TBS 1974年5月1日
あらすじ
大吉(松山省二)夫婦の実の息子は、中学教師・和泉元(杉浦直樹)と和子(林美智子)の息子・晃(吉田友紀)だと判明する。二組の夫婦は血を分けた息子たちに対面するが、それぞれどうにもできず、複雑な気持ちになる。
2024.4.30 BS松竹東急録画。
あ、そうそう4話からサブタイトルがついたんです。
福山大吉:松山省二…太陽カッター社長。字幕黄色。
福山紀子:音無美紀子…大吉の妻。字幕緑。
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和泉和子:林美智子…元の妻。
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早瀬:小栗一也…産婦人科病院の事務長。
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滝沢春生(はるみ):高沢順子…和子の姪。
福山隆:喜久川清…大吉の弟。浪人生。
田口:桐原新…隆の友人。
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福山一郎:春田和秀…大吉、紀子の息子。小学1年生。
和泉晃:吉田友紀…元、和子の息子。小学1年生。
ナレーター:矢島正明
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福山ゆき:小夜福子…大吉の母。
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和泉元(げん):杉浦直樹…中学校教師。
病院での取り違えが6年たった今になって分かっても親とすればどうすることもできません。この手の中にいるわが子だけが自分の子に思えてしかたがなかったのです。ところが、血を分けたわが子に出会うことになって大吉と紀子は初めて苦しさを感じました。あまりにも恐ろしく、あまりにも懐かしかったのです。
応接室…というか院長室かな。福山一家が待っているところに早瀬が和泉一家と一緒に入ってきた。
大吉と紀子は晃の顔をじっと見る。
ソファに座った両家族。津島がそれぞれの一家を紹介する。元と大吉も自己紹介し、名刺を交換。それぞれの妻子の紹介。一郎の顔を見た和子は泣きだしてしまい、晃を連れて退室した。紀子もまた一郎を連れて廊下へ。
津島が元と大吉にそれぞれ親子鑑定の報告書を渡した。「今回のことにつきましては、まさしく当方の一方的な責任でありまして本当に申し訳ありませんでした」とまず謝罪。鑑定書の説明をして、その上で話し合いに入りたいと言い、元も大吉も了承。
鑑定は東陵医科大学の宇田川(うたがわ)教授に依頼。
鑑定結果
1 血液型
2 掌紋
3 指紋
4 人身測定法
5 顔の相似性
血液型の検査結果
和泉夫妻と晃の間にはRh式とPGD式との検査で不一致が現れた。晃の血液型を福山夫妻の血液型と照合すると完全な一致を見た。
一郎の左手の親指、中指、右手の親指、中指、小指に現れている弓状紋は、かなり特徴的なものだが、福山夫妻にはない。しかし、弓状紋は和泉元の指紋に顕著に現れている。
病院の廊下
和子の隣に掛ける晃と対照的に、一郎はぴょんぴょんジャンプをしている。
晃「もう帰ろうよ」
和子「お父さんまだお話し中でしょ?」
紀子はハンドバッグからお菓子?を取り出して晃に渡し、一郎も呼んで同じものを渡した。
和子「お元気そうですね」
紀子「ええ、もうイタズラで」
和子「(晃に)あんたもくっついてないで、ねっ?」
紀子「一郎ちゃん、一緒に遊んだら?」
一郎「うん、行こう」
和子「さあ」
うつむいている晃の手を引っ張る一郎。「おいでよ」と連れていく。
和子「うちのはおとなしいんです」
紀子「そのほうがよろしいですわ。うちなんて、もうよくケンカして叱られるんですよ。よそのお母さんに」
和子「頼もしいんですね」
紀子「みんなにお父さんに似てるだなんて、よく言わ…」泣きだす。「でも、もう今更、お父さん似だなんて言えやしない」
院長室
大吉「あんた、そんなことで解決しようと思ってんですか?」
津島「いえ、とんでもございません。わたくしのほうはただ…」
「とんでもございません」は間違った言い方だとよく言われるけど、50年前のドラマでも出てくる言い回しだし、ほかの昭和のドラマでもまあまあの頻度で出てくる。これはこれでもういいんじゃないのと思ってしまう。
大吉「だって、そうでしょう? さっきから聞いてれば金の話しかしないじゃないですか」
津島「申し訳ありません。最初にわたくしのほうの気持ちを申し上げたのが間違いでした。では、改めてお伺いいたします。どのようにしたらよろしいでしょうか?」
大吉「どのようにしたらいい…そんな簡単な問題じゃないでしょ。あんたに親の気持ちが分かるか!」
早瀬「まあまあ…」
大吉「何がまあまあですか!」
早瀬「いえ…院長はできることはなんでもしたいというお気持ちをお話されてるんで、別にその…責任逃れとかなんとか…」
大吉「金の話をするのがなんで責任逃れじゃないんだ。人をバカにするのもほどほどにしてください! あなた、そう思いませんか?」
元「福山さん、こういう問題は、ここで争ってもあんまり意味がありませんから、今日はこちらの言うことを聞くというだけにしませんか?」
大吉「でも、こんなこと言われて黙って引き下がれませんよ」
元「まあ、その気持ちは分かりますけどね」
大吉「あなた、腹が立たないんですか? 子供がこんな扱いを受けてるんですよ。なぜ怒らないんです?」
早瀬「あの…私たち、しばらく席を外しましょうか?」
元「そうですね」
早瀬と津島が部屋を出て行く。
元「実は私だって腹は立ってます」
大吉「でしたら…」
元「ただ、今日は子供のことで頭がいっぱいで、あの人たちと争う気にはなれないんです。それに彼らの言うことは決まってますからね。いずれにしてもこの問題は私たちの手で解決するよりほかありません。他人が何やってくれたってどうすることもできませんからね」
大吉「それは分かってますよ」
元「問題は子供たちです」
外で洗濯物を干しているハナ。「どこで間違えたのかしら。やっぱりお風呂をつかわせるときだったのかしら。ああ…もう今頃悩んだって遅いのよ。慌て者なのよ。注意力が足りないのよ。子供の身になってみれば…私のために6年間もホントの親を知らなかったんですものね」でかい独り言を言い、涙を拭いている。
外を歩いていた一郎と晃が通りかかった。
ハナ「一郎ちゃん? 晃ちゃん? 今日は2人とも来てるのね。おばちゃんはね、出してもらえないのよ。ごめんなさいね。あんたたちを取り違えたのは、このおばちゃんなのよ。それなのに、こんなに大きくなって…」泣きだすハナを置いて、走り去る2人。「よく見ると全然似てないのにね。どうして間違っちゃったのかしら」
えー!? なんで言うかな? 慌て者すぎるよ。
院長室にそろう福山一家と和泉一家。子供たちはケーキを食べている。
和子「いつも3時は、どんな物(もん)食べるんですか?」
紀子「ええ、パンとかおそばを」
和子「この子、おそばダメなんです。おうどんならなんとか食べるんですけど」
紀子「じゃあ、偏食なさるほうですか?」
和子「ええ、どっちかっていえば、そのきらいがありますわね」
紀子「この子は大体なんでも食べます。特にお肉が好きで、ハンバーグだったら毎日でも喜ぶんですよ」食べていたケーキをテーブルに置く一郎。「もう食べないの?」
一郎「うん」
大吉「どうしたんだ? 一郎」
和子「今、何キロぐらいですか?」
紀子「20キロぐらいだと思いますけど」
和子「20キロ…」
紀子「晃ちゃん、今どれぐらいかしら?」
和子「今、18.7キロですね。もう少しなんでも食べてくれるといいんですけど」
元「でも、子供はそれぞれ成長過程が違うから」
大吉「まあ、できればあんまり神経質に育てないほうがいいって言いますよね」
和子「そうですね」
紀子「でも、お宅様なんか、おうちに先生がいらっしゃるんですもの、安心ですわ」
元「いや、私はもう家内に任せっきりですから」
和子「そうなんですよ。(一郎に)あら、お口の周り。おばちゃん、拭いてあげましょうね」
プイッと紀子のそばへ行く一郎。
紀子「おかしいわね」
画面が白黒に。
それぞれの親たちは、こうして血を分けたわが子に巡り合ったのですが、その感激は同時に戸惑いでもありました。本来なら必ず自分との共通点を見いだせるはずなのですが、なぜかその予想は裏切られて、はっきりと血のつながりを見いだすことはできなかったのです。
現実ならもっと顔が似ているとかあるんだろうなあ。
やまと生命の看板「大和生命」の”和”が大きくズレている。
1911年創業で2008年に破綻したらしい。
そして、その日は病院との話し合いもつかず帰ることになったのです。血のつながりとはなんなのでしょう。帰り道では、もう一緒にお茶を飲む元気さえなくなりました。いっときも早く別れて、お互いに親子水入らずになりたかったのです。ただ、それぞれに苦しさが残りました。血を分けたわが子が他人の手の中で泣いているように思えたのです。
福山家茶の間
大吉「ハァ…俺が育ててりゃ、あんなひ弱そうには育てなかったぜ」
ゆき「そんな弱そうなの?」
紀子「いえ、それほどでもないんです。どちらかっていうと、おとなしそうな子なんです」
大吉「お前、人間の見方が甘いんだよ」
紀子「どうして? 私だって、よーく見たわ」
大吉「見るのと見抜くのとは違うんだ」
ゆき「それにしたって変な子じゃないんだろう?」
紀子「ええ。なんだか勉強が好きそうで眼鏡かけると似合いそうなんです」
ゆき「そう」
大吉「分かるもんか」
ゆき「いいじゃないの。勉強ができそうなら」
大吉「いや、あれはね、多分、親がああしちゃいけない、こうしちゃいけないって言ってるんだよ。うるさそうな親なんだ」
紀子「まあ、奥さんのほうには少しそういうとこがあるみたいね」
大吉「亭主のほうだってそうだよ。ずうたいばっかりでかくてさ、髪の毛きちんと分けてて分かったような顔しててさ。まあ、学校の先生だから少しはものは知ってるだろうけどな。なにも俺にお説教することはないよ」
ずうたいがでかくて髪の毛きちんと分けてるところがいいんだよ!
隆「お説教されたの?」
大吉「されるわけねえだろ」
ゆき「でも、考えてみたら大変なことだね。これからどうなるんだい?」
大吉「まあ、とにかくさ、先方といろいろ話し合って、それからだよ」
ゆき「それからって?」
大吉「俺たちの子供をどうするかだよ」
ゆき「まさか一郎を先方へ渡して、その晃とかいう子を引き取るわけじゃないだろうね? どうなの?」
大吉「だから…なんか考えるしかないよ」
隆「このままさ、うやむやにはできないの? 全て分かったんだしさ」
大吉「それでどうすんだ?」
隆「このままお互いに忘れることにすれば全て元どおりになるじゃない」
大吉「バカ。元どおりになるわけねえだろ」
隆「でもさ、それが一番自然だよ。みんなが無理しなくて済むんじゃないの?」
大吉「お前に自然、不自然が分かるか」
隆「俺が言ってんのはね…」
ゆき「隆」
隆「要するに子供が幸せになりゃいいんだろ?」
大吉「当たり前だよ」
隆「だったらさ、子供は今の場所が一番自然なんだから大人がみんなで変な事情を忘れてやりゃいいんだよ。それが幸せにつながるんじゃないのかな」
大吉「何つまんないこと言ってんだ。お前なんか一体何が分かるんだ。大体な、あのうちにいて幸せになれるわけがないんだ」
ケガしたときなど血液型のことだけ頭に入れてればいいのかなと思う。
和泉家茶の間
和子「あれじゃダメだわ。あのままほっといたらいい学校には入れないわね」
春生「ねえ、どんな子だったの? 叔母さん似? それとも叔父さん似?」
和子「そうね…急に会ったせいかしら、よく分からないわ」
春生「なんだ、頼りないのね」
和子「あなたは?」
元「えっ? いや、お前に似てたんじゃないかね。目とか鼻の辺りは」
和子「そうかしら」
春生「でも元気だったんでしょ?」
和子「うん。元気は元気なの。でも晃に比べると、なんとなく違うのね。やっぱり子供は家庭環境よ」
元「いや、あんなもんだよ。普通は」
和子「そりゃ、あの人たちの子なら驚きませんよ。でも、あの子は私たちの子ですよ」
元「おい、あんまり大きな声でしゃべらんほうがいい。聞かれたら困るんだ」
和子「大丈夫よ」そっと襖をあけて様子をうかがう。「よく眠ってるわ」
元「しかし、どうしたもんかね。子供はもうなんでも分かるし」
和子「そうですね」
春生「でも、やっぱり将来のこと考えると、このままほっとくわけにはいかないでしょ?」
和子「もちろんそうよ」
春生「私が子供だったら、血を分けた親がもしもよ、もしも私を引き取ってくれなかったら、私、絶対恨むと思う」
元「うん。それはまあそうだろうけど、問題はね、子供が今、小学校1年生だってことなんだよ。まあ、なんでも分かるけども、このことは説明しても、ちょっと分かりづらいと思うよ。まあ、たとえ分かったとしてもね、新しい親のうちへ1人で行くってのは、ちょっと無理だな。まあ、長い時間かけて親戚づきあいでもしたあとならば、これは別だがね」
和子「そうなったら、晃、渡すつもり?」
元「いや、そこまではまだ考えてないよ」
春生は席を立とうとしたが、和子はもう少しいたら?と止める。
元「そんな、迷惑だよ。ねえ?」
和子「何かいい考えがあったら聞かせてもらいたいのよ」
晃の枕元にいる元。「かわいそうに。疲れたんだな」布団から出ている晃の右手を握る。
そのとき、ふと元は思いました。この手がもし血を分けた一郎に触れたらどうしただろうと。自分の手は果たして一郎の待っている手なのだろうかと。
和泉元の表札の出ている家の前に来た隆と田口。田口は赤いVネックセーター、白のハイネック、薄い茶色のサングラスで、もうちょっと後の時代のヤンキーファッションっぽい。隆もリーゼントというかひさし頭だけどね! 家の前をウロウロしていると晃が帰ってきた。晃が隆の顔を見るので背を向ける。晃はピンクのシャツ。門を開けて家へ入って行った。
隆「確かあの子だよ。兄貴によく似てただろ? 鼻の辺りなんかさ。ねえ、そう思わなかった?」
田口「まるっきり他人だね」
隆「そんなことないよ。ちゃんと目開けて見てみろよ。お前、寝てんじゃないの? ダメだな、お前は。そのうち出てくるからさ、今度ちゃんと見てくれよな」
玄関が開いて出てきたのは春生。メチャクチャスタイルいいねー! 細いし、脚長い。
田口「あれは誰だい?」
隆「誰だろう? 確か一人っ子だしな。姉さんじゃないよな」
春生が歩いているのは、木下恵介アワーでおなじみガスタンク付近じゃないのかな?
和泉家は「兄弟」の紀子の家、「たんとんとん」の健一の家の近所かもしれない。
「話しかけてみたら?」と田口に言われ、最初はやだよと言っていた隆が「そりゃいいよ。話しかけるぐらい話しかけたってさ」と春生のあとをつける。
田口「早く話しかけたほうがいいよ」
隆「今やるよ」
田口「ほら、モタモタ歩いてると角曲がっちゃうよ」
隆「分かってるよ、よし」走って追う。
しかし、角を曲がったところで春生が髪をかき上げ立っていた。「ダメよ、2人とも。君たち、高校生でしょ? うち帰って受験勉強でもしなさい」と立ち去った。かっこいい。
隆「高校生だってよ」と田口と顔を見合わせる。
キャストクレジットをチェックしてなきゃ「太陽の涙」の清と田口が同じ人だって分からないな。
福山家物干し場
ゆきと紀子がこいのぼりや兜飾りなどの掃除をしていた。
紀子「さあ、一郎、ホコリになるから下行ってらっしゃい」
ゆき「悪かったね、飾るのが遅れて。あとで新しい人形、買いに行こうね」
紀子「お人形も高くなってるんですよ。何百万っていうのもあるんですって」
ゆき「はあ~、誰が買うのかしらね。そんなの」
紀子「ほら、一郎、離してよ」ずっと紀子のエプロンの裾をつかんでいた。「どうしたの? 今日はくっついてばっかりいて」
ゆき「熱でもあるんじゃないの?」
紀子がおでこを触ろうとしたが、スッと歩いていく。「おかしな子ね。熱はないみたいですよ」
ゆき「おなかすいたの?」
一郎「すかないよ」
紀子は下にいるお父さんにおなかすいたかどうか聞いてくるように言うと、黙って行ってしまった。
ゆき「昨日のことが気になってるんじゃないの?」
紀子「まさか…」
ゆき「でも、それしか考えられないじゃないの」
紀子「いや、病院でもほとんど話してるとこにはいなかったんですよ」
ゆき「子供は敏感だからね」
大吉は電話中。「一体何度言ったら分かるんだい。子供の将来が懸かってんだからな。まったく自分の都合のいいことばかり言いやがって…独り言だよ。一体子供をなんだと思ってんだい」一郎が階段を下りてきたので慌てて受話器を置く。
大吉「どうしたんだ? おい、いやに変な顔してるじゃないか。おい、一郎。どうした、一郎。具合でも悪いのか?」
うつむき、首を横に振る。
大吉「どうしたんだよ? さあ、来い」と両手を広げると、一郎は泣きながら抱きつき、ゆきや紀子も様子を見に来た。
太陽カッターにはハナが菓子折りを持って訪れていた。(つづく)
ダメでしょー、こんな単独行動は!
「おやじ太鼓」22話。洋二の絵本の自費出版、演劇を見に行く等々盛りだくさん。
片桐さん、すごくきれいな顔立ちの人だったな。
BS-TBSで始まった赤いシリーズ第1弾「赤い迷路」は途中で知ったのでスルーしたけど、来週から始まる「赤い疑惑」は初回をチェックしてみようかな。「おやじ太鼓」再放送と丸かぶり。録画で見るから問題ないとはいえ、もうちょっと時間ずれてたらいいのに。山口百恵さんの演技を見るのも初めて。
それにしても日本映画専門チャンネルはホントに昔のドラマをやらなくなった。古い作品は任侠物が多くて、見たくないんだよね~。