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ドラマの感想など

【連続テレビ小説】マー姉ちゃん (151)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

サザエさんの20巻が出る頃、ヨウ子(早川里美)のおなかも大きくなっていた。ウメ(鈴木光枝)とさよ(香川久美子)が安産祈願のお札を持ってきたり、ヨウ子と正史(湯沢紀保)が生まれてくる子どもの性別で揉める中、植辰(江戸家猫八)だけは元気がない。はる(藤田弓子)が薬を飲ませたり、皆で介抱して元気を取り戻した植辰だが、マリ子(熊谷真実)には戦地から未だ戻ってこない息子のことを思いだしたと語り出し…。

磯野家玄関

男性「じゃあ、どうも失礼いたしました」

お琴「どうもごめんくださいませ」

 

カメラ目線でしゃべり始めるナレーションの飯窪長彦さん。

「ああ、どうも。この番組の語り手の飯窪長彦でございます。この『マー姉ちゃん』も半年たちまして今週でお別れということになりました。早いものですね。早いというと、あの三女のヨウ子さんですけれども、十月十日たちまして、今週あたりは月満ちる頃でございます。え~…あっ、こんにちは」

 

マリ子が大きな封筒を抱えて帰ってきた。

マリ子「あら、こんにちは。どうもいつもお世話になっております」

飯窪「とんでもございません。こちらこそ」

マリ子「いいえ」

飯窪「もう少しですが頑張ってくださいね」

マリ子「はい、どうもありがとうございます。あっ、もうお帰りですか。どうも失礼いたします。どうもありがとうございました。あれ? 誰だったっけな…」

 

今までも朝ドラ終盤にナレーションの方が登場することはあったけど、ばっちりカメラ目線でしゃべるシーンはなかったので斬新。あと、語り手そのもので出てくるのも斬新。

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犬の散歩中の奈良岡朋子さんとおしんがちょっとした会話を交わす。

 

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こちらも最終回でりんとすれ違う紳士として細川俊之さんが登場。音楽担当の三枝成章さんも登場。

 

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最終回の前の回、パーティーの司会者として当時NHK堀尾正明アナウンサー登場。

 

澪つくし」はそういうのはなし。

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最終回の前の回、入兆創業三百年記念式典の司会とかやれそうな感じだけどね。

 

家に入っていくマリ子とほうきを持って玄関に出てくる植辰。

 

漫画を描いているマチ子に声をかけるマリ子。「ただいま」

マチ子「ゲラ、どうだった?」

マリ子「出来てたわよ。はい。やっぱり関屋さんの腕は確かね。こちらの呼吸をぴったりのみこんでくれてるから、注文どおりの印刷だと思ったけど、とりあえず、一応もらってきたの。目を通しておいてね」

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印刷所は「サザエさんかるた」を提案してきた関屋さんのところになったのか。あそこはおもちゃ屋さんではなかったか。

 

マチ子「あ〜。こうして姉妹出版の『サザエさん』もついに20巻を数えたわけか」

マリ子「そんな感傷にふけってないでしっかりと校正してよ。自分の作品なんだから」

マチ子「相変わらずね。そんなせかさなくたっていいでしょう」

マリ子「そうはまいりません。印刷所にだって、ちゃんと段取りっていうものがあるんですもの。ちゃんとしっかり見てくれなくっちゃ」

マチ子「はいはい、分かりました」

 

磯野家玄関

植辰「はあ〜…」

門扉を開け、ウメとさよが入ってきた。

ウメ「ごめんなさいよ。(植辰に気付く)おや、植辰さん、そんな所で何をしてんだね?」

植辰「ああ…」

 

ウメ「どうかしなすったのかい?」

植辰「うん、別にどうってことはねえんだけどね、年だね。私はもう駄目かもしれないよ」

ウメ「ケッ、かっこつけちゃって。また安酒でも飲んで、その二日酔いだろう」

植辰「ふんっ、相変わらず憎まれ口は達者だね、ばばあ」

ウメ「おあいにくさま、耳の方も達者でござんす」

植辰「あ〜あ〜、なお、いけねえよ」笑い

ウメはバシッと植辰さんの背中を叩く。

 

応接間

ヨウ子「いらっしゃいませ、おばあちゃま」

大きなおなかで登場した時、ド~ンという効果音あり。

正史「いらっしゃいませ」

ウメ「おやまあ、だいぶ重そうになってきましたね、ヨウ子さん」

ヨウ子「おばあちゃまったら嫌!」

 

ウメ「嫌ってことはないでしょう。いい格好になってきてるもの。これは安産の相、疑いなしだ」

ヨウ子「本当でしょうか!?」

ウメ「本当ですともさ。けどね、産み月だから念には念を入れてと」

マリ子「おばあちゃまね、今朝、わざわざ水天宮様に行って、お札をもらってきてくださったんですって」

ヨウ子「まあ、おばあちゃまが?」

 

正史「それはそれはありがとうございました」

ウメ「『ありがとう』ったって、あなたに持ってきたんじゃないんですよ。これは、ヨウ子ちゃんに持ってきたんです」

さよ「まあ、おっ母さん」

はる「いいえ、頂戴します。産むのはヨウ子ですけれども、周りはただ心配することしかできませんものね」

 

ウメ「だけどね、ここのうちはアーメンさんでしょ? だからかえって迷惑なんじゃないかなと思って、気にはしてたんですけどね」

はる「いいえ。皆さん、ご心配してくださるお気持ち、私ども本当に心から感謝しておりますわ」

マリ子「正史さんのおかあ様からも東郷のははからも安産祈願のお守りを頂いているんですのよ」

ウメ「あらま! それじゃあ、ヨウ子ちゃん3つ子か5つ子産まなくちゃ言い訳が立たない」

 

正史「そんな! そんなのは駄目です!」

ウメ「えっ?」

正史「いや、それはやはり僕だっていっぺんにたくさんの子持ちになるのはうれしいです。しかしですね、ヨウ子にとってはやはり初めての出産ですし、最初は一人ずつでなければ…」

ウメ「でもね、今からそんな心配してるようじゃ、いざって時、大丈夫かね? この旦那さん」

 

正史「ええ。それはやはり僕じゃなくてヨウ子が産むんですから」

ウメ「いや、だけどね、肝心な時になって、あんたさんが一番オロオロしてるんじゃないんですか? 何しろね、障子のさんが見えなくなるようになんなくっちゃ子供は産まれてこないんだから、そんなヨウ子さんにあなたしっかりとして、そばについててやれるかね?」

ヨウ子「それでしたら大丈夫ですわ。今は無痛分べんというのがあるんです」

さよ「無痛分べん?」

 

正史「そうです。え~、一種の精神訓練と申しましょうか。そもそも無痛分べんというのは…」

マリ子「あ~、大丈夫です。あなたの代わりに私が申し上げておきますから、そろそろお時間じゃありませんの?」

正史「あっ、そうでした。それでは残りは正確にあねから講義を受けてください。時間ですので、大変失礼いたしました。これから羽田で記者会見がありますので行ってまいります」

ウメ「はいはい、行っといでなさいまし」

ヨウ子「行ってらっしゃい」

 

マリ子「ヨウ子、気を付けてね」

ヨウ子「はい」

席を立って歩きだしたヨウ子にまたも効果音。

 

ウメ「何ですか、そのあの…精神何とかっていうのは?」

マリ子「ええ、正史さんの解説によりますと痛いと思うから痛いのであって痛くないと思えば何事も痛くないんだそうです」

ウメ「へえ~」

はる「はい、近頃では妊婦さんのために、そういうお勉強会がございましてね、そもそもお産というものは自然の現象であって犬や猫でも誰に教わることもないのにちゃ~んと自分ひとりで産むんで人間だけがギャ~ギャ~騒ぐのはおかしいんだそうです」

 

ウメ「あらまあ、そんなもんですかね」

さよ「あのそれでヨウ子さんは?」

はる「はい、先生のおっしゃるとおりですから何の不安も持っていないようですわ」

ウメ「なるほどね。ハハッ! じゃあ、私もそういうのを知っときゃよかったよ。今からじゃ手遅れだな。ハハッ!」

マリ子「おばあちゃまったら!」笑い

 

無痛分娩ってそんな精神的なもの!?

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日本では、与謝野晶子さんが大正5(1916)年に受けたのが最初だそうです。今日の説明では当時見ていた人は誤解しちゃうね。でも、ここでウメさんが「痛みを知らなきゃ出産じゃない」とか言いださないだけいいと思った。

 

そこへお琴さんが入ってきた。

お琴「ちょっといらしていただけませんか? 植辰さんが何かご気分がお悪いようなんですの」

はる「まあ、植辰さんが?」

 

縁側にぼんやり座る植辰。

マチ子「気分が悪い時にあまり無理しちゃ駄目よ。少しは年を考えなさい」

植辰「年ってことはねえんですけど、マチ子先生にまでご心配かけちゃって申し訳ありません」

マチ子「いいのよ、今ちょうど一区切りついたところなんだから」

ヨウ子「お熱はないの?」

植辰「そんなものはまるっきりありませんよ」

 

マチ子「何言ってるのよ、熱がなかったら死んじゃうでしょ?」

植辰「えっ?」

ヨウ子「大丈夫よ。今、お母様がいいお薬作ってくださってるから」

植辰「ありがとうございます。まあ、ゆんべあんまりむしむしするもんですから、多分、布団蹴飛ばして寝てたもんですから、それで体がだるいのかもしれませんね」

マチ子「駄目ね~。夏風邪はバカでもひくっていって自慢にも何にもなんないんだから」

植辰「全くです、ハハハハハッ…えっ?」

 

台所の棚の奥から箱を取り出したマリ子。

はる「そうそう…それそれ」

マリ子「これでしょ?」

はる「はい、ありがとう」

お琴「お気を付けて」

 

はる「え~っと湯飲みは深い方がいいから、あのお寿司屋さんに頂いたのがあったわね。あれ出して」

お琴「はいはい」

マチ子「お薬、まだですか?」

はる「ちょうどいいわ、ポット取って」

マチ子「ポット? はいはい」

 

マリ子「ねえ、何のお薬?」

はる「ん~。すっきりとするお薬ですよ」

マリ子「へえ~」

お琴「はい、奥様」

はる「はいはい」

湯飲みに薬を入れ、ポットからお湯を入れる。

 

玄関

ウメ「辰っつぁんよ、しっかりしとくれよ、頼むよ」

植辰「ああ…ああ…」

はる「はい、出来ましたよ。はい、どうぞ」

植辰「これはどうも。恐れ入ります。ありがとうございます」

 

ダイニング

マリ子「この薬!」

 

玄関から聞こえるはるの声「香ばしくていい香りでしょう。私もね、疲れました時にこれを飲みますと元気になるんですよ」

ウメ「あら、そうですか」

植辰「へいへい」

 

マリ子「冗談じゃないわよ!」

お琴「はあ?」

マリ子「これは女の人の更年期障害のお薬です!」

マチ子「更年期障害!?」

 

玄関では植辰さんが薬を飲んでいる。

 

マリ子「どうしよう、マッちゃん…」

マチ子「知らないわよ。植辰さんが女形(おやま)みたいになったらどうする?」

マリ子「どうしよう…」

 

夜、応接間の窓から植辰さんの家?の様子をうかがうマリ子とマチ子。

マリ子「ねえ、どんなふう?」

マチ子「うん、今、電気が消えた。植辰さん、寝たのかな」

マリ子「そして明日、おめめが覚めて女々しくなってたらどうしよう」

マチ子「やだ、気持ち悪いこと言わないでよ」

マリ子「薄情なんだから、マチ子は」

マチ子「何言ってんのよ。薬作ったのはお母様で手ぇ貸したのはマー姉ちゃんでしょう」

マリ子「そんな…」

植辰さん、倉庫番と前に言ってたけど、倉庫に寝てるわけじゃないよね?

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ノックの音がして正史がいつものガウン姿で入ってきた。

正史「どうかなすったんですか?」

マリ子「い…いえ、あの、別に何でもないの」

マチ子「何でもないの。何でもないのよ」

正史「それならいいけど、ただいま戻りました」

 

マリ子「どうもお帰りなさい」

マチ子「早かったんですね、今日は」

ヨウ子「記者会見のまとめだけでよかったんですって」

マリ子「ああ、そう」

マチ子「それはよかったこと」

 

正史「いやそれがあんまりよくはないんです」

マリ子「それじゃあ、やっぱり植辰さんが!?」

正史「植辰さん?」

ヨウ子「植辰さん、どうかしたの?」

 

マチ子「いや…いえいえ、何でもないのよ。何でもないの」

正史「そうですか? それでしたらちょっとご相談に乗っていただきたいんです」

マリ子「ええ、いいわよ。あのお薬以外のことだったら何でも」

正史「そうですか? では申し上げますが、僕は…やっぱり女であった方がいいと思います」

マリ子「そんな!」

 

ヨウ子「ほら、ご覧なさい。うちではみんな男の方がいいと意見は一致してるって言ったでしょう」

正史「しかしだね、一姫二太郎といって最初の子供はやっぱり女の子の方が育てやすいと…」

ヨウ子「ひどいわ。あなたはいつも民主主義こそ平和のもとだなんておっしゃってるくせに。もしかしたらあなたはきっとひどいヤキモチ焼きではないかしら」

正史「とんでもない! 僕がいつそんなものを焼いて君を困らせたことがある?」

ヨウ子「だって、うちはみんな女だらけでしょう。一人でも男性が増えたらあなたがきっと心強いって、みんなそう思ってるって言ったでしょう」

 

マチ子「な~んだ、子供のことか」

正史「『何だ』とは何ですか! 我々夫婦はもちろんですが、お義姉さんたちにとっても初めてのめいでしょう。もうちょっと真剣になっていただきたいですね」

ヨウ子「いいえ、おいということだってありうるんです」

正史「しかしですね、ヨウ子、一姫二太郎というのは…」

 

マリ子「ねえ、分かった。もうその辺でもめないで。ねっ?」

正史「もめてなどおりません。これはディスカッションです」

マチ子「ではありまするでしょうが…」

 

ドアが開く

はる「つまらないことでギャ~ギャ~大騒ぎするんじゃありませんよ。男の子でも女の子でもどちらでも神様が私どもにお遣わしになる子供ですからね。不足など言うなんてとんでもないことです」

一同「はい…」

はる「予定日まであと1週間です。ホッとしたところで間違いが起こるもんなんですからね。みんなで心を合わせて無事に赤ちゃんの顔を見られるようにしなければどうするんですか」

 

正史「はい、お義母さんのおっしゃるとおりです」

はる「分かればそれでいいんですよ。ああそうそう。植辰さんね、いいあんばいに気分がよくなってきたんですって。あの方ももうお年ですからね、みんなで気を配ってあげてちょうだいよ」

マリ子「はい」

 

翌日、マリ子が玄関を出ると植辰さんが脚立に上がって植木の剪定をしていた。

マリ子「あら、植辰さん」

植辰「えっ? おっ、これはおはようございます! どうもどうも。今日はまためっぽういいお天気じゃござんせんか。ねっ? 気持ちがいいや、本当に」

マリ子「どんな具合かと思って様子を見に来たのよ。気分いかが?」

 

植辰「おかげさまでね、大奥さんから頂いたあの薬がね、バカな効き方ですよ。ご覧のとおり、すっかり元気になっちゃった」

マリ子「ええ…」

植辰「けどね、病は気からってのはあれは本当ですね」

マリ子「えっ?」

 

植辰「ゆうべ、つくづく考えたんですがね、まあそれはね、たしかに薬は効きましたよ。だけどね、みんなが心配してくれて、そのお気持ちが効いたんじゃねえかと思いますよ」

マリ子「ええ…」

植辰「愚痴だと思って聞いておくんなさいよ。まあ、ヨウ子さんのおなかを見るにつけね、一日一日まあ指折り数えて、お産の来る日を楽しみに待ってたんですがね、何て言うのかな…何のはずみかふっと栄一のことを思い出しましてね」

マリ子「植辰さん…」

 

植辰「どこでくたばってるか知らねえけど、あいつもね、さっさと帰ってきやがってたら、私のとこにも孫の3人や4人はいるはずなんですよ…と思っただけでね、もう、いけませんや。何だか気持ちがめいっちゃいましてね…」

マリ子「いけないわ、そんな。まだ戦死の知らせはないじゃありませんか。栄一さんは必ず帰ってきます」

植辰「ありがとうございます。そのとおりですよね。岸壁の父は泣いちゃいけねえんですよ」

マリ子「そうですとも」

 

植辰「だから間違ったってヨウ子さんが丈夫な赤ん坊産むまではさ、つまらねえ顔して心配かけちゃいけねえんですよ。ねっ? 陽気に元気に生き生きとね。ほら、さっぱりしたでしょ? あの枝も。ねっ?」

マリ子「本当に」

 

女性用更年期障害の薬はどうやら植辰には精神的にも元気回復の効力を発したようでした。

 

今なら炎上しそうなことが2つ、3つ!? それも含めて昔の作品を見るというのは面白いんだけどなあ。「芋たこなんきん」の予告番組も見ました。こっちも面白そう。