TBS 1971年9月14日
あらすじ
キューピッド役となった健一(森田健作)のおかげでよりを戻した竜作(近藤正臣)と文子(榊原るみ)。仲良くデートをするふたりを見て、文子に好意を持っていた健一は、ちょっぴり寂しい気もしていた。
2024.1.25 BS松竹東急録画。
尾形もと子:ミヤコ蝶々…健一の母。字幕緑。
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尾形健一:森田健作…大工見習い。字幕黄色。
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江波竜作:近藤正臣…先輩大工。
石井文子:榊原るみ…竜作の恋人。
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安さん:太宰久雄…建具屋。
ペンキ屋:谷村昌彦
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田崎:柳谷寛…布団屋。
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クリーニング屋:大杉侃二朗
クリーニング屋の妻:本橋和子
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堀田:花沢徳衛…とび職の頭(かしら)。
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生島新次郎:杉浦直樹…健一の父の下で働いていた大工。
現場
”建築塗装 山上塗装店”と書かれた車が止まり、ペンキ屋が降りてきて新次郎や健一に挨拶する。左官屋は勝造という名前があるのに、ペンキ屋はペンキ屋なのね。車の文字も見切れてて、多分、”山上”だと思うという程度です。
ペンキ屋「なんだい、新さん。今日、2人かい?」
新次郎「えっ? 1人は休みでね」
ペンキ屋「余裕あるねえ、なんだか」
新次郎「いやあ、おたくほど繁盛してないから」
ペンキ屋「何言ってんのよ。乾物屋の改装もやってんだろ?」
新次郎「三日仕事だよ、あれは」
ペンキ屋「結構じゃないの。細かく稼いで、ええ? 健坊、やってるね?」
健一「うん」
ペンキ屋「うんってなんだよ。元気ないじゃない」
健一「そんなことないさ」
ペンキ屋「えっ、そうか?」
♪シュン太郎の歌声
ペンキ屋「おい、シュン太郎。お前、うるさいよ。同じ歌ばっかり歌って、ホントに。朝っぱらからバカ野郎」
シュン太郎という役名もあるのにキャストクレジットでは役者名が出てこない。歌も曲名分からず。
新次郎「屋根から? 今日は」
ペンキ屋「うん。どうしよう?」
新次郎「何が?」
ペンキ屋「えっ? いや、ライトブルーなんて凝ったこと言わねえでさ、普通にグリーンかなんかベタッと塗っちゃあいいじゃない」
新次郎「ここへきて何言ってんだよ」
ペンキ屋「えっ? いや、ライトブルーって言やあさ、色作んなくちゃなんねえんだから、おたくの言うのは」
新次郎「見積もってもらっただろ? それで」
ペンキ屋「俺のほうはいいんだよ。言っちゃなんだけどよ、こんなちっぽけなうちで色ばかり凝っちゃった日にゃ、かえって安っぽく見えちゃうよ」
新次郎「ライトブルーなんてどこにもあるじゃないの。やってよ、それで、ねっ?」
ペンキ屋「俺のほうはいいんだよ。おい、じゃ、下見から行くぞ」
職人「やってるよ、もう」←この人がシュン太郎か?
ペンキ屋「そうか、お前、心得てるね、ええ? 感心なもんだ、ホント。ハハハハッ。どうだい、近頃の若い者(もん)は。やってるよって、こっちのがお世辞使わなくちゃなんねえんだからな。時代が悪いよ。でさ、グリーンの安いのが入ったかんね、新さんがいいって言えばさ、俺、それをペタッと塗っちゃおうと思ったんだよ」
新次郎「ダメだよ、そんなの」
ペンキ屋「えっ? いやあ、まあ、そういうことよ。ハハハッ。いやあ、よそで使うよ、うん。しかしよ、お前たち、ホントに要領いいね、お前、ええ? 出世するよ、お前たちは、ホントに、ええ? 有能だもんな、ハハハハッ」
昨日のもと子の話に出てきたペンキ屋とは別なんだろうけど、こっちも青を緑にしようとしてる。緑は安いのね。ペンキ屋役の谷村昌彦さんは山形出身で東北訛りの役も多かったらしい…見たことある気もするんだけど、何で見たかは分からない。
作業に打ち込む健一を心配そうに見ている新次郎。
デート中の竜作と文子。「こっから見ると多摩川もきれいね」
竜作「うん、離れて見るとね」
文子「私、とってもさっぱりしちゃった」
竜作「うん?」
文子「やっぱり、おそば屋のお嫁にならなくてよかったわ」
竜作「だけど…」
文子「うん?」
竜作「待っててくれるんだね」
文子「そのつもりよ」
見つめ合って笑う2人。
竜作「今、結婚すれば楽しいだろうなって思うけど…」
文子「分かってるわ」
竜作「おさまっちゃうような気がするんだよ。1級免状を取ろうなんて、そういう努力しなくなっちゃうような気がするんだ、幸せでね。男は不満があったほうがいいんだよ。君と結婚したら不満なんかなくなって幸せでいい気持ちになっちゃうものな」
文子「いいのよ、弁解しなくたって。分かるわ、私だって。私が男だったとしても、やっぱりあんまり若いうちに結婚したくないもの」
竜作「そうなの?」
文子「だって、これからどんな美人が現れるかも分からないし」
竜作「何言ってんだよ」
文子「うっかり変なのと一緒になったら後悔しちゃうもの」
竜作「そんなふうに思ってるの?」
文子「冗談よ。でも、そういう気持ちだってあることはあるでしょ?」
竜作「ないさ」
文子「ホント?」
竜作「当たり前だよ」
文子「どうかなあ。私はきっとあると思うんだ。私だってあるんだもの」
竜作「えっ?」
文子「私だってバタバタ結婚したくないわ。今にもっともっといい男性が現れるかも分からないし。うっかり竜作さんなんかと結婚しちゃったら後悔するかもしれないでしょ」
竜作「言いたいこと言うんだな」
文子「だから待ってあげる。何年だって待ってあげる。でも油断しないでよ。その間にいい人がいたら私さっさとそっちへ行っちゃうから」
竜作「僕は他の人なんかに惚れないよ」
文子「ホント?」
竜作「ホントさ」
文子「いいのよ。そんな格好いいこと言わなくたって」
竜作「だってホントだもん」
文子「人の心なんて分からないじゃない。とにかく今は恋人同士。そうね?」
竜作「もちろんさ」
文子「それでいいの。先のことは分からないもの」
竜作「そんな寂しいこと言うなよ。かわいそうになって結婚したくなんじゃないか」
文子「まあ! 失礼しちゃうわ」
笑う竜作。すっかりキャラ変わったね~。
文子「ねえ、2人で健ちゃんになんかあげない?」
竜作「そうだな」
文子「あの人、私たちのこと、あんなに心配してくれたんだもの。熱海で電話くれたんだって、あの子がワイワイ言わなきゃどうだったか分からないんでしょ」
竜作「そうだな。諦めちゃったかもしれないな」
文子「そういうところがあるのよ、あんたは。冷たいのよ」
竜作「そうなんだ。俺、自分が冷たいの、よく知ってるんだ。あったかくなろうと思って、随分、努めたんだけど、時々、自分の冷たいのにイヤになるときがあるよ」
文子「どうしてそんな人を好きになったのかしら」
竜作「どうしてって…」
文子「よそうかしら。健ちゃんのほうがずっと優しいし、ずっと思いやりがあるもの」
竜作「だけど、あいつはまだ18だもんね」
文子「そうなのね。そんなふうに思えないけど」
竜作「結婚する可能性はずっと俺より薄いもん」
文子「バカね」
竜作「だけど、あいつに何かやったら、あいつ、どんな顔するんだろうな」
文子「どんなって?」
竜作「うん」
竜作と文子はカップルになるだろうと思ってはいたけど、文子は相談女でイマイチ好きになれない。見た目はかわいいけどね。
現場
作業している健一に新次郎があした休むように言う。
健一「いいんだよ。休んだってしょうがねえもん」
プールに行けばいいと言う新次郎にプールぐらい夜だって行けると反論。
新次郎「まあそりゃ、休みたくなきゃいいんだけどな」
健一「俺はね、そうそう休んじゃいられないのさ。あのおふくろ養わなきゃなんないからね」
新次郎「まあ、そういうこったな」
車の衝突音がし、ペンキ屋が外に出ると、山上塗装店の車に丸勝左官店の車がぶつかっていた。
ペンキ屋「あ~あ、なんだよ、勝(かっ)つぁん」
職人「すいません」
ペンキ屋「なんだ、お前、気をつけてくんなくちゃダメだよ、お前」
勝造「なんだ、ペンキ屋」
ペンキ屋「なんだよ?」
勝造「ちょっと触ったぐらいで大げさに騒ぐなよ。この野郎」
ペンキ屋「なんだい、左官屋!」
勝造「それどころじゃねえんだよ」
勝造に謝らせようとするペンキ屋だったが、イライラしている勝造はペンキ屋の手を振りほどいて新次郎に文句を言う。「おめえんとこはいい請負だよ。まったく気の強い請負だよ。下職の気持ちを考えたことがあんのかい!」と、自分が塗った壁をバリバリ剥がしていく。
勝造「ええい、こっちは壁の塗り直しだい、ちくしょう!」
ペンキ屋「塗り直しって、そりゃきついじゃない、そりゃあ」
新次郎「えっ? いや、ちょっといろいろ掛け違いがあってね。まあ、こっちも悪いんだけどな」
健一「新さん」
新次郎「えっ?」
健一「どうしてこっちが悪いんだい?」
新次郎「いや、つまり、その…まあ、悪くはないけどさ」
健一「悪いのは向こうじゃねえか。自分が悪いのに当たり散らすことねえだろ」
勝造「なんだと、この野郎!」
ペンキ屋と新次郎が間に入って止める。
健一「俺んとこはね、注文どおりの仕事してもらうんだよ。塗っちまえばそれまでだというごり押しの下手な仕事はさせねえんだい」
新次郎「おい、健坊!」
勝造「おい、新次郎。若(わけ)え者(もん)にこんなこと言わせといてほっとくのかよ!」
新次郎「いやいや、だからね、俺はね…」
ペンキ屋「だから、勝つぁん」
健一「文句なら俺に言ってくれよ」
勝造「てめえみたいな若造、相手にならねえ、くそ! おい、新次郎!」
新次郎「えっ? いや、つまり、その…」
勝造「この野郎!」新次郎をビンタ!
健一「何すんだ、おじさん! ケンカなら俺が相手になってやるから」勝造を腹パンチ?「文句あるヤツは出てこい!」
年末に録画していた山田太一さんの追悼ドラマ「今朝の秋」。改めて見ると、蓼科まで乗せたタクシー運転手がペンキ屋だった。そして、杉浦直樹さんの妻役の倍賞美津子さんと松岡きっこさんは同世代なんだよね。こっちも年齢差婚。
居酒屋? 町中華かな。
健一のコップにビールを注ぐ新次郎。
健一「俺はビール飲まないよ」←正確には”飲めない”だけどね。18歳!
新次郎「そんなこと言うなよ。やんなよ、一杯」
健一「俺はね、新さんのやり方はよく分かるよ。でも、反対だな。俺に説教するとき、なぜ酒なんか飲ますんだよ?」
新次郎「いや、だからさ…」
健一「分かってるよ。偉そうには説教したくないんだろうけど、俺はやっぱり言うことは正面からガンと言ってくれたほうがいいよ。殴ってくれたほうがいいよ」
新次郎「いや、俺はな改めてお前に言いたいことなんかなんにもないんだ。俺の言いたいことぐらい、お前、とっくに分かってるじゃねえか」
健一「分かっちゃいないさ」
新次郎「俺はあそこでお前が勝つぁんをどなった気持ちはよく分かるんだよ」
健一「でも殴ったことは気に入らないんだろ?」
新次郎「まあ、そりゃ気に入らねえな」
健一「そんなら、それをガンとどなってくれればいいじゃねえか」
新次郎「ハハッ。いや、しかし、俺のほうもみっともなかったからな。勝つぁんも悪いが、こっちも悪いなんて、なんかとりなすみたいなこと言っちまったからな。しかしな、俺はどうもいつもそういうこと言っちまうんだなあ。いや、だから健坊がどうしてこっちも悪いんだっつったとき、ああ、俺はまたつまんねえこと言っちまったなって、ハハハハッ、内心、自己嫌悪だったな」
健一「でもさ…」
新次郎「うん?」
健一「俺みたいに正面から相手の顔を潰すのもよくなかったよ」
新次郎「いや、そういう言い方に慣れてねえからな、相手が」
健一「うん」
新次郎「まあな。塗り直しっていや、勝つぁんも他の職人に格好悪いしな。こっちも悪いけどぐらい言ってやらなくちゃ、やりきれねえだろうと思ってな」
健一「だからさ、俺、いいとか悪いとか言い張るばかりが能じゃなかったって思ってんだ」
新次郎「うん。請負ってのは人間相手だからな。まあ、きれいにばっかりはいかねえやな」
健一「悪かったよ」
新次郎「そんなことないよ。ホントのところじゃ、お前の言ってることが正しかったんだから」
健一「でも、殴ったことは悪かったよ」
店員が料理を運んでくる。
新次郎「なあ、健坊」
健一「うん?」
新次郎「そこまで分かってるお前を俺にどう怒れっていうんだよ」
健一「そう言われりゃ、そうだけどさ」
新次郎「俺はお前に教わったことだってあんだよ。これじゃ怒りようがねえじゃねえか」
健一「なんか俺、手応えが欲しいんだよ。わけの分からないどなり方でもいいから、ガンとやってくれると、ちきしょうってファイトが湧いてくるんだけど、新さん、あんまり分かりがいいんで困っちゃうよ」
新次郎「そうだな、ハハッ。俺のほうにわけの分からねえ怒り方するほどの自信がねえのかな、ハハッ。おい、やれよ」
健一が新次郎のコップにビールを注ぐ。
新次郎「お前は怒るかもしれないけどな、今日お前があんなにカッカしたのには、もう一つわけがあったと思ってんだよ」
健一「えっ?」
新次郎「今朝から元気なかったもんな、お前な」
健一「なんだい? それ」
新次郎「いや、お前があの…嫁に行かせたくないって言ってた女の子かな」
健一「よせよ、新さん」
新次郎「そうなんだな?」
健一「関係ないよ」
新次郎「まあ、どっちでもいいが、余計俺は怒れなくなっちまったんだよ」
健一「よそうよ、そんな話。新さん、俺、飲むよ」
新次郎「おう、飲めよ。ハハッ。ここで飲んだくれたって知れてるよ」一気飲みした健一に「おう、飲め飲め」とさらにビールを注ぐ。
健一の父だって新次郎と同じように殴らない仏タイプの棟梁だったんじゃないのかな。なぜ健一は自分で考えることもできるのに殴れ殴れ言うんだ。新さんは殴らないのは立派だが、未成年に酒を飲ますな。
ドライクリーニング屋の前
老夫婦が作業しているのが見える。
竜作「遅くまで働いてるんだな」
文子「うん」
竜作「大丈夫かい? こんなところ勤めて」
文子「そりゃ大丈夫よ。おそば屋だって随分遅くまで働いてたもの」
竜作「工場(こうば)勤めのほうが時間がはっきりしていていいんだろうけどな」
文子「そうね」
竜作「やっぱりイヤかい?」
文子「なんとなく家族でやってるようなうちがいいわ。フッ…飢えてるのね、家族に」
竜作「そば屋、親切でよかったのにな」
文子「しょうがないわ。結婚断って、あそこで働くのイヤだもの」
竜作「悪かったな」
文子「ホントよ。大事にしないと復讐するから」
竜作「ハハッ。また電話くれよ」
文子「うん」
竜作「あしたからクリーニング屋か」
文子「うん」
おやすみと言い合って別れた2人。
文子がクリーニング屋に入って行くところを笑顔で見届ける竜作。文子が「どうもすいませんでした。ただいま」と入って行くと作業中の老夫婦がおかえりと優しく出迎えていた。
クリーニング屋の妻、本橋和子さんは木下恵介アワーの常連。大杉侃二朗(かんじろう)さんは「男はつらいよ」などに出演。父が侯爵の執事ってすごい。
尾形家
笑顔のもと子、堀田、安、田崎。安さんが犬が屋根に上がった話を面白おかしくしている。そこへ健一が帰ってきた。
安「おう、健坊かい。ちょっとこっちおいでよ。息子ですよ、ここの」
田崎「あっ、そう」
健一「どうも。(もと子に)これ伝票」
もと子「何よ、立ったままで。座ってご挨拶しなさい」
田崎「いいんですよ、そんなことは」
健一「いらっしゃい」座ってあいさつする。
もと子は神社の横の大きなお布団屋さんの田崎さんだと紹介する。
健一「そうですか、どうも」
田崎「なかなかいい息子さんになったね」
もと子「いえ、なんですか、もう、大工になるって頑張ってるんですけどねえ」
田崎「こんなちっちゃいときから知ってるよ、私は」
健一「あっ、そうですか」
もと子「あの…ほら、新築のご注文でいらしてくださってんのよ。お礼申し上げなきゃ」
健一「それはどうもありがとうございます」
田崎「いや、ちっちゃいんだよ。次男が結婚するんでまあとりあえず。そうでかいうちもいらんだろうし」
健一「よろしくお願いします」←好青年モード。
田崎「ああ、こちらこそ」
田崎役の柳谷寛さんはこの間、かなり若いころを見たばかり。ちょいちょい見る人。
もと子から新次郎は乾物屋の現場、竜作が下小屋で刻みをやってるから手伝うように言われ、健一は下小屋へ。「おはよう」
竜作「ああ」←メチャクチャさわやか。
健一「支払いに行ってたんだよ」
竜作「聞いたよ」
健一「おふくろ、つまんねえばばあに金やっちまってやりくりが大変だよ」
つまんねえばばあとは伯母さんのことかな。
竜作「悪かったな、昨日は」
健一「終わったよ、大体」
竜作「そうだってな。雨で多少遅れたけど、予定どおりだな、まあ」
健一「何手伝う?」
竜作「やるか? これ」ホゾを開ける機械?の前を代わる。
健一「おう、やるやる」
竜作「ハッ、お前、前にホゾと穴とを間違えたんだからな」
健一「大丈夫さ。おい、新築来てるぞ、今」
竜作「ああ、そうか」
健一「忙しいや、まったく」
竜作「おい、ダメじゃねえか、そんな簡単に!」
健一「何が?」機械を止める。
竜作「墨付けよく見てちゃんと合わしてやんなきゃダメじゃないかよ」
健一「合ってるじゃねえか」
竜作「ろくすっぽ見もしねえで何言ってんだ」板を見に来て「ああ…合ってるな」
健一「何言ってんだよ。俺はね、こう見えたって、毎晩練習してんだぞ」
竜作「機嫌いいな」
健一「それはそっちじゃねえか。一日どこ行ったんだい?」
竜作「あっ、そうだ。新宿でな…」
健一「うん?」
竜作「やるよ、お前に。買ったんだ、新宿で」薄い長細い箱。
健一「なんだい? それ」
竜作「2人で買ったんだよ」
健一「俺にか?」
竜作「ああ、ガラじゃねえけどな。彼女がそう言いだしてな」
健一「うん?」
竜作「いやあ、俺はそんなことよそうって言ったんだ。でも、お前が今度のことじゃ随分親身になってくれたし」
健一「そうか」
竜作「ネクタイだよ。気に入らなきゃかえるって言ってたよ」
健一「それはどうもありがとう」
竜作「ああ。俺たち、今すぐってわけじゃないけど、将来一緒になることにしたよ」
健一「そうか」
竜作「せいぜい独り者のうちに稼いでな」
健一「よかったじゃねえか」
竜作「ああ」
健一「彼女によろしく言っておけよな」
竜作「ああ」
健一「ヘヘッ」
健一が機械を動かし始めると、竜作が見守り、大丈夫そうだと自分の作業に戻る。笑顔で作業していた健一だが、ちょっと寂しそうにも見える。ほんとに顔がいい。
尾形家
笑っているもと子、堀田、安さん。途切れないで仕事があれば言うことないと堀田が言うと、ここだけの話だとここに来るについてはわけありだと安さんが話し始める。初めは大徳(だいとく)に頼もうかと言っていた。もと子もあの家は増築などもずっと大徳さんだったと不思議がる。
聞いたことあるなと思ったら、1話目で話の中だけだけど、もと子の夫が倒れた連絡をくれたのが大徳のおやじさん。
依頼主の田崎は2年前に妻を亡くしてやもめ。長男は嫁さんと仲が良く、次男のほうがかわいくなったので長男に残すお金を少しでも使ってしまおうと次男の家を建てることにした。そこで安さんは大吉つぁんのおかみさんご存じですか?と話を持ち掛けた。
あ、そうだ、もと子の夫の名前、大吉だったね。
慌てる堀田。ちょっとムッとなるもと子。安さんはそれぞれの表情に気付かず、得意げに話を続ける。田崎ももと子をきれいなかみさんだと好印象を持っていた。あっちもやもめ、こっちも独り、半分見合いのつもりで言って相手を乗せた。
堀田「バカ! バカだね、お前は」←「男はつらいよ」でタコ社長に向ける定番のセリフらしい。
安は慌てて、ただの話だと弁解するが、堀田は田崎がその気になって乗り換えたんだろうと責める。もと子は今も今後も再婚する気がないときっぱり言う。堀田も安さんの計略だとフォローするものの、もと子の怒りは収まらず、色仕掛けで仕事を取らなければならないほど落ちぶれてはいないと言う。安さんに断ってちょうだいと2回言い、帰ってちょうだいと強く言う。
夜、仏壇に手を合わせるもと子。
風呂上がりの健一は仕事を断るほどのことじゃないと話しかけるが、もと子は夫が死んでまだ三月(みつき)もたたない間に女房が色仕掛けの気持ちを取ってきたらどんな気持ちがする?と聞く。
健一は、その年で色仕掛けが利きゃ上等だよ、母ちゃんはきれいだよと冗談っぽく言って自室に行こうとするが、しかし、戻ってきて「ホントのこと言うと、俺も賛成だよ。母ちゃんを嫁さんにしようなんてとんでもねえヤツだよ」と本音を言う。「そんな仕事、断ったって平気さ」と磯田の親戚が2階4部屋、下4部屋のアパートを建てる予定があり、その仕事を絶対取ると張り切っている。
もと子「へえ、やっぱりお父ちゃんが見守ってくれてるのね。ねえ、しょうもない仕事断っても、ちゃんといけるようにしてくれてんのよ」と独り言を言う。「そうか。アパートか。ああ、ホッとした。ホント言うたら偉そうに仕事断って、あとどうしようか思うとったんだ。ああ、よかった。よかった!」とテーブルの上に正座する。「あっ、こりゃ、お膳だ。どうも失礼しました」テーブルから降り、頭を下げ、拭く。
仏壇の前で眠っていたもと子は突然の電話の着信に起こされた。現場の火事の知らせを受けたもと子は健一を起こし、新さんに伝えるように言った。
消防車が現場に走る。(つづく)
ええ~!? 何この展開!
それにしても、あねさん、モテるなあ。「あしたからの恋」のキクさんはとうとう最後まで見合いの話がこなかったのに。
森田健作さんと榊原るみさんはこのドラマの3年後、映画で共演。こっちではカップルになったみたい。森田健作さんが左官屋、榊原るみさんはお嬢様、そして渥美清さん、倍賞千恵子さん、太宰久雄さんの「男はつらいよ」ファミリーが出演。
近藤正臣さんは「柔道一直線」の桜木健一さんとはその後何度も共演してるけど、森田健作さんとは、その後は全然なんだな~。もっと共演が見たかったよ。
ちょこっと第5話#桜木健一 さんがゲスト出演#近藤正臣 さんと
— 「ちょこっと京都に住んでみた。」 (@lifein_Kyoto) August 2, 2022
「柔道一直線」ライバルコンビ
半世紀ぶりに復活です#ちょこっと京都に住んでみた 。
第5話 8月3日(水)#テレビ大阪 深夜0時~#テレビ東京 深夜2時35分~
第4話は #TVer で配信中#木村文乃#古舘寛治#玉置玲央#ちょこ住み京都 pic.twitter.com/q4yTyWsKv6