TBS 1971年9月7日
あらすじ
健一(森田健作)は、益夫(池田二三夫)から求婚されて困っている文子(榊原るみ)の力になろうとする。しかし竜作(近藤正臣)の態度を見て、文子は益夫(池田二三夫)に嫁ぐ決心をする。一方の竜作は、文子を益夫に譲ると決めたものの…。
2024.1.24 BS松竹東急録画。
尾形もと子:ミヤコ蝶々…健一の母。字幕緑。
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尾形健一:森田健作…大工見習い。字幕黄色。
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江波竜作:近藤正臣…先輩大工。
石井文子:榊原るみ…竜作の恋人。
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中西雄一郎:中野誠也…施主。
生島とし子:松岡きつこ…新次郎の妻。
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安さん:太宰久雄…建具屋。
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中西敬子:井口恭子…中西の妻。
金田益夫:池田二三夫…そば屋の息子。
そば屋の親父:中島元…益夫の父。
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生島新次郎:杉浦直樹…健一の父の下で働いていた大工。
現場
建築中の中西家の前に丸勝左官店の車が止まっている。
おなかの大きくなった敬子がバスケットを提げ、日傘をさして訪れた。「おはようございます」
勝造「おはようっす」
敬子「今日は左官屋さんだけですか?」
勝造「はい」
敬子「ご苦労さま」
勝造「おいこら! 壁塗ってんのか落っことしてんのかよ!」職人を怒鳴りつける。
敬子「大変ね」
敬子は勝造が塗る壁の色が気になり、乾けば多少色は薄くなるんですか?と聞くが、勝造は尾形のかみさんの注文どおりのことをしている、文句があったら尾形のかみさんに言ってもらいたいと強い調子で言う。敬子は勝造のそばに差し入れを置くと、奥から安さんが出てきた。
安さんは健一が買ってきた新式のトイレの錠が横文字ばかりでわけが分からないと苦戦していた。今日は、新次郎たちは下小屋の作業で現場には来ていない。
敬子「あの壁、乾けばクリーム色になります?」
安「さあ、どうかねえ。黄色が濃いね。赤みがかかってるもんな。よう、勝(かっ)つぁん!」
敬子「いえ、いいんです。もう」
勝造「なんだい?」
安「この壁はクリームっていうより卵色だな、仕上がりは」
勝造「なんだと? この野郎。人のクリームに何ケチつけやがんだよ、建具屋」
安「いや、俺は別に…やだよ、勝つぁん。ただ聞いただけじゃねえか」
勝造「つまんねえこと聞くない! 俺は注文どおりの仕事してんだ。文句あったら尾形んちへ言ってくれって言ったでしょうが」
安「どうしたんですか? 一体」
敬子「いいえ、さよなら」
安「奥さん!」
尾形家
中西夫婦が訪れていた。
もと子「おかげさまで大工の仕事は多少遅れただけで手が離れそうでね。今日ね、新さんがね、化粧合板が気に入らねえって、あんた、突っ返しちゃったんですよ」台所からお茶を運んできて出す。「下の2人もね、ついそこの乾物屋さんが改装なさるのでね、それを引き受けましてね、今日一日、刻みやってたんですよ、そこで」
中西「実は今日、家内が現場行ってきたそうなんですが…」
もと子「何か不都合なことでもあったんでしょうか?」
敬子「請負っていうのは大工さんの仕事が済めば、それで終わりなもんなんですか?」
もと子「は?」
中西「お前ちょっと黙ってろよ」
敬子「だってひどいと思うわ、私」
もと子「どんなことか分かりませんけど、もちろん請負というのは大工だけの仕事やおまへん。最後の最後まで目を光らして不都合のないようにちゃんとしたおうちをお渡しするのが役目でございます」
敬子「ホントかしら?」
中西「敬子」
敬子「なんだか信用できなくなったわ」
もと子「あの…どんなことでしょうか?」
中西「実は和室の壁のことなんですけど…」
敬子「壁だけじゃありません。あの建具屋さんだってホントに腕のいい人なんですか? ドアの取っ手一つ、つけ方が分からなくて、もう頼りなくてしょうがなかったわ」
安さんにも不満を持ってたのか(^-^;
中西「いや、私も会社の帰りに行って、その壁見たんですけどね」
もと子「はあ」
中西「色がどうも濃いような気がするんですよ」
もと子「そうですか。あの…うちのほうではクリームでお引き受けしたんですけど」
中西「はあ。その色がちょっと赤いっていうか。ちょうど卵の黄身のような色なんです」
もと子「そうですか」
中西「家内はすぐそう思って左官屋さんに聞いてみたんだそうですが」
もと子「はあ」
中西「なんか、けんもほろろらしくて」
敬子「なんだかバカみたいです。お金出すのは私たちなのに職人さんにはものすごく気を遣って、ご苦労さまです、すいませんですって、まるでタダでやってもらってるみたいにしてるのに、あの左官屋さん人をどなったんですよ」
もと子「えっ? ハァ…そら、いけまへんな」
中西「お願いしたのはクリームです。そりゃ黄色の系統には違いありませんけども、あれがクリームとはどうしても思えませんよ。イヤな色です」
もと子「そうですか」
ん~、私の思うクリーム色とイメージが違うな。ただ、ドラマの壁は卵色というより、もっと赤茶っぽく見えた。
中西は新築の気分が台なしなので塗り直してほしいと要求。敬子も絶対直していただきますと静かな怒りを見せ、もと子は早速見てまいりますと承諾する。中西は見てきてあれはクリームだなんて言わないでほしい、水掛け論をやれば私たちの負けだと言う。
もと子「ハハッ。そない心配せんといてください。尾形の請負はコマーシャルじゃありませんけど、お客様の味方です、ええ。決して悪いようにはいたしまへん」
勝造の家の縁側に座るもと子。
もと子にもあれはクリームだと言い張る勝造。「そりゃそうでしょう。クリーム塗って、クリームかって聞かれりゃクリームだって答えるしかねえもんね」
もと子は前に、新築ではないが、尾形工務店が作った家の屋根の塗り替えで京助さんとこが手がいっぱいで線路沿いのペンキ屋に頼んだことあったと話し始める。色は青、ところが出来上がったのは緑一色。二階家の屋根だから飛行機でも乗らない限り何色か見えない初めは笑い飛ばしていた。勝造も知っている太って赤いシャツ着てるペンキ屋で、勝造はそんなもんと比べる気なら見当違いだとムッとする。
もと子「いや、壁だってさ、タンスを置けば見えないでしょ、とも言えるけどね」
勝造「いつ俺がそんなこと言ったよ?」
もと子「あんた、そんなこと言いませんよ。そんなこと言う人だと思ってないもん」
勝造「クリームって言われてクリーム塗って文句言われちゃ、俺だって黙っちゃいないぜ、しまいには」
もと子はペンキ屋の話を続ける。確かに青を塗れと言われたから青を塗った。その青というのは信号の青だと思ったとペンキ屋は言う。信号の青は緑だが、言われたとおり青を塗ったつもりだったが、見る人によっては緑とも言える。
勝造「あねさん、それはなんの当てこすりかね?」
もと子「いや、単なる話よ。しかし、まあ、お宅のクリームは随分、卵の多いクリームやなあと感心したわ」
勝造「あんたね、言いてえことがあったら、ずばり言ってもらいてえね」
もと子「ずばり言うてもええのんかい?」
勝造「ああ、言ってもらいてえじゃねえか。あれがクリームじゃなくて赤や緑に見えるっていうなら、いくらでも出るとこ出ようじゃねえか」
もと子「そんな強気やったら色のことは言わんときまひょ」
勝造「なんでえ、あれが卵色に見えるって話じゃなかったのかよ」
もと子「勝つぁん、あんたんとこの仕入れ先は1つやな?」
勝造「なんだと?」
もと子「材料の仕入れ先は1つやな?」
勝造「ああ、俺んとこは昔から、お前…」
もと子「あんまりバカにしなはんな、尾形を」
勝造「なんだ…なんでえ、なんでえ」
もと子「あの壁はな坪2000円でうちはあんたんとこに卸してまんねんで。3.3平米、2000円や」
勝造「それがどうしたい?」
もと子「そんな材料、あんたんとこ仕入れてへんやないか」懐から紙を取り出して畳に置く。
勝造「そんな、お前、な…なんでえ…」
もと子「いや、これはまあ、念のためにやっただけやけどさ。うちはね、のほほんと請負続けてんのと違いまんねん。壁を見てね、なんぼや分からんような請負と請負が違うっちゅうねん! 棟梁が死んださかい言うて、そうナメてかかってもろたら、どうもなりまへんな」
勝造「そんな、別に俺は…」
もと子「塗り直してもらおう! ええな? やり直してもらいまっせ。そやないとな、あんたも信用落として命取りになりまっせ。よろしいな?」
ここでバックにオープニングのインストバージョンがかかる。
勝造「へい」
もと子「どうもお邪魔しました」縁側から降りる。
勝造「なんて女だ」
もと子「なんやて?」
勝造「なんでもねえよ」
もと子「あのな、文句や愚痴を言うのはな、やることをやった人が言うもんや。覚えといてや」
勝造「なんでえ。しおらしくもなんともねえじゃないか。誰だい、亭主が死んでからしおらしくなったなんて言ったのは。ケッ!」
しおらしくなったからって、仕事をごまかそうとするな!
勝造役の天草四郎さんは熊本出身なのでこの芸名にしたらしい。1986年に69歳でお亡くなりになったそうだから、ドラマ当時は54歳!?
夜、新次郎のアパートを訪ねた健一。新次郎はパジャマ姿。
健一「ああ…もう寝るんだったの?」
新次郎「いやあ、寝るもんか。こんな早く」
上がれよと新次郎に言われて、ちょっとだけねと上がり込む健一。
新次郎「あっ、あの…あれ、どうした? 刻み」
健一「ああ、あした一日で終わるよ」
新次郎「あっ、そう、そりゃ早かったね」
健一「あっ、奥さん、お風呂?」
新次郎「えっ? うん、今日ね、子供が早く寝ちまったもんだからな」
健一「そう」
新次郎「のんびりしちまってよ」
健一「じゃ、俺、帰ろうか」
新次郎「どうして?」
健一「だってせっかく2人だけで…」ニヤニヤ
新次郎「なんだよ、バカ」
健一「えっ?」
新次郎「未成年が変な気利かすんじゃないよ」
健一「変な気って?」
新次郎「この野郎! おとぼけ」
健一「何が?」まだニヤニヤ
新次郎「いやね、俺んとこは、もう子供が2歳半だからね」
健一「うん」
新次郎「いや、そうなるとな、まあ、お前らが想像するようなことはなんにもないのよ」
健一「なんにも?」
新次郎「なん…バカ。もういいよ。お前も飲むか? ビール、うん?」立ち上がり、コップを用意する。
フツーに未成年にビール勧める。
健一「俺、まだ18になったばかりだけどさ」
新次郎「うん」
健一「新さん、いくつで結婚したんだい?」
新次郎「そりゃ俺は遅いやな。33だもん」
とし子は15歳下だから当時18歳! ただし、子供が2歳半だからできちゃった婚というわけではないみたい。
健一「ふ~ん。そういうふうに遅いのがいいのかねえ」
新次郎「なんだい? どうしたんだ? お前」
笑ってごまかす健一。
風呂上がりだけどメイクばっちりのとし子。セクシーなネグリジェ姿に健一ドギマギ。暑かったわねえ、ビールもらおうかしらと言うとし子に「俺、あんまり飲まないから」とコップのビールを差し出す健一。「いいんだ、健坊」ととし子のコップを取ってあげる新次郎。とし子の前に扇風機を出してきたり、まめまめしい。
新次郎「で、どうしたんだよ? 健坊」
健一「うん?」とし子をチラ見。
新次郎「なんだい?」
健一「えっ? あっ、いやあ…奥さん、ホントにきれいだね」
とし子「フフッ、やだわ」
新次郎「ヘヘヘッ。そりゃお前、俺が選んだだけのことはあるさ」
健一「ハハッ、ホントだね」
ここで謙遜しないのがいい。
新次郎「いや、しかし若いな、健坊も」
とし子「ホント、かわいいわ」
照れ笑いの健一。
新次郎「えっ? おいおい、変な気起こすんじゃないよ、お前」
とし子「ん~、バカね」
ようやく本題へ。
健一「俺、結婚無理だよね? まだ」
新次郎「結婚? お前が?」
健一「早いよね? まだ」
新次郎「そりゃ早いよ、そりゃ。フフ…いや、いくら2人が楽しそうだからって、そんな、お前。あっ、そうかねえ、そんなに刺激されちゃうかね? 18だと」
健一「そんなんじゃないんだよ」
とし子「私はいいと思うわよ。だけどさ、幼妻(おさなづま)がいて幼夫(おさなおっと)がいないなんてのは不公平よね。かわいそうだと思うわ。若い男の子」
健一「違うんですよ。あのね、俺、結婚しそうな女の人知ってんだよ」
新次郎「うん」
健一「愛してもいないのに結婚しようとしてるんだよ」
とし子「まあ!」
健一「俺、止めたんだけど、その人、俺より年上だし、止めても止まんないんだよ」
新次郎「う~ん…」
健一「変なヤツんところへ行かすより、いっそ俺が結婚しちまうかなんて…」
新次郎「おい、そりゃしかし乱暴だよ」
とし子「うん?」
健一「変なヤツんとこ行っちゃうのがイヤだったんだ」←変なヤツ連呼するな。
新次郎「そりゃ、どこの女だい?」
健一「うん?」
新次郎「お前、変なのに引っ掛かってんじゃないだろうな」
健一「そんなんじゃないさ」
新次郎「会わせないかい? その子に」
健一「どうして?」
新次郎「いや、お前の恋人なら会いたいじゃないか」
健一「恋人ったって向こうはなんとも思っちゃいないさ」
新次郎「そうか。いやいや、いい子だったら、俺、取り持とうじゃないか」
健一「変なこと言わないでくれよ」
新次郎「何が変だよ? 惚れてりゃ向こうにも惚れさせようとするのが人情じゃねえか」
健一「いいんだよ、俺は」
新次郎「どうして?」
健一「俺は遠くで見てれば、それでいいんだ」
新次郎「バカ! 格好いいこと言うんじゃないよ」
とし子「でも、いいじゃないよ。かわいいじゃないねえ」
新次郎「なんだ? お前、見とれるんじゃないよ」健一を向いていたとし子の顔を自分のほうへ向ける。
健一「俺はね、その人が変なヤツと結婚しないでくれればいいんだ。もっといいヤツと結婚してくれれば、それでいいんだよ」
新次郎「真面目? お前」←言い方が面白かった。
健一「真面目さ」
新次郎「なんだか少女小説みたいじゃねえか」
健一はビールをちょっと飲む。
そば屋
文子「ざる3枚、ビール2本」
益夫の父親「はいよ!」
益夫「文ちゃん」
文子「はい」
益夫「天ぷら、なくなっちゃったからね」
文子「さっき、旦那さんから聞いたわ」
益夫「あっ、そうなの? 父ちゃん」
益夫の父親「お前、横にいたじゃないか」
文子「眠くなったんじゃない? もう」
益夫「すぐ子供扱いすんだからな、ホントに。あっ、いらっしゃい!」
文子「いらっしゃい」
店に入ってきたのは竜作。
文子「いらっしゃい」
竜作「ああ」
文子「なんにしますか?」
竜作「ビール」
文子「はい、ビール1本」
益夫の父親「はいよ!」
益夫「はい、おビール!」
文子「あら。益夫さん、袖口切れちゃってるじゃない」
益夫「ああ、これ?」
文子「あとで縫ってあげるわ。私の部屋に置いといて」
益夫「へえ、そりゃ親切だな」
文子「あしたが楽しみだもの」
文子「お待たせしました」
竜作「あした、熱海行くんだって?」
文子「ええ…どうぞ」ビール瓶を手にする。
竜作「家族全部で行くんだって?」
文子「そうなの。楽しみにしてるの。どうぞ」
コップを差し出す竜作。「でもそれ、ただの慰安旅行じゃないんだろ?」
文子「そうね。健ちゃん、そう言ってた?」ビールを注ぐ。
竜作「いいのかい? それで」
文子「まあ、そうしろと言ったのは誰?」
竜作「そりゃ俺だけどさ」
文子「今更何言うの? 私、幸せだわ、今」
竜作の席から離れ、別の客の接客をする。
益夫「文ちゃん、今日はまたバカに張り切ってるな」
文子「そりゃそうよ。1泊旅行なんてホントにすてきですもの」
益夫「泳ぎてえけど、もうクラゲがいるんだろうな、海は」
文子「プールがあるんでしょ? プールが」
二人の笑い声
会話を聞きながらビールを飲む竜作。
尾形家ダイニング
もと子、竜作、健一が食事している。朝? 昼? 休みの日?
もと子「どうしたのよ?」
健一「うん?」
もと子「2人とも黙ってしもて。なんかあった?」
健一「なんでもないよ。なあ? 竜作」
竜作「うん? ええ」
もと子「健一」
健一「うん?」
もと子「竜作さんはお前の先輩なんだよ。呼び捨てはいけない、呼び捨ては」
健一「分かったよ。お代わりくんない?」
もと子「自分でよそいなさい」
健一「なんでえ。竜作にはよそってやるくせに」
もと子「また竜作…竜作さんと言いなさい!」
竜作「いいんですよ」
もと子「ん~、生意気なんだよ、このガキは」
健一「ガキってことはないだろ。自分のがよっぽど口悪いくせに」
もと子「口悪いのは母ちゃんの生まれつきだ」
健一「ヘヘッ。竜作さん」
竜作「うん?」
健一「何も考えないで電話するんだな」
もと子「電話ってなんやの?」
健一「母ちゃんの知ったことじゃないよ」
もと子「なんや? それ。母ちゃんの前で言うといてやな、知ったこっちゃないとは何よ」←ホントにね。
竜作「すいません、おかみさん」
もと子「うん?」
竜作はごはんにお茶をかけ、かき込む。「ごちそうさま!」
もと子「どうしたのよ?」
健一「俺も行くぜ! ごちそうさま」
もと子「ちょっとご飯どうすんの、ご飯? これ!」
健一「帰って食うよ!」
商店街を駆け抜ける2人。竜作はいつもの腹巻だから仕事の日だよね。そば屋は貼り紙があって閉まっており、向かいの店に入って行った。
電話ボックスにぎゅうぎゅうに入っている2人。健一はメモを持っている。「小銭、俺もこれだけあるぞ」
竜作「ああ」
健一「いるといいがな、彼女」
竜作「ああ。実はな…」
健一「うん?」
竜作「ゆうべ、彼女の店、行ったんだよ」
健一「そうか」
竜作「俺を待っててくれって言うつもりだったんだ」
健一「どうして言わなかったんだ?」
竜作「幸せそうでな」
健一「そんなわけないじゃないか」←決めつけるな。
竜作「あのうちの人になりきる覚悟みたいなものがあってな」
健一「無理してんじゃないか、彼女は」
竜作「あっ、もしもし。そちら孔雀荘さんですか? あっ、そちらにお泊まりの金田さんのですね…いえ、その金田さんじゃなくて一緒の石井文子さんをお願いしたいんですが。ええ、すいません」
今回、新さんのアパートを訪ねたとき、表札に「生島」と出ていた。それと、文子も「石井」という苗字であることは今回ドラマでは初めて出てきたんじゃないかな。益夫もwikiには載ってないけど「金子」であることが判明。
健一「お前が冷たいから諦めようとして明るくしてんじゃないか。バカだよ、お前は。それだってなんだって、どうしてゆうべ言わなかったんだ?」
竜作「お前…悪いけど、出てってくんねえか?」
健一「出てろ?」
竜作「お前がいちゃ言いにくいんだよ」
健一「いいじゃねえか。なにもここまで来て、俺を追っ払うことねえじゃねえかよ」
竜作「あっ、もしもし。俺だよ、竜作だよ」←笑顔
健一「絶対、結婚しちゃいけねえって言うんだぞ」
竜作「あっ…ちょっとね、どうしてもかけたくなってね」
健一「俺を待っててって言うんだぞ」
竜作「ちょっと待っててね。えっと…お前、うるさいよ。出てろよ」
健一「いいじゃねえかよ」
竜作「頼むよ。出てってくれよ!」
健一「なんでえ。人が一生懸命になったのに」
竜作「恩に着るよ。うん? うん。健一、そばにいるんだ。ううん、ボックスの外。おいって…」
健一「出てやるさ。そんなら」やっと電話ボックスから出た。
竜作「あっ、俺、ゆうべ言おうと思ったんだけどさ」
健一「なんでえ、ちきしょう」電話ボックスの外から蹴る。
竜作「ああ、俺は今すぐってわけにはいかないけど、やっぱり待っててもらいたいんだ」
健一「なんでえ、こんなの! なんでえ、なんでえ、なんでえ…」電話ボックスの外からたたき続ける。
竜作「ああ、ごめんな。なかなか腹が決まらなくて」
健一「なんでえ! 三枚目じゃねえか、こっちは。なんでえ!」
竜作「ああ、帰ってきたら、すぐ会おう。うん? ううん、前のうちで聞いたんだよ。うん、うんうん、うん!」めちゃめちゃ笑顔だ~。
健一は汗を拭きながら走り続ける。
夜、尾形家。もと子はところてんを作って健一を呼んだが、健一は部屋から出てこない。「ほっといてくれよ! 1人でいたいときだってあんだよ」
もと子「どなることないでしょ! 何よ、いいよ。お父ちゃんと食べるから。誰があんたなんかにやるか。なんや、親をうるさそうにしやがって。ええ? 母ちゃんのおっぱいを飲んで大きくなっておきながら。1人でいたいもないもんだ! しゃらくさいこと言うな!」
階段を下りてきた健一は「父ちゃん、一緒に食べようね」と仏壇にところてんを供えるもと子を見た。
健一「食べるよ、俺も」
もと子「何言うてんの。今頃来て。2階行ってよ、2階」
健一「怒んなよ。こういうときだってあるじゃねえか。母ちゃんだって」
もと子「健一にやんのよそうね。父ちゃんね」
健一「意地悪言うなよ」
もと子「やだよ、やらないよ」
健一「謝ってんじゃないか、俺は」
もと子「いいよ」自分の分を食べ始めるが、やろうか?と自分の皿から一口食べさせたが、あとはやらないと食べ始める。健一が父ちゃんのもらうと仏壇から取ろうとすると、もと子が健一の太もも辺りをバシバシたたいた。(つづく)
もと子は親しい人にはなるべく標準語でしゃべってる感じかなあ? 健一に対しては一番標準語でしゃべってるように思う。今回の左官屋のようにビシッと言いたいときは関西弁が強く出る。
木下恵介アワーではおなじみの池田二三夫さん。テレビドラマデータベースの池田二三夫出演作品は「おやじ太鼓」など9作品が出てくるけど「おれは男だ!」にも出てたんだね。高校生ではなくスナックの従業員。そして「たんとんとん」が最後の作品?
わりとあっさり?くっついた竜作と文子。そば屋は辞めるしかないよなあ(-_-;) 結婚が決まった相手から奪うのは「あしたからの恋」の修一とトシ子みたいだけど、トシ子の相手は全く出てこなかった。益夫みたいに顔が見えちゃうと、益夫側もかわいそうに思っちゃうね。