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【連続テレビ小説】芋たこなんきん(122)「春のあらし」

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

町子(藤山直美)の秘書の矢木沢純子(いしだあゆみ)が、道で子猫を逃がした少女と出会う。暗がりの隙間に隠れた子猫を捕まえてあげようとする純子に、北野吾郎(RIKIYA)が声をかけ、純子の代わりに子猫を捕らえる。北野の優しさに感激する純子だが、北野は実は、作家・町子を担当する編集者の代役で町子を訪ねるところであった。北野に好感を持つ純子だが、そんな翌日、純子は道ばたで何者かに原稿をひったくられる。

仕事部屋

町子「う〜ん…た…。はあ…。うん」悩みながら原稿に向かう。

 

茶の間

電話している純子。「申し訳ございません。『あと2日だけ』と申しております。はい、よろしくお願いいたします」

 

仕事部屋

町子「う〜ん…」

 

純子「失礼します」

町子「は〜い」

純子「先生、どうぞ」

町子「あ〜、どうもありがとうございます。純子さん、さっき電話鳴ってませんでした?」

純子「大丈夫です。2日、待っていただくようにお願いしました」

 

町子「ごめんなさいね。現に3日も過ぎてしもてんのにね…。あ〜、純子さん」

純子「はい」

町子「あの、今日、誰か新明出版さんが来はるんですよね?」

純子「え〜っと、15時です。松岡さんが出張中の担当の方で北野さんとおっしゃいます」

町子「分かりました。あ〜…。先、食べよ」豪快にサンドイッチを口に放り込む。

 

茶の間

うどんをすする健次郎。

純子「ウフフフ」

健次郎「あ〜。例によって、お尻に火がついてんの?」

純子「はい」

 

健次郎「ハハハハ! あ…そういうたら、お父さん、こっち来はんのそろそろやったね」

純子「そうなんですよ。もう、電話で『病院に行け』って言っても全然聞かないので『大阪に遊びに来がてら』とかいろいろ言って、ようやくしぶしぶ…。大先生にご紹介していただいた病院に行こうかと思っております」

健次郎「うん。不整脈がちょっと心配やしね。まっ、紹介した医専の先輩は循環器系の第一人者やから」

純子「この間、帰った時にはね、体のこと全然言わなかったものですから」

健次郎「ふ〜ん。まあ、検査して大したことなかったら安心やしな」

純子「はい」

 

健次郎「あ、いや、それ僕の…」

純子は健次郎の湯呑みでお茶を飲んでいた。「嫌だ…。うわ〜、すいません! あ…」

健次郎「何やボ〜ッとしてるで」

純子「ちょっと貧血気味で…」

 

受付裏

純子「鯛子ちゃん」

鯛子「はい」

純子「ねえ、これ、おいしいおまんじゅうなの。よかったら…」

鯛子「あ〜、ありがとうございます!」

純子「あれ? ヤブちゃんは?」

 

鯛子「外です。もう『お休み終わる10分前には帰ってきて』て言うてんのに、最近ギリギリなんです」

純子「遠い所まで食べに行ってんのかしらね」

鯛子「ウフフ。実はヤブちゃんね、デートなんです。お昼休み毎日」

純子「え〜!?」

 

鯛子「梅田にお勤めの人で毎日お弁当作って持ってってあげて一緒に食べてやるんです。あのヤブちゃんが」

純子「あのヤブちゃんが! あっ、でもどこで出会ったのかしら?」

鯛子「さあ…。まあ、私は相変わらず自分の分だけ作ってますけど」

純子「あら! 鯛子ちゃんだって、ここでどんな運命の出会いがあるかもしれないわよ。ねえねえねえ、次にあのドアから入ってきた人が独身男性なら運命の人」

鯛子「アハハ! そんなこと…」

 

扉が開く。

純子「ねえねえねえ…」

入ってきたのは小さな男の子と母親。

 

鯛子「多分、独身ですね」

純子「お弁当きっと喜んでくれるわよ」

純子・鯛子「アッハハ…! はあ~」

 

工藤酒店

週刊ウォッチャーという雑誌を読んでいる貞男。「かあ~…下品やなあ」

タエ「何?」

貞男「え? あ、いや…『有名人の素顔暴露シリーズ』やて」

 

週刊ウォッチャー

NO.132 80円

好評企画 有名人の素顔暴露シリーズ

       人気俳優の素顔に迫る

ウォッチャーノンフィクション 的場政行はなぜ「当選する」のか

「亡命タルコフスキー大尉はまだ日本にいる」という説

新連載 有名人のあんな話 秦野昭如

 

貞男「俳優さんのお前…知られとない私生活あることないこと書いてある。うそかほんまか知らんけど、これえげつないわ~」

タエ「そんなもん読む人がいてるからやん。で、あんた、そんなん買うたん?」

貞男「誰かが忘れていったんや。え!? そうなん? うわ!」

 

アムール前の路地を歩いていた純子。女の子が路地裏を見ていた。

純子「どうしたの?」

女の子「子猫がそこに潜ってしもて出てこられへんね」

純子「え? あなたの猫?」

女の子「さっきそこで拾てん。何も食べてへんみたいやから連れて帰ろ思たんやけど怖がって逃げてしもて」

 

純子「出てこられなくなっちゃったのね…。あ、ちょっと待ってね。はい」買い物かごを脇に置き、「猫ちゃん、出といで。怖くないからね」と呼びかける。

女の子「この辺、野良犬いてるからやられてしまう…」

純子「う~ん…見えないのよねえ」

北野「どうかしましたか?」

純子「え? あ…」

北野「何かいるんですか?」

 

純子「子猫が迷い込んで出てこられなくなっちゃったんです」

北野「あ…子猫」

純子「声は聞こえてるんですけど…」

北野「ほう。よ~し!」上着を脱いで路地に呼びかける。「ウンニャウンニャ。ニャオニャオ、ニャオニャオニャオ。あっ、よしいた!」捕まえた子猫はまあまあ大きい。「はいはい、はいはいはい、大丈夫よ。はい、大丈夫よ。ほ~れ」

 

純子「うわ~、出てきた~!」

北野「はい。ゆっくりつかんでね。はい」

女の子「ありがとう」

 

純子「お名前は?」

女の子「まだ…」

北野「お~、名無しの子猫ちゃんか」

純子「早くおうちに連れて帰ってミルク飲ませてあげてちょうだい」

女の子「はい。ありがとうございました」

純子「じゃあね」

笑顔で顔を見合わせる純子と北野。

 

北野「あっ。あ…。あ~あ」ズボンに土がついてしまった。

純子「大変…。すいません。あ~あ…。あら」純子はひざまずいて北野のズボンの土を払う。

北野「いえいえ、もう、お気遣いなく」

 

純子「雨…」

北野「あっ、雨と名無しの子猫といえば…」

純子・北野「『ティファニーで朝食を』!」

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純子「ラストシーンですよね」

北野「ヘップバーンが猫を雨の路地に一旦捨てるんですよね」

純子「そう。それで『あなたはタフなんだからネズミだらけの町でも一人で生きていきなさい』って言うんですけど…」

北野「引き返してくる」

純子「子猫を抱き上げて、ジョージ・ペパードと寄り添った時の美しい笑顔…」

 

ひねくれた私は「ティファニーで朝食を」は、あまり響かなかった。猫を捨てたり、びしょ濡れにしたりというのが役とはいえ、ちょっとね…。偽日本人ユニオシが出てきたのもこの映画だったな。音楽はよかった。

 

貞男「いや~、雨や雨や! いや、かなわんな~!」セカンドバッグ?を雨よけにして走っていたが、純子に気付く。「やあ、矢木沢さん、何してはりますの?」

北野「え? 矢木沢さん!?」

 

応接間

町子「へえ、子猫か…」

北野「まさか先生の秘書の方だなんて。あっ、改めまして新明出版の北野と申します。松岡が海外に行ってる期間だけ担当させていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします」

純子「あの、こちらこそよろしくお願いいたします」

 

玄関

北野「では、今、伺った内容で早速資料手配しますのでよろしくお願いします」

町子「いや、こちらこそお願いいたします」

北野「じゃ失礼いたします」

 

純子「あっ、あの、私、郵便局に行ってまいります」

町子「あ、はい」

北野「じゃあ、ご一緒しましょうか」

純子「はい」

 

玄関を出た北野。

純子「行ってまいります!」

町子「お願いしま~す!」

北野「お~、雨、上がりましたね」

純子「ああ…。じゃあ」

 

みゆき館の前を通りかかる。

北野「いいですね。ご近所に映画館。たまにご覧になられます?」

純子「はい。仕事が早く終わった時など1人で」

北野「僕はビリー・ワイルダーが好きなんですよ」

 

純子「『アパートの鍵貸します』」

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北野「おっ。『お熱いのがお好き』。人間の描き方がとても丁寧でその上にロマンチックなところがたまらないんですよね」

純子「あっ『サンセット大通り』もよかったです。あの女性の孤独に心、締めつけられました。ウフフ!」

観たことない映画ばっかり。見たいな~。

 

北野「あの…矢木沢さんは花岡先生のところは、もう長いんですか?」

純子「はい。え~っと4年と少し」

北野「へえ…そうですか」

純子「あっ、あの私、あっちなんで…」

北野「どうもお疲れさまでした。では、また明日」

純子「はい」

北野「失礼いたします」

北野を見送る純子の目線がキラキラしてるように見える。

 

その翌日でした。

 

徳永医院に入ってきてキョロキョロ見ている不審な男。

藪下「初めての方ですか? 保険証、お願いします」

井村「ここ、徳永先生に診てもらえんの?」

藪下「今日は往診中なんで別の先生なんですけど…」

井村「あ、そう。じゃ、いいや」

藪下「あの…」

男は院内をキョロキョロ見ながら外へ。

 

茶の間

町子が封筒を抱えたまま電話をしている。「はい、申し訳ございませんです。最終便に間に合うように今からすぐ空港に向かいますので…」

 

東京都千代田区

(株)大綱社

「小説太陽」編集部

 

夕方、締め切りを過ぎていた原稿がようやく出来上がりました。

 

バッグを肩から下げた純子が工藤酒店前を歩いていると、後ろから男がついてくる。

井村「あの…」

純子「はい」

井村「花岡町子先生のお宅の方ですよね?」

純子「ええ。どちら様ですか?」

 

井村「おたく、お手伝いさん?」

純子「秘書です」

井村「あ…私、こういうもんです」名刺を手渡す。

 

週刊ウォッチャー

記者 井村秀樹

〒106-06 

株式会社 日本報道出版

東京都港区大芝門前町九-十七-三

  電話(03)555-0101(代表)

  電話(03)555-0102

 

純子「あっ、週刊誌の方ですか」

井村「あ、あの…ちょっとで結構です。お話聞かせていただく時間頂けませんでしょうかね」

純子「申し訳ございません。あの取材でしたら、あらかじめお約束していただくことにしておりますので…」

井村「いえいえ、ほんとちょっとでかまわないんですよ」

純子「申し訳ございません」

 

井村「そうですか。いや、じゃ是非また、あの、改めまして…」

去ろうとした純子。

井村「あ、あ…おたく、ひょっとしたら、以前、ユニオン化粧品の広報部にいらした方ですよね?」

純子「は?」

井村「ハハハ。いや、じゃ、まあ、是非また」

 

歩き出した純子に思いきり後ろからぶつかる男。純子は転び、かばんをひったくられた。「あ~っ! 駄目!」

男は逃げ出した。

純子「泥棒! 泥棒! あ、痛っ…」たこ芳前まで何とか歩く。「泥棒! 誰か! イッタ~! イッタ…。泥棒!」

北野「矢木沢さん!」

 

純子「あ、あ、あの…泥棒を早く捕まえて! 左、左、左!」

北野が追いかける。

純子「イッタ…。原稿…。原稿返してください!」

北野「すいません! 逃げられました! やられたの、バッグですか?」

 

純子「原稿です」

北野「えっ!?」

純子「大切な大切な原稿なんです!」

北野「えっ!?」

北野に起こされて歩きだす純子だったが「イッタ…!」としんどそう。

 

ミニ予告

鯛子「いただきます」

 

不穏な月曜日…。矢木沢さん、つらい。

 

北野吾郎役のRIKIYAさんは映画版の「阿修羅のごとく」に出ていたな。

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四女の咲子の相手役でボクサー。いしだあゆみさんはドラマ版で三女の滝子。

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共演じゃないけど、同じ原作の作品に出てたんだなとふと思いました。