徒然好きなもの

ドラマの感想など

【ネタバレ】たんとんとん #24

TBS 1971年11月16日

 

あらすじ

竜作の父・竜造(由利徹)が尾形家に姿を現した。竜造は、竜作(近藤正臣)を施設に入れ、彼が働くようになると小遣いをせびり食い物にした。竜作は、みんなが止めるのも聞かず汽車に飛び乗り…。

君のいる空

君のいる空

  • 森田 健作
  • 謡曲
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

2024.2.6 BS松竹東急録画。

peachredrum.hateblo.jp

尾形もと子:ミヤコ蝶々…健一の母。字幕緑。

*

尾形健一:森田健作…大工見習い。字幕黄色。

*

江波竜作:近藤正臣…先輩大工。

石井文子:榊原るみ…竜作の恋人。

*

中西雄一郎:中野誠也…施主。

生島とし子:松岡きつこ…新次郎の妻。

*

中西敬子:井口恭子…施主の妻。

そば屋:原靖夫

配達係:樫明男

*

江波竜造:由利徹…竜作の父。

*

生島新次郎:杉浦直樹…健一の父の下で働いていた大工。

 

尾形家玄関

配達係が尾形家に来た。「小海(こうみ)屋です。遅くなりまして」

 

もと子は昨日着くって言うから頼んだんじゃないと怒っている。「今日だってこっちからジャンジャン電話しなかったら持ってこなかったでしょ」

配達係「印鑑お願いします」←強い!

 

もと子は健一にハンコを持ってこさせ、「このごろはね、スーパーだって背広扱ってんですからね、百貨店でもサービスが悪いと潰れますよ」となおも怒る。

 

健一はつんつるてんのスーツ姿でハンコを持ってきて渡した。

 

もと子「見なさい。あんたんとこ届けんの遅いから、父ちゃんの背広、無理から着せたのよ、この格好!」

健一「この人に怒ったってしょうがないじゃない」箱を受け取り中へ。

配達係「俺はアルバイトだから」

もと子「アルバイトでもね、仕事でしょ? もっと誠意のある顔しなさいよ。顔が気に入らん!」

配達係「ありがとうございました」←聞き流し力がすごい。

peachredrum.hateblo.jp

配達係の樫明男さんは「おやじ太鼓」ではうなぎ屋「佐助」の店員さん。

 

出ていった店員に「フン、何がありがとうだ」と怒りの収まらないもと子。

 

茶の間

もと子「昨日届くって言うから作ったんじゃない。デパートなんて大きいばっかりでホントに不親切な、気に入らん」

健一「間に合ったからいいじゃないか」

 

もと子は健一にも「大体ね、お前もいけないんですよ。お前も立派な社会人なんだからね。怒るときはちゃんと怒れるような人間じゃないとダメなんですよ。結果として間に合ったからよかったよ。でも、その間、気を遣った母ちゃんの苦労はどうなる? 百貨店へ4回も電話した、その電話代はどうなる? 貸してみなさい!」包装紙を開けていた健一から箱を奪う。「これで寸法でも合わんなら承知せんぞ、ほんまに」

健一「あ~、こんな色か」黒か紺かな?

もと子「なんだい? 自分で見立てといて、わりかた、いいじゃない」

健一「うん。やっぱりイージーオーダーにしてよかったね」

もと子「出した金が高いもの。着てみろ」

健一「うん。よし」

 

立ってネクタイを直している健一に背広を着せようとするもと子だったが、小柄で健一の肩に届かないのでテーブルに上がる。今度は健一が正座してしまい、「バカ」とツッコむ。

 

生島家

新次郎がネクタイを締めていると、編み機を使っているとし子が「中西さんへ行くってウソでしょ」と話しかけてきた。

新次郎「何を言ってんだよ。こんな格好して、どこへ行くっていうんだよ」

とし子「大工がそんな格好して新築祝行くかしら?」

新次郎「だから言ったじゃないの。健坊が背広作ったって」

とし子「なにもいいじゃないのよ。セーターで」

新次郎「うん? いや、そりゃいいさ。だけどね、健坊は初めて背広作ってもらったんだよ。でだ、着てくとこがないからね。中西さんとこへ着てこうってわけだよ。ハハッ」

とし子「そうすっと、あんたも着んのかさ?」←面白い語尾。

新次郎「そりゃそうだよ。あっちが背広でさ、こっちだけ…こっちだけジャンバーってわけにいかないだろ?」

とし子「何言ってんだか」

 

新次郎「えっ? お前ね、そういうこと言うなよ。新築祝なんてね、お前に嫌み言われて出かけていくほど楽しいとこじゃないんだよ。仕事なんだよ、これだって」

とし子「外国だったらさ、こういうとき、夫婦で行くんでしょ?」

新次郎「そんなこと言ったってしょうがないじゃ…あ~あ」←靴が汚れてた?

とし子「ハァ…日本は遅れてるわよ。いつだって男ばっかり呼んで、女はさ留守番ばっかじゃない」

新次郎「そんな面白いことはないって」靴を磨く。

とし子「いいわよ。そんなこと言わなくたって。飲んで騒いでくりゃいいでしょ」

新次郎「おい、出がけにね、そういうこと言うなよ。そういうこと言うの、お前、ホントによくないぞ、ちょっと」

とし子「イヤ。ん~、だからさ、早く行ってくればいいじゃないのよ」

新次郎「行くよ。だから、いってらっしゃいぐらい言ったっていいだろ」

とし子「いってらっしゃい」

新次郎「お前、ホントにしかし、お前ってのは、あの…いや、かわいいよ。そりゃかわいいけどね、なんかどうも人の気持ちをねじれさせるね」

 

とし子「二(に)の四(し)の六(ろ)の八(や)の十(とお)。二の四の六の八の十」編み目を数えてる?

 

新次郎「あっ、とし子。さおりは隣か?」

とし子「階段でしょ。二の四の六の八の十」

新次郎「おい、いないよ」

とし子「じゃあ、ブランコでも行ったんでしょ」

新次郎「何言ってんだよ。3つの子、1人でブランコまでやるのかよ」

とし子「大丈夫よ。このごろいつだって行くんだから。大体、もう4つよ。あの子、来月で」

peachredrum.hateblo.jp

15話では2歳半って言ってたんだけどな。新次郎の発言だから勘違いしてたのかもしれないけどね。しかし来月4歳なら授かり婚というやつかもね。

 

新次郎「ちょっと行ってやれよ」

とし子「うるさいわね。あの子にくっついてたら、私、なんにもできないじゃないのよ。少しは自分の時間だって欲しいわ。早く行けばいいじゃないよ」

新次郎「い…行くよ。じゃ、行ってくるよ」

 

中西家

新次郎「ハハハハ…いやあ、どうもそう言われるとね」

敬子「サラリーマンじゃないけど何かしら? デザイナーかしら?」

中西「う~ん、大工さんには見えないな、とにかく」

 

杉浦直樹さんは今までサラリーマンの役しか見たことなかったせいか、やっぱりスーツのほうが似合うと思っちゃう。

 

健一「あの…僕のほうはどうですか? 僕のほうは」

中西「金持ちのドラ息子かな?」

健一「えっ? そりゃ、ひでえな。ハハハ…」

 

健一は「おやじ太鼓」の子供達とはまた違ったタイプだしな~。三郎や敬四郎は金持ちのドラ息子に見えたよ。

 

新次郎「あっ、赤ちゃん大丈夫ですか?」

敬子「ええ。寝ついたところだから」

新次郎「大工が背広を着ると大工に見えねえってんじゃいけませんよね」

中西「今はどんな職業でもそうでしょう」

 

敬子が新次郎のコップにビールを注ぐ。

 

新次郎「いやあ、健坊の親父さんなんか何着たって、ああ、職人だなって感じがありましたがね」

中西「あっ、健一君もどう?」

健一「はあ。じゃ、5~6杯だけいただきます」

新次郎「おい、それにしても遅いね」

健一「ああ」

中西「まあ、いいじゃないですか。やってましょうよ」

敬子「子供のことでゴタゴタしちゃって、お呼びするの遅くなりましたけど」

新次郎「いえいえ。あの…おめでとうございます」

 

中西「新さんからも健一君とこからも植木を頂いてホントにありがとうございました」

新次郎「どうもいろいろ」

健一「おふくろがよろしく言ってました」

敬子「ホントに来ていただきたかったわ」

健一「2人で出ちゃうとうちが空になっちゃうんでね」

中西「まあ、おかみさんは改めて来てもらえばいいさ。じゃ」

健一・新次郎「おめでとうございます」

中西・敬子「ありがとうございます」

 

CMで使われてた場面、ここだー! 

peachredrum.hateblo.jp

敬子もビール飲んでる。授乳中はダメなんじゃないっけ?

 

竜作が縁側のサッシをたたき「こんばんは」と訪れ、中西夫婦が「いらっしゃい」と出迎えた。玄関から来ないことは突っ込まないのね。

 

新次郎「遅いぞ、竜作」

竜作「あっ、すいません。ちょっと用があったもんですから。どうもおめでとうございます」

中西夫婦はお礼を言い、椅子に掛けるように促す。

 

新次郎「おい、どうしたい?」

竜作「ああ…背広?」赤いポロシャツに茶色のジャンバーを羽織っている。

新次郎「いや、別にいいけど、そう言ったよな。背広で伺うって」

健一「うん」

竜作「うん、ちょっとね」

新次郎「質屋か? おい」

竜作「いや、そんなんじゃないですよ」

敬子が竜作にビールを注ぐ。

 

竜作「おっ、いいじゃねえか」

健一「あっ、そうか? ハッ…いや、まだ身につかないけどな」

竜作「いや、似合ってるよ。うちへ帰らなかったもんですから、こんな格好ですいません」

中西「いや、そんなこと気にしないでよ。ただ気軽に飲んでもらおうと思って呼んだんだから」

竜作「はあ」

 

新次郎「何かあったのかい?」

竜作「いえ…別に」笑顔だけど、どこか陰を感じる。

 

竜造が尾形家を訪れ、「こんばんは」と何度か声をかけ、玄関のドアから顔だけ出している。「ここは尾形さんのうちですよね?」

もと子「ええ、そうですけど」

竜造「あっ、いや、私もね、そうだろうとは思ったんですよ。表札が尾形になってるし、ほら」

もと子「なんやねん? あんた」

竜造「えっ? あの…ああ、おたく、ここのおかみさん?」

もと子「あんたは?」

竜造「は?」

もと子「あんたね、あの…首だけ突っ込んでないでね、体も全部入ったらどうなの?」

竜造「あっ、あっ…そうですか。そんじゃ、まあ」

もと子「あんた…」

竜造「えっ?」

もと子「こんばんは言うてやね、返事せなんだら、あんた、ここで何するつもりやった?」

竜造「あら、おかみさん上方?」

もと子「ごまかすな。もし、私がここへ出てこなんだら、あんたここで何するつもりやった?」

竜造「さあ、何したらいいんだろね」

もと子「とぼけんな。私はね、見通しなんですよ。あんた、なんやろ、靴泥棒やろ」

竜造「あの…私が? そりゃ、おかみさんひどいよ。そりゃないでしょ、あんた」

もと子「じゃ、なんの用なのよ? 一体、あんた誰?」

竜造「いや、誰ってほどの者(もん)じゃないけど。あの…竜作のね、あの…あれなんだけんど」

もと子「あれって…あっ、あんた竜作さんのお父っつぁん?」

竜造「ええ、まあ、そういうことかね」

 

ミヤコ蝶々さんと由利徹さんのテンポのいいかけあい。竜造はめちゃくちゃ東北訛りだけど文字にすると「なんだけんど」くらいなもので普通なんだな。文子は以前、竜作の父は東京弁だと言ってたんだけどね。

peachredrum.hateblo.jp

由利徹さん、こんなに髪がある時代は知らなかったな~。でも何よりびっくりしたのは出身が宮城県石巻市だったこと。なぜかずっと秋田だと思ってた。母が秋田県由利本荘市から由利徹だと言ってたから、これを聞いて勘違いしてた?

peachredrum.hateblo.jp

竜作初登場回は酔っ払って、一瞬関西弁だったのは施設が関西だったということ? 関西弁の役かと思ってワクワクしてたんだけどね。

 

それにしたって似ても似つかぬ親子だ。

 

もと子「あんたが竜作さんのお父っつぁんか。よう、ここが分かりましたな」

竜造「いやあ、捜したねえ、今度は。まるまる3年捜したもんね」

もと子「へえ、なんの用でんねん?」

竜造「いや、なんの用って…私はね、いや、あっしはあいつとは親子関係ですよ、おかみさん」

もと子「いや、そんなことはね、もっと親らしいことをした人の言うことと違いますか? 子供を施設に放り込んどいて、大きなってから、それを引き取って働かして、しかも、その給料の前借りをして、それを飲んだくれてしまうような親を誰があんた、子供が親と呼びますか」

竜造「いや、そのとおり。しかしね、おかみさん」

もと子「なんです?」

竜造「今度、私はあいつにたかろうと思って来たんじゃないんですよ」

もと子「ほんまに迷惑かけまへんな?」

竜造「いや、かけません」

もと子「ほんならまあ、ちょっとだけ上がんなさい」

竜造「はい。いや、あっしはね、今更悪かったなんて、あいつに言う気はねえんですけどね」手ぬぐいで足の裏を拭く。

 

茶の間

もと子「なんで?」

竜造「いや、ホントは言いたいんですよ。だけんども、あいつが信用しないと思うんだ。前から俺、あいつには何度も悪かったっておわびしてるからね」

もと子「まあ、いいから入って座んなさい」

竜造「はい」

もと子「あっ、そこ閉めて閉めて」

 

竜造「いや、あいつが怒るとね、俺は何度だってホントに悪かったっておわびしたんだ。だけど、次の日はまた飲んだくれちまったからねえ。だから、今度だけは心からホントに悪かったっつっても、あいつは相手にしてくれねえと思うんだ」

もと子「そんなことないと思うわよ。あんたがね、その行いを態度で示したら竜作さんかて信用してくれると思うよ」

竜造「へい」

 

もと子「あんた、今、どこにいてはんの?」

竜造「あの、ほれ、御徒町の裏のほうにね」

もと子「アパート?」

竜造「いや、あの…150円ホテルってやつ」

もと子「ふ~ん。何して働いてはんの?」

竜造「何してって…そんな、おかみさん。俺みたいな男をそうそう使ってくれるうちはありませんよ。いや、ホント」

横目でにらみつけるもと子。「出ていけ」

竜造「えっ?」

もと子「何がホントに悪かったや。ほんまに悪いと思うてるもんやったら世話かけんと身の始末をきちんとしてから来んのが順序やろ! 帰れ! 帰れ! 帰れっつうんだよ、はよ! 帰んなさい! 誰が会わすか、バカ者め!」机をバシバシたたくと、竜作はびっくりして部屋を飛び出していった。

 

橋で待っていた竜作。

文子「待った?」

 

笑顔を見せるものの元気のない竜作に「どうしたの?」と駆け寄る文子。

竜作「急にどっか行かなきゃならなくなったんだ」

文子「どっか?」

竜作「今度は九州へでも行くかな」

文子「九州って…どういうこと? それ」

竜作「親父が来たんだよ」

 

夕方、アパートの前にいたので会わずに引き返し、新築祝いがあったから時間は潰れた。さっき戻ったら親父はもういなかったから、急いで大事な物だけ詰めてきた。

 

文子「私はどうなるの?」

竜作「手紙書くよ。とにかく、あの親父に捕まったら俺の生活はメチャクチャなんだ。場所が決まったら手紙書く」

文子「そんなのイヤ。私も一緒に行く」

竜作「今からそんなこと言ったって」

文子「私だって身軽よ。お店には悪いけど、あんたがどっか行っちゃうなんてイヤだわ。いつ来るか分からない手紙を待ってるなんてイヤよ。待ってて。すぐ戻ってくるから。持ってくる物そんなにないんですもの。いいわね? 待っててくれるわね?」

竜作「ああ」

 

走って職場のクリーニング屋に戻った文子を追いかけて店に入って行く健一。クリーニング屋の妻に「なんですか? あんたは」と言われ、「すいません。ちょっと文ちゃんに用があるんです」と上がり込む。

peachredrum.hateblo.jp

ノンクレジットだったけど、16話にも出演した本橋和子さんかな。

 

文子はトランクに荷物をまとめている。

健一「竜作はどこだい? さっき会ってたら、どうも様子が変なんだ。それでうちへ帰ったら、うちへあいつの親父が来たっていうから、竜作は逃げるなってパッと思ったんだよ。文ちゃんも一緒に行くなって、すぐ思ったんだよ。どこ行くんだい? 竜作もあんたも出ていくときは知らん顔かい? 口も利きたくないのかい?」

文子「ごめんね。健ちゃんのことは忘れないわ。手紙書くわ」

健一「行っちゃいけないよ。逃げるなんてキリがねえじゃねえか。正面から堂々と親父さんとぶつかったらいいんだよ」

 

橋の上

新次郎が近づくとジリジリ後ずさる竜作。「新さんの言いたいこと分かってるさ。だけど、理屈じゃどうにもならないんだよ。逃げるしかないってこと、イヤってほど知ってんだ、俺」

新次郎「俺たちがなんとかするよ。お前一人に苦労させやしないさ。親父さんには俺が会って、よく話をしてやるよ」

竜作「そんなことは無駄なんだよ。親父はのらりくらり俺につきまとうんだよ。他人じゃないんだよ、親なんだよ、新さん。そうそう知らん顔はできないじゃないか。金やらないとアパートの廊下で寝ちまうんだ。一晩中、ドアの所へいるんだぜ。警察に突き出せるかい? 肉親って一体なんなんだよ?」

新次郎「だからって一生逃げ歩くわけにはいかないじゃないか」

竜作「逃げ歩くさ。逃げ歩きながらのし上がってやる。親父がたかるくらい平気で出せるほどの金持ちになってやるさ。手紙書くよ、新さん」走り去る。

新次郎「竜作!」

 

竜作の金持ちになりたい理由が親父にたかられても平気なようにってのは切ない。

 

それにしても竜作と新次郎が並ぶと新次郎、背高いな~。竜作がかばんを持って猫背気味なのもあるけど、それにしたって180はゆうに超えてるように見えるんだけどな。

 

文子のトランクを持った健一も駆けつけるが、竜作は走っていってしまった。

 

通販生活の薄焼いわしのCM、久々に感じるな。それと次の「思い橋」のCMも。シリアスな感じだね。

 

尾形家茶の間

もと子「あんた、一体、子供を何年食い物にしたのよ? 何年」

竜造「いや、中学出たときからだから、1年、2年…」

もと子「4年か5年、食い物(もん)にしたでしょうがな。その根性が悪い。当たり前や。そんな根性やったら子供に逃げられてもしょうがないわ」

 

竜作の年齢設定は23歳くらいだろうかね?

 

竜造「いや、そう言われてもね、一言もねえけどさ。だけどね、人間、根性だけじゃどうしようもねえこともあんだよ」

もと子「そんなことはね、根性を極めた者(もん)が言うことですよ。ぐうたらが何を言うとんねん」

 

竜造「おかみさん」

もと子「何?」

竜造「誰が自分の息子に苦労をかけようとするのでしょうか。一体誰が自分の息子の幸せを願わない者がいるでしょうか。この世の親という親、子を思う心は真実、疑いなきものではないでしょうか」ものすご~く芝居がかった言い回し。

もと子「紙芝居聞いてるのとちゃうねん」←的確なツッコミ!「誰が自分の子供に苦労をかけるでしょうか。かけてるじゃない、子供に」

 

竜造「おかみさん、俺は5日」

もと子「何が5日?」

竜造「いや、同じ仕事5日やってるとね、もうどうにもこうにもイヤんなっちゃう。もう我慢しきれねえんだよ。だからね、俺から言わせれば、一生同じ仕事やってるヤツのどっかおかしいんじゃねえかと私は思うんだよ。私はもうどうにも我慢できねえんだもんなや」

もと子「フン。バカバカしいて聞いてられんわ。人間というものはね、どんな我慢できないことでも我慢をして人生というものを切り開いていくもんや。あんた、ちょっと自分を甘やかしてんのと違うか?」

竜造「そう。甘やかしてる。気が弱い。しかしね、人生50年たつと自分がどういうもんか分かってくるね」

もと子「それなら改めるのが人間でしょうがな」

竜造「手遅れだね、もう。気がついたときは、もう、どうにも変わりようがねえやね。ハハハハ…」

もと子「笑いごっちゃないわよ」

竜造「しょうがねえやね、おかみさん。逃げちまったもんはしょうがねえやね。帰るわ、俺」

 

もと子「ちょっと待ちなさい」

竜造「だってこれ以上、昼飯ごちそうになっちゃ悪いもの」

もと子「なんであんたに飯食わさないかんねん。アホなこと言いな」

竜造「いや、そういうと思って当たってみたんだ。ハハハハ…」茶の間を出た。

 

玄関

もと子「あっ、ちょっと。あんた職人みたいなことできる?」

竜造「う~ん、そりゃまあ、若いうちはね、それこそ大工、左官、建具屋からペンキ屋。ハッ、しかしね、5日や10日じゃ腕はつかねえやね」

もと子「あんた、うちで働かへん?」

竜造「俺が?」

もと子「今度こそ辞める気にならんとうちで働かない?」

竜造「だけどあんた、大工なんて難しくてね」

もと子「覚えりゃいいじゃない」

竜造「この年でかい?」

もと子「何がこの年や。60になって英語覚えた人かていてんのよ。やんなさい。私が仕込んであげるから。そのかわり、辞めるったって辞めささんで。引っ張ってでも働かすよ。息子のために一から出直す気にはならん? どうやの? なんとか言わんかいな。一生懸命働いて息子に許してもらう気にはならんのかっちゅうのよ」

 

竜造「おかみさん」

もと子「何よ?」

竜造「本気で…本気でおかみさん、そんなこと言ってくれんのかい?」

もと子「冗談で言うわけがないでしょ」

竜造「ありがてえ。ありがてえや、おかみさん」玄関の三和土で膝をつく。

もと子「あんた、やる気あんねんな?」

竜造「ある。ムチャクチャにあるよ、おかみさん」

もと子「ほんまやな?」

竜造「俺ね…俺はもう1人じゃダメなんだよ。誰か叱って引きずってくれる人いなかったら、俺はダメな男なんだよ。だけどね、この年の男を親身になって叱ってくれる人はいねえやね。おかみさん、俺をどなりつけてくれるね?」

もと子「ええ、どなりつけよう」

竜造「俺がもし辞めそうになったら、はり倒してくれるね?」

もと子「はり倒すよ。みんなだって殴り飛ばすよ」

竜造「そんな人いなかったもんな、俺は」

もと子「でもね、言うとくけど、それはあんたのためやないよ。竜作さんのためにやんのよ」

竜造「へい」

もと子「あんなええ子が親から逃げ出すのがかわいそうで見てられんのよ」

竜造「へい」

もと子「行った先から手紙が来るやろ。あんたが真面目に働いてたら、ちゃんと私から知らす」

竜造「へい」

もと子「あの子は飛んで帰ってくるよ。あんたがうちで一生懸命働いてるの聞いたら、その日のうちに飛んで帰ってくるわよ」

竜造「ありがとうございます。ありがてえ、おかみさん。おかみさん!」もと子の手を取る。

もと子「しないな、汚いな、もう」手を振り払う。

 

電車が走っていく。車内の竜作の寂しそうな目がたまらん!

 

文子は新次郎と健一の働く現場にいる。そば屋が天丼1つ運んできた。250円。そば屋の原靖夫さんは「あしたからの恋」最終回に出演の八百屋さんかな。

peachredrum.hateblo.jp

邪魔した上にごちそうになっちゃ悪いわと新さんに謝る文子。1人でいるのがイヤだと言うと夕方までいればいいと言う新次郎。夕飯も3人で食おうと提案する。

 

新次郎「いや、大体な、竜作が1人で行っちゃったの俺のせいなんだよ」

文子「そんなことないわ」

新次郎「いや、そうだって。俺が引き止めに行ったりしなけりゃ、あいつは1人で逃げたりなんかしなかったんだよな」

文子「いいのよ。手紙が来たら飛んでいくから」

健一「だけど、九州なんてよしなよ。そんな遠くへ行っちゃいけないよ。竜作の親父なら俺がぶん殴っても追っ払ってやるからさ」

文子「うん」

健一「2人だけで遠くへ行って結婚しちゃダメだよ。俺たちだって見てえじゃねえか。文ちゃんの結婚式」

新次郎「やっぱり俺が竜作の親父に会うかなあ」

健一「そうだよ。そうこなくちゃ」

新次郎「ハッ。健坊じゃねえけど、会って、ぶん殴ってやるか」

健一「頼むよ、新さん。2人が遠くへ行っちゃつまんねえじゃねえか」

新次郎「そうだなあ」

 

現場にとし子が姿を見せた。

新次郎「なんだ? お前、ま…またなんか変な誤解を…」

 

泣きだしそうなとし子はさおりがいなくなったと言う。「バカ野郎」ととし子をどなりつけた新次郎は駆け出した。(つづく)

 

いつの時代も毒親がいたんだね。もしかしたら戦争に行って無気力になったとか暴力的になったとかそういう世代かもしれないけどね。

 

いつか絶対見たいと思っている木下恵介劇場の「記念樹」は全46話で児童養護施設の話らしい。木下恵介脚本だけど、山田太一さんも何本か書いていて、竜作や文子が施設出身なのは、このドラマの影響もあったのかなと思った。

 

このドラマは1話完結らしいけど、のちの木下恵介アワーに出てる人がいっぱい。「思い橋」の次はこれやってくれないかなあ。放送順じゃなくなったから見たいものが見たい。「太陽の涙」も見たいけどね~。