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【ネタバレ】木下恵介アワー「おやじ太鼓」 #16

TBS  1968年4月30日

 

あらすじ

鶴家に行く道すがら、うな重の出前を頼んだ正子。しかし、今日は亀次郎が家にいると聞き、頼んだうなぎを慌てて店で食べる。そのころ、家では亀次郎が客人を追い返したあとで、うな重が五つも余っていた。成り行き上、二つ目のうな重を食べることになった正子の前にさらに…。

2023.8.2 BS松竹東急録画。12話からカラー。

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鶴家

亀次郎:進藤英太郎…大亀建設株式会社を一代で立ち上げた。2月5日で61歳。

妻・愛子:風見章子…5月で56歳。

長男・武男:園井啓介…亀次郎の会社で働いている。3月3日で30歳。独身。

次男・洋二:西川宏…ピアノや歌が得意。空襲で足を悪くした。28歳。

長女・秋子:香山美子…出版社勤務。26歳。

三男・三郎:津坂匡章(現・秋野太作)…二浪して大学生。

次女・幸子:高梨木聖…女子大生。1月の成人式に出席。

四男・敬四郎:あおい輝彦…浪人中。

三女・かおる:沢田雅美…4月から高校生。

*

お手伝いさん

初子:新田勝江…亀次郎と同じ誕生日2/5で30歳。

お敏:菅井きん…愛子の4つ下。6月で52歳。

*

正子:小夜福子…亀次郎の兄嫁。高円寺の伯母さん。58歳。

 

今日は木下恵介脚本で子供たち少なめ。そしてロケ多め。

 

銀色の急行列車が走る。田園調布駅から高円寺の伯母さんが出てきた。

ドラマを見るとこの駅舎の脇にもっとバス乗り場とか長く続いていて、今はこの駅舎だけを残した感じかな。

正子が歩いていると「奥さん、こんちは!」とうなぎ屋の出前持ち(樫明男)に声をかけられた。正子は「困っちゃうわねえ。駅へ降りた途端にいいにおいがしてくるじゃないの」とニコニコ。出前持ちは勝手に大串でしょう?と後で持っていきますとバイクで走り去った。この時代、ノーヘルなんだよね。今見ると怖い。

 

少し歩きだすと、今度声をかけてきたのは寿司屋の出前持ち(玉川長太)。このごろはさっぱりですねと言われると、正子は以前のきゅうり巻きのことをまだ根に持っていた。

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今日はうなぎだと言うと「とんでもない。あそこのうなぎは死んだうなぎばっかり使ってるんですよ。歯に挟まるのもいいとこですよ」と悪口を言いだす。それでもきゅうりよりはマシと言い、歩き出した正子。

 

今度は道路の向かいから「奥様! いらっしゃいませ」と初子に声をかけられた。愛子がいるか聞くと、土曜日だから旦那様もいると言われ、正子は驚く。会社からお客様と一緒でおビールを飲んでいて機嫌がいいと初子が答えた。初子は自由が丘へ買い物へ。

 

しかし、正子はうなぎを鶴家に持ってこられては困ると慌てて戻ろうとし、そば屋の出前持ち(島伸行)とぶつかってしまい、そばが豪快に飛び散る。それにしても風が強いな。急いでいるからと千円札を渡し、おつりは鶴亀さんとこへ持ってきてちょうだいとその場で別れた。

 

まだまだ歩く高円寺のおばちゃん。ほんとに大きな家ばかりの高級住宅街だね~。ちょうど桜も咲いている。だからロケ多め?

 

うなぎ屋「佐助」

初子が食べに来ていた。あまりに早く焼けたことに初子が焼き直しじゃないかと疑うと、正子に届けようとしたうなぎを先に食べさせるという。その直後、店に入ってきたのは正子で店で食べていくという。

 

初子は肝吸いまでつけたうな重を食べていた。うなぎ屋の話によると初子はお世話になってるから2割引き。正子は鶴亀のツケだからタダだというが、正子は今日は払うという。鶴家からうな重の上と肝吸い5人前の注文が入った。お客様は3人。うなぎ屋は5つも6つも同じだから正子の分もつけておくと言うと、正子はその話に乗り、払うと言ってる初子の分もつけておけという。

 

またまた歩いている正子。うなぎ屋の出前持ちが「お先に」と追い越していった。

 

鶴家のインターホンが鳴る。お客様に出していた料理を台所に運んでいたお敏は慌てて玄関に出ようとしたが、亀次郎にぶつかりそうになり怒鳴られた。

 

茶の間

愛子「お客様にあんなガミガミ怒鳴っちゃって恥ずかしいったらありませんよ」

亀次郎「恥ずかしいのは向こうですよ。無知でアホでバカであんなものがお客ですか」

 

お客様が帰ってしまったが、うな重が5つ届いた。鶴家に到着した正子。鶴家の向かいの家の桜が満開。うなぎ屋が家から出てきた。

うなぎ屋「奥さん足が速いんですね」

正子「そうでもないわよ。おなかが満足したから浮かれて歩いてんのよ」

うなぎ屋「調子がいいな、奥さんは。長生きしますよ、きっと」

正子「うそでもそう言ってもらうとうれしいわね」

うなぎ屋「佐助のうなぎがうそなんか言うもんですか。じゃあ、またお願いします」

正子「何さ、調子がいいのは自分じゃないか」

 

裏口から正子が入った。愛子はちょうどいいところに来たと歓迎。

亀次郎「あんたはいつもうまいとき来るよ」

 

茶の間でうな重を食べている亀次郎とテーブルに並べられたうな重。愛子はうな重が5つも来て困ってるから1つあがってくださいと勧める。「えっ、私がですか?」と戸惑う正子。こういうときに2つでも3つでも食べておきなさいと亀次郎も勧める。「そうさ、あんたには盆と正月が一緒に来たようなもんだ」。

 

愛子も食べたくないが1つ食べている。正子におしぼりを持ってきたお敏は「本当においしそうなうなぎですもの」と羨望のまなざしを向けると亀次郎から1つ食べなさいと言われ、うな重、肝吸い、おしんこを嬉しそうに取り、「ほんとにまあ盆と正月ですわ。ありがとうございます!」と持って行った。

 

なかなか食べ出さない正子に勧める亀次郎は「このおばちゃんが胃の調子が悪いなんて聞いたことがない」と言い、愛子は、うなぎは血圧の高い人にはいけないと普段は食べないようにしていると話す。

 

武男の分を残さなくていいのか心配する正子に、武男はお客様の車で行ってしまったからそんな心配しなくていいと亀次郎は声を荒らげた。正子がお客様のことを少しでも興味を持つとあんたはそんなこと心配しなくていいのと亀次郎。

 

お敏が茶の間に入ってきて、正子宛てに寿司金から電話があり、トロのいいところが売り切れないうちにお持ちしましょうかというメッセージを伝えた。そんな贅沢なもの頼むもんですかと断るように言う。

正子「ガッチャリ電話を切ってちょうだい」

お敏「はい、ガッチャリ切ります」

 

寿司が食べたいからうなぎを遠慮したんじゃないのかね?と亀次郎から疑いの目を向けられた正子はもうあんな寿司なんか金輪際食べませんよと怒る。

 

なかなか箸の進まない正子に「このおばちゃんに食べたくないときがあるか」と失礼なことを言いまくる亀次郎。正子の元にはざるそばが5つ届いた。1000円渡したおつりがざるそば5つ。亀次郎は1つざるそばを食べ始めたが、残りは「うなぎとおそばは入るとこが違う」とお敏が持って行った。

正子「こっちは三隣亡ですよ」

ja.wikipedia.org

亀次郎はうなぎのあとのそばは血圧を下げると正子に言う。

health2sync.com

「うなぎは、DHAEPAといった不飽和脂肪酸が豊富です。DHAは、脳の発達促進や視力の低下予防・動脈硬化の予防改善、EPAは高血圧予防や炎症を抑える働きが期待できます。」←そうなの~?

 

田園調布駅を出てきた武男に敬四郎が「武男兄さん!」と声をかけてきた。

敬四郎「やっぱり兄さんはいい男だな。すぐ目につきましたよ」

武男「つまらんお世辞を言うな」

と機嫌が悪い。武男は腹が減ってるだろうと道を引き返した。

 

うなぎ屋「佐助」

武男と敬四郎が店に入ってすぐきれいな女性が目に入る。

 

注文は何にするか迷っていると店員のほうからいつもうな重だからかば焼きにしますか?と勧められた。かば焼きの上とごはん。

 

女性客はお勘定を払って店から出ていった。じっと見つめていた武男は「おい、ちょっとタバコ買ってくるよ」と立ち上がる。

敬四郎「タバコならありますよ」

武男「鈍いな、お前は」と店を飛び出していった。

 

きりっとしたきれいな女性(堀井永子)を追いかける武男。

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神尾と武男が歩いていた時に見かけた女性かな? あの時は後ろ姿だけだった。

 

武男を見かけた正子が武男を追いかけ、声をかけた。しかし、正子が声をかけたために女性を見失ってしまった。きっとエキストラじゃない通行人が武男を振り返る。

 

花の世話をしている愛子と亀次郎。

愛子「1人でさみしいからわざわざ来るのに、それをお父さんみたいにああガミガミ言っては」

亀次郎「言わせるようなことをするんだよ、あの人は」

 

愛子は正子から来る前にうなぎ屋に寄って食べてきたことを聞いていた。亀次郎はそれならそういえばいい、自分の金で何を食べようが勝手じゃないかというが、うなぎ屋に一緒のつけにされてしまった。

 

亀次郎「そんなことをするからバチが当たるんだ」

愛子「バチならとっくに当たってますよ。一太郎さんに早く死なれてしまって、細々1人で生きてるんじゃありませんか。その上、バチが当たったら気の毒ですよ」

 

トーンダウンする亀次郎。

愛子「それをあなたときたら怒りたくなったら情け容赦はないんですからね」

亀次郎「アパートだって建ててやったじゃないか。誰のおかげでのんきにしていられるんだ」

愛子「それはそれでいいんですよ。あなたのたった1人のお兄さんの奥さんですもの。おばちゃんだってしょっちゅうありがたいって言ってますよ」

亀次郎「ほんとにそう思ってんのか? あのばあさん」

愛子「そりゃ思ってますよ。神様以上だって言ってますよ。あなたのことを」

 

亀次郎「そうするとあれだな」

愛子「なんですか?」

亀次郎「ちょっとかわいそうだったかな」

愛子「ちょっとじゃありませんよ。随分ひどいこと言いましたよ。意地汚いからこういうことになるんだなんて」

 

亀次郎は来週の土曜日におばちゃんを静岡に連れてってやろうと提案した。東名高速道路の工事をしているから見に行くついでがある。

愛子「あなたと2人だけで行くんですか」

亀次郎「バカなこと言うな。あんなばあさんと夫婦だと思われてたまるか」

 

おばちゃんとかばあさんとか…子供に対して「高円寺のおばちゃん」というのはまだしも、ばあさんはひどい。亀次郎61歳、正子58歳なのに。

 

愛子からいいところがあると言われて亀次郎は満足げな表情を見せる。

 

インターホンが鳴る。うなぎの上にそばも食べていたお敏はおなかが痛い中、敬四郎を出迎えた。

 

敬四郎はかば焼きを土産に持ってきた。亀次郎はうなぎと聞いてうんざり。敬四郎は武男がきれいな女の人を見て店から飛び出して行ってしまったと話し、亀次郎は驚く。「バカもバカも大バカだよ、あいつは」。

 

食べ過ぎておなかが痛そうなお敏を怒鳴りつける亀次郎。武男も帰宅し、どこへ行っていたと亀次郎に聞かれる。

武男「はあ、うなぎ屋寄って…」

亀次郎「うなぎ、うなぎ言うな!」

 

怒鳴られてる武男たちの様子を見ている敬四郎の顔芸でつづく。

 

フフフ…やっぱり高円寺のおばちゃんが出てくるのは楽しい。山田太一さんの脚本は好きだけど「おやじ太鼓」に関しては木下恵介さんの描く愛子さんの方が好きだな。