だから今日はそのすっきりとした頭で妙案を持ってきたってわけ」

マチ子「妙案って何?」

 

マリ子「ねえ、また畑でもやんない?」

マチ子「畑?」

マリ子「うん。だって、マッちゃん仕事が忙しくなると昔やっていた畑のことをよくお思い出すって言ったじゃない」

マチ子「そうよ、何回も思い出したわ。懐かしいな~、終戦当時の原始人の生活ね」

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マリ子「だからまた、その原始人の生活に戻ってみるのもいいんじゃないの?」

マチ子「原始人か…憧れよね~…」

ヨウ子「憧れなんて言うと遠いものみたいだけど、要は実現させればいいんじゃないの?」

マチ子「なるほどね! そうね、じゃあ体力が回復してきたら仕事の気分転換にもなるし、やってみようかな」

 

マリ子「ううん、仕事なんかすっぱりやめて本格的にやるのよ。お百姓さんを!」

マチ子「まさか…」

ヨウ子「いいえ、私たちは本気よ。だって、マッちゃん姉ちゃまの胃がこんなことになったのも、元はと言えば、お仕事のせいじゃない」

マチ子「冗談じゃないわよ!」

マリ子「どうして?」

 

マチ子「何よ、昨日までは早く元気になって『サザエさん』描いて頑張りなさい」って言っててくれたくせに」

マリ子「だから情勢が変わったのよ」

マチ子「誰がそんなもの変えたの?」

マリ子「マッちゃんでしょ?」

マチ子「私!?」

 

ヨウ子「だって、目を回しちゃったじゃないの。大山先生に漫画を描いていいって言われて」

マチ子「あ…あれはただもののはずみでね」

マリ子「何ですって!?」

マチ子「嫌よ、私、絶対反対よ! せっかくもりもりと仕事に戻る意欲が湧いてきてるっていうのに、そんな陰謀に乗せられてたまりますか!」

マリ子「マッちゃん!」

 

ナースコールを押すマチ子。「先生~!」

マリ子「ちょっとやめなさいよ」

マチ子「大山先生、助けてください! 先生~!」

 

という一騒動がありまして…

 

夜、磯野家

マリ子「飛んできた大山先生が『バカなことはおやめなさい』って」

正史「バカなこと?」

ヨウ子「ええ。悪い所は責任を持って切ってしまったんだから、そんな余計な心配をすることはありませんって」

正史「しかしですよ、学術的に言って、脳みそと胃袋はきょうだいのような関係にあるんです」

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はる「あら、きょうだいだったんですか? 脳みそと胃袋は」

正史「そうです。しかるが故に頭脳を使えば、つまり、マチ子義姉さんの場合、安を考えれば必然的に胃が怒りだし、今までもキリキリといった痛みが日課のようになっていた次第でありまするからして…」

マリ子「ううん、だから大山先生が手術の時にそのきょうだいの縁を切ってくださったんですって」

正史「どういうことですか? それは」

 

ヨウ子「つまり、胃の方へ行く自律神経を切っておいたとか」

正史「ええ~っ!?」

マリ子「だからもう大丈夫だし、せっかく仕事に復帰しようと意欲を燃やしているのに家族が足を引っ張るようなまねをするのは何事かって、もう、ヨウ子と私はこってりと叱られてしまいました」

はる「ほら、ご覧なさい」

 

マリ子「何がですか?」

はる「『決むるは神にあり』と私が言ったでしょう。どんなに大騒ぎしたって物事収まるところへ収まるもんなんですよ」

マリ子「ずるいわ、そんな、ご自分だけ騒ぎの圏外にいたみたいなおっしゃり方」

はる「あら、私は初めからそんなお仲間にはなっていませんでしたよ。ただね、マチ子のためになるならばと思っていただけですよ」

 

正史「分かりました。つまり、客観的にですね、マチ子義姉さんは漫画に復帰されるのが最良の道だと大山先生はおっしゃるんですね?」

マリ子「ええ、それがマチ子の天職だって…」

正史「天職ですか、なるほど…」

ヨウ子「あなた」

 

正史「いや、それならば私はなにもあえて農場をやれとは申しません。イチ抜けます」

はる「私もニィ抜けますよ」

マリ子「私は…」

ヨウ子「どうなさるのよ? マー姉ちゃん

マリ子「だから私は…」

はる「抜けたらいいんですよ、みんな一緒に。それがマチ子のためなら何にもためらうことはないんですからね」

マリ子「そうね、それもそうね。サン抜けた」

ヨウ子「ヨン抜けた」

 

マリ子「何だか喉が渇いちゃった。ヨウ子、お茶持ってきてくれる?」

ヨウ子「本当、私も」

正史「僕もです」

はる「私のもね」

ヨウ子「はいはい」

正史「あっ、ヨウ子さん、僕、手伝います」

 

というわけでマチ子廃業の件はこれで廃案ということになりました。となればあとはマチ子の順調な回復を待つだけ。「早くおうちへ帰りたいよ」とだだをこねるマチ子をなだめすかして無事、退院できたのは即日入院宣告の日からひとつき半後のことでした。

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磯野家の前を植辰さんが水をまき、マリ子は病室で荷造り。

荘司「磯野さん、それじゃあ、お大事に」

マチ子「いろいろお世話になりました」

荘司「なんのなんの。私の大好きな『サザエさん』を一日も早く見たい一心からですわ。本当に失礼しました」

マリ子「とんでもございません。もう荘司先生のダンスが拝見できなくなるかと思うととても残念ですわ」

 

荘司「ひゃ~、恥ずかしいわ。まあね、お望みやったらいつでもご披露に伺いますからね。ねっ?」

久美子「はい。ただし、その時はどうぞ大事な壊れ物は片づけておいてくださいね」

荘司「まあ」笑い

 

ヨウ子「マー姉ちゃん、車が参りました」

マリ子「はい」

朝男「ヘヘヘッ、よし、荷物はね、あっしが引き受けましたからね、皆さんどうぞ先行っておくんなさい。ねっ?」

マリ子「それじゃあ、天海さん、お願いします」

朝男「へいへい!」

 

まずはめでたいことでした。

 

植辰「お着きだよ、お着きだよ! マチ子先生のお帰りだよ!」

タマ「まあまあ、お帰りなさいまし! 待ってたんですよ! 何だい…お前さんにね、お出迎えしたいんじゃないんだよ、私は」

植辰「てやんでえ! そこまで来てらっしゃるんだよ、みんな一緒に」

タマ「だったらね、入り口を塞ぐバカがどこにいる!」

植辰「奥さん!」

 

朝男「お~い、マチ子お嬢さんのお帰りだい」

 

玄関に出たはると対面したマチ子。「ただいま」

はる「お帰り」

 

マチ子はマリ子に付き添われて2階の布団に入る。

マリ子「大丈夫?」

マチ子「大丈夫」

はる「とにかくゆっくりお休みなさい」

マチ子「はい」

 

しみじみ部屋を見渡すマチ子。「あ~…帰ってきたのね」

マリ子「そうよ。小さな四角い箱に入らずにね」

はる「まあ、なんてこと言うんでしょう。マリ子は」

マリ子「だって少しぐらい脅かしとかないと、マチ子は昔からすぐいい気になる癖があるでしょう」

 

1階からお琴さんの声がした。「奥様! マリ子奥様! ヨウ子奥様が!」

はる「ヨウ子が!?」

 

磯野家1階

お琴「奥様! ヨウ子奥様! しっかりなすって! 奥様ったら!」

マリ子「ヨウ子ちゃん!」

はる「どうしたの? 一体!」

お琴「『めまいがする』とおっしゃって急に倒れておしまいになって」

マリ子「まさか、マチ子の看病で病気が再発したんじゃ…」

はる「バカなことをおっしゃい! お琴さん、とにかくお医者さんを。あっ、その前に体温計とベッド」

 

お琴「ベッド!?」

はる「ヨウ子のお部屋のベッドに連れていくんです」

マリ子「お琴さん、お願い、お足持って」

はる「気を付けて。ヨウ子」

マリ子「ヨウ子」

口々に声をかけながら、客間からヨウ子たちの部屋へ運ぶ。階段の前ではマチ子が待っていてマチ子も手伝った。

 

「一難去ってまた一難」というのでしょうが、この日の暦には「喜びごとは重なるものだ」とありました。

 

夜、大急ぎで帰ってきた正史。「ただいま! 僕で、正史です!」

お琴「お帰りなさいませ!」

正史「ただいま!」

型を片方脱ぎ忘れるほど慌てていた。

 

正史「ヨウ子!」

はる「おめでとう、正史さん」

正史「あっ、どうもありがとうございます!」

マリ子「さっきの電話口のはしゃぎようったら、もう私の方が恥ずかしくなってしまったわ」

正史「すいません。おかげで仲間がみんなで万歳三唱してくれました!」

はる「まあ、新聞社の中で?」

 

正史「はい! 幸せです! 最高に幸せです! 本当にありがとう、ヨウ子! あっ、そうだ。いいものを買ってきたんだ。ほら、これが最新の育児書。それからこれは学会折り紙付きの哺乳瓶。それから『ブラームスの子守歌』。それからこれは…僕からベビーへのプレゼント!」紙袋からガラガラを取り出す。

ヨウ子「まあ!」

はる「まあまあ、正史さん、あのベビーちゃんが産まれてくるのは、まだ7か月も先のことなのよ」

 

正史「えっ、そんなにかかるんですか!?」

マリ子「明日にでも産まれるつもりだったの?」

正史「いや…別にそういうわけじゃ…」

 

正史は慌てていて、自分の上着の上に更に上着を重ねて帰っていた。

正史「またやってしまった…!」

 

ヨウ子「あっ、あなた、マッちゃん姉ちゃまがお帰りになってるの。2階にいらっしゃるわ」

正史「あっ、そうだ。そっちにも『おめでとう』を言わなくちゃね。じゃあ、ちょっと行ってくるからそれまで動いちゃいけませんよ。いいですね? 僕が帰ってくるまでじっとしていて。じゃあ、お願いします」

こけながら部屋を飛び出していく。

 

はる「大張り切りね」

マリ子「しかたありませんわ。だって、この私でさえ、天にも昇るようなうれしい気持ちなんですもの。ねっ、ヨウ子」

ヨウ子「ええ」

 

そうです。ヨウ子に子供ができたのです。

 

28分で終了し、「手のひらは小さなシャベル」タイム。

いいねえ、喜びごとが重なって。あと1週かあ。寂しいなあ。