徒然好きなもの

ドラマの感想など

【ネタバレ】たんとんとん #3

TBS 1971年6月15日

 

あらすじ

一軒家を建てる予定だった客が仕事を断りに来た。棟梁がいない今、尾形家に仕事を任せることが不安だという。そこで、腕の立つ大工を入れることを条件に客を説き伏せる。

君のいる空

君のいる空

  • 森田 健作
  • 謡曲
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

2024.1.8 BS松竹東急録画。

peachredrum.hateblo.jp

尾形もと子:ミヤコ蝶々…健一の母。字幕緑。

尾形健一:森田健作…大工見習い。字幕黄色。

*

江波竜作:近藤正臣…大工。

生島とし子:松岡きつこ…新次郎の15歳下の妻。

*

中西雄一郎:中野誠也…新築の家を依頼してきた。

福田先生:曾我廼家一二三…健一の高校の担任。

*

堀田ゆり子:丘ゆり子…堀田の娘。

中西敬子:井口恭子…中西の妻。

磯田:岩上正宏…健一の友達。

*

堀田:花沢徳衛…棟梁。頭(かしら)。

*

生島新次郎:杉浦直樹…健一の父の下で働く大工。

 

オープニング曲が時代劇っぽいと旧ツイッターで見かけたけど、木下忠司さんは数多くの時代劇の音楽も担当してるのね。この歌もそうだった。

ああ人生に涙あり

ああ人生に涙あり

  • 杉 良太郎
  • 謡曲
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

それと、1、2話はキャストクレジットなどの文字がオレンジだったけど、緑になった。イラストの線がちょっと濃いめだからかどちらの色も微妙に見づらい。

 

尾形工務店の車を洗っている健一のもとに堀田が来た。「おっ母さん、どうしたい?」

健一「ああ、台所で何かやってたけど」

堀田「そうか。元気が出てきたかい?」

健一「ああ…元気っていうのかなあ」

堀田「まあな。弔いが済んで3日目じゃ元気ってわけにもいかねえやな」

 

健一「なんか用?」

堀田「ああ? うん…実はちょっとどうしようかと思ってんだがな。うん」

健一「イヤなこと?」

堀田「いや。まあ、しかし…とにかくここまで連れてきて会わねえで帰(けえ)すわけにもいかねえしな」少し離れた場所に立って待っている中西夫婦に「じゃあ、まあ、とにかくどうぞ」

 

健一「頭(かしら)」

堀田「ああ?」

健一「仕事のことなら俺に聞かせてくんないかな?」

堀田「そんなこと言ったって、お前…」

健一「分かんないことは取り次ぐよ。(中西夫婦に)あっ、いらっしゃい、どうぞ!」

 

堀田「お…おい、健坊! おめえの気持ちは分かるけどもよ」

 

健一は外から事務所に移動。「頭、今、座布団持ってくるよ」

堀田「いや、座布団なんかいらねえよ」中西夫婦も後に続く。

 

中西は貯金と借金でやっと建てるのだと堀田に言う。

堀田「分かってますって。断るってのは」

 

健一は押し入れから座布団を出してきた。「どうぞ狭いですけどどうぞ」

 

中西「お父さんがとんだことでしたね」

健一「はあ、ありがとうございます」健一は中西夫婦に椅子に掛けるよう勧める。「で、どういうご用件でしょうか?」

 

堀田「あの…おっ母さん、座敷か?」

健一「うん、2階らしいよ。俺じゃいけないのかい?」

堀田「まあ、水を差すようなことは言いたかないけど、おめえはまだ高校生だ」

健一「やめたよ、高校は」

堀田「ああ、そうだってなあ。昨日、届け出したんだって?」

健一「大工だよ、俺は今日から」

堀田「そう言ったって、お前。先生がああそうですかって受け取ったわけじゃねえだろう」

健一「とにかく受け取ったよ」

堀田「今日あたり連れ戻しに来るぞ。あっ、今日は日曜か」

 

健一「お客さん」

中西「は?」

健一「これは俺の…いや、わたくしの勝手な憶測ですけど、親父が死んだんで仕事を断りに来たんじゃないんですか?」

堀田「おい、健坊。そういうことを正面切って言っちゃいけないよ」

健一「いや、当たり前だと思いますよ」

堀田「いや…人の不幸のときにゃ、そういうことは言いにくいもんだよ。こちらさんだってそういうことを気にしいしいいらしってんだから」

健一「分かってるよ」

 

中西「私たちもなけなしの金をはたいて借金して、やっとうちを建てるもんですからね。こう言っちゃなんですが、少しの金でも大切なんですよ」

堀田「棟梁がいなくなったら、ここんちは新さん一人だ。おめえがいくら張り切ってみたところで、ここでうちを1軒建てるってのは、ちょっと荷が重すぎらあな」

中西「行きがかりで無理をしてもらっても、いいものは出来ないと思うんです。ホントに心苦しいんですが、お断りしようと思って」

堀田「だけどな、健坊。こちらさんは別に契約したわけでもねえし、親父さんにだって会ったこともねえくらいなんだ。それをわざわざこうして足を運んでくだすったんだ。こっちから礼を言わなくちゃならねえくらいなんだぜ」

健一「確かに新さんと俺じゃ親父と同じ仕事できないよ」

 

堀田「なあ、おっ母さん呼ばねえかい?」

健一「だけど、頭…お客さん。俺と新さんで他の大工に頼むよりはずっと立派な家を建てますよ」

堀田「そんなこと言ったって、お前…」

健一「親父にはかなわないかもしれないけど大会社や他の大工には絶対に負けない家を建てさせてもらいます。お願いします。やらせてください」

 

物干し場から聞いているもと子。

 

堀田「なあ、健坊。お前の気持ちは分かるけどもよ。やっぱり無理はいけねえやな」

敬子「私たちがどんなに苦労して、お金をためたかご存じですか? そりゃ、あなたの目から見れば、むごいような気がするかもしれませんけれど。こういうことは感情を抜きに冷静に考えてもらわなくちゃ困ります」

 

そうだねえ、今までの木下恵介アワーで若夫婦で一軒家建てるような人たちは出てきたことないもんねえ。多分20~30代のカップルなんだろうな。

 

もと子が階段を下りてきた。「いらっしゃい」

堀田「あっ、あねさん」立ち上がり、中西夫婦も立ち上がる。

もと子「どうもいらっしゃいませ」手をついてあいさつ。

堀田「店っ先で勝手にワイワイ言ってて悪かったなあ」

もと子「いえ、大体のお話はちょっとあそこで聞かしていただきました」

 

中西「この度は突然のご不幸でどうもご愁傷さまでございます」

もと子「ありがとうございます。まあどうぞ、お掛けになってください」

中西「はあ」

 

堀田「いえね、こちらの奥さん5カ月だもんだからね。このまま普請が延び延びになってるってえとアパートで赤ん坊育てなくちゃならねえことになっちゃ、なんにもならねえってんでね。まあ、そういう心配もあって、その…結論を急いでなさるんだよ」

もと子「そりゃごもっともやと思います。それでも、この健坊がどうしてもうちでやらしてほしいとお願いするのは、ただ興奮だけして言うてんのやないと思います」

堀田「いや、そりゃそうだけどもさ」

 

もと子が中西に話しかける。「亡くなりました棟梁がいつも言うておりました。小さい家ほど念入りに建てないかん。有り余ったお金で建てはんのやない。それこそ隅々まで思いのこもったお金で建てはんねんから大工はその予算で最善の仕事をせないかんと、いつも申しておりました。どういうご縁か、その棟梁が残していった仕事が、おたくさんのご夫婦だけのおうちでございます。そりゃ、この子が弔い合戦にええうちを建てたいなっちゅう気持ちは私には分からんことはございません」

 

山田太一ドラマはセリフが長いんだな。「あしたからの恋」は短いセリフのやり取りが多かった。

 

敬子「そりゃ、お気持ちはよく分かりますけど」

もと子「はい。無理なこともよう分かっております。そりゃ坊主1人と大工1人では家は出来んとは言いませんが長引きます。それではおたくさんにもご迷惑がかかりますやろ。せやから腕の立つ大工を1人、入れます。そして、一生懸命やりますよってに、どうぞこの仕事うちでやらしていただくわけにはいきませんやろか?」

「…」

もと子「そりゃビジネスやから冷静にならないかんと言われたらひと言もございません。そりゃ私の言うてることは冷静やないかも分かりません。でも、家というものは冷静だけで建つもんではございません。気持ちでございます、はい。あっこはどうしよう。あそこの節はどうして隠そう。あの野地板は見えんとこやけど、これを使わないかん。あれを使(つこ)うてみよう。マシな大工やったら今、建ててるうちに一生懸命打ち込むのがホントやと思います。主人が死にまして初めての仕事です。今までよりうんと思いがこもっております。腕の至らんところは気迫で補います。どうぞ、この仕事、私ども親子にお任せ願うわけにはいかんでしょうか?」

健一「お願いします」

 

初めて家を建てる若夫婦にはちょっとむごい仕打ちだな…(;^_^A

 

久しぶりの通販生活の薄焼いわしは香山美子さんバージョン。そういや、「たんとんとん」が始まってからミサワホームのCMが入るようになった!?

 

新さんの家を堀田が訪れた。とし子はあおむけになって寝ている。こたつだと思ったけど夏だった。布団かけて寝てたんだ。新さんの家は扉の感じからしてアパートみたい。

堀田「あれ? 開くじゃねえか」

とし子「頭?」

 

堀田は新さんが今日は現場にも来ないし、下小屋にも現れないから具合でも悪いのかと聞きに来た。

とし子「だって、今日は第2日曜でしょ?」

堀田「そりゃそうだけどもよ。ここんとこ葬式やなんかでだいぶ潰れた日が多いから休みを返上してやろうって言ったのは新さんなんだぜ」

とし子「私そんなこと知らないもん」

 

水一杯ごちそうになると言うなり家に上がり込む堀田。

とし子「新さんね、私一人んとき、男の人入れると嫌がるんだけどね」

堀田「ハハハッ。たまに俺が来たんだ。玄関で立ちっぱなしにさしとくほうが怒るよ、きっと」

とし子「ハァ…また競輪かしら」

堀田「ええ? 朝、なんて言って出てったんだい?」

とし子「勝手にパン食べて出てったから」

 

堀田「相当な悪妻だね、あんたも。で、今まで寝てたのか?」

とし子「私、低血圧でしょ。午前中はダメなのよ、体質的に」

堀田「あれ? 子供がいねえじゃねえか」

とし子「ううん、寝てんのよ。押し入れで」

堀田「押し入れで? この陽気にかい」

とし子「私ね、一緒になると蹴っ飛ばしちゃうのよ、だから」

堀田「だって、押し入れん中じゃムンムンしてしょうがないだろ。あんな暗闇で汗かかせといちゃかわいそうだよ、そりゃあんた」

とし子「大丈夫よ。このアパートはコンクリートだからムンムンなんてしないのよ」

堀田「それにしたって、もう少し開けて風入れてやんなよ。あんな閉めた押し入れ放り込んどいちゃ体によくないよ」

とし子「おじさんも変わってるわね」

堀田「そう言ったって気になるじゃねえか」

とし子「人のうち来てね、子供の寝る場所の心配なんかしなくたっていいでしょ」

 

子役の子が出られないから? それにしたってねえ。

 

堀田「おい、こら!」

とし子「何よ?」

堀田「てめえの亭主がどこ行っちゃったかも分かんねえで朝っぱらからグーグー寝てられたんじゃ気に入らねえな、こっちは」

とし子「関係ないでしょ、おじさんには」

堀田「関係、大ありだよ! いいかい? 今、尾形のうちはね、お前さんとこの亭主を中心にして棟梁亡きあとの再出発をしようとしてるときなんだぞ」

とし子「うちの人は人がいいからね」

堀田「そんなこっちゃねえんだよ! 新さんが人がいいから尾形のうちでそれを利用しようなんて、そんな話じゃねえんだよ。棟梁亡きあとみんなが心を一つにして、いい工務店にしていこうじゃねえかって言いだしたのは新さんなんだよ」

とし子「すぐ調子のいいこと言うのよ」

堀田「しかもあねさんがだ、腕の足らねえところは気迫で補っていきましょうってんで新築を1軒引き受けちゃったとこなんだ。そんな肝心なときに新さんがどこ行ったか分からねえで周りの者はどうしたらいいんだい。健坊だってかわいそうじゃねえか」

とし子「私に言ったってしょうがないじゃないよ!」

堀田「女房がしっかりしてりゃ亭主の働きが違ってくるんだよ! 全然」

 

とし子「ああ、あの人ね、私のこと自慢してんのよ。どこ行ったって」

堀田「チェッ! そこが新さんのいじらしいとこじゃねえか。逆に出てあっち行っちゃ褒め、こっち行っちゃ褒めしてるうちには、なんとか本当にいい女房になりゃあしねえかと思って…」

とし子「帰ってよ、おじさん!」

堀田「何だい? そりゃ」

とし子「私のいいとこ知りもしないくせに勝手なこと言わないでよ!」

堀田「私はね、お前さんたちのためを思って…」

とし子「夫婦っていうのはね、微妙なのよ。私のいいとこは新さんにしか分かんないのよ」

 

あきれる堀田。「分かったよ」

とし子「何よ。亭主がいいって言ってんだから、なにもはたでケチつけることないじゃないのよ、ホントに!」

 

自己肯定感高めでいいと思います。

 

作業場

カンナの刃を研ぐ健一。

磯田「へえ~、やっぱりカエルの子はカエルだな」

健一「大工ってのはな、道具の手入れをできねえようじゃ先へ進まねえからな」

磯田「ヘヘッ、一人前じゃないか、結構」

健一「別にね、しごくヤツがいなくたって俺にやる気がありゃ問題ねえんだよ、まったく」

磯田「いいよな、お前は。俺もさっぱりやめたいよ。親の見栄とは言いながら、できねえのに、このうえ4年。まだ勉強するのかと思うと気が重いよ」

健一「適当に遊んでりゃいいのさ」

 

健一たちの通う高校ってよほどの進学校なの?

 

そこにもと子がやって来た。磯田も挨拶する。

健一「何だい、飯かい?」

もと子「お前、なんだねえ。お父さんの仕事、もう少し見てると思ったがね」

健一「違うのかねえ」

もと子「お前ね、両膝上げて、こんな研ぐ大工なんか見たことないよ」

健一「ヘヘッ。そろそろ元の母ちゃんに戻ってきたな」

もと子「当たり前や。安心して泣いてられるか」

健一「どうすんだい?」

 

もと子「どんくさいヤツだなあ、見てろよ。第一、お前、こんな両膝上げてどうすんだよ。見てなさい、母ちゃん、やってやるから」腕まくりして着物を股に挟む。

 

健一「仁義切るみたいだね」

もと子「バカ、仁義じゃないよ。見てなさいよ、こうしてこのね、こっちの膝をつくの。こうつくの、ここへついちゃうの。で、こっちの膝を中入れるんだ。ねっ? で、体を安定さす。そして、こうして大きく、こう…こういくんだよ。なっ? やってみろ、いっぺん」

健一「うん」

もと子「お前、なんか格好悪いんだよ、お前。足を出すなっちゅうねん、もう。足が少し長いんじゃないか? お前。そう、そうして、ほらこうして後ろから突かれても大丈夫だろ?」

健一「ああ…母ちゃんもなかなか知ってるね」

もと子「大工の女房を21年もやってたんだからね」

健一「ヘヘッ、なるほどね」

 

もと子「どうでもいいけど新さんっていいかげんな男ね。お前をしごいてやるとかなんとかいい格好言いながら何時になっても来ないじゃない」

健一「日曜だからうっかりしちゃってんだろ」

 

もと子は健一と話すときは意識的になるべく標準語をしゃべろうとしてる感じかなあ? まだ法則性がつかめてないけど努めて標準語っぽくしてるところがある。

 

福田「こんにちは」

磯田「あっ、先公だ」と隠れる。

 

担任の福田先生が尾形家を訪ねてきた。

 

磯田「引き止めに来たんだぜ」

健一「冗談じゃねえよ。誰が今更勉強なんかできるか」

 

仏壇のある部屋

福田「ハハハハ…いや、引き止めるなんてとんでもない」豪快に笑う。

もと子「そうですか」

福田「いや、とんでもないと言っちゃ失礼なんですがねえ。あたくし昨日の晩、つらつら考えましてね。まあ、健一君にとっては、この道が一番いいんじゃないかなと、こう思ったもんですから、まあ激励かたがた、お母さんのお目にかかりに参ったとこういうわけなんです」

もと子「あの子がね、勝手に退学だって決めてしまったもんですから」

福田「いや、お母さん。そこが彼のいいといころですよ、ええ。ちょうだいします」お茶菓子を指さす。

 

もと子「どうぞ。まあ、あの…親の欲目で申しましたらね」

福田「へいへい」

もと子「まああと1年足らずで高校卒なんですから、まあ大学までとは言いませんが、せめて高校だけは出てほしかったんですよ」

福田「いやあ、それはナンセンスだな、お母さん。そんな肩書きなんかね、なんの頼りになりますか。また頼りにするようじゃ困るわけですよ。まあ、多少ね、この…実質でも伴っていれば、まあ高校卒というのも悪くありませんがね。まあ、率直に申し上げますと健一君というのは実に立派に勉強しませんでしたな、ハハハッ」

もと子「申し訳ありません」

福田「いえいえ、お母さん。健一君以下というのがね、まだあんた3人…4人でしたかな? おるんですから」

もと子「はあ」

福田「ええ、それがね、みんなね、生意気に大学行こうってんですよ。お母さん、よくご存じでしょう。健一君とよく遊んでいた磯田という学生ね、こう丸く太った。あれなんかね、実にできないんです。あれが大学へ行こうってんですよ」

 

作業場で聞き耳を立てる磯田はムッとし、健一は思わず吹き出す。

 

福田「それがね、なんとかかんとかどっかへ入っちゃうんですから、これ、いいかげんなもんですよ。ハハハハ…。あたくしはね、健一君の退学につきましては近来にない快事だと思っておりますな。実に爽やかな決心と感じ入りました。かくなるうえはお父さんの遺業を継がれて日本一の大工さんになられんことを陰ながら祈っておりますから、ええ」

もと子「ありがとうございます」

福田「いやあ、こう言っちゃなんだが、父親というものは大したもんだ。実にいいときを選んで亡くなるもんですなあ。息子の修行どき、決心のしどき、そういう大事な時点を過たずにスパーッと死んでぐうたら息子にこの…活を入れる。いや、こう言っちゃなんですがね、いいとき亡くなるもんだ。親というものは、ハハハハ…。もう一つちょうだいします、ええ」お茶菓子に手を出す。

もと子はあきれ顔だけど、怒ってもいいくらいの暴言。

 

笑い声が特徴的な福田先生は「おやじ太鼓」では黒田の前に運転手やってた田村。田村も黒田も息子が健坊なんだよね。

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三保の松原行っても笑いすぎてアゴが外れてたね。

 

健一「あきれた野郎だ、あいつは」

磯田「ちきしょう。俺も学校なんかやめてプロレスでもやるかな、スパッと」と健一を突き飛ばす。負けじと応戦した健一だが磯田の腹に跳ね返された。

 

磯田役の岩上正宏さんは「これが青春だ!」「柔道一直線」「おれは男だ!」等、学園モノにひとりはいるデブキャラみたいな感じ? そのほかに木下恵介・人間の歌シリーズの「冬の旅」や「俄−浪華遊侠伝−」「それぞれの秋」にも出てたみたい。

 

茶の間

堀田「まったくきれいだったな、あねさんは」

もと子「は? フフッ、おおきにどうも」

堀田「大阪から花嫁さんで来たとき羨ましかったな、俺は。棟梁をもうクチャクチャーってメチャクチャにしてやりてえ気持ちだったよ」

もと子「ハハハハッ」

堀田「いい新妻ぶりだった」

もと子「ハァ…でも、もうそんなこと言うてくれはるのは頭しかいないんじゃないかなあ」

堀田「そうよなあ。あの瓦屋の源次郎のヤツもあねさんに岡惚れしてたっけな。おっかないやね、ガンってえのも」

もと子「そうよ。怖いわよ。だから頭も気をつけてね。ゆりちゃんがまだ嫁入り前なんだから」

 

堀田「それだよ。私は今それが一番頭痛いの」

もと子「ゆりちゃんのこと?」

堀田「あんなヤツでも親はかわいいからね」

もと子「どうして? いい子じゃない」

堀田「そりゃいい子。親は分かってんだ。そりゃ親バカ抜きにしてもね。気立てはいいし、思いやりはあるし、ホントにかわいいよ、あの子は。私はあの子のためならなんでもしてやりたいんだ。買いてえ衣装は買ってやる、行きてえ大学には行かしてやらしてんだけど、いまだにあいつはもう不細工な娘とばっかりつきあってんだ」

もと子「まだ若いんだもの」

堀田「いや、まあ、若いからこそ青春の恋の季節を存分に味わわせてやりてえと私は思ってんだ。あねさんの前だけどもね、器量の悪い娘持つと親は苦労するよ、ホントに」

もと子「そんなこと言うもんやないよ。娘が聞いたらどんな気がする?」

 

優しいなあ、もと子さん。

 

ゆり子がパパお邪魔してますか?と訪ねてきた。

堀田「ああ、もうすぐ帰るよ!」

もと子「ごめんね、引き止めちゃってね」

ゆり子「いえ、おばさんとこにいるってことが分かってればいいんですけど」

もと子「今日は一日うちのことで潰してもうたんやからね」

ゆり子「そうですか」

もと子「お母ちゃんに謝っといてね」

ゆり子「はい」

 

ホント、トメ子と大違いのキャラだな~。

 

新次郎が酔っ払って「尾形工務店のおかみさん、ただいま!」と同じく酔っ払いの男を連れてきた。まだ名乗ってもないけど字幕に出てた竜作は近藤正臣さん。

 

酔っ払いの新さんを健一が仏壇のある部屋に運んで寝かせる。杉浦直樹さんの酔っ払いというと「岸辺のアルバム」なんだよな~。大柄の杉浦直樹さんが玄関で寝込んで、妻役の八千草薫さんが苦労して運ぶ。

 

同じく玄関先で寝てしまった竜作にゆり子が声をかけるが返事もできない。

堀田「こう酔ってちゃ、このまま表へおっぽり出すわけにもいかねえんだから」

もと子「新さんもねえ…」

健一「あ~あ、ベロベロだねえ」

堀田「健坊、どこの誰だか分からねえけど茶の間へ引っ張り上げて布団でも掛けてやんな」

健一「ああ」

 

堀田「あねさん、もう2階へ上がって寝たほうがいいよ」

もと子「だって、あんた…」

堀田「いやあ、戸締りは健坊がするし、新さんには俺からよく言っとくから」

もと子「もう、今晩はいいわよ」

堀田「いやいや、私は脇の人間だけどもね、今日ばっかりは酔ってようとなんだろうと、ひと言、言ってやんなきゃ収まらないよ」

もと子「新さんだって別に悪い人じゃないんだから、いいって」

 

堀田はゆり子に先に帰ってるように言う。健一は竜作を運ぶのに苦心している。

 

新次郎が寝かされた部屋に入って行った堀田。「新次郎さんよ、やい、新公!」

うつ伏せで寝ている新次郎。

堀田「お前ね、どういう了見なんだよ? 一体。何が不足でこんな大事なときにどっか一日中、行っちまってたんだよ」

新次郎「いやあ…」

堀田「みんなお前さんを頼りにして、お前さんを中心に棟梁のあとを埋めていこうって張り切ってんじゃねえか。健坊なんか、見ろい。おめえがしごいてくれると思って朝っから下小屋へ入って日がな一日、おめえが来るの待ってたんじゃねえか」

新次郎「そうですか…」

堀田「そういういじらしい気持ちをすっぽかして、なんてザマだい、こりゃ。大体、お前さん、独り身じゃないんだよ。うちへ帰りゃ自慢の若い嫁さんやかわいい赤ん坊までいるんじゃねえか。よそ行ってヤケみてえに酒飲んで歩くようなことは何一つねえじゃねえか。お前さんの周りにゃ。もっともあの嫁さんじゃ幸せいっぱいってわけにはいかねえな。まあ、あの嫁さんじゃ俺でも他行って悪酔いしたくなるかもしれねえや。だけど、仕事は今が一番張り切りどきじゃねえのかい? あねさんだって新さんだけが頼りだって、もっともおめえにしてみりゃなんてったって、ここは人のうちだ。そのうちの請負のためにそうそう頼りにされたってありがたかねえかもしれねえ。まあ、行きがかり上、引き受けちゃったものの、そのためにてめえが一戸を構える時期が遅れる、責任ばっかりが重くなるじゃ酒ぐらい飲まずにいられねえかもしれねえや」

 

話を聞いてしまったもと子は台所へ。ゆり子は帰ったと健一が戻ってきた。

 

もと子「ハァ…どうもなんやね。男っ気がなくなると来る客も厚かましくなったみたいね」

健一「ひがむなよ。新さんだって頭だって女所帯だからといって、そんな図に乗るような人じゃないよ」

もと子「そうね。母さん、気が弱くなっちゃったみたいね」

健一「困るよ。肝っ玉母さんでいてもらわないと」

もと子「ホントだね、ハハハッ」

健一「俺も急いで貫禄つけるからさ」

もと子「ハァ…お前、大工になってくれてよかったわね」

健一「まだなれやしないよ。一日延期だよ。修業はあしたからだな」

もと子「でも、新さんようしごくかしら?」

健一「大丈夫だよ。こっちからもハッパかけてしごいてもらうよ」

もと子「三日坊主はイヤよ」

健一「当たり前だよ。商売だもん。そんないいかげんなわけないだろ」

もと子「そりゃ結構だけどさ」

 

健一「あっ、母ちゃん、白髪だよ」

もと子「ホント? イヤよ、黒抜いちゃ」

 

健一「♪母ちゃん 白髪がありますね」

もと子「黒はイヤよ、黒は、ええ?」

健一「♪たんとん たんとん」

肩たたき

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  • 野田恵里子 & 森の木児童合唱団
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などとじゃれ合っていると、堀田が来て、茶の間にいるやっこは新さんが引き抜いてきたと話した。竜作の社長を一日がかりで口説いて、やっと連れてきた。

もと子「そうだったの」

健一「新さんも考えてんだね」

 

寝っ転がる新さんにお礼を言うもと子。

堀田「ヘヘッ。そうと決まったら少し大事にしてやんなきゃな」竜作の頭の下に座布団を敷く。まだ若そうだが、新さんが連れてくるくらいだから多少腕は立つんだろうと言き、よう!と頭を軽くたたく。

 

竜作「ん~、やかましなあ、ほんまにもう」

堀田「あれ? こいつ上方だよ、あねさん」

もと子「そう?」

堀田「ハハッ、しかしなんだい新さんとこいつと健坊で請負のほうはばっちりだ」

もと子「ホントね」

堀田「ハハッ、よかったな。よかった、よかった。ハハッ。気ぃもんで損したい」

笑いだす堀田に健一も笑顔になる。(つづく)

 

ここの笑顔の健一ともと子が場面写真で見たことある。