TBS 1970年11月24日
あらすじ
めでたく結納を済ませた直也(大出俊)と和枝(尾崎奈々)。修一(林隆三)とトシ子(磯村みどり)も順調に仲を深め、正三(小坂一也)も新子(岸ユキ)に対し芽生える恋心を自覚していた。そして、それぞれが幸せをつかんでいくのだった。
2023.12.29 BS松竹東急録画。
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谷口和枝:尾崎奈々…福松の長女。21歳。(字幕黄色)
野口勉:あおい輝彦…直也の弟。大学生。20歳。
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野口直也:大出俊…内科医。28歳。(字幕緑)
井沢正三:小坂一也…「菊久月」の職人。30歳。
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谷口修一:林隆三…福松の長男。25歳。(字幕水色)
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中川トシ子:磯村みどり…修一の幼なじみ。26歳。
中川アヤ子:東山明美…トシ子の妹。
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野口正弘:野々村潔…直也と勉の父。
石井キク:市川寿美礼…野口家に25年、住み込みの家政婦。
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中川ます:山田桂子…トシ子とアヤ子の母。
トメ子:丘ゆり子…やぶ清の店員。
八百屋:原靖夫
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谷口常子:山岡久乃…福松の妻。46歳。
中川家と谷口家の間の路地を掃いているトシ子。
修一「おはよう」
トシ子「おはよう」
修一「朝夕、めっきり冷え込むな」
笑うトシ子。
修一「何だよ、変に笑ってさ」
トシ子「だって、修一さんらしくないこと言うんだもん」
修一「ああ、そうか。決まり文句すぎたかな」
トシ子「でも、ほんと水が冷たくなったわね」
修一「ラーメン食いに来ないじゃないか」
トシ子「だって…」
修一「近頃冷淡だぞ」
トシ子「まあ、そんな…。そのうちアヤ子誘って行くわ」
修一「うん」
修一「ああ、早く来年にならないかなあ」
トシ子「どうして?」
修一「和枝のヤツが直さんと結婚するまでは、こっちはお預けだからな」
トシ子「それでちょうどいいのよ。ほとぼりも冷めて」
修一「世間のことなんか気兼ねすることないじゃないか。バカバカしい」
トシ子「つまらない噂話の種になるのイヤなの。だから我慢して、ねっ?」
修一「ああ、我慢してますよ」
トシ子「フフフッ」
⚟ます「トシ子!」
トシ子「はい!」
修一「じゃあな」と路地を引き返して歩きだす。
トシ子「修一さん。菊久月に用じゃなかったの?」
修一「いや、なんとなく来てみただけさ。ひょっとしたら誰かさんの顔が見られるかと思ってね」
トシ子「まあ、フフッ」
修一「今から仕込みだよ。風邪ひくなよな」
冒頭から修一&トシ子のシーン、ありがとう!
ますが家から出てくる。「何してんの? いつまでも」
トシ子「もう終わったわ」
ます「ここは風が通り抜けるから寒いね」
トシ子「あら、そうかしら」ほうきを片づけて家の中へ。
ます「寒さなんて感じないのかね。あの子は」
裏口から正三が出てくる。
ます「あら、正三さん、おはよう」
正三「おはようございます」
ます「ねえ、和枝さんのお式の日、決まったの?」
正三「いや、まだですよ。今日も奥さんがキクさんと待ち合わせていろいろ当たってみるらしいけど」
ます「そう。たいへんだこと。お店のほうも忙しそうだし」
正三「まったくみんな浮足立っちゃって」
ます「ハハハッ」
正三「お宅も早くなんとかしちゃってくださいよ」
ます「えっ?」
正三「裏口が近すぎるんだ。よく聞こえちゃってさ」←聞いてたんだね。
ますはにやっと笑って自宅へ。
キクが出かけるところに八百屋がまたお出かけ?と声をかけた。後ろ姿だけで顔は映らないけど、前の八百屋さんとは違う人なのね。
キク「そうよ。不用心だから時々パトロールしてちょうだいよ」
八百屋「だけど、毎日ウロウロ出歩いて達者だね、おばちゃんも」
キク「当たり前ですよ。お嫁さんが来るまでは頑張らなくちゃ」
八百屋「やりにくいね。若奥様が入ると」
キク「どうせいずれは邪魔者よ。覚悟してますよ」
八百屋「お互いさまかな。お嫁さんのほうだって苦労するよ。おばちゃんいちいちうるさいからね」
キク「何よ、言いたいこと言って、フン」八百屋を自転車ごと突き飛ばす。
すごい年寄り扱い&嫁いびりを心配されてるけど、キクさんは旦那様命の人なので、直也や勉のことは割とどうでもいい。
菊久月
接客している和枝のもとに常子、キクが疲れた様子で店に入ってきた。
常子「6か所も見て歩いて決まったわよ」
和枝「まあ…」
茶の間
福松「春分の日?」
常子「ええ。その日が運良くポッカリ空いてたのよ」
キク「場所も一流ホテルだし、足場も良し。暑さ寒さも彼岸までっていうしね」
和枝「ええ、申し分ありません」
常子「直也さんにもホテルから電話したのよ。そしたら結構だって喜んでくださったわ。いいわね? お父さんも」
福松「うん。まあ、決まりがついてよかったな」
キク「ああ。これから大忙しだわ。早速今夜から家族会議ですわ」
常子「うちでもボンヤリしちゃいられないわ。商売どころじゃありゃしない」
和枝「でも12月に入ると、またお店が忙しくなって」
キク「あら、和枝さん」
和枝「えっ?」
キクは和枝が婚約指輪をしてないことに気付く。
常子「大切にしまってあるのよ」
和枝は客が来たので店へ。
福松「いや、客商売してるとね、まあ、店に出てる間はどうも…」
キク「アハハハッ。そういえばそうね。なかなか買えないダイヤの指輪なんかチカチカさせて店番してられたらよ、お菓子の味より先にカチンときちゃうものね」
常子「お客様第一ですからね。そのかわり時々、自分の部屋へ入って指輪をはめたり抜いたり。和枝もうれしくてじっとしていられないもんだから」
キク「直也さんだって式の日取りのことばっかりよ。でもよかった。3月中に結婚できることになって。私ね、直也さんに恨まれてんだから」
常子「お互いさまよ」
キク「今更誰が邪魔しますかって、ねえ」
常子「ねえ」
作業場
正三「ええ、お彼岸の中日(ちゅうにち)ですか?」
福松「うん」
正三「なんだってまた菓子屋の一番忙しい日に?」
福松「その日だけ空いていたんだ」
正三「ふ~ん。そりゃまあ、お彼岸ですからね、線香臭いと思って遠慮したんでしょうよ、きっと」
福松「バカ。そんなことはかまやしませんよ。大安吉日に結婚したって別れる夫婦はいっぱいいるんだから」
正三「仏滅のほうが式場も空いてて落ち着くとは言うけどね」
福松「そうさ。彼岸の中日は春分に当たるから病院もお休みで直也さんだって都合がいいんだ」
正三「それじゃ、まあおめでたいってことにしときゃいいよ」
福松「なんだ、その嫌みな言い方」
正三「そういうわけじゃないけどね、旦那があんまり憂鬱そうだからね」
福松「商売のことを考えてるんですよ」
正三「ああ、そうですか」
1971年3月21日(日)友引 祝日でもあり、日曜日でもあったのか。翌日は振替休日じゃなかったのかなと思ったら、振替休日が出来たのは1973年からだそうで。
キクが帰ろうとしていた。
福松「ごやっかいをおかけしまして」
キク「いいえ。それじゃ細かいことはまた日曜日にね」
常子「ええ」
キク「ちょっと正三さん。あんた、新子さんの写真見せてよ。しょっちゅう持って歩いてるって聞いたわよ」
正三「やだな。誰がそんな…いや、平凡な女ですよ、田舎者(もん)で」
常子「とんでもない。かわいい娘さんなのよ、利口でね」
キク「ええ~、正三さんにそんないい子がねえ」
正三「やんなっちゃうなあ。まだもらうって決めたわけじゃないのに」
福松「バカ。もったいぶらずに写真を出しなさい。朝から晩までしょっちゅう見てるくせして」
正三「冗談じゃないよ。迷ってるから見てるんじゃないか」
キク「どら? ほんと、もったいないような娘さんね」
常子「でしょう?」
正三「もったいないもったいないって感じ悪い」
キク「(写真を正三と並べて)お似合いよ。へえ~、イカすわよ」
正三「そうですか?」
キク「うん。丈夫そうでいいわ」
正三「丈夫そう?」
常子「いや、あの…丈夫じゃなきゃ困りますよね」
キク「あら、おいしそうなおまんじゅうね」作業中のまんじゅうを覗き込む。
福松「いや、これが出来るまでにはちょっと時間がかかるから」
常子「他のものを和枝に包ませますよ」と店へ。キクもついていく。
正三「あのおばちゃん、調子いいね。相変わらず」
福松「春の彼岸の中日に店を閉めるのはつらいな」
正三「ケチケチしたって始まらないよ、旦那」
福松「バカ。私はお客様に不自由をおかけするのがつらいと言ってんだい」
正三「ああ、そう」
店から和枝が入ってきてにっこりしながら2階へ。
正三「ほんとは和枝さんをお嫁にやるのが惜しくなったんでしょ?」
福松「冗談じゃありませんよ。娘にいつまでも店番をしていられたら親は苦労なもんだ」
和枝は自室で婚約指輪をはめて鏡に向かってニコニコ。
アヤ子が部屋に入ってきた。「まあ、また見てんのね?」
和枝「びっくりするじゃないの。先になんとか声をかけるもんよ」
アヤ子「声なんかかけたって分かるもんですか。のべつボーッとしてるんだから」
和枝「いいわね、ダイヤって」
アヤ子「ダイヤじゃなくてエンゲージリングがでしょ?」
和枝「両方よ」
アヤ子「まあ」
和枝「ああ、幸せだ」
アヤ子「フン」
和枝「アヤ子、いいの? お店番」
アヤ子「うん。お姉さんが戻ったからね。時々は息抜きさしてもらわなくちゃ。和枝こそ下でおばさんハァハァ言ってたわよ」
和枝「悪いと思ってるんだけど。私だって時々はここに座って、ひっそりとあの人のことだけ思っていたいわよ」
アヤ子「お邪魔さま」
和枝「それはそうとトシちゃんと兄さんどうなってんの? このごろ、どさん子にもめったに顔見せないようだけど」
アヤ子「お母さんがうるさいのよ。やっと婚約を解消したところだし修ちゃんとのことは正式に決まるまで噂になっちゃいけないって」
和枝「だって両方の親も承知したんだし、いいじゃないの。公表したって」
アヤ子「そう思うんだけど、お宅は今、和枝のことで手いっぱいでしょ? 結納だって直也さんと和枝のお式が済んでからっていうことになってるし」
和枝「悪いわね、なんだか」
アヤ子「それでね、私、考えたんだけど、この際、修ちゃんと姉さんのこと結納はあととしても近所に発表しちゃったほうが、お互いモヤモヤしなくていいんじゃないかと思うんだ」
和枝「発表って?」
アヤ子「あのね、お宅のお母さんに和枝からうまく話してくれない?」
和枝「何を?」
アヤ子「絶対よ、これは」
和枝「?」
どさん子
店に来た直也。勉も働いている。「なんだ、兄さんか」
修一「今日は早いんだね」
直也「うん。キクさんから電話があってね、家族会議を開くから勉を連れて一緒に帰ってくれっていうんだ」
勉「また家族会議か。もうあらかた決まったんだろ? あとは適当にやってくれよ」
直也「キクさんいやに張り切ってるだろ。うるさいぞ、そろわないと」
修一「直さん、なんか作ろうか?」
直也「いいや、まだ」
修一「だって病院の帰りだろ、腹減ってないの?」
直也「あとでいいよ」
修一「そう」
勉「家族会議って何を相談すんだろう?」
直也「僕と和枝さんがどこに生活の場を持つかってことで、親父さん気にしてるんだろうな」
修一「そりゃ、お父さんのうちがあるんだし、当然一緒に暮らすつもりでいるよ、和枝は」
直也「ん~、それじゃ和枝さんがかわいそうだよ」
勉「ヘッ、惚れた弱みだ」
勉が家を出てアパートを借りる予定。それが一番安上がり。勉一人なら4畳半1間でいい。
直也「あっ、お前、キクさん連れて一緒に出ないか?」
勉「冗談じゃないよ、何言ってんだ。ああ、びっくりした。息の根が止まったね、一瞬」
直也「ハハッ、大げさだよ、お前は」
勉「ギョッとして当たり前だろ。マンションでも買ってくれんなら別だけど。キクさんなんてとんでもないね」
直也「マンション買うぐらいなら僕と和枝さんと住むよ」
勉「あっ、そうだ。それが一番いいよ。無理しなよ、なんとか」
直也「いや、アパートならともかくマンションなんて非現実的すぎるよ」
くわえたばこで大きくうなずく修一。
橋田ドラマだと割と簡単にマンション買っちゃうよ。
直也「で、修一さんはどうなの? やっぱり結婚して菊久月に住むってわけ?」
修一「ええ、そのつもりですよ。どっちみち菊久月をビルに改造して、その3階を住まいにすることになるだろうけど」
勉「ああ、そう思ったら思い切って出ちまえばいいのに。トシ子さんも大変だろう、そう言っちゃ悪(わり)いけど。お宅の親父さんも相当うるさそうだし」
直也「フッ、うちのキクさんほどじゃないけどね」
修一「親父、あれで嫁さんには甘いと思うんだ。それに直さんとこと違っておふくろさえそばにいりゃご機嫌のほうだから」
勉「そうそう、それが菊久月の親父さんの泣きどころだよね」
はあ…最終回まで福松と勉のシーンはなかったか。
直也「だけど、トシ子さんの実家がすぐ隣だろ? それがまた難しい問題になる場合があるね」
修一「いや、トシちゃんはね、和枝と違って利口だから大丈夫だよ」
勉「へえ~、そうですか」
直也「何言ってんだ。和枝さんだってうちの親父やキクさんとはうまくやってくよ。な何しろ性質が素直だからね」
勉「ほう、和枝さんが素直でございましたかね」
修一は笑い、直也は「バカ」と怒鳴る。
和枝が来店。
直也「ああ、腹減った。なんでもいいからジャンジャン頼むよ」
修一「無理して待ってたんだな? 直さんも甘いよ。こんなの待ってることないのに」
和枝「何よ。こっちも兄さんのためにいろいろ苦労してるのに」
ますが自宅を出て路地から菊久月の表に回る。菊久月の店番をしてるのはトシ子! 外で接客の様子を見ていたますは客が帰ったタイミングで店の中へ。「お前、どうしてるかと思って、もうもう、気になって気になって」
トシ子「大丈夫よ、イヤね」
言っちゃ悪いけど、膝の出るスカートで文房具屋の店番より、和服で和菓子屋の店番のほうが似合うよ、トシちゃんは。
ます「立ちづめで足が冷たいだろ?」
トシ子「そんなこと、うちの店にいたって同じじゃないの」
ます「でもやっぱり気を遣うからね」
トシ子「平気よ。おじさんや正三さんが時々様子を見に来て、お茶に呼んでくれたり」
ます「そう。そんならいいけど。まあ、こうして留守番にお前が菊久月に来てるってことは、ご近所にご披露してるようなもんだからね」
トシ子「修一さんに叱られないかしら」
ます「知らないんだろ? まだ」
客が来たので、ますは帰った。
トシ子はお遣い物だという男性客にかのこや柚子しぐれを勧める。
こんな感じのヤツかな。
どさん子
トメ子「修ちゃん、とうとうやったわね」
修一「何を?」
トメ子「とぼけないでよ。秘密結婚したんでしょ?」
修一「バカ。さっさとお前、出前してこい」
トメ子「菊久月のお店、座らせちゃって。ええ、ええ、ええ、ええ。お似合いですよ! こうなりゃトメちゃん、女らしくスッパリ諦めるわよ。おめでとうございました~だ。べーだ!」
カウンターに客もいるし、勉もいるのにお構いなしにしゃべって出ていった。修一は勉に店を任せて、どさん子を出た。
菊久月
修一「なんだよ、店、空っぽじゃないか」
トシ子「いらっしゃいませ」
修一「トシちゃん」
トシ子「あの…お留守番なの。おばさんに頼まれてお昼から」
修一「あっ、そうか。トシちゃんが菊久月の店番を。そうか。そりゃ大変だ。ご苦労さまです」
トシ子「やだわ、そんな…」
笑い合う2人。
修一「いや、だけどまさかと思ったよ。とってもいいよ。すごくいいよ」
トシ子「そう? でも慣れないから」
修一「ぴったりだよ。和枝よりずっといいよ」
作業場と店の間ののれんからじっと見ている正三。
トシ子「まあ、フフフッ。母もさっき様子見に来たの」
修一「ふ~ん」
作業場にふてくされて戻ってきた正三。「旦那。俺、修ちゃんが結婚する前に結婚するよ。いいね?」
福松「ゴジャゴジャ言うんじゃない。今、お前のことまで考えてられますか」
正三「だってさ、あれじゃとっても独り者はバカバカしくて働けやしない。大体ここんちは娘も息子も甘すぎるんだよ。菓子屋のせいかね?」
福松「バカ。結構な話じゃないか」
正三「親に似たんだね。ベタ惚れするとこなんか旦那にそっくりだ」
福松「うるさい!」
野口家
常子「直也さんと和枝さんをよそへ住まわせるっておっしゃるんですか?」
正弘「2部屋ぐらいのアパートでも借りたらどうかと思ってるんですよ」
直也「そんな必要ないんじゃないの? このうちだって僕の部屋改造すれば十分住めるんだから」
キク「そうですよ。勉さんが出たほうが安直に済みますよ、旦那様」
和枝も常子も同居でいいというが、正弘は私のわがままだと思ってそうしてほしい、2~3年子供ができるまででもいい、いつまでもというわけじゃないと話す。キクは2部屋でバストイレ付きのアパートは安くないと反論する。直也も2万はするという。
正三の住むアパートは6畳と3畳で1万5000円。
正弘は更に和枝に結婚後も菊久月のお手伝いに通ったらどうかと提案する。「結婚してすぐに家庭にだけおさまってしまっちゃ菊久月のご両親も寂しいだろう」と話し、直也も同意し、和枝や常子も喜ぶ。
常子、和枝、トシ子でシフト制にして、トシ子が時々は文房具屋も手伝ったらどうだろう??
キク「旦那様。そういうことになりますと私はまだまだ気を抜くわけにはいきませんね」
正弘「もちろんだよ。キクさんには張り切ってもらわなくちゃ」
キク「やれやれ、楽はできませんね」と席を立つ。
直也「お父さん、キクさんのことも考えたんでしょ?」
正弘「うん。それもあるけどね、お前と和枝さんには2人だけの生活ってものを味わってほしいと思ってね」
和枝「失敗ばかりしますわ、きっと」
直也「ケンカもするぞ。遠慮なくやれるからね」
常子「まあ!」
正弘「いや、大切なことだよ。2人で新しい生活の第一歩を踏み出すことは泣いても笑ても、これ以上幸せなことはないだろうしね」
常子「お前、こんなに大切に思っていただいて、お母さん、もう何も言うことないわ。どうぞ末永くよろしくお願いいたします」
正弘と妻はどんな経緯でキクを雇ったのだろう。キクは25年家政婦をしているので直也3歳、勉の生まれる前から野口家にいる。直也たちの母の体が弱いとかそんなのかな?
どさん子
修一はラーメンを出し、勉は電話をしていた。「木曜の5時だね? あの公園で。いや、吹きっさらしで寒いぞ」
桃子「弱虫ね。体を鍛えなさいよ。大きなことやるには体と度胸よ」
勉「それに頭だろ? ケーキのほううまくいってんの? ええ?」
桃子「だから木曜日に食べさせてあげるわよ。おなかすかせといて」
勉「ああ、期待してますよ。おなかすかしとかなきゃ喉通りゃしない」
桃子「まあ、失礼しちゃうわ、おやすみ」通話が切れる音
忙しい岡崎友紀さんをなんとか声だけ出演させたんだね。
勉「ハハッ。すぐ頭にきちゃうんだから」
修一「桃子のヤツも疲れてんだ。夜間まで粘って何かやってたらしいから」
勉「彼女も菊久月の娘だね。根性があること」
修一「惚れた弱みでね。好きなことには命懸けなんだ」
勉「ヘヘッ、僕もいっちょ見習ってやるか」
トシ子来店。
修一「おう、どうした?」
トシ子「おばさん帰ってみえたのよ」
修一「うん、そうか。疲れたろ? 隅に掛けて」
トシ子「ありがとう」
勉「ヘヘッ。惚れた人のためなら命懸けですからね」
トシ子「えっ? なんのこと?」
客が帰ったので「はい! どうもありがとうございました」と遮る修一。「来月は師走だ。菊久月もどさん子も命懸けで商売するってこと」
トシ子「手伝うわ、私」
修一「うん」
どんぶりを片づけるトシ子を見ている修一。
茶の間
福松「このうちの改築を始めるなら和枝の結婚式が済んでからだな」
常子「修一の思うようにやらせてくださいね」
福松「いや、菊久月の和菓子さえ立派に続ければいいよ」
常子「和枝もトシちゃんも正三さんのお嫁さんもみんな手伝って、この菊久月をもり立ててくれますよ」
福松「10年もすれば桃子の作った洋菓子も売ることになるか」
常子「フフフッ。2階を喫茶にするっていうから役に立つかもしれませんよ」
福松「いやあ、若い者が入ってくるとこのうちもだいぶ変わるな」
常子「変わんないのはきっとあなたぐらいなもんね」
福松「当たり前ですよ。大黒柱がそう変わってたまりますか」
常子「そうね。ん~肩が凝っちゃった」
福松「もんであげますよ。なんだ、当てつけがましく」
常子「だって、ほんとにカチカチなんだもん」
福松「いや、お前さんは要領が悪いから」常子の肩を揉む。
常子「ああ、いい気持ち。悪いわね、大黒柱にもませちゃって」
福松「調子のいいこと言って」
常子、笑ってはいるけど、痛そう。
10年もするとというけど、進藤英太郎さんは7年後には亡くなってるんだよな。ついでにおキクさんもおますさんも。
スナック
トワ・エ・モワ再登場。
♪或る日突然 二人黙るの
あんなにおしゃべり していたけれど
いつかそんな時が 来ると
私には わかっていたの
或る日じっと 見つめ合うのよ
二人はたがいの 瞳の奥を…
しかし、なんでiTunesにはトワ・エ・モワの「或る日突然」がないんだ!?
直也「ねえ、新婚旅行はどこにしよう?」
和枝「どこでも」
直也「君さえよかったら月並みだけど京都、奈良に行こうか」
和枝「すてきじゃない」
直也「大和には古代の道がまだ残ってるだろ?」
和枝「ええ」
直也「そんな道を君と2人で歩いてみたいんだ」
和枝「楽しいでしょうね」
直也「仕事に戻るとなかなかそんな機会はないからね」
和枝「私…ほんとはあなたと2人だけで生活したかったの。だから、今日、おとう様がアパートで暮らしたほうがいいんじゃないかっておっしゃったとき…恥ずかしくて」
直也「親父さんは自分がしたくてもできなかったことを僕たちにはさせたいと思ってるんだ」
和枝「うれしかったわ。私、きっといいお嫁さんになるつもりよ。おとう様をうんと大切にするわ」
直也「困るよ、それは」
和枝「えっ?」
直也「旦那がひがむぞ」
和枝「知らない」
直也「うんと幸せにするよ」
うなずく和枝。
直也「だけどね、君。僕のためにも反抗精神だけはなくさないでくれよね」
和枝「まあ」
2人で笑い合う。
♪ただの友だちが その時かわる
谷口家茶の間
直也と電話している和枝。「まあ、当直なの? じゃ、今夜お会いできないわね」
直也「寂しいね、なんだか」
和枝「ええ、とっても。お夜食持って病院へ行きましょうか?」
福松「夜食の心配より朝飯だよ。箸もつけずに電話にかじりついて」
常子「いいじゃないの、仲が良くて」
福松「良すぎますよ。うるさくて、もう」
和枝「そう、お昼休みに? じゃあ、待ってますわ。何か作っとこうかしら。すぐに食べられるもの何がいいかしらね?」
福松「握り飯でたくさんですよ」
和枝「お父さん、静かにしてよ」
福松「はい、分かりました」
和枝「ごめんなさい。雑音が入っちゃって」
ご飯を吹き出す福松。それを見て笑う常子。
菊久月
接客している和枝のもとに直也が訪れた。奥から出てきた常子も会釈をして下がる。
路地ではほうきを持ったトシ子とゴミ箱?に座った修一が話していて、たばこをくわえた修一がトシ子が火をつけるのを待つ。トシ子がポケットに入っていたマッチに火をつける。しかし、何度か描写のあったカップルの女性が男性に火をつけてあげるのどうかと思う。どさん子では修一が直也に火をつけてあげたりしてたけどね。
オープニング曲の混声バージョンが流れる中、作業場が映り、正三に小言を言う福松。歌声が流れているため、会話音声はオフ。最後に聞かせてよ~。
菊久月を出て並んで歩く和枝と直也。(終)
いや~、面白いドラマだったなー!
前回と今回、修一&トシ子のシーン多めで嬉しかったけど、もう一つ贅沢言わせてもらえば修ちゃん&正ちゃんのシーンがないのがちょっと寂しかったな。
リアルタイムだと次は「二人の世界」。そのままやってたらまた小坂一也さん登場で盛り上がっただろうな。あおい輝彦さんの出演連続記録も途切れ、今度は「たんとんとん」。山田太一脚本ということで楽しみにしてます。
たまたま見つけた1970年のの竹脇無我さん&進藤英太郎さん。
1970年1月~9月放送 ドラマ版「姿三四郎」
主演は竹脇無我さん。「おやじ太鼓」第2部と「二人の世界」の間の時期。かっこいいなあ~。21話から山口崇さんも出演してるらしい。進藤英太郎さんの和尚はどのくらいの露出だったんだろうか。「あしたからの恋」とかけもち。
1970年7月25日公開。映画版だと尾崎奈々さんがヒロインかな? しかし、洋風な見た目なのに和服を着るような役が多かったのはなぜなんだろう?