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ドラマの感想など

【ネタバレ】わが子は他人 #22「夏の終り」

TBS 1974年8月28日

 

あらすじ

紀子(音無美紀子)の一言で、両夫婦の間に波紋が広がる。そんな状況を打開するため、両家は夏休みを利用して富士登山をすることに。親たちの思いをよそに、子どもたちは旅行を満喫する。

2024.5.23 BS松竹東急録画。

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撮影協力:富士急ハイランド

www.fujiq.jp

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福山大吉:松山省二…太陽カッター社長。字幕黄色。

福山紀子:音無美紀子…大吉の妻。字幕緑。

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和泉和子:林美智子…元の妻。

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福山隆:喜久川清…大吉の弟。浪人生。

ナレーター:矢島正明

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福山一郎:春田和秀…大吉、紀子の息子。小学1年生。

和泉晃:吉田友紀…元、和子の息子。小学1年生。

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福山ゆき:小夜福子…大吉の母。

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和泉元(げん):杉浦直樹…中学校教師。

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監督:中村登

 

東海道新幹線が走る。

 

ある日、両家族は旅行に出ました。

 

三島駅に到着。

 

それというのも紀子が晃のケガに驚いて自分が母であると口走ってしまったからです。親たちにとってその失敗はショックでしたが、元は、より密接な親戚づきあいを提案しました。

 

バスに乗って山道を走る。

 

子供の疑問に先手を打って親同士が本当に親しくなろうと思ったのです。それは難しい試みでしたが、他に進むべき道がなかったのです。

 

晃「新幹線、速かったね」

一郎「うん」

 

一郎と晃が並んで座り、その後ろに元と大吉、その後ろに紀子と和子が座る。

 

一郎「(後ろの座席を見て)ねえ、お父さん。晃ちゃん、新幹線乗ったの初めてだって」

大吉「へえ、そいじゃうれしいわけだね。あしたは富士山だからね。登るんだよ、ハハハハッ」

和子「大丈夫かしら」

元「僕も小学校1年生のときに登ったよ。そのときはふもとからだからね」

大吉「奥さん、大丈夫ですよ。今はね、5合目まで車で行きますからね。昔の半分以下ですよ」

 

晃「僕、登れるよ」

一郎「僕も!」

大吉「そうさ、登れるさ。なっ? 晃ちゃん」

元「福山さん」

大吉「は?」

元「ほら…『ちゃん』は、なしという約束でしょ?」

大吉「ああ…そうでしたね。でも、難しいですね。急に変えるっていうのは」

和子「そうでしょう」

 

元「頑張りましょうよ」

大吉「ええ」

和子「不自然だと思うわ」

大吉「いや、ご主人の意見には賛成なんですよ、僕は」

和子「だったらもっと時間をかけて計画的にやったほうがいいんじゃないかしら。急にしかたなく始めるのはよくないわ」

紀子「申し訳ありません。あたくしが…」

 

元「あっ、いいんですよ、そんなことは」

和子「私だって、そんな意味で言ったんじゃないんですよ」

紀子「はあ」

 

目の前に富士山が見えてくる。

一郎「あっ、富士山だ!」

晃「あの一番上まで登るの?」

元「そうだよ。頂上まで登るんだよ」

一郎「登れるかな?」

大吉「登れるさ。みんな一緒だからね」

元「ハハハッ」

 

富士急ハイランドに到着。バスを降りた一郎は「あっ、目玉だ!」と指さし。

晃「行こうか」

一郎「うん!」

走りだそうとするのを大吉が止めた。

 

このドラマでも映ってたけど、白くて丸い顔で目が動くオブジェは2006~2007年ごろには撤去されたそうです。

 

元「ハハッ。さあ、まず切符を買うんだよ。さあ、行こう」

大吉は紀子が持っていた大きなバッグを持つ。おお!

 

場内アナウンス「ようこそ、富士急ハイランドへお越しくださいました。園内には世界一のジャイアントコースター。恐怖のスリラー館。ゴーカート。イタリア生まれのダッゼム・カー、ロッキー・スライダーなどスリルとスピードを楽しめる施設が…」

 

さまざまなアトラクションで遊ぶ親子。ゴーカートは元と晃、和子と紀子、大吉と一郎の組み合わせで乗っている。コーヒーカップ、一人乗りのゴーカート?では紀子がぶつけられてる。

 

脚こぎボートに乗る子供たちと見守るそれぞれの夫婦。

 

大吉「うまい具合にはいかないもんだな。ホントの親戚っていったって」

紀子「まあね」

大吉「晃のことだってさ、面と向かって晃って呼ぶのは、ちょっと度胸がいるぜ。どんな顔されるか分からないしな」

紀子「私はダメだわ。和泉さんたちがいたんじゃ」

大吉「まあ、もうちょっと落ち着いたらやってみるさ。考えてみたら自分の子供なんだからな。呼びつけにすることぐらい簡単だよ」

 

ボートに乗りながら手を振る晃に手を振り返す福山夫婦。一郎も手を振る。

 

少し離れた場所に座る和泉夫婦。ボンヤリしている和子。

元「せっかく来たんだから笑顔でつきあわなくちゃ、ねっ?」

うつむく和子。

元「ホントの親戚みたいになる約束だろ?」

和子「私はまだ賛成してませんよ」

元「子供のためじゃないか」

和子「結局、向こうのうちの不始末をこっちが埋め合わせてるんでしょ。振り回されるのはイヤだわ」

 

元「若いんだからしかたないよ」

和子「いくら若いったって、子供にいきなり私がお母さんですよなんて非常識ですよ」

元「それはもう許してあげたんだろ?」

和子「晃がどう感じてるかだわ」

元「だから、親同士が仲良くなれば子供たちは気にしなくなるよ。子供たちのためだ。是が非でも仲良くなるんだ。いいね?」

和子「晃ちゃ~ん!」笑顔で手を振る。

 

ジャイアントコースター前

一郎「ねえ、お父さん乗ろうよ」

晃「乗ろうよ、乗ろうよ」

大吉「それじゃ、乗りましょうか」

元「そうですね。しかし、かなり速そうですなあ」

 

和子「私は遠慮するわ」

紀子「私も」

和子「(元に)あなたも上がったり下がったりするのはダメなほうね」

大吉「そうなんですか?」

元「ええ、それが…ハハッ」

 

大吉「ああ…それじゃあ、僕が2人連れて乗りましょうか」

元「ああ…ええ」

晃「お父さん乗らないの?」

元「えっ? ああ…乗るよ」

一郎「おじさん、怖いの?」

元「いや…怖くなんかないさ」

晃「乗ろうよ、乗ろうよ」

元「うん、乗ろう乗ろう」

 

和子「無理しないほうがいいわよ」

元「何が無理だよ。大荒れの海で船に乗るわけじゃあるまいし」

大吉「大丈夫ですよ、奥さん」

元「そうですよね。戦争中のことを思えばやれますよね」

紀子も和子も笑う。

 

戦争中のことを持ち出すなんて、この時代に生きた人しか言えないよ。

 

元はテンションを上げて子供たちを連れていく。子供たちの後ろの列に大人たちが座る。

 

母親たちは歩きながら話をしている。

紀子「ガタガタって、すごい音がしたでしょ。あっと思って廊下に飛び出したときには、もう晃ちゃんを見てカッとしてたんですね。夢中だったんです。それで、なんていうのかしら。なんか言わなくちゃいけないと思ったんです。でも、あんなこと言ってしまって、ホントに申し訳ないと思ってます」

和子「いいんですよ。もう過ぎたことですもの」

 

ジャイアントコースターの映像。

 

紀子「これで何か起こったら私のせいですわ」

和子「大丈夫よ。何も起こらないわ。私たちがついていますもの」

紀子「ええ」

 

またまたジャイアントコースターの映像。子供たちもよく乗ったね。

 

和子「それより私、今度の計画のほうが心配なんです。いくら本当の親戚みたいになろうっていっても、やっぱり他人同士ですものね。そう簡単にうまくいくはずありませんわ。第一、子供たちが変に思うんじゃないかしら」

紀子「私は主人が決めたと言いますから、なるべくそうしたいと思ってますけど」

 

レストラン

大吉が元にビールを勧める。「奥さんもいかがですか?」

和子「あっ、あたくしは…」

大吉「いいじゃないですか。1杯ぐらい」

和子「じゃ、ほんのちょっとだけ」

大吉「大丈夫ですよ、ビールぐらい」ビールを注ぐ。

和子「あっ、どうも」

 

元「それじゃ、奥さんもどうぞ」

紀子「私も弱いんです」

元「みんなで乾杯しましょうよ」

大吉「いいですね」

紀子「それじゃ」コップを差し出す。

 

元「じゃ、乾杯しましょうか」

大吉「あっ…なんかひと言、言ってくださいよ」

元「福山さんのほうが慣れてらっしゃるでしょう」

大吉「いやいや、乾杯の音頭はなんといっても年長者ですよ」

元「じゃ、お言葉に甘えまして」

大吉「よろしく」

 

元「えっと、そうですね。それじゃ、子供たちの将来のために乾杯。いや、これはどうもちょっとありきたりでしたね」

大吉「そんなことありません、乾杯」

一同「乾杯!」

 

結局、大吉が音頭取ってないか!?

 

おいしいと言い合う大吉と元。「来てよかったですよ」

大吉「これで、あした、富士山に登れば一郎だって、晃だって…」

ジュースを飲んでいた晃が大吉の顔を見る。

大吉「いやいや、晃ちゃんだって…」元の顔をチラ見して「いや、晃だって、絵日記の材料もたくさん出来るしさ、楽しいしさ。よかったな、来て」

一郎・晃「うん!」

 

大吉「なんでも本当にやる気になればできるもんですよね。ねっ? 和泉さん」

元「そうですよ。頑張りましょう、お互いに」

大吉「はい」

 

元「さあ、あしたの朝、早いぞ。大丈夫か?」

晃「うん!」

 

大吉「さあさあ、いきましょう」元にビールを勧める。

 

あした富士登山するのに飲み過ぎない方がいいんじゃない!?

 

♪ジュークボックスの音楽

 

若者たちが踊るホール。大吉と和泉夫婦はソファに座っている。紀子は子供たちを寝かしつけて戻ってきた。

 

紀子「2人ともさっきまで大騒ぎしてたんですよ。やっぱり興奮してるんですね」

和子「うれしくてしょうがないのね」

元「子供のうちが花だなあ」

大吉「弱気ですね」

元「ハハハハッ」

 

若者たちが踊っているのを見ている福山夫婦と和泉夫婦。

 

元「いや、若いっていうのはいいですよ。僕なんかダンス踊ったのは、もう20年も前ですからね。ハハッ、それ以来、全然関係ないな」

和子「あら。それじゃ、まるで私が悪いみたいじゃない?」

元「そうじゃないよ。青春っていうものだよ。血湧き肉躍るってやつだ」

和子「それは無理ね、もう」

一同笑う。

 

元「よし、じゃ、久しぶりに踊ろうか」

和子「恥ずかしいわ」

元「奥さん、踊っていただけますか?」←一回断られたぐらいで急に!?

紀子「私がですか? あっ…」

 

和子「あなた、酔ったの?」

元「酔ってなんかいないよ。ねえ、福山さん。お互いに親しくなるいい機会ですよ。踊りませんか?」

大吉「いいですね。踊ってもらったら?」

紀子「そうね。どうしようかしら」

元「よろしくお願いします」

 

大吉「それじゃあ、奥さん。僕たちも踊りましょうか」

和子「え…ええ」←ちょっと嫌そう。

 

音楽が止まり、元は立ち上がってジュークボックスをセット。想像してたジュークボックスじゃないなあ。鍵盤みたいなのを押している。

 

流れ出したのは「湯の町エレジー」で和子は笑ってしまう。

湯の町エレジー

湯の町エレジー

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近江俊郎「湯の町エレジー」1948年7月発売

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昭和28年の「東京物語」で周吉たちが泊まった宿で流しの歌手が歌っていた。この頃は若者の歌として歌われていたんだろう。元の言う20年前ってこの頃だもんね。

 

「麥秋」では親子役だった東山千栄子さん(「おやじ太鼓」のカメオの祖母)と笠智衆さんが「東京物語」では夫婦役。「東京物語」では笠智衆さんの娘役だった杉村春子さんが「今朝の秋」では笠智衆さんと元夫婦役でその息子が杉浦直樹さん。

 

ジュークボックスから戻ってきて、紀子の前でお願いしますと頭を下げる元。手を取り体を密着させ踊り始める。複雑な表情の大吉と和子。

 

なーんで、杉浦直樹さんはインテリ臭もするのに、スケベ親父臭もするんだ!? 若い女好きがあふれ出ている…ように見える。

 

和子「踊りましょ」

大吉「えっ?」

 

こちらは全然体を密着させてないぎこちないダンス。普通はこっちよ。いつの間にかたくさんいた若者たちはいなくなっている。

 

たとえ、どんな必要に迫られても他人同士が本当に親しくなるのは、かなり難しい仕事でした。大吉にしても和子と踊りながら、この人が一郎の母親なのだという重みを感じることができなかったのです。そこまで思いやる心の余裕が、まだ大吉の中には生まれていませんでした。

 

親しくなるっていっても、こういうのはちょっと違うかな。

 

調べると、杉浦直樹さんと音無美紀子さんは単発だけどその後、橋田脚本のドラマで夫婦役も演じてるのね。杉浦直樹さん、若い妻率が高いな。

 

翌日、快晴の中、バスが走る。

 

バスガイド「雲海の上に連なって見られます山々が南アルプスでございます。その右手に浮き島のように見られます山が八ヶ岳でございます」

 

最後部座席に座る大吉、元、晃、一郎。窓際に座る子供たちと一緒に景色を見ている元と少し眠そうな大吉。前の座席に和子と紀子が並んで座る。

 

バスは雲上閣に到着。

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またもバスから駆け下りて走り出す子供たちを元が慌てて止めた。「いいかい? ここからはもうふざけちゃいけないよ。危険だからね」

大吉「ここはね、富士山の5合目なんだからね。勝手に走り出しちゃいけないんだぞ。分かったか?」

一郎「うん!」

元「さあ、出発しましょうか。昼までには頂上だ」

 

調べたら、富士山5合目から頂上まで4~7時間かかるそう。

 

福山夫婦はフードのついた黄色い上着、和泉夫婦はモスグリーン?の上着

 

富士登山

一郎「お母さん、早く!」

晃「早く早く!」

 

紀子が和子の手を引っ張っている。

和子「そんなに急ぐとすぐ疲れちゃいますよ!」ヨロヨロして大変そう。

 

休憩。水筒の水?を飲む大吉。「うまい。うまいなあ」

一郎「昨日から同じことばっかり言ってるね」

大吉「そうか?」

一郎「そうだよ」

大吉「だってホントにうまいんだからしかたがないよ。どうだ、一郎。気分は?」

一郎「疲れたよ」

大吉「それじゃこっから帰るか?」

一郎「やだよ。もうなおったよ」

大吉「これからが大変なんだぞ」

一郎「大丈夫だよ」

 

晃に板チョコを手渡す元。「いいんだよ。今日は特別なんだから」

和子「食べなさい」

元「ほら、お母さんもいいって言ってるだろう? 山に登るとね、疲れるだろう? そのときはこうやって甘い物を食べるんだよ。それが疲れを取る方法なんだ。分かったか?」

一郎「うん」半分に割って一郎に分けてる。偉いな~。

 

元「あっ、そちらでもどうぞ」と大吉に板チョコを渡す。大吉がそのまま紀子に渡して、紀子が半分に割って大吉へ。

 

元「さあ、そろそろ出発しましょうか」

和子「あら、もう?」

大吉「頂上でゆっくり休みましょう」

元「ええ」

和子「これからが胸突き八丁でしょう?」

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大吉「ええ、そうです」

和子「もう少し休んでからにしましょうよ」

元「あんまり長く休むとかえって疲れが出るんだよ。さあ、行こう」

大吉「おい、行くぞ」

 

立ち上がった瞬間からヨロヨロの和子。

 

一郎を支えて歩く大吉。晃と手をつなぐ元。みんな、それぞれ杖をつきながら歩いていく。一郎役の春田和秀さんはこの年「砂の器」もあって、過酷な撮影だっただろうなと思ってたけど、こっちもこっちでかなり過酷だ。

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七合目の看板が見える。子供たちも疲れが見え、座り込んだ。大吉は一郎を、元は晃を背負って歩き出す。うわー! 大変。

 

一郎「お父さん、頑張って」

大吉「よし」

一郎「早く」

大吉「ハハッ、よ~し」後ろをチラ見。

一郎「早く早く」

 

晃「お父さん、負けるな、負けるな」

元「よいしょ、よいしょ、よいしょ」

晃「頑張って!」

 

和子「男ってのはどうしてああなのかしらね」

紀子「競争するようになってるんですね。生まれたときから」

和子「しょうがない生き物ね」

紀子「フフッ」

 

岩場を登る。さすがに子供たちも自力で登っている。

 

頂上

元「ほら、晃。ほら、見てごらん。いやあ、きれいだね」

 

一郎「あそこに雲がある」

大吉「ああ、そうだそうだ」

 

雲海が広がる。

 

元「ハハハッ」

大吉「ついにやりましたね。いや、おめでとうございます」

元「やあ、どうも。ハハハハッ」大吉と握手。

 

和子「ステキだわ」

紀子「来てよかったわ。大変だったけど」

和子「ええ、ええ」

 

大吉「お~い、写真撮るぞ!」

紀子・和子「はい」

 

元が後ろ、晃と一郎が前に並ぶ。

元「ほら、ちゃんと入って」

大吉「おい、じゃ、早く入って」カメラを構える。

 

元の隣に和子、その隣に紀子が並ぶ。

大吉「いくぞ!」タイマーをセットして、晃の隣に並ぶ。

 

福山家

ゆきに写真を見せる大吉。「あっ、母さん、このときはね、ほら、俺が晃のこと抱いてるだろ?」

ゆき「うん」

大吉「俺、自動シャッター押したんだよ。で、俺、慌ててさ、戻ったら晃が俺の立つ場所にいたんだな。それで、俺、慌てちゃってさ。急いで晃の後ろへ立ったってわけだ。ねっ? だからほら、変な格好してるじゃない。それからほら、先生の目がさ、なんとなく俺のほう見てるだろ?」

紀子「どれ?」

ゆき「あっ、ホントだ。アハハハ…」

大吉「ねえ?」

紀子「この目は気になったのね、フフフ…」

 

隆「結構楽しそうだね、みんな」

大吉「そんな簡単なもんじゃないよ。なあ、紀子。大変だったなあ」

紀子「フフフ…」

隆「でも、うれしそうな顔して写ってるよ、兄貴だって」

大吉「バカだな、お前。だから、お前は単純なんだよ。写真に写ってる顔なんていうのはな、表側だけだよ。心の中は複雑なんだ。ほら、見てみろ。この写真なんかよ、苦労がにじみ出てるじゃねえかよ」

 

隆「そうかなあ」

ゆき「どうして逆らうんだよ、お前は」

隆「別に逆らってなんかいないけど。そう見えるからそう言ってるだけだよ」

ゆき「みんな苦労してんだよ。お前だって頑張りな」

隆「なんだか変な話だなあ」

 

大吉「いや、まあ、いいや、母さん」

 

宿題が終わって「なんかない?」と茶の間に入ってきた一郎。隆は「勉強、勉強」と部屋に戻った。

 

大吉「一郎、行ってよかったな」

一郎「うん」

大吉「お前だってよかったと思うだろ?」

紀子「ええ、よかったわ」

一郎「また行こうよ」

大吉「ああ、またいつかな」

一郎「いつか、か」

 

大吉「だって、お父さんだって仕事しないと困るだろ?」

ゆき「まあ、少しでもみんな仲良くなれれば、それに越したことはないよ」

大吉「そうだね。今度は少しなんとかなりそうだ」

紀子「それにああやって旅行するといろいろ分かるしね」

 

大吉「お前、先生とダンスしたこと言ってんだろ?」

紀子「あら、いやらしい」

大吉「いや、うっとり踊ってたぞ」

紀子「あなただって奥さんに褒められたんでしょ? フフフ…」

大吉「あの夫婦も結構面白(おもしれ)えよな。ハハハハ…」

 

和泉家

元と晃は体操。しかし、元は体が痛い。

和子「大丈夫? あしたから学校ですよ」

元「ああ…いきなり富士山は無理だったね。高尾山ぐらいにしとけばよかったな」

晃「だらしがないな」

和子「お父さん、もう年なのよ」

元「もう今日で3日になるんだからな」

和子「これ、また貼ります?」

元「ああ、そうだ。貼っといたほうがいいね」足を引きずって和子のそばへ移動。

 

晃は前に大吉に買ってもらった飛行機で遊んでいたが、和子に宿題をやるように言われる。

 

和子「ねえ、これからもう少し気軽なとこで会わない? 家計簿だって大赤字よ」

元「うん、まあ、今回はしかたないさ」

 

どっかに出かけたり手土産のやり取り…お金かかるよねえ。

 

和子「春生ちゃんの部屋代、値上げしようかしら」

元「まあ、いいよ」

和子「だって、あの子、晃の勉強、ほとんど教えてくれないでしょ。約束したのよ。そのかわり安くしてんですもん」

元「ハハッ、いいじゃないか」

和子「あの子、今日だって裸みたいな格好して出てったわ。何考えてんのかしらね、女子大生のくせに」

元「福山さんがまあ、あそこまで若くなくてよかったよ」

和子「あの人たちはまだいいほうよ」元の足の裏に湿布を貼る。

 

いや~、小学1年生の両親としたら福山夫婦はかなり若いと思うが?? しかし、元の周りには紀子、春生、原京子…若い女だらけだ。

 

踏切の前に立つ一郎。

 

夏休みの間に一郎と晃は特別な経験をしました。新幹線に乗り、富士山に登ったのです。その興奮は秋になっても2人の心を捉えて離しませんでした。

 

電車が通過後、踏切の向こうの一郎を迎えに行って戻った晃は手をつないで走る。

 

それはいつか冒険への憧れとなって少年たちの胸に燃え立ち始めていたのです。

 

二人は走って、いつも待ち合わせに使う京浜蒲田駅ではなく、国鉄蒲田駅へ入って行った。(つづく)

よりドキュメンタリータッチで面白かった! 富士登山大変そう。子供たちが仲良しなのがほほ笑ましい。

 

「おやじ太鼓」37話。武男、黄枝子の正体に気付く。

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俳優座の創立メンバー勢揃い回だったね。

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「おやじ太鼓」の第一部は月曜日終了。すぐ第二部が始まるけどね。「わが子は他人」は水曜日まで。始まる前は放送順にやっとけよって思ってたけど、どのドラマも愛着湧くものだなあ。