TBS 1978年2月24日
あらすじ
美智(松原智恵子)は麻子を連れ、九州の海辺の村にかけつけた。南方へ送られる井波(中野誠也)は死を覚悟し、上官の命を破り妻へのメモを知人に託したのだ。親子三人わずか五時間の再会だった。 一年が過ぎたある日、美智は石山(速水亮)に会った。彼は松本(織本順吉)の軍需工場の担当将校だった。独身の石山に結婚を勧める美智。やがて井波の戦死公報がきた。
2024.10.9 BS松竹東急録画。
原作:田宮虎彦(角川文庫)
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井波美智:松原智恵子…字幕黄色
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吉岡俊子:姫ゆり子
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吉岡純子:神林由香
井波麻子:羽田直美
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中村ふく:安東結子
ナレーター:渡辺富美子
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石山順吉:速水亮
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音楽:土田啓四郎
主題歌:島倉千代子
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脚本:中井多津夫
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監督:八木美津雄
<この夜、美智は夫・戦死の公報を受け取った>
それにしても字幕が”広報”って…公報だよね?
井波家
美智「あなた、ウソよね? あなたウソよね? 必ず帰ってくるって約束したんだもん。ねえ、あなた。ウソよね? あなたウソよね。あなた…あなた…ああ…」布団で寝ている麻子に向かって「麻子、お父ちゃん、死んでなんかいないよね? 麻子、お…お父ちゃん死んでなんかいないよね?」と言うが、起きない麻子。
フラフラ家の中を歩いて目に入った戦死公報
戰死公報
本籍 神奈川…
官等級…
右八月二拾二日 南方洋上兵團移動…
…段通告候也
8月って昭和19年の8月? さっぱりいつだか分からないねえ。昭和19年ならまだ1年あるじゃないの。東京で空襲が激しくなったのは昭和19年の11月以降じゃなかった?
戦死公報をびりびりに破く美智。「死んでなんかいない。死んでなんかいない。死んでなんかいない。ハァ、ハァ、ハァ…んっ…うう…うう…あっ…うう…ハァ、ハァ、ハァ…」目の前にウイスキーを開けて瓶から一気飲み! 「んっ…うっ…」
瓶を見た限り、さすがに大して減ってない、と思ったら、また一気飲み。やめて~。
吉岡家
純子「お母ちゃん、すぐ帰ってくる?」
俊子「うん、もしかしたら今日は泊まることになるかもしれないから、戸締りしておとなしく寝てなさい。ねっ」←えっ!?
純子「私も一緒に行く」
俊子「ん…今夜はダメなの。井波さんのおじちゃんに戦死されて、ほら、おばちゃんとっても悲しんでらっしゃるだろうから、お母さん、ずっとついててあげたいと思うの。分かるね? ねっ。ほら、お父ちゃんが戦死したときだって、おばちゃんずっとお母さんについててくれたでしょう? だから、こういうときぐらいずっとついててあげて慰めてあげたいと思うのよ。おばちゃんには親戚も誰もいないんだし、夜中に1回だけ帰ってくるから。分かった? 中からちゃんと鍵かけて。ねっ?」
松本社長はそのまま帰ったんだ?
井波家
俊子「奥さん。私よ、吉岡です」返事がないのでドアを空けて入る。
美智「うっ、うっ…うっ、うっ…んっ…」ウイスキーをラッパ飲み。
俊子「奥さん。ダメじゃないの。こんな強いお酒を…ちょっと…あらあら、奥さん、こっちへちょうだい。ダメ」
美智「あっ…ハァ…」
俊子「待ってね、待ってね」湯飲みを手にして台所へ。
机に突っ伏した美智。「ああ…ハァ…うっ…」
俊子「はい、お水」美智に水を飲ませる。「しっかりして。分かるわ、奥さんの気持ち。私だって主人を戦争で死なせちゃったんですもの。知らない人は、お国のために名誉の戦死をした、これで奥さんも名誉ある英霊の妻になれたなんて調子のいいこと言うだろうけど、そんなこと奥さんに言ったって無駄ですもんね。でもね、しっかりしてよ。麻子ちゃんがいるのよ。分かる? もう横になったほうがいいわ。さあ、寝ましょう。はい、ねっ」
美智「生きてる…」
俊子「いいのよ。寝ましょう」
美智「生きてるんだから」布団へ連れていこうとした俊子を振り払う。
俊子「あっ…」
美智「生きてる。生きて…ああ…」
俊子「奥さん」
サイレンが鳴る。俊子はカーテンをしっかり閉じ、電気に布をかぶせる。「奥さん、空襲よ。防空壕へ行きましょう。奥さん、奥さん」
美智「ん…」
俊子「いいわ。麻子ちゃん、お預かりしますよ。分かったわね?」
⚟男性「空襲警報~! 空襲警報、発令! 空襲警報~! 空襲警報、発令!」
俊子は眠っている麻子を抱いて外へ。
男性「早くしないか、早く」
井波家
美智「んっ…ああ…」床に倒れ込んでいる。
男性「早く! 早く早く! 早く!」
純子を連れ、麻子を抱いて防空壕に入った俊子。
純子「お母ちゃん、どうしておばちゃん来ないの?」
俊子「うん? ああ…大丈夫よ。心配しないで、ねっ」
まだ井波家で横になっている美智。
翌朝、俊子が井波家に向かうと麻子が外にいた。「麻子ちゃん、何してんの?」
麻子「アリンコを見てんの」
俊子「ふ~ん。ねえ、ちゃんとご飯食べた?」
麻子「うん」
俊子「お母ちゃん、いる?」
麻子「いる」
俊子はそっと家の中へ。美智は、すすり泣きしていた。俊子は声をかけずに外へ。
海軍鶴見療養所
この間はかろうじて鶴見療養所だけ見えたけど、今日は読めた。
俊子「戦死された井波さんとは、ほんとに仲のいいご夫婦でしたから。奥さん、初めは、うちの2階にいましたから。あのご夫婦のなれ初めからよく知っていますけど、あんなにいいご夫婦、他に見たことありません。そりゃいいご主人でした。優しくて学問があって。今度という今度こそつくづく思いました。戦争って、なんてむごいんだろうって」
石山「呉のほうに出張してなかったら、せめて井波さんのご英霊をお迎えしてあげることができたんですが…で…美智さんは、まだ田舎のほうに?」
俊子「ええ、そうなんです。井波さんのお母さんと一緒に遺骨を持って田舎のほうに行ったっきり…」
石山「お帰りになったら、すぐに知らせていただけませんか? ぜひご霊前にお参りさせていただきたいと思いますから」
俊子「はい。ああ…でも、もしかしたら、このままずっとお帰りにならないかも。以前から井波さんのお母さんは奥さんも麻子ちゃんも一緒に田舎の実家のほうに来るようにって言われてたんですけど、いつ井波さんが帰ってこられるかもしれないからって行かなかったんです。でも、井波さんは戦死されちゃいましたもの」
俊子は石山はんが美智のことを知ってる人に似てる→人違いだった、というのをまだ信じてるのかなあ?
<しかし、この日、美智は麻子と共に井波の郷里から家へ戻っていた>
井波家
美智「ちょっと待ってね」鍵を開けて中へ。
鶴見療養所
ふく「ねえねえ…大本営発表」
俊子「うん?」
ふく「石山中尉、しばらく呉の鎮守府のほうへ行ってたでしょ? 山田少尉から聞いたんだけど、お見合いしてきたらしいわ」
俊子「あら、そう」
ふく「年内には結婚式挙げるらしい。海軍の偉い人のお嬢さんで評判の美人なんですって」
あ、元の教え子の原京子君がまた出てる。
夜、帰宅した俊子。「ただいま」
純子「お母ちゃん、井波のおばちゃん、今日帰ってきたわよ」
俊子「ほんと?」
純子「お土産たくさんもらっちゃったわよ」
俊子「ふ~ん。あ~らあら。こんなにたくさん頂いちゃって。おばちゃんとこにご挨拶してこなきゃ。純子も一緒に行く?」
純子「うん」
俊子「はい。はい、電気消すから靴履いてらっしゃい」
井波家
仏壇にお線香をあげ、手を合わせる俊子と純子。
美智「この度は、ほんとにお世話になり、ありがとうございました」
俊子「何言ってるの。お互いさまじゃないの」
美智「どうぞこちらでお茶を」
俊子「ええ。あっ、純子。麻子ちゃんと遊んであげなさい。ねっ」
純子「うん。遊ぼう」
美智「どうぞ」
俊子「すいません。でも、奥さん随分ごゆっくりだったわね。私、もう帰っていらっしゃらないんじゃないかと思って…」
美智「ついつい引き止められてしまって」
俊子「で、これからのことはどういうふうに?」
美智「松本社長ともよく相談したいと思うんですけど、私はやっぱりこのうちにいたいんです」
俊子「わあ…そうなさいよ。お互いに戦争未亡人なんだし助け合って生きていきましょうよ、ねっ。私、奥さんがいなくなったら急に寂しくなっちゃって。フフッ」
美智「純子ちゃん、麻子、いらっしゃい」
純子「はい」
美智「田舎のお菓子よ。はい」
純子「どうもありがとう」
俊子「いいわね。すいませんね」
色合い、形から蒸かし芋にみえたけど、麩菓子かも?
美智「井波の両親は帰さないような勢いだったんですけど無理にお願いして帰ってきちゃったんです。奥さん、いつかおっしゃってましたわね。ご主人が戦死されたなんて思いたくない。二度と帰ってこないと思ったら生きてく支えがないって」
俊子「あら、そんなこと言ったかしら」
35話で俊子が言ってた「戦争未亡人だなんて世間から奉られたって、そんなものは生きていく支えにはならないからね」のこと?じゃないよねえ。全然違う意味だよね。俊子じゃないけど、そんなこと言ってましたぁ?
美智「ええ。私もそう思うんです。主人は戦死なんかしていない。いつか必ず帰ってくる。そう思って、このうちで生きていこうと思います」
俊子「あっ…私、自分がそんなこと言ったことも忘れてしまってたけど、そのとおりよね。そんな大事なことを忘れてしまうなんて、主人のことをそれほど好きじゃなかったのかしら。もっとも私たちは平凡なお見合い結婚で奥さんたちと違って大恋愛をして一緒になったわけじゃないから」
美智「どうぞ」お茶を出す。
俊子も自分で言ったことも忘れてしまってたと言ってたけど、戦死の公報受けて、夫の戦死はすぐ受け入れてたように思うし、戦死されたなんて思いたくないなんて言ってなかったと思うけどなあ。
俊子「あっ、そうだわ。石山中尉が昨日の晩、呉からお帰りになってね。井波さんが戦死されたことをお話ししたら、とっても悲しんでらしたわよ。奥さんがお帰りになったら井波さんのご霊前にぜひお参りしたいって、そう…」
美智「お志だけは頂きますので、どうかそんなご心配なさらないでくださいって石山さんにおっしゃってください」
俊子「はい。いただきます。石山中尉ね、今度、海軍の偉い方のお嬢さんと結婚なさるんですって」
笑顔でうなずき、お茶を飲む美智。
菊の花束を持って井波家を訪れる石山。来なくていいって言ってるのに。
石山「ごめんください」
美智「はい」
石山「突然お邪魔いたしまして。吉岡さんからお帰りになったことを伺ったものですから。ご主人が戦死されたましたことをやはり吉岡さんから…謹んで哀悼の気持ちを述べさせていただきます」
美智「ありがとうございます」
石山「帰ってお邪魔かとも思いましたが、お線香を上げさせていただきたいと思いまして。これをご霊前に」花束を渡す。
頭を下げて受け取った美智。「どうぞ」
麻子の頭をなでて家に上がる石山。後ろの壁掛け時計の時刻は8時10分。この時間だと美智が俊子に言ったことが伝わってなかったのかも? それでもさあ。
石山が手袋を外して仏壇に線香を上げ、手を合わせた。「ご主人、大学で物理をやってたと聞きましたが…」
美智「はい。一生、研究生活をしたかったらしいんですけど、思想問題で警察に検挙されまして、それで大学のほうも…」
石山「立派な方だったんですね。僕の学友にもそういう犠牲者が何人かいましたが、みんな優秀な連中でした。松本さんから何度か伺いましたが、こんな立派なご主人を失って、美智さん、どんなに気落ちなさっているか、それを考えるとお慰めする言葉もありませんが、お力になれるもんならなりたい、そう思ってます」
美智「ありがとうございます。でも、私たちでなんとか…それより吉岡さんの奥さんから伺いましたけど近く結婚なさるとか。どうかお幸せに」
石山「あの話は断りました」
鶴見療養所
俊子「じゃあ、その縁談、破談になっちゃったの?」
ふく「そういうわけじゃないらしいけど、また石山中尉が断っちゃったんですって。だから向こうの親御さん、カンカンになって怒ってるらしいわよ」
俊子「ふ~ん。それはまたどうしてかしら」
ふく「こんな戦争中だから前線にいる同期の人に悪いっていうのが理由らしいんだけど。山田少尉、言ってたわ。ほんとは好きな人がいるんじゃないかって」
手すりを拭きながら雑談。
井波家を出た石山中尉。「僕にしたって、いつ前線に派遣される身か分からないんです。結婚の相手を戦争未亡人にしたくはありませんから」
美智「井波も私と結婚する前、同じようなこと言ってました。でも、女性は男の人が考えてるほど、そのことを深刻に考えないと思うんです」←よく分からない慰め?
石山「すいません、その話はもう…」
美智「はい」
石山「美智さん、井波さんのご実家に帰られると伺いましたが…」
美智「そんな話もありましたが、でも実家には帰りません。井波は生きてるかもしれません。いえ、生きてると信じてます」
石山「…」
美智「主人が出征する前に私に言い残してくれました。どんなに遠く別れて生きてるときもお互いの心の中に生きている。井波の心の中に私が生きており、私の心の中には井波が生きている。主人の残してくれた言葉を支えに生きていこうと思ってます」
石山「それではお元気で」
美智「ありがとうございます」
石山「麻子ちゃんも元気でね」
麻子「はい」
石山「さよなら」
麻子「さようなら」
頭を下げて敷地から出ていく石山。
美智「麻子、お父ちゃんのそばに行きましょう。ねっ」家に入っていく美智と麻子。(つづく)
井波さんのときは美智のほうが積極的だったように思うけど、石山はんも急に家に来たり、やってることが小野木とあまり変わらないところがちょっとねえ…次から最終週なのでエンディングソングが復活してほしいなあ。ドラマが締まらない。
NHKBS 11月から、
— NHKドラマ (@nhk_dramas) October 9, 2024
水曜夜は「#特選ドラマ」
新旧名作ドラマをたっぷり!名優たちの若き日の姿や、話題となった「正直不動産」をお楽しみください!
11/6から毎週水曜・夜7時放送!#チロルの挽歌#夢千代日記#続・夢千代日記#藏#あ・うん#正直不動産 シリーズhttps://t.co/wrnVMyV9Dz
11月はNHK BSで昭和ドラマの再放送が続くそうでうれしい。脚本・山田太一「チロルの挽歌」、原作・宮尾登美子「藏」(※こちらだけ平成の作品)、脚本・向田邦子「あ・うん」…いずれも前も見たことがあるけど…脚本・早坂暁「夢千代日記」だけは前にチラ見したけど感想を残してなかったから、ちゃんと見る!
しかし、4Kでしか放送してなかった昭和ドラマ、あったよねえ? そちらも是非ともよろしくお願いします。今、4Kを見られる環境になったけど、4Kで見てるのは「新日本紀行」だけ。ケーブルテレビの機械は4K対応になったけど、テレビは4K対応じゃないので画質変わらないんだけどね。