TBS 1968年5月14日
あらすじ
母の日ということで、日曜の朝早くから子どもたちが掃除を始めた。皆で愛子を囲み、昔話をするなどして亀次郎もご機嫌に。ついには愛子にプレゼントを買うと言いだす。そんな中、突然神尾からの連絡が。なんと神尾の祖母が鶴家に来ることになり…。
2023.8.4 BS松竹東急録画。12話からカラー。
鶴家
亀次郎:進藤英太郎…大亀建設株式会社を一代で立ち上げた。2月5日で61歳。
妻・愛子:風見章子…5月で56歳。
長男・武男:園井啓介…亀次郎の会社で働いている。3月3日で30歳。独身。
次男・洋二:西川宏…ピアノや歌が得意。空襲で足を悪くした。28歳。
長女・秋子:香山美子…出版社勤務。26歳。
次女・幸子:高梨木聖…女子大生。1月の成人式に出席。
四男・敬四郎:あおい輝彦…浪人中。
三女・かおる:沢田雅美…4月から高校生。
*
お手伝いさん
初子:新田勝江…亀次郎と同じ誕生日2/5で30歳。
お敏:菅井きん…愛子の4つ下。6月で52歳。
午前6時
それぞれの部屋の目覚まし時計が鳴り、武男、洋二が起きる。洋二の部屋が出てきたのって初じゃない!? 着替えた武男はかおるの部屋の前で「起きなさいよ」と声をかけた。本宅にいるのはこの3人だけなんだね。
別宅
エプロンをあてながら秋子が三郎の部屋をノックする。幸子もエプロンを当てて起きてきた。秋子が「三郎さん」、幸子が「敬四郎さん」とそれぞれ弟をさん付けしている。
本宅の裏玄関を武男が開け、秋子が入ってくる。玄関に結構な段差があるのが時代を感じるね~。
亀次郎が話し声がすると愛子を起こす。まだ時計は6時前。
亀次郎「変だぞ。わしはもうパッチリ目が開いちゃったんだぞ」
愛子「先が短いんじゃないですか? 年寄りは寝てられないって言いますからね」
亀次郎「おなかがすいたんだよ」
愛子「食い意地が張るんですよ。先の短い人は」
亀次郎「嫌なこと言うな」と布団をかぶった。
愛子さん、朝からキレキレです。
三郎、敬四郎もはたき片手に裏口から入ってきた。
また話し声がすると愛子に言う亀次郎。
愛子「気のせいですよ。耳が鳴るんですよ、年を取ると」
亀次郎「年年言うな、朝っぱらから」
愛子「じゃ、おとなしく寝ててくださいよ。私はまだ眠いんですから」
外はもう明るくなってると言うと、この頃は夜明けが5時だと言う愛子。新聞を取ってこようと起きた亀次郎。「お前は年ですよ。腰が痛かったら晩まで寝てな」と優しさを見せる。怒鳴りまくるけど割と優しいよね、特に愛子には。
しかし、正面玄関、階段付近を掃除している三郎、敬四郎、かおるを目撃する。広間は武男、洋二、秋子、幸子が担当。
驚いた亀次郎は部屋に戻り愛子を起こす。
愛子「だから寝てればいいんですよ。お掃除が済むまで」
亀次郎の目覚まし時計をあえて30分遅らせていた。
今日は母の日。ちょうど日曜日。昭和43(1968)年5月12日(日)
母の日は5月の第2日曜日なので、まあいつも日曜日ではあるんだけどね。愛子は子供たちの行動を知っていた。
亀次郎「地震でもあんじゃないか、今日は」布団の上で正座したまま飛ぶ。
愛子「地震雷火事親父。気をつけてくださいよ、今日は」
亀次郎「母の日はあっても父の日はないのか?」
愛子「だから9月の第3日曜ですよ」
亀次郎「バカ! それは老人の日じゃないか」
愛子「それでいいんですよ、あなたは」
亀次郎「勝手なことを言うな!」
父の日も1950年代には日本に導入されたものの、一般的な行事として広まったのは1980年代に入ってからだったそうで、それで父の日はないのか?なんですね。
裏玄関から入ってきたお敏は「日曜日だってのに騒々しくて寝てられやしない」とブツブツ言っている。通いじゃないよねえ?
亀次郎「何が日曜日だ! 子供たちを見なさい、子供たちを。日曜日だってのにあの働きぶり。お前なんかいくつになったら一人前になるんだ」
お敏「はい、つい遅くなって」
亀次郎「つい、じゃありませんよ!」と怒鳴られる。
三郎を皮切りに子供たちが次々「おはようございます」と亀次郎に声をかけた。
亀次郎「おっ、洋二もやってるのか?」
洋二「たまには掃除する人の身にもならなきゃ」
広間を見に行った亀次郎を見送る子供たち。騒々しさに初子も起きてきて、子供たちが掃除していることに驚く。
初子「おやまあ、天と地がひっくり返っちまいますわ」
亀次郎「こら! 何を寝とぼけたことを言ってるんだ。天と地がひっくり返ったらお前なんか逆立ちして歩け」
初子「はい」
朝一で怒鳴られる初子。
広間に飾られたカーネーション。
♪泣かずに ねんねいたしましょ
赤いお船の おみやげは
あの父さまの わらい顔
愛子「どうにか弾けたわね。フフッ」
今日のピアノは愛子さん。しかし、手元を映さないあたりエアピアノかも? 亀次郎も子供たちも拍手を送る。毎回言うけどみんな歌うまい。おやじもうまい。
武男役の園井啓介さんも画像検索するとレコードジャケットが出てくるし、歌の素養のある人を選んだのかな。洋二役の西川宏さんは俳優引退後、高円寺でジャズバーをやっていたそうです。たまたまなんだろうけど高円寺!
広間に大きなテーブルに椅子が並べられ座っている。机の上にはカーネーションや料理が並ぶ。やっぱりカラーっていいね。還暦祝いもカラーで観たかった。
しかしこの童謡「あした」。初めて聴いたけど、母の日にみんなで歌うには妙に悲しい感じの歌だな。このドラマでは途中からだったけど、歌いだしは「お母さま 泣かずにねんねいたしましょ」と子供が母親を慰めてる歌らしいです。
亀次郎「いや、感心に忘れてないじゃないか」
愛子「だってうちの子供たちは私の歌で育ったんですよ」
愛子さん、分教場の先生だったんだもんね。
武男「うちぐらいのもんでしょ。みんなが昔の歌を知ってるのは」
洋二「いいものね、昔の歌は」
秋子「本当の歌って気がするわね」
敬四郎「だけどグループサウンズもいいよ。♪アン アアン アン」
Twitter(Xか)でこの曲だと指摘されてる方がいた! すごい。1968年3月発売。
三郎「だからお前はダメなの」
敬四郎「どうしてさ?」
かおる「つまりさ、軽薄ね」
敬四郎「生意気言うんじゃないよ」
亀次郎「生意気じゃありませんよ。かおるの言うとおりですよ」
三郎「そうよ」
かおる「ほらね」
三郎「だからお前は要領が悪いんだよ。今ここでそんなこと言ったらまずいんだよ」
武男「要領じゃないよ。ほんとに近頃の歌なんか歌じゃないよ。大体、歌詞が日本語にも詩にもなっちゃいませんよ」
亀次郎「そう、そのとおりだ。武男もなかなか利口になったじゃないか」
武男「は?」
愛子「今頃利口になったなんて言われちゃかなわないわね」
亀次郎「何がかなわないんだ?」
三郎「くさるよね、兄さんも」
武男「とにかく昔の歌には日本人の心があるよ」
幸子「いい歌がたくさんあるもんね」
三郎「歌は心で歌わなくっちゃ」
かおる「あらそうかしら」
三郎「何がそうかしらだよ」
かおる「私なんてね、体で歌っちゃうわ」
敬四郎「なあ、そうだよな」
かおる「うん、血が騒いじゃうもん」
秋子「嫌なこと言う子ね、あんたは」
かおる「あら、どうして?」
愛子「どうしてじゃありませんよ」
秋子「女の子が言っていい言葉と言って悪い言葉があるわよ」
女の子が”血”とか言っちゃうのがダメってこと?
かおる「なんとか言ってよ、敬四郎ったら」
敬四郎「言わないよ、お前のことなんか」
秋子「ほらね、すぐそういうこと言うんだから、兄さんに向かって」
三郎「どうしていちばんしまいにこんな末っ子が生まれちゃったの。まるでついでみたい」
かおる「まあ、ひどい」
愛子「ついでじゃありませんよ」
敬四郎「だけど7人は多すぎたんじゃないですか?」
三郎「お前が抜けてりゃちょうどよかったんだ」
敬四郎「どうしてさ?」
愛子「何をつまらないこと言ってんの。誰が抜けたってよくありませんよ。みんな一人ずつ丁寧に育てたんですからね」
こういうこといちいち言ってくれるのがいいなと思う。
亀次郎「お前たちに言っとくがお前たちが結婚したら、どんどん何人でも育てる気にならなきゃダメだ。なんだ情けない。このごろの若いやつらときたら1人か2人育てるのが精いっぱいじゃないか。そんな情けない根性でどうするんだ。まるで意気地なしを絵に描いたみたいだ」
幸子「それだけ社会が厳しくなったんじゃないかしら」
亀次郎「厳しいのは昔だって今だって変わりませんよ。お母さんなんか大変だったんだから」
洋二「お母さんは苦労したんだもんね」
愛子「でも楽しみだってあったわ」
愛子は昭和18年、疎開していく人からタダみたいな値段でオルガンを買い、洋二や秋子をおんぶして弾いた。オルガンは空襲で焼けた。洋二が空襲でケガしたんだから鶴家は疎開しなかったのかな。
亀次郎「まあまあ、よくここまで生きてきたよ」
武男「お母さんも疲れたでしょ?」
愛子「疲れたけど張り合いがあったわ」
戦後生まれの子供たちはま~た戦争の話かとうんざりしてたのかもね。7人の子供たちでいうと、武男、洋二、秋子までが戦中生まれで後の子は戦後生まれ。
愛子は子供たちが掃除してくれたり、カーネーションの花を買ってくれたことに感謝した。亀次郎はいいこと思いついた。いいものを買ってあげる、今すぐ電話をすれば夕方までには持ってくると席を立った。何を買うつもりだろうと言う子供たち。
亀次郎たちの部屋
たんすの引き出しから名刺の束を見て探す亀次郎。「え~っと、あの、おっちょこちょい、どこ行っちゃったかな? ああ、これは死んじゃったと」と唾液をベタベタつけながら名刺をめくり、電話をかけようとしたが着信音がして、お敏や初子を呼んだ。
初子が電話に出て、亀次郎は隣の家に電話を掛けに行った。内線電話じゃなくてあっちの電話もちゃんと番号あるんだね。
神尾から秋子に電話。
別宅でどこかに電話している亀次郎。「わしは女房に冷たい男は嫌いだよ。そうだよ、わしくらい奥さんを大事にする亭主はおらんよ、うん。あっ、実はなそのことで電話をしたんだけど」と椅子を今日の夕方までに届けるよう言う。こういうとこ東京だな~。東京都台東区千束(せんぞく)から届けてくれるそうです。
神尾からの電話は神尾の祖母が間もなく亀次郎に会いにやってくる。神尾はゆうべ徹夜してさっき家へ帰って書き置きがしてあったので、慌てて電話してきた。
揉めるのが嫌で会わせたくない三郎たち。しかし、洋二はわざわざ来るのだから嘘を言うことはないと言う。
神尾の祖母はとっても頑固。鹿児島の人で「女と刀」。若い時にだらしない夫と離縁し、女手一つで神尾の父を育てた。しかし、神尾の父は戦死。神尾の母は若くして未亡人になったので再婚させた…これって、再婚させて母を追い出して神尾を祖母が一人で育てたのか、再婚相手とも暮らしたのかで印象は違ってくるな。
「女と刀」は鹿児島士族の娘を主人公にした小説で、前年の木下恵介アワーでもドラマ化していて、出演者の中に津坂匡章さん(三郎)の名前も。
今日の薄焼きいわしのCMは香山美子さんがいないバージョンだった。
亀次郎が電話から戻ってくると、かおるは退散。敬四郎も勉強すると出ていく。亀次郎また「♪妻は夫をいたわりつ 夫は妻を慕いつつ」と歌う。
「マー姉ちゃん」でも朝男(前田吟)が一節やってた。メジャーな歌なんだね。
幸子は洗濯すると言って出ていき、三郎は芝居のセリフを覚える。演目は「夕鶴」でお父さんにちょっと似ているなどと言いだす。この間の三保の松原の写真に似ている。三郎は秋子に手伝ってよと言って、一緒に出ていった。洋二も絵を描いてくるといなくなるが、武男だけ残る。
お敏は隣の奥さんに捕まり夫婦げんかの話を長々されたと話しながら片づけをしているとインターホンが鳴った。
お敏「もしもし、どなた様でございますか。もしもし!」
女性「もしもしじゃありませんよ。どなた様にしろちゃんと玄関に出るのが礼儀です。なんですか、顔も見せないで」
お敏「はい、ただいま!」
武男はお父さんに話した方がいいですよと愛子に言う。武男が玄関に出迎えに行った。
亀次郎「また秋子のことか?」
愛子「はい、そうです」
亀次郎「あの男が来たのか?」
愛子「いえ、神尾さんのおばあ様です」
亀次郎「何? ばばあだと?」
神尾光の祖母登場。東山千栄子さん。明治23(1890)年生まれ! 「おやじ太鼓」の原作?の「破れ太鼓」にも出てるのか。
祖母「これはこれは突然お伺いいたしまして」
愛子「さあ、どうぞこちらへ」
祖母「失礼いたします。せっかくの日曜日にまかり出まして、わたくし神尾光の祖母でございます。ご無礼の段は平にお許しくださいまし」
亀次郎は咳払いをする。
愛子が広間の扉を閉めるよう武男に言うと、亀次郎は「この爽やかな5月の風を腐らそうっていうのか」と怒鳴る。
愛子「今朝はあんなに機嫌がよかったじゃありませんか」
亀次郎「母の日なんて聞いてあきれるよ。フン、父親がどれだけ子供のためを思ってるかも知らないで」
祖母(←名前ないのかな~?)は豪快に笑いだす。「まあまあ、聞きしに勝るものですね。あの…いいえ、結構でございますよ。さあさあ、お楽に怒ってくださいまし。わたくしももうこの年になりますと、まあ大抵のことには驚きませんから」
ソファで隣り合って座ってるのも面白い。
裏玄関に大きな椅子が届き、武男が取りに行く。
祖母「まあ、あんまりご立腹なので茶柱まで立っておりますよ」
亀次郎「そんなシャレはとっくの昔に私は言いましたよ」
祖母「おや、さようでございますか。そういうシャレのおっしゃれる方ですと、これはもうお話がしよいんでございますよ」
亀次郎「あきれたばばあだ」
しよいん? 検索しても書院造ばっかり出てくる。しやすいの意味だろうか? それとも字幕の間違い?
愛子「お父さん」とたしなめる。
祖母「いえいえ、わたくしもあきれたじじいだと思ってお話いたしますから」
亀次郎「何?」
祖母「今日(こんにち)お伺いいたしましたのは光と秋子様のことでございます。光が申しますには何がお気に召さぬのですか。お父様には会ってもいただけないそうでございますけれども、一体、光のどういうところがお気に召さぬのでございましょうか。わたくしはあの子を育てました責任上、そこのところをしかと承りませんことには、あの子の戦死いたしました父親にも合わす顔がございませんので、どうぞ遠慮なくおっしゃってくださいまし。それで納得できることでしたら、わたくしはなんにも申しません。光にもそのように申し聞かせます」
会ってくれないというか神尾が勝手に怒って帰ったりしてたし…しかし、美しい言葉を話すね。亀次郎は渋い顔。
武男、三郎、敬四郎が椅子を持ってきた。亀次郎が愛子のために買った電気マッサージの椅子。他の子供たちも顔を見せる。愛子に座るように言うが、お客様の前で…と遠慮し、亀次郎が試しに座る。
マッサージ椅子は急ぎだったので有り合わせのお風呂屋用で10円を入れる。神尾の祖母が10円を入れてくれた。亀次郎は気持ちよさそうにし、神尾の祖母にも勧める。みんなして神尾の祖母がマッサージされる様を見て笑う。亀次郎、近いよ!(つづく)
結婚の話、橋田ドラマでもそうだけど、まず親同士が話をして本人が出てこない。そういうもんなんだね。
神尾は苦労知らずのボンボンかと思いきや、結構大変な家庭環境だった。それなのにおばあちゃんにマンションの費用を出させようとするなんて! あと結構口も悪い。今度こそ神尾と亀次郎の対面か?