TBS 1977年11月25日
あらすじ
新二(大和田獏)は明るく成長し、いせ(市原悦子)の胸は希望に満ちていた。しかしある日登山に行った新二は遭難してしまい、友人が命を落としてしまう。いせは新二を立ち直らせようと必死だった。
2024.7.12 BS松竹東急録画。
冒頭はお決まりのシーン。青白画像。船が港に帰ってくる。
いせ「石頭(せきとう)教育、13981(いちさんきゅうはちいち)部隊、荒木連隊、第1大隊、第6中隊の端野新二(はしのしんじ)を知りませんか? 端野新二知りませんか? 端野新二を知りませんか? 端野…新二~!」
端野いせ:市原悦子…字幕黄色。
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端野新二:大和田獏…字幕緑。
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小宮直之:日吉としやす
小宮弘子:五十嵐恵美子
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小宮亜紀子:沙川露里
巡査:北山年夫
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中川秀人
羽生昭彦
沖秀一
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三浦文雄:山本耕一
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音楽:木下忠司
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脚本:高岡尚平
秋田佐知子
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監督:菱田義雄
前回の続きから団員たちが担架を運んできた。近づくいせに三浦先生が声をかけ、止める。かぶせられた毛布をめくると…
弘子「あっ…直之! ああ…直之」遺体に取りすがって泣きだす。「直之…」
亜紀子「お兄様!」
弘子「直之…なぜ…なぜなの? 直之!」
担架に乗せられたまま、駐在所の畳の上に安置される直之。
少し離れた土間部分に立ったままのいせと三浦先生。「診療所のほうへ行ってみましょうか。新二君に会いに」
いせ「小宮さんのお母さんのお気持ちを思うと、お気の毒で。お見送りしてから行きましょう」
弘子は直之の左足をさする。
電話している亜紀子。「そうなの、お父様。でも、とってもきれいなお顔よ、お兄様。ええ、分かったわ。じゃあ」
亜紀子「お母様。お父様もすぐ大阪から帰ってらっしゃるそうよ。私たちも帰りましょう」
弘子はベンチに座っていたいせたちをチラ見。
立ち上がるいせ。「奥様…どう申し上げたらいいか…」
弘子「うれしいでしょう? 息子さんは生きてらした。さっきまであんなに喜んでた私たちが滑稽に見えるでしょ?」
三浦「奥さん…」
弘子「あんたたちに私の気持ちが分かってたまるもんですか! たった一人の小宮家の跡取りがこんな所で…」泣きだす。
亜紀子「やめて! やめて、お母様。惨めになるだけだわ。お兄様がかわいそうよ。静かに眠らせてあげて」
駐在所を出たいせ。
三浦「端野さん、小宮さんは混乱してあんなことを…」
いせ「いや、分かるんです。さっきの私と同じで。奥様がお気の毒でたまらなくなったんです」
三浦「ここにいないほうがいい。新二君の所に会いに行きましょう」
いせ「でも…」
⚟団員「団長たちだ」
団長に肩を預けて歩いてきた新二。
いや~、口も利けないほど疲弊してたなら、休ませてあげてよぉ!
三浦「新二君だ」
団長「(新二に)大丈夫か?」近づいてきた団員たちに「診療所の先生ももう少し横になってなくちゃって言ったんだがな」
団員「団長…」
団長「ダメだったのか? もう一人は」
団員「はい」
団長「本当に東京の者(もん)は、むちゃするからな」
新二「すいませんでした」
近付くいせと三浦先生。
新二「母さん…」
笑顔を浮かべるいせ。
新二「先生…」
三浦「よかった…」
いせ「皆さん、ホントにお世話になりました」深く頭を下げ、新二に近付き頬を触る。「母さん、狂いそうだった。ホントにもう、こんなに心配かけて」マフラーを巻き、頭をなでる。
三浦「小宮君が君のジャンバー着てただろ? だから、一時は君が死んだんだと思ってね。さあ」いせと共に新二を支えて歩き出す。
新二「小宮君が寒さでやられそうだったんだ。それで僕のを…」
駐在所
新二は学生帽とマフラーを外し、小宮のもとへ。秋子が顔の布を外す。真っ白さがリアルに感じた。
新二「僕が…道に迷わなかったら…」
弘子「あなたのせいよ。あんたは自分だけ助かりたかったんでしょ? だから、直之を見捨てたのね」
新二「お…おばさん」
弘子「そうに決まってます」
新二「違います。あのままじゃ…僕、人を呼びに行ったんです」
弘子「そんなこと誰が…あなたは直之を捨てて逃げたのよ。直之はあなたに殺されたのよ! 返して、直之を! 返してちょうだい!」新二に詰め寄る。
亜紀子「お母様、落ち着いて! お母様!」
新二に近付いて弘子を振り払ういせ。「あんまりです! 奥様、息子さんを見れば、お分かりになるでしょ? 新二のジャンバー着てるじゃありませんか」
弘子「こんな物が…こんな物、何になるの!? 直之は死んでしまった…」泣きだす。
団長「俺たちが口を挟むことじゃないかもしれないけど、俺はね、この人を見つけたとき死んでるんじゃないかと思ったよ。ゆうべ、あの山の中をチョッキ1枚で動き回るなんて常識じゃ考えられない。本当に凍死寸前で口も利けなかった」
団員「この人は自分のジャンバーをあんたの息子さんに着せて、なんとか麓まで下りて人を呼ぼうとしたんだ」
団長「病院で意識が戻ったときも早く小宮君をってそれだけを言い続けてた」
弘子「だからどうだっていうんですか。直之は…この子は、もう生き返りゃしない。あんたたちには母親の気持ちがどんなものだか…(いせに手を伸ばす)あんたには分かるでしょ? 分かるでしょ?」いせにすがって泣きだす。
いせ「分かります。よく分かります。分かります」
団員たちも加勢してくれてよかった。
担架で運ばれていく一行を見送る新二たち。三浦に促され、新二たちは橋を渡って歩き出す。
端野家
ボンヤリ座っている新二。
いせ「さあ、少し食べなさい。さあ。母さん、生きた心地しなかった。お前が死んだって聞かされたとき」
新二「ごめんなさい、心配かけて」
いせ「フフフッ。母さん、今だから言うけれども、あんたたちが絶望的だって聞かされても、とにかく2人とも何がなんでも生きていてほしいって、そう祈ってた。1人だけ生きてるって言われたとき、小宮さんじゃなくて新二であってくれ、新二さえ生きててくれたらいいって、そう思った。それからあのジャンバーのことで、あんたが死んだって言われたでしょ? そうしたら、もう生き残った小宮さんが憎らしくなって…ホントにそうだった」
親友を亡くした直後に本音を話しすぎ!
箸を置く新二。
いせ「新二。あんた命懸けで小宮さん助けようとしたんでしょ? それは死んだ小宮さんが一番よく知ってる。そうじゃない? すぐに忘れられるもんじゃない。でも、自分を責めるのはよしなさい。ねっ?」
新二は何も言わずに外へ出て井戸から水を出して顔を洗う。台所から手ぬぐいを持ってきたいせから手ぬぐいを受け取って顔を拭く。
新二の部屋
小宮から借りていた「三人姉妹」を開く新二。
嵐の夜
新二<<おい、小宮! おい、寝るなよ! 寝たら死ぬぞ! おい! 頑張るんだよ! もう少ししたら明るくなる。俺が麓まで行って人を呼んでくるから。おい、小宮! おい! 寝るなよ!>>ブンブン小宮を揺さぶる。
小宮<<んっ…>>
新二<<すぐ人を呼んでくるから、いいな?>>
小宮<<ああ…>>←かなり顔色が白くなりかけている。
嵐の中を岩陰から出ていく新二。
いせがお茶を持って部屋に入ってきた。「また考え込んでたのね。過ぎたこといつまでも考えたってしかたがないよ。高等商船受けるなら、もっとしっかり勉強しなくちゃ」
昭和の作品を見ていると、死んだ人に対して、今に比べたら段違いにドライ。死亡率が高かったせいもあるのかな?
小宮家
玄関先に白い菊の花束を持った新二が立っていた。弘子は顔を見たものの、そのまま立ち去ってしまい、新二は花束と借りていた本を置く。
亜紀子「端野さん! ごめんなさいね。端野さんにいらしていただいて、兄もきっと喜んでると思います。でも、今は上がっていただいてもかえって…(花束を見て)ありがとうございます。わたくし、代わりに仏壇に上げさせていただきます」
新二「じゃあ…」
亜紀子「あっ、ちょっとお待ちになって…これ、兄がお借りしたジャンバーです。洗っておきましたから」
頭を下げて受け取った新二。「じゃ」
<小宮さんの初七日に伺ってからの新二は普通ではありませんでした。勉強も手につかないようで傷つきやすい年頃の新二には、よほどこたえたんでしょう>
端野家
仕立物をしているいせ。
新二の部屋
三浦「小宮君は気の毒なことをしたと思う。しかし、どうしようもないことじゃないか。今回の遭難は君と小宮君の立場が全く逆の結果になる可能性だって十分にあったはずだ。君と小宮君は最後まで強い友情に結ばれ、お互い相手のためによかれと命を振り絞って行動したうえの結果じゃないのかな。君は最善を尽くしたんだ。もし仮に小宮君が今、君の置かれている立場にいたとしたら、君は彼に何を望むかね? それを考えてみたまえ。恐らくいつまでもくよくよと苦しみ悩んで、そのために更にお母さんを苦しませるようなことを君は望んだろうか。先生は君があしたを考え、小宮君の分まで強くたくましく生き抜いていくことが小宮君の何よりの供養になると思うんだ」
新二は黙って話を聞いている。
まっ、正論だけどさ、まだ1週間やそこらで…
襖があく音がして、いせは針を指にさしてしまう。「痛っ」
いせ「先生…」
首を横に振る三浦先生。
いせ「ホントに困ってるんです。山へ行く前は一生懸命勉強もしましたし、元気でしたのに、このごろは部屋に閉じこもって、ろくすっぽ食事も…ホントにどうしたらいいか」
三浦「あれ以来、私の所にも勉強に来なくなってしまって。心配になりましてね。こういうことは時間をかけなくては解決できない問題なんでしょうけど。新二君の場合は受験も迫ってますしね。このままでは成績にも影響するんじゃないかって」
いせ「こういうとき、女親だけだとどうしようもなくて。ホントつくづく…」
そういうこと先生に言うなよ~! こういう弱い部分を見せるところがモテる理由かも!?
三浦「一日も早く立ち直ってもらわないと…」
さっきからしきりに針を刺してしまった左親指を気にするいせ。
三浦「とにかく勉強の日には私の所へ来るだけは来るようにしむけてみてくれませんか?」
いせ「はい」
三浦「ハァ…」
時計の鐘がなる。
いせ「もうこんな時間です。奥様、心配してますわ。先生、どうぞ」
三浦「ええ」
新二の部屋
黒いジャンバーを握りしめ、そばに置く。
いせは三浦先生を見送り、上をチラ見。茶の間で考え込んでいたが、何かを思いつき、新二の部屋へ。「新二。母さんと一緒に来なさい、新二」
どんどん歩いて行くいせ。
新二「母さん、どこ行くんだよ?」
<このままでは新二がダメになってしまう。いいえ、この子は自殺さえしかねない。そう思うと、あのときの私は必死でした>
どんどん先を歩くいせ。(つづく)
今週ラストは、ずっと2番でした。
そりゃ、早く立ち直ってもらいたいという気持ちは分かる、分かるけどさあ!


