TBS 1968年6月18日
あらすじ
呼び鈴を鳴らしていたずらする子どもを捕まえた亀次郎。その夕方、子どもの姉が鶴家にやって来るのだが、なんとその人は武男の意中の相手だった。片桐というその人は、大変気が強く、玄関先で亀次郎と押し問答になり怒って帰ってしまう。
2023.8.11 BS松竹東急録画。12話からカラー。
鶴家
亀次郎:進藤英太郎…大亀建設株式会社を一代で立ち上げた。2月5日で61歳。
妻・愛子:風見章子…5月で56歳。
長男・武男:園井啓介…亀次郎の会社で働いている。3月3日で30歳。独身。
次男・洋二:西川宏…ピアノや歌が得意。空襲で足を悪くした。28歳。
長女・秋子:香山美子…出版社勤務。26歳。
次女・幸子:高梨木聖…女子大生。1月の成人式に出席。
四男・敬四郎:あおい輝彦…浪人中。
三女・かおる:沢田雅美…4月から高校生。
*
お手伝いさん
初子:新田勝江…亀次郎と同じ誕生日2/5で30歳。
お敏:菅井きん…愛子の4つ下。6月で52歳。
*
神尾光:竹脇無我…秋子の恋人。TBS局員。24歳。
神尾光の祖母:東山千栄子
お敏が銅鑼を鳴らし、玄関に駆けていく。続く愛子は出しっぱなしにしていた水道を閉める。「ほんとに水はタダだと思ってんだから」
出迎えたのは愛子だけで亀次郎はイライラしながら服を脱いでいく。初子は明日が日曜日で横須賀の兄のところに行っている。
横須賀…昨日見たばっかり。
しばらく休みがなかったと愛子が言ってるけど、ここ数回ずっと土日が舞台になることが多かったし、当然のようにお敏も初子もいたね。あの水道工事回も日曜日だった。
亀次郎は会社も半日、学校も半日なのにどうして誰もいないんだと不満げ。
愛子「もっと子供たちを理解してやらなきゃダメですよ。このごろは、ずれてる親ははやらないんですからね」
亀次郎「ずれてなんかいるか、わしが。洋二に聞いてみなさい、洋二に。あれはちゃんと分かってんだから」
愛子「あの子は感謝してますよ」
亀次郎「ほら、見ろ」
愛子「今も本の打ち合わせに行ってますよ」
洋二の本は秋子の会社で出すことが決まった。費用はこちら持ち。亀次郎は秋子の話題が出てあの男とはどうなってるんだと気にする。しかし、お敏からお風呂をどうぞと言われて、話がうやむやに。
神尾の家
神尾「じゃあ、どうしても会っていただけないんですか?」
祖母「私はね、意地になって言ってるんじゃありませんよ。秋子さんのお父様がお前に会ってくださらないから、それで私もお会いできないって言ってるんじゃありませんよ」
神尾「はい、それは分かっております」
祖母「分かっていたら早く行っておあげなさい。公園で1人で待っているのは寂しいもんですからね」
おばあちゃまは秋子が気に入らないから会わないのではなく、むしろ秋子のことはしとやかで感じのいい近頃じゃ珍しいお嬢さんだと気に入っている。おやじのことも分からず屋の頑固なところがかわいい。ヒゲも空威張り。昔はお上の役人になると、みんなヘンテコリンなヒゲを生やしたもの。軍人もそうだった。今どきはヘラヘラ笑ってる人間が多すぎるから、あのおやじは多少むちゃでも一本筋が通っている。
祖母「そのめちゃくちゃが正直なんです。顔にも声にも出ますからね。今の政治家をご覧なさい。国民に甘えてるようなことばっかり言ってて、さっぱり筋が通っていないじゃありませんか。秋子さんのお父様はね、嫌だから嫌だとはっきり言ってるだけです」
神尾「何が気に入らないんだかさっぱり分からないじゃありませんか」
祖母「それだっていいんですよ。(風鈴の音)私だって何が気に入ったのかよくは分かりませんからね」
神尾「無責任だな、おばあちゃまも」
祖母「違いますよ、責任があるから会わないって言ってるんです」
今の世だから?あんまりよく分からない理屈。
秋子がいるのは井の頭公園らしいです。55年前の井の頭公園ってこんな感じだったんだな~。ボートに乗ってる人もいる。スワンボートじゃないんだな。
ドラマの場面とは全然違う場所だとは思いますが私が今年3月に撮影した井の頭公園。
公園にいた秋子のもとに駆け付けた神尾。おばあちゃまは秋子が好きで気に入ってるが、会わない方がいいと言っていたと伝えた。秋子は怒ってるんだと思うが、神尾が否定。
神尾「君のお父さんが賛成してないのに、そのお父さんよりも年を取ってるおばあちゃんがまるで人様の娘を盗むように陰でコソコソ細工をするのは嫌だって。だからおばあちゃん言うんだよ。君のことはきっぱり忘れなさいって」
秋子「忘れる?」
神尾「つまりだよ」
秋子は怒りだすが、神尾はわけを話す。「つまりおばあちゃんは僕たちを認めてくれたんだよ。こんな年寄りの目の届かないところでお前と秋子さんがどんな約束をしたって、それは2人で責任を持てばいいことだって」
秋子「じゃあ、許してくださるのね」
分かるような分からんような?
マッサージ椅子に座っている亀次郎。「バカもバカも大バカだよ! いくら明るいからって時間は時間だ」
お敏「はい」
亀次郎「いつ帰ってくるか分からんのに子供たちを待っていられるか。すぐ飯にしなさい」
お敏「はい、もう出来ております」
亀次郎「あいつらときたら親が腹ペコなのに一体どこで何をしてるんだ」
愛子「は~あ」
亀次郎「なんだ、そのため息は」
愛子「ため息も出ますよ。飯だのあいつらだの、まだ昔の育ちが出るんですからね」
亀次郎「出ますよ、腹が立ってんだから」
愛子「大体バカも多すぎますよ」
亀次郎「バカも多いからしかたがないじゃないか」
愛子「親が言葉が悪いもんだから子供たちにもうつってしまって、うちの子供たちはよくバカバカ言うんですよ」
亀次郎「いいじゃないか。人をバカバカ言うからには少しは利口になろうと思ってんだろ」
愛子「変な理屈」
「私が逆らわなかったらあなたなんか世の中に通用したんですか?」と相変わらずキレキレの愛子さん。近頃は坊主頭の大僧正までバカバカ言う時代と亀次郎は反論してるが、何かそういう事件があったのか?
大僧正で調べるとこの方が出てくるんだけど、この方の事かな?
表門のインターホンが鳴る。またもやピンポンダッシュ。お敏は裏門、亀次郎は表門へ走る。
茶の間
大笑いしながら酒を飲んでいる亀次郎。
愛子「なにも子供が泣きだすまで叱らなくたってよかったんですよ」
亀次郎「なあ、お敏、お前もよく走ったけど面白かったな」
お敏「おかげでまだ腰が痛いです」
亀次郎と協力して子供を追い詰めているときに、この間もハマった水たまりにまたも滑り込んでしまったお敏。
亀次郎「お前みたいなこと言ってるから人権が守られないんだよ。よく憲法を読んでみなさい」
愛子「自分だって読んでないくせに」
亀次郎「読みましたよ。先月の憲法記念日にちゃんと買ってきたんだ。うそだと思ったら武男に聞いてみなさい。会社のわしの机の上にちゃんと飾ってあるんだ」
愛子「飾ってあるだけじゃないんですか」
亀次郎「ヘッ、無知で話にならん」
無知、無知言うな。でも「裸の重役」では無能連発でこれもいやだった。昔の方が直接的に言うからねえ。
インターホンが鳴る。片桐という若い女性で亀次郎に用がある。三郎が何かしでかしたと亀次郎が言っていると、お敏が裏門を開けっぱなしで三郎がこそっと帰ってきた。家の人でもインターホンを鳴らさないと家の中には入れないんだね。「ただいま」のあいさつをしに来た三郎に片桐という女性を知らないかと尋ねても知らなかった。
お敏「大変です。若い女の人がねじ込んできたんです」
片桐という女性はピンポンダッシュして亀次郎が泣かせた子供の姉だった。
愛子「頭をぶったりしたんじゃないでしょうね」
亀次郎「ぶとうが殴ろうが当たり前だ。あんなの」
愛子「そうはいきませんよ。そんな暴力は」
顔を見に行った三郎は「とってもきれいなひとですよ」と報告。
武男が裏門から帰宅。亀次郎は表門へ。きれいな女性が立っていた。字幕は黄枝子となっていたけど、wikiだと貴枝子。なんとなく貴枝子の方がしっくりくるというか”黄”っていう字、あまり人名で見かけないような。片桐黄枝子は堀井永子さん。
亀次郎「何ですか? ご用というのは」
黄枝子「お食事中、失礼いたしました」
武男は「あっ、彼女だ」と気付く。
黄枝子はピンポンダッシュに関しては謝るものの「ですけれど、まだ小学生じゃありませんか。それを大の大人が2人で追いかけて」と食い下がる。怒鳴りまくる亀次郎を武男がなだめる。
黄枝子「わたくしは悪かったことは謝ります。ですけど、そちらの悪かったことは謝っていただきます」
亀次郎「なんだと!?」
怒りが収まらない亀次郎と止める武男。
亀次郎「この女はわしに文句を言いに来たんだぞ」
黄枝子「なんて失礼なことおっしゃるんでしょう」
武男「そうなんですよ」
亀次郎「何がそうなんだ! お前はこの女の味方かお父さんの味方かどっちだ」
愛子が止めに来て、お敏や三郎も様子を見に来る。
黄枝子「とにかく子供に暴力振るうなんて野蛮ですわ」
亀次郎「何? わしがいつ暴力を振るった」
黄枝子「水たまりの中に突き倒したじゃありませんか」
亀次郎「水たまりの中へ滑って転んだのはうちのお手伝いさんですよ」
黄枝子「うちの弟だってびしょぬれになって帰ってきたんです」
お敏の証言によると、追いかけたのはお敏、捕まえたのは亀次郎でちょっと押してちょっと引っ張ったという。
黄枝子「でも児童を虐待したんじゃありませんか」
愛子「まあ、虐待なんて大げさですわ」
武男「でもとにかく子供は泣いて帰ったんです」
黄枝子「ですからわたくしは悪かったことはおわびしてるんです。ですけど…」
亀次郎の謝りに来たのか怒鳴りに来たのかどっちなんです?という言葉がすべてだな。こっちは謝ってるんだからばっかりで…本当はピンポンダッシュくらいで…と悪いと思ってない感じが見え見え。
裏門から幸子と敬四郎も帰宅。
黄枝子はなおも「でも児童に暴力を振るうということは…」と食い下がる。そんなことはちゃんと憲法に書いてある。武男に亀次郎の机の上に憲法が載ってるだろ?と確認するが、武男は昨日引き出しにしまったと返す。
黄枝子「とにかくこんなご立派なお宅にどんな人たちが住んでるのかと思っておりましたが、これではっきりいたしました。失礼いたします」
武男「あ、ちょっと…お宅はどちらなんですか?」
黄枝子「どうしてですか?」
武男「どうって、つまり、これをご縁に…」
黄枝子「真っ平です。こんなご縁は」帰っていく。
ん~、亀次郎が殴ったかもしれないけど、殴られるようなことしてんじゃない?(昭和脳)
亀次郎「あんなものは秋子の恋人のばあさんとそっくりですよ」
お敏に声をかけ、ビールを用意するように言い、幸子や敬四郎にも憲法を読むように言う。
武男は困ったと言い、疲れた様子でマッサージ椅子に座る。敬四郎に10円入れるように言うが、幸子に10円持ってる?と聞く。
武男も三郎も幸子も敬四郎もご飯はまだ。
愛子「おいしいもの食べたいと思ったらもっと早く帰ってこなきゃダメじゃないの。支度をしとけば帰ってこないし、今日だってあんたたちの分があるかないか分かりませんよ」
機嫌を取るようにベタベタ甘える三郎と敬四郎。
敬四郎は突然、黄枝子がうなぎ屋で出会った女性だと気付く。
三郎「あの気の強いおっかない人か」
武男「気が強いんじゃないよ。ちゃんと言うべきことは言うんだ。それが現代の女性じゃないか」
幸子「まあ、そうね。私もそう思うわ」
武男「そう思うだろ? 幸子だって」
三郎「生意気だよ、お前は」
敬四郎「すぐおいしいこというんだから」←字幕は”おいしい”だったけど、なんか違う気がする。この時代、こんな言い回しするかな?
幸子「だってそういう女性の方が魅力あると思わないの?」
三郎も敬四郎も「思わないね」とツーンと上を向く。
幸子「牛は牛連れね」
似た者同士、なるほど。
幸子は牛が食べたいだけ、ビフテキが食べたいとその場を去った。敬四郎が豚の花盛りってあのこと言うんだよと言ってたけど、そういう言い回しがあるのかと思ったらなかった。1932年の松竹映画で「豚の花ざかり」ってのはあったけど、内容が分からない。
武男や愛子にうるさいとたしなめられる三郎と敬四郎。かおるが帰ってくると「子豚が帰ってきた」と敬四郎が言い、すかさず愛子に「お前も子豚ですよ」と言われる。
おなかをすかせて帰ってきたかおるは「こうなったトンカツでもいいわ」と言いだす。ここから作るのは手間だよ。またまた騒ぐ三郎たちにうるさいという武男。
♪ぼくたちのために 時計をとめて と突然歌いだす敬四郎。
あったー! この曲。
敬四郎の歌をBGMに愛子と話をする武男。「お母さん、僕だってつらいですよ」
愛子「本気なの? あんた」
三郎「本気も本気。武男兄さんもつらいですよね」
亀次郎が愛子を呼ぶ。
♪やるせない想い 敬四郎ちゃんまだ歌ってます。
亀次郎「明日は父の日だぞ。お前、知ってんのか?」
愛子「知ってますよ。それがどうかしたんですか?」
亀次郎「どうかじゃありませんよ。ちょっと来なさい。なんですか、忘れてるような顔をして」
後ろを歩く愛子さんのしかめっ面がかわいい。
今回は昭和43(1968)年6月15日(土)か。
結局仲のいい二人を見ていた武男たち。
武男「うん、愛するって…つらいよ」なぜかおるに言う。
敬四郎「歌いますか、もっと」
武男「頼むよ、甘く優しくな」
♪過ぎゆくときは かえらぬ想い出
だから お願い 時計をとめて
ため息をつく武男の横顔。(つづく)
洋二だけ出ない回って意外と珍しい。敬四郎のトレーナーにでかでか英字が書かれていて「MONOTREME」と茶色い生物?が描かれていた。単孔目(たんこうもく)…カモノハシ?
まあでも武男兄さん、あの女はやめとけと思ってしまう。モンスターペアレント(姉だけど)っぽく感じた。今の時代ならいそうだけど、55年前にもいたんだねという感じ。