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ドラマの感想など

【ネタバレ】東京の女性

1939年 日本

 

あらすじ

戦前の東京を舞台に、男性優位社会で恋と仕事に揺れつつ奮闘するモダンな女性を描出。人気スターの原が、先駆的なキャリアウーマンの躍進を洋装姿で颯爽と演じ、女優としての評価を一層高めた注目作。銀座の自動車会社でタイピストとして働く節子(原節子)は、事故で働けなくなった父に代わり大黒柱として家庭を支えるべく、知識やスキルを懸命に身につけてセールスレディに転じ、同僚の木幡(立松晃)ら男性社員に負けじと、めきめき頭角を現していく。

2025.9.18 日本映画専門チャンネル録画

 

東寶映畫株式會社

 

主演:原節子

(報知新聞連載)

 改造社

原作:丹羽文雄

脚色:松崎與志人

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製作:竹井諒

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A32

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製作主任:井上深

音樂:服部良一

演奏:P・C・L・管弦樂團

主題歌:コロムビアレコード三〇四一三

    節子の唄・作詩:氣賀ゆり子

            作曲:服部良一

                  歌 :二葉あき子

東京の女性 (節子の歌)

東京の女性 (節子の歌)

  • 二葉あき子
  • 謡曲
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

   處女の夢・作詩:藤浦洸

               作曲:服部良一

               歌 :淡谷のり子

*

君塚節子:原節子…字幕黄色

妹 水代:江波和子…字幕緑

父 榮治郎:藤輪欣司

母 お幾:水町庸子

木幡好之:立松晃(入社第一回)…字幕水色

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タイピスト たき子:水上怜子

一森営業課長:外松良一

販賣主任:柏原徹

社長:鳥羽陽之助

その秘書:龍崎一郎

町田家執事:生方賢一郎

自動車を買ふ客:原聖四郎

バーの女:星ヘルタ

*

セールスマン 高山:深見泰三

       太田:如月寛多

         :柳谷寛

                              :鐵一郎

運転手:佐山亮

   :河合榮二郎

   :中川弁公

   :山形凡平

*

演出:伏水修

 

ビルの屋上から撮影されたと思われる昭和14年の東京の風景。

 

自動車会社のロビーにはピカピカの新車が並ぶ。

 

⚟︎販売員「あー、何か、ぼろい儲けはないかなあ」

 

販賣部員室

販売員「靴底と一緒に身をすり減らすのが哀れ、俺たちセールスマンさ」

男たちの笑い声

販売員「鐘一つ、売れぬ日のない大江戸でダッジ1台売れねえとは、ご時世も、ひどく俺たちを見限ったものさ」

 

ダッジアメリカの自動車ブランド。

 

販売員「と言って『1度見た夢、甘い夢、見果てぬ夢が身を食ろう』か」

 

節子「木幡(きばた)さん、いらっしゃいません?」

 

原節子さんの役名も節子さんなのね。そこいら捜してみなと言われ、1階の販売部員室を出て、2階の文書室にいる、たき子に声をかける。節子は友達のうちで車を買うと言うから知らせてあげようと思っていた。たき子から屋上にいるらしいと聞いた節子は、お礼を言って屋上へ。

 

販売部員室には高山が戻ってきて、木幡を捜していた。

 

時報の鐘の音がし、屋上にいた人たちが出入り口に向かう。節子が木幡を見つけ、話しかけようとすると、高山が木幡と引っ張って連れて行った。

 

高山「木幡、貴様、ひどいじゃないか」

木幡「ん?」

高山「オムラ商会への自動車売り込みの一件について貴様の良心に問おう。あれは俺の仕事だ。貴様は、それを横取りしたいとでも言うのか?」

木幡「ん? フフッ、冗談はよしたまえ。あの口は最初から僕の仕事だったんでね」とタバコを吸い始める。

 

話を進めていたのに横合いから飛び出してきて…と文句を言う高山。木幡は1つの仕事を2人で争えば、どっちか敗れるに決まってる。君は負けた方さ、つまり商売が下手ってことだと高山の肩をポンポンたたくと、高山が激高し、木幡を殴った。

 

すぐに立ち上がった木幡に頼むからあれだけは俺に譲ってくれないかと頼む高山。女房が病気で入院して、うちでは子供がピーピー泣いている。嫌でも高いカネを払って、毎日、家政婦を雇っている。かわいそうな女房と子供のために、あの仕事だけは俺のもんにしたいと頼む。

 

「分からん」と答えた木幡に「それでも、貴様、人間か? クソッ」と言い、木幡を突き飛ばす高山。節子の見ている前で二人はつかみ合いのケンカを始めた。「もうお二人とも…いいじゃありませんか」

 

まーだ殴り合いのケンカしてるよ。木幡の勝ち。木幡はイケメン枠、高山は眼鏡に小太りの男。

 

高山「貴様、俺をいくつ殴ったか覚えちゃいまい。俺もものが言えるのが不思議なぐらいだ」と息が荒い。しかし、腕の1本へし折られてもどうしても諦めんぞ、今月だけはどうしてもカネが要ると頭を下げる。それでも断る木幡にまた殴りかかる高山。

 

節子は、そんな二人を見ていて、屋上から出ようとするが、木幡に「さっきの話って、何ですか?」と呼び止められた。

 

高山「おい、木幡。畜生でも、もう少し感情ってものを持ってるぞ」

 

節子は仕事に戻り、タイプライターを打つが、イライラして失敗して紙を丸める。たき子から木幡に話したか聞かれても、節子は無視して仕事する。が、プイッと立ち上がり、一森(いちもり)営業課長のもとへ行き、学校友達のお父様の話をした。

 

一森や男性秘書から当分、誰にも言わないように念を押される。

秘書「特にセールスマン連中には注意しないと。いいかね?」

 

麹町一番町のツチヤ・ヒデカズだと名前を教えた。

 

一森「じゃあ、いずれ、お礼のほうは規定どおりあげるからね。それまでは、この話は絶対に口外しないように」

 

後日、課長室に呼ばれて、お礼をもらった節子は部屋を出て、封筒の中身をチラ見。課長と言っても、秘書がついて、かなり大きな部屋で仕事している。もっと重役クラス以上くらいに思える。

 

廊下を歩きだすと、営業の太田に声をかけられた。「しらばっくれんなよ。ハドソン1台売りゃ1200円のコミッションだろ。間に人が2人入っても、君の取り分は400円ある」

 

400円と聞いて驚く節子。

太田「女の身として、我々、本業のセールスマンを尻目にすごいもんだねえ」

節子「いいえ。そんなに頂かないわ」

太田「ウソをつけ。ずるいぞ、君。なんかおごれよ、え?」

 

茶店

たき子「新車を売りつけて、たった100円だなんて、そんなのないわ。きっと課長がうまいことしてんのよ。どうして木幡さんに相談しなかったの?」

節子「木幡さんには話したくなかったのよ」

 

たき子は木幡さんならきっと正当な報酬を取ってくれると思うとアドバイス。相手は課長だからって遠慮することはない。取るべきものは堂々と取るのが本当だと思う。

 

しかし、節子は木幡にそんなことをしてもらいたくない。たき子はケンカでもしたのかと聞く。「それはとにかく、あなた、今、お金が要るんじゃないの? お父さんは遊んでらっしゃるって言うし」とにかく木幡さんに相談なさいよと言うが、節子の態度は頑な。

 

たき子「じゃあ、勝手になさい。バカな節子」

 

社内でばったり木幡に会った節子は呼び止められ、たき子から聞いたと課長がコミッションをごまかそうとしていることを話してきた。相手が誰だろうと改まって交渉するべき。節子はセールスマンじゃないから、ぶったり蹴ったりしてまでお金が欲しいと思わないと話した。

 

木幡は高山とのことは誤解だと弁解した。高山の女房はピンピンして銀座のバーで働いている。子供もいない。セールスマンは仕事となると手段を選ばないが、高山はいつも戦術が卑屈で老獪で、泣き落としで仕事を奪おうとした。「ただ、暴力を振るったという点では僕も大人げないと思ってるんだが、それだってヤツがキチガイみたいにかかってきたんだからしかたない」と頭をかいた。「単純に解釈してしまって」と謝る節子。

 

課長室に行き、売却証明書を見せてほしいと節子が言うと、誰からそんなことを教えられてきたんだとイライラする一森。節子はお友達のお父様だからご不信のないように明細書をお見せしようと思いまして、と食い下がる。課長室の前に人影が写る。

 

一森は会社から1割のコミッションが出ていて車体の改造やなんかでだいぶカネがかかっているから、実際の取り前は400円しかないと説明。100円しか出さなかったのは僕が悪かったとして、もう150円だけ出そうと懐から財布を出し、それで済んだことにしといてくれないかと無理やり節子の上着のポケットにお金をねじ込んだ。

 

150円は節子の給料のふた月分。節子はこれ以上食い下がることができず、課長室を出た。

 

街を歩きながら木幡にお礼を言う節子。しかし、あんな顔してケロッとねこばば決め込もうとしていた、あの課長が憎らしいとも話した。「女だからバカにされるんですわ。私もセールスマンになってやろうかしら。セールスマンだったら、男だとか女だからっていう差別はないでしょ。どこまでも腕一本の勝負ですものね。私、1度、同じ条件で男と競争してみたい気がする」

木幡「ハハハハッ。節子さんなんかに職場を荒らされた日にゃ、我々は上がったりだな。ハハハハッ。あー、怖い怖い」

 

オシャレスーツで歩いている節子に妹の水代が声をかけた。水代はブラウス、スカート、下駄。父さんが酔っ払って帰ってきて、ぶったり蹴ったりして、母さんがかわいそうだと訴えた。道端ですれ違った女性たちは着物に割烹着。

 

節子たちが帰ってくると、言い争いをしていた父・榮治郎は席を外した。

 

水代「姉さんをお妾にだなんてバカにしてるわ。商売に手を出して、お店を潰したのは自分のくせに、どれだけ母さんや姉さんをいじめればいいの? なんて父さんだろう」

 

着物に着替えた節子はアイロンかけをして、母・お幾はリンゴをむいている。「お父様は心が狂いなすったんだよ。ニシダさんが3000円出す。そのうえ月々の仕送りをするなんておっしゃったもんだから。お父様もあまり不運続きすぎた。なんとかして立ち直ろうとしてはジリジリとしていらっしゃるんですよ」

 

節子「お母さん、私たちは、お父さんの子です。お父さんのためだったら、どんなに働いたって苦労したってかまわないと思っています。だけど、これだけはどうしても納得できませんわ」

お幾「そりゃそうですとも。そんなことがあったって、そんなことができるもんですか。義理の仲だから言うわけじゃないのよ。お父様が間違っていらっしゃるんだもん」

節子「こういうとき、昔の人だったら、やっぱり自分を捨てたんでしょうね。私、いけない娘かもしれないな」

お幾「そんなこと、節子さん」

 

節子は、お幾にいつまでもこんなふうだと体に障るから、この家から離れるよう提案した。「母さんがいつもなし崩しに親切になさるから、父さんが勝手気ままにふるまうんです」

 

水代も父さんを独りぼっちにして困らせてやるといい、そしたら父さんだって目が覚めるというものの、お幾は涙を拭く。お幾は後妻さん?

 

妾話を母親も一緒になって断るというのがこの時代では珍しいような??

 

業工産興

社會式株

 

水代も節子の働く興産工業株式会社で働き始めた。嫌なお父さんの顔を見ないで済むだけでも気が清々すると仕事を楽しんでいる様子。しかし、節子が急かすから家の戸締りを忘れたと慌てた。節子は酒屋さんに電話して頼むように指示。

 

たき子は水代ちゃんはかわいい、あんたより好きだと言う。水代は19歳。「ねえ、あんたには、どっか怖い感じがあるわ。近づきがたい威厳みたいなものがあるけど、水代ちゃんの美しさは、もっとざっくばらんよ。親しみやすい美しさだわ」

 

屋上にいた水代は踊るように階段を下りた。

 

一森「石油の問題というと人口液体燃料製造の問題において、…博士の活性炭素の利用方法なんてのは、なかなかうまい話じゃないか」などと難しい話をしている脇を通り過ぎようとした水代を腕を出して止めた。

水代「嫌ーん」腕をかじる仕草をしたので一森は腕を引っ込めた。「忙しいんだから嫌よ。こらっ」とスキップしながら廊下を歩いていった。

 

一森「どこの子だい? かわいい子だね。なんて子だい?」

社員「例のほら、君塚節子の妹ですよ。今度、庶務へ入ったんです」

一森「ほう、そうかね。いやあ、姉のほうとは、まるで違うね」

 

母の住む家に行った節子と水代。「煙いな、こやつ」とヤカンをかけた七輪を団扇であおぐ

お幾「あっ、ガスばかり使い慣れると七輪がうまくおこらないんだよ」七輪はベランダに出してるけど、すごい煙。

 

帰り際、お幾は節子を呼び止め、榮治郎の様子を聞く。

 

外では祭囃子が聞こえ、君塚家の軒先にも祭りの提灯が吊るされている。榮治郎が庭をぼんやり眺めているうちに水代は風呂敷包みを持って外へ出ようとし、榮治郎に見つかった。

 

水代は「嫌だー! 私、お父さんに監禁なんかされるわけない」と抵抗する。

榮治郎「お前たちが父親をバカにして、お幾を隠したりなんかするからだ」

水代「当たり前よ。父さん、母さんをいじめたじゃないか!」そのまま外へ出た。

 

節子「お父さん、いつまでこうしてるつもり?」

お幾の居所を教えるまでだという榮治郎。女の腐ったみたいな仕打ちだと鼻で笑う節子。

 

水代は、お幾の家に向かって歩く。都電や車が走ってたり、子供が歩いてたり、当時の街の様子に見入っちゃう。昭和14年、ここまで戦時色は全くなし。

 

2階に来た榮治郎は節子にお幾が自分出ていくと言ったのか聞いた。

節子「母さんは、ここを出たらどこにも身寄りのない気の毒な人なんですから、私たちで一生、責任を持って大事にしてあげるつもりです。今更、父さんに心配して要りませんわ」

榮治郎「お前たちまでグルになって、この父親に盾つく気か」

 

このまま監禁を続けるつもりの榮治郎に「働かないで食べていかれるなら、私も水代もどんなに清々するか分かりません。じゃあ、お父さん、代わりに働いてくださいますのね」と聞く節子。

 

父は言い返すことができず、新聞をめくる。しかし、3000円のお金があれば、それを元手にして立ち上がる。こう見えても表具師仲間には腕に引けは取らないと自信を持っている。まとまった資金さえあれば店を手に入れる。節子は、お店がなければ働けないのか、お金がないと真剣に立ち上がる気持ちにはなれないのかと問う。「男として情けないと思いませんか? ええ?」

 

説教か、と立ち上がる榮治郎に情けなくて涙が出てくる節子。

 

お幾が父さんが気になるからと家に戻ってきた。節子は笑顔で迎え入れたが、直後、「おたくのご主人がケガをなすったそうです」と男性が訪ねてきた。

 

病院に駆けつけたお幾と節子。父は頭や足に包帯を巻かれ、ベッドに寝かされていた。個室で畳の部屋にベッドが置いてあるのね。ドアが開けると段差がある。壁のほうが足なのが何だか面白い。原因について言及なし。

 

命に別状はないが、思ったよりひどく、長引く。節子は何とかすると言って、お金をお幾に渡した。

 

目を覚ました榮治郎に節子は「お父さん、ビックリなすったでしょう。でも、心配なさらなくていいわ。こんな傷ぐらい、すぐ治ってよ」と励ます。榮治郎は心配かけてしまなかったね、と謝った。

 

居酒屋の座敷席

木幡「この商売、男でもなまやさしい仕事じゃない。いわば人間の欲望が最も露骨に現れてる世界かもしれん。客を取り合って、時には殴り合いまでしなくちゃならないこともあるしね。また、ひょっとすると車と一緒に節子さん、あなたまで欲しいなんて不了見なことを言うヤツが出てこないともかぎらない。女だから、君は女だけに屈辱とか困難だとか、その険しさは、なかなか大変だと思うな」

節子「女だけにその迫害があるだろうことも苦しいことも十分、覚悟しています」

 

木幡「少しでもセールスマンの冒険とか生きがいとか勢とかに魅力を感じての転向なら、きっと後悔する。僕は、あんまり賛成できん。例えば、運転手の賭場へなんか行くと、いいかげん向こう気の強い自分たち男でも、一切、顔負けしてしまうんだ。事に若い女性で、しかも、節子さんのようにキレイだと俄然、色と欲との両事故が広げられる。それにがっちりと耐えられるだけの…」

節子「大丈夫です」

木幡「そりゃ、口では、そうたやすく…」

節子「いいえ、いいえ。きっと大丈夫です、木幡さん。私、今、どうしてもお金が要るんです。欲しいんです。そのための苦しさだったら、どんなことだって…」

 

木幡「しかも、これからのセールスマンは今までみたいに新しいアイデアや強引な商法じゃやっていけない…」

 

節子「ですから、私、ライレー車を専門に研究して、その方面で自分の販路を…」

 

ライレー…イギリスの自動車製造会社。

 

木幡「つまり、その基礎的教養ってやつが、それこそ大変なんだ。もっとも面倒で煩わしい工場。例えば、えー、鍛冶、鋳物、プレス、溶接、熱処理、塗装、エンジン、車体、機具、あっ、いや、そのほかに販売部、総務部、文書部、営業に至るまで、すっかり精通してて小さなネジ1本でもどこに使われているもんか、たちどころに分かるまでになってないとね」

節子「お願いです、木幡さん! 私を一人前のセールスマンに仕上げてください。頼みます」

木幡「そう、それほど固い決心なら、よし、僕もできるだけ力になろう」

節子「うれしい」涙を拭く。「お願いします」

 

自動車工場

ブラウス、スカート姿の節子が油まみれになりながら工場内を歩き回り、本を見て勉強する。火花を直接見て、ふらつく節子。

 

文書室

たき子のもとへ顔を出した水代。

たき子「節子さん、近頃どう?」

水代「んー? 姉さん? 姉さんね、このごろまるでキチガイ魔みたい。工場から自動車の練習に回って、毎晩遅くなって帰ってくるの。油でね、そりゃあもう真っ黒になって」

たき子「偉いわね。とても私たちにはできない芸当だわ」

水代「だから私、とってもかわいそうなの。母さんは病院だし、姉さんは毎晩遅いし、1人でごはん炊いて、1人で食べてんの」

たき子「かわいそうな水代ちゃん」

水代「ホントよ。同情してくれるんじゃなきゃ、水代、かわいそうよ」

 

木幡が「さっき頼んどいた発送通知できた?」と、たき子に声をかけた。たき子は”ナリタ”さんなのね。木幡に見惚れる水代。

 

たき子「あなた、節子さんのセールスマンへの転向、どう思って? そりゃ、別の理由があったことは確かだけど見ようによっては一種の恋愛の偏見とは考えられない? あなたがセールスマンで節子さんがセールスマンに転向する。ここに何か符節を合わすものがある」

木幡「何を言う」

たき子「ンフッ、いかがです? 私の心理分析は」

木幡「バカな」

 

水代「今夜、映画見に連れてってよ」

木幡「ダメだよ。少しは姉さんを見習うこった。また今度、姉さんが暇なとき、みんなで一緒に行こう、ねっ」たき子から書類を受け取り、お礼を言って去った。

水代「意地悪!」

 

階段を下りてきた一森が「油を売っとっちゃいかんじゃないか?」と水代に声をかけた。自分で頭をこつんと叩く水代。節子との対比だろうけど、かなり子供っぽく描かれてるね。

 

工員がトラックの誘導をしていた。オーライとかバックとかストップとか当たり前に使ってる。英語が敵性語になったのって、昭和15年以降の話らしい。

 

節子は車の下にもぐり、車の整備をしていた。なのに、白シャツにスカート! 脇を通ろうとした工員が車の下から出てきたのが女で驚く。いや、スカートなんだから足で気付くだろ! トラックの助手席の行員と一緒になってべっぴんだと騒いで、じろじろと節子の顔を見た。

 

トラックが通る反対側に立った節子に木幡が声をかけてきた。節子はエンジン周りが終わり、昨日からブレーキをやっている。木幡は自身はエンジンでひとつきかかったと驚く。

 

木幡の車に乗る節子。

木幡「もうすぐ節子さんも一人前のセールスマンだな。だが、ホントの苦労はこれから先ですよ」

節子「ええ、覚悟してますわ。でも、私、なんだかそんな困難ぐらいグッと乗り越していけそうな気がしますの。私、成功しそうですわ」

木幡「うん、君なら大丈夫だろう」少しだけど、足しにしなさいと封筒を渡す。

 

封筒の中身はお金。車が止まる。

木幡「車が売れるまでは手元不如意と察してね、ハハッ」

節子「あら、そんなこといけませんわ」

 

木幡は車を降りて、手を洗ったり、顔を拭いたり。気にするほどの金じゃないと言い、気が進まないならお貸しすることにしてもいいという。「いずれ、節子さんが一人前になってジャンジャン儲けるようになったら返してください」

節子はありがたく借りることにして頭を下げた。

 

座敷のある食堂? 社員食堂?…いや、木幡の言ってた運転手の賭場?

木幡「いや、皆さん、日本興産のセールスマン、君塚節子嬢を紹介します。どうぞ、よろしく」

 

茶店

木幡「どう? あいつらの毒舌にぺちゃんこになりゃしなかった?」

節子「なんだか自分が悲しくなってきましたわ。あんなにされても嫌な顔ひとつできないなんて」

木幡「仕事となりゃ時には、こういう場所へ来て飲めないお酒のお相手もしなくちゃなりませんよ。どう?」とタバコを勧めたが、節子は断った。「いいえ、私、ダメ」

 

木幡「とにかくこういう商売やるからには気の向かないときでも軽口の1つぐらい聞かなきゃ。ねえ、節子さん、大丈夫かなあ? これから1人でああいう所へ行けっかな?」

節子「ええ、私、やりますわ。やってみますわ」

 

運転手の賭場

運転手「うちの大将は、とても新しがり屋でね、新しいもんときたらすぐ飛びつくんですよ。僕が君塚さんの最初のお手柄をさせてあげることになるかな」

テーブルで将棋を指す運転手の脇で話を聞く節子。「恩に着ますわ」

 

節子の言葉になぜかその場にいた運転手たちが笑う。

 

レストラン

木幡「ひどくガッカリしてますね」

節子「難しいもんですわ」

また節子に封筒を渡す木幡。

節子「木幡さん、ご親切はありがたいけど、私、まだへこたれませんの。せっかくですけど」

木幡「セールスマンはケチケチしてたらダメですよ。相手にいつもゆったりとした気持ちを与えておかないと商売は、そっぽを向いてしまう。フフッ」

節子「ありがとう。でも私1人でやってみるわ。やや有望な口が1つあるんですの」

 

社長室

社長「タカオカくんの紹介だから、できるかぎりご相談に乗ってあげたいところだけれど、どうだね? そのライレー車というやつは、しょっちゅう故障するそうじゃないか」

節子「いいえ、以前は、そういうこともよくあったようでございますが最近は非常に研究が積まれまして、もうほとんど絶対と言っていいくらい完全なものが出来てるんでございますが」

社長「うーん…いや、その心配さえなければ、時節柄、ライレー車に変えてもいいと思ってる。ねえ、ユタニくん」

ユタニ「はあ。しかし、その点は、よく調査いたしませんと。浸炭自動車の講習会は新聞記者を断ったというじゃないですか。どうしてです? まだまだ浸炭車は自信がないんじゃないですか?」

 

この時代、秘書って男ばっかりだね。

 

浸炭…金属(特に低炭素鋼)の加工において、表面層の硬化を目的として炭素を添加する処理のことです。…ん~、分からん。

 

節子「いいえ、そんなことはございません。絶対に保証いたします。先月も国産車の性能試験がございました。日産2台、それにシボレーとフォードを加えまして…」

ユタニ「お話し中でございますが、ナカジマさんと東京会館でお会いになる時刻でございます」

 

社長は出かける前、ユタニくんとよく相談して決めてくれたまえと節子に言って、出ていった。一緒に社長室を出たユタニは別室に待機していた高山に声をかけ、社長はご機嫌でライレー車を買わされそうだと伝えた。高山は、これだけ色を付けるから…とユタニと密談。

 

社長室で待っていた節子はウキウキとカタログを取り出し「これが今年のマスター・セダンですわ」と戻ってきたユタニに見せた。

ユタニ「君、困るじゃないか。直接、大将に話なんか持ってきたりして者には順序ってものがあるぜ。社長なんていうものは、みんな甘いからな。その顔で口説き落とそうっていうんだろうが、そうは問屋が卸さないよ」

 

哀しい音楽がかかり、カタログを足元にバラまく節子。

 

それにしてもユタニ役の龍崎一郎さんは、スラッとした長身でスーツがすごく似合ってて、オールバック、細い縁のメガネで今の時代でもフツーにかっこいい。

 

家に帰り、着物姿の節子はソロバンと家計簿?を見て、うなだれ、寝っ転がる。

 

水代が病院から帰ってきた。榮治郎が近いうちにまた手術が必要だという。「あーあ、嫌になっちゃうな。こうやって働いてても、小遣い、みんな、そっちのほうへ回すんですもの。つまんないよ」

 

病院に行った節子は、お幾に「お金のことだったら心配いらなくってよ。私、仕事のほうもうまくいきそうですし、あしたになればいくらかまとまったものが入る目当てがあるんですの」と報告。

ちょうど病室に来た医師がお急ぎでなかったらお聞きしたいことがあると節子に話しかけてきた。

 

茶店

木幡「まったく颯爽たる初陣ぶりだね」

たき子「節子さん、本当におめでとう」

節子「ありがとう」

 

院長に会った節子は手術のお金のことを相談しようと思ったが、反対に病院車の注文を受けた。

 

木幡「しかし、早々うまくはいかないよ。そんなのはホントに拾いもんで困難はこれからだよ」

節子「ええ、それはもちろん、よく覚悟してますわ」

 

たき子は節子を褒め、節子は先生がいいからよ、と木幡を褒めた。

 

木幡「あなたもいよいよ僕らの好敵手ってわけだな」

会話についていけない水代は「私、もう帰ろ」と立ち上がり、お開きとなった。

 

それにしても、たき子もタバコ吸うのね。

 

節子「私、あなたに負けませんわよ」

木幡「ハハッ。僕もあなたが女だからって遠慮なんかしないでビシビシやりますよ」

 

販賣部員室

販売員1「とたんに病院車を1台ものにするなんざ、えっ、すごいじゃないか、なあ」

販売員2「全くだ」

販売員3「とにかくあんな調子でやられたんじゃ、今に俺たちみんな押されちゃうぞ」

太田「まさか」

販売員1「いや、楽観は許さんよ。それに日本実業にも直接、社長に口をかけてるというじゃないか。うん」

太田「日本実業?」

 

節子が戻ってくると、男たちは会話をやめた。

 

販売員2「とにかくえらい女が現れたもんだよ」と嫌みっぽく節子を見る。節子は何も言わずに席に着いた。

 

販売員4「君、これはね、これはね、君、僕の邪推かもしれないけど木幡のヤツね、あいつね、早いとこアレしてるんじゃないかと思うんですよ」

販売員1「ふーん、木幡がねえ」

販売員4「あっ、そうか。会社への都合上、表面は他人だが、その実、夫婦協力なんてことになると、こりゃ俺たちには歯が立たんね」

販売員「お利口ぶった木幡のことだからありそうなことだよ」

 

木幡が戻り、上着を脱いでいる。

 

販売員「鬼に金棒か」

販売員「しかし、木幡がモノにしてるってのは何か確かな証拠があんのかい? それとも憶測かい?」

販売員4「何、二枚目ぶったあの男のこった女のほうから飛びついてくるからな」

 

販売員1がようやく木幡が帰ってきたことに気付き、手ぶりで合図。「いやあ、俺はそうは思わないぜ。木幡くんは、これでなかなか物堅いとこがあるからね」

木幡「なんだ」

販売員1「いや、なんでもないんですよ」

 

中越しに会話を聞いていた節子は会話の流れが変わり、木幡が戻ってきたことに気付いた。木幡は成績もよく、一目置かれた存在なのかな。販売員は途中、節子にピントがあったりして、誰がしゃべってんだか分からない。

 

嫉妬の塊。やだね~。

 

水代がおひつを持って居間に入ってくる中、節子はまだ布団の中。水代に新聞を持ってこさせ、布団に寝転がったまま、新聞を広げる。「次はコーヒーを持って参れ」

 

水代「姉さん、いいな。朝寝ができて。私もセールスマンになろうかしら」

 

外回りとかするからある程度出勤時間も自由なの?

 

新聞を読んでいた節子は「私の紋付出しといてちょうだい」と水代に言い、立ち上がった。「仕事、仕事」

 

新聞記事のアップ

 

東亞製鋼町田常務の奇禍

    昨夜京濱國道の自動車事故

 

ほかの新聞記事は

靖國神社へ参拝者續く

母子心中…

 

報知新聞社のお知らせとして皇軍とか、陸海軍の…とこの映画では初めて、軍関係のことが書いてあるけど、不鮮明で何が書いてあるかよく分からないんだよな~。

 

町田「いや、どうも恐れ入りました。いずれ、後日、改めてご相談いたしますから」

執事「どなた様で?」町田が名刺のようなものを渡す。

町田「じゃあ、ご丁寧にどうも」走っていく車に頭を下げた。

執事「『興産自動車 販売部』」

町田「いやあ、なかなか抜け目のない女異客なんだよ」

 

喪服で葬式に参列した節子だけど、名刺を受け取ったのは町田常務の親族ってこと?

 

喪章をつけた木幡も到着したが、ひと足遅かった。木幡に気付かず、後部座席でコンパクトで顔を整えながら、ほくそ笑む節子。最初は「やるなあ」みたいにニヤついて節子の乗った車を見送った木幡の表情が喪章を取って、ちょっと複雑に変わるんだよね。

 

販賣部員室

節子「あっ、日本実業ですか? 私、興産の君塚でございますが。社長秘書のスギモトさんをお願いします」デスクに腰掛けながら電話してる。しかし、電話で話しているうちに太田に仕事を取られたことに気付く。

 

部屋を出ていく太田を捕まえて、「オオカワさんは私が友達のお父様に紹介してもらって、何度もお訪ねした末に、やっと買っていただくことになったんですよ」と責めた。君塚の代理だとウソを言い、横取りするなんて、あんまり卑怯すぎると言っても、「我々、セールスマンの生活はちょっとした戦争なんだからね」と悪ぶれない。

 

節子「人をだますようなやり口は、あんまり男らしくないじゃありませんか」

太田「冗談だろ。商売となりゃ、また別だよ」

節子「あさましい。そんなに欲しいなら熨斗をつけて進呈するわ」

 

前は女性らしいブラウスだったけど、今はシャツにネクタイ、下はスカートだけど、上だけ見ると男っぽい服装になった節子。

 

高山「どうだい、少しはセールスマンかたぎが飲み込めたかい? 君が日本実業に連動してるなんて口を滑らしたのが運の尽きさ」と飲みに誘うが、ちょうど木幡が帰ってきて、その話は終わった。

 

バー

着物の男性客にカタログを見せる節子。男は「どうだね、1杯くらい」と勧める。お酒は苦手だというのに男に勧められるまま酒を飲む。

 

木幡が偶然店にやってきて、カウンターでビールを注文。ホステスが「女で自動車のセールスマンやってる方があんのね」と話しかけてきた。

 

木幡は店の奥の席で節子がセールスしているのを見た。すっかり客あしらいがうまくなっている節子。

 

ホステス「ねえ、木幡さん。どんな締屋(しまりや)だって、あんなキレイな人にかかっちゃ、大概、納得させられちゃうわね」

 

美人は、いくら努力しても、すべてのことが美人だからという理由になっちゃうのはかわいそうだね。私には一生分からないことだけど(-_-;)

 

木幡が飲んでるビールって、ふたがついてる。

こういう感じ?

 

木幡は節子に見つからないうちに店を出ていった。

 

文書室

たき子に新車発車通知を頼む節子。

たき子「断然、セールスマンのナンバーワンになったわね」

 

木幡が入ってきたが、別のタイピストに中古車の上等車だ、と書類を頼み、そのまま出ていった。気になった節子はすぐ後を追う。「どうしたんです? ご機嫌が悪いようね」と話しかけ、ハンドバッグからお金を取り出し、返そうとした。木幡は負担をかけるつもりでお貸ししたんじゃないと受け取らないが、木幡の手を取って握らせた。

 

通りかかった販売員1がからかうようにハハハと笑って去っていった。このメガネの人が柳谷寛さんかな~。

 

木幡「僕は、あなたがセールスマンになるのを賛成したが、それがホントにあなたのためによかったかどうか現在では疑問を持ち始めましたよ」

節子「あら、どうしてですの? 私、後悔なんてしていませんよ。全て覚悟の上で始めたんですもの。なまやさしいことで引き下がるほど弱気じゃありませんわ」

木幡「あなたが後悔さえしてなけりゃ問題じゃありませんがね」お茶に誘うが、節子はクラブのほうへ行かなきゃいけないと去っていった。

 

ため息をついて、廊下を歩いていた木幡にいきなり腕を組む水代。木幡は変に自信が持てなくなってきたと本音を漏らす。

 

喫茶リサ

手帳で値段を提示しながら交渉する節子。商談は成立し、男は帰った。ちょうど木幡が店に入っていたのを見かけた節子は木幡の席の向かいに座り、お得意様から芝居の切符をもらったから、水代も誘って出かけたいと持ち掛けたが、木幡は都合が悪いと断った。たき子さんにでもあげようと言い、木幡がタバコを吸おうとすると、節子も一緒にタバコを吸いだし、木幡が驚く。

 

店の外で高山が女性と歩いているのを木幡が目撃した。女性は銀座裏のカブトという料理屋の女将さん。車が運転できて、自分でも買い出しに行く。新車を買いたいと言っていて、話を進めていたが、2~3日前に急にこじれた。しかし、高山と一緒にいて腑に落ちた。

 

節子「木幡さん、あなた、油断してるからよ」

 

水代が店に入ってきたが、木幡が節子と一緒にいるのに気づき、慌てて隠れ、節子は会社に戻っていった。

 

水代、こういうときは堂々としてるのかと思った。

 

木幡と水代のドライブデート。水代は運転している木幡にもたれかかる。左ハンドル。

木幡「ハンドル間違って落っこったらどうする? おだぶつだよ」

水代「♪なんまいだ」

 

水代は木幡に何を考えてるのか聞く。そんなに姉さんが好き? 木幡は姉さんはいい人だが、近頃、すっかり変っちゃったなと話す。「あの人の真っ向な職業人意識には、ほとほと驚いてしまうよ」

水代「あら、木幡さんらしくもない。もっと元気出して」

木幡「フッ、さすがの僕もこのごろの節子さんのふるまいには、いちいち反発を覚えるんだよ。あんなふうになるのには、もともと僕が仕込んだようなもんだけど、あそこまでやり手になるとは思わなかったな」

水代「ううん、姉さんは真剣なんだわ」

 

僕なんかはじき飛ばしていくようだと笑う木幡。だんだん姉さんが嫌いになってきた?と顔を覗き込む水代。

 

木幡は会社で節子に声をかけられた。節子は、あんたの敵、取ってきてあげたわとカブトのビュイックを強引にねじ込んで小切手を書かせたと言う。ドン引きの木幡。

 

太田「お二人、協力で来られたんじゃ、こちとらとても歯が立たんよ」とニヤつきながら近づいてきた。

木幡「バカなこと言うな」節子に君の仕事だ、僕は欲しくないと契約書を返した。

 

ネオン輝く夜。橋の欄干に立つ節子の後ろは「井上英会話スクール」の看板。高山が節子に声をかけ、頼みたいことがあるとトラックの脇に連れ出した。「おい、カブトの女将とはちゃんと話がついてたんだ。そいつを横からコソッとふんだくってくなんて少しばかりいけずじゃないか」と肩を小突く。

 

節子が「あなたこそ木幡さんの仕事を横取りしたんじゃありませんか」と反論すると、文句言うな!と往復ビンタ! ぉぃぉぃ! 「女のくせに出しゃばりやがって、少しは腹にくだいておけ! バカ野郎」と突き飛ばした。

 

待ち合わせていた、たき子が来て、驚く。節子は高山だけでなく、セールスマンの激しい競り合いが人間を惨めにしてしまうと話した。節子さんすっかり変わったわとタバコを吸うたき子に節子も「そうかしら?」と言いつつ、タバコを吸う。

 

後ろは「日東紅茶」の看板。

 

「そうかもしれないわね」と涙がにじむ節子が走り去った車の後部座席に水代がいたのを見つけた。

 

料亭で食事する一森と水代。そっち!? 酒を勧められても、おいしくもなんともないと断る水代。姉さんとは正反対だねと口説く一森。

水代「つまり、バカなのね」

 

そういう意味じゃなく、君の持ってるものは誰にでもかわいがられる。いくら愛しても無尽蔵の魅力があるとニヤニヤ。一森にドライブに誘われた水代は姉さんに知られると堕落したって怒られるからなと考え込む。水代ちゃん…と迫る一森。

 

水代「とにかく結婚が先でないと私、何にも信じられないの。帰るから私に車、呼んでちょうだい」と仲居に言い、帰り支度を始めた。「あまのじゃくでしょ、私って」

 

節子とまた違う意味で強いな、水代は。

 

節子が水代を会社のロッカーに呼び出し、水代のロッカーを開けて姉さんに見せてちょうだいと怒っていた。水代が渋るので、節子が鍵を取り上げて開けると、水代のロッカーは洋服、帽子、靴がたくさん入っていた。誰にもらったの?と節子が責める。

 

水代「私だってオシャレぐらいしたいわよ」

節子「逃げ隠れてまでしてもオシャレがしたいの? まるで泥棒猫みたいなマネまでしてもオシャレがしたいっていうの? 水代がそんな卑しい心がけだなんて、姉さん、ちっとも知らなかった」

 

一森が勝手にくれたという水代。変に考えて騒ぐことはないという。「恥知らず!」と節子がビンタすると水代を突き飛ばした。騒ぎを聞きつけた、たき子と木幡が間に入った。節子は一歩一歩堕落に近づいてると説教するが、水代は姉さんのやきもち、女の嫉妬だと反論した。さすがにたき子も木幡も水代を諫めるが、水代は姉さんが幸せを邪魔する権利がないとまだ言うので、節子がさらにビンタ。

 

水代は、こん中には木幡さんにもらったもんだってあると爆弾発言。「私は一森さんなんか好きじゃない」木幡が節子ばかり構っていたので、一森と遊んでやったという。「私は木幡さんが好きだったんだ!」と木幡に抱きつく。

 

一森の立場…

 

節子は木幡の気持ちを確かめた。木幡は節子は嫌いではない。セールスマンをやってると、結局、かみ合う性格だと分かってきた。恋愛とか結婚とか、なまやさしい感情は持てなくなってきたという。

 

”かみあう”には、意見がぴったり合うという意味もあるけど、激しく争うという意味もある。木幡が言ってるのは、後者ってことだね。

 

節子はロッカーを飛び出し、街を歩いた。

 

茶店で紅茶を飲んでいると、セールスマンが愚痴っているのが聞こえた。節子は足を組み、腕組みをして、考え込んでいたが、席を立ち、店のカウンターから木幡に電話をかけ、責任を取って、妹の将来を引き受けてもらいたいと言った。

 

水代と木幡の結婚式! 節子は5時までに新車を鶴見まで持ってかなきゃならないから駅まで見送りに行けないと木幡に伝えた。帰ってきたら、義姉さんだと遠慮しないで張り合いますよと木幡が言う。節子も堂々と太刀打ちしましょとライバル宣言。

 

水代をかわいがってやってちょうだいと木幡に言い、水代には、しっかりいい奥様になるのよと笑顔で送り出した。

 

車が行ってしまい、しばらく見送っていたが、時計を見て、車に乗り込んだ節子。節子は橋の上で車を止め、二人が乗っているであろう列車を見送り、また走り出した。

 

すごい、ホントに運転してるっぽい。

 

節子は時間を気にしながら車を走らせる。厳しい表情だったけど、だんだん笑顔になった。(終)

 

戦時色が全くない昭和14年の映画。新鮮でじっくり見入ってしまった。当たり前にカタカナの車の名前がどんどん出てくる。1930年代の映画も何本か見たけど、現代劇は初めて見た。

 

水代役の江波和子さんは江波杏子さんのお母様。女優活動は1年半ほどしておらず、1947年に結核で亡くなった。水代は今でいう不思議ちゃんみたいなキャラ。演技素人だからなのか何なのかとにかく変わった演技だった。

 

木幡はイケメン扱いなんだろうけど、最初からやたら節子の言うことにネガティブなことばっかり言ってる小者だった。もうちょっと師匠になるようなかっこいい人出してよ。販売部もろくでもないやつばっかりだし。節子と木幡の悪口言ってるシーン、ムカついた。木幡が来るとトーンダウンするとこもまたムカついた。

 

たき子さんが最後までいい人なのはよかった。