1961年 日本
あらすじ
小津安二郎が東宝で監督した唯一の作品。それまで実は危ういバランスの上に成り立っていた均衡が、一家の大黒柱がいなくなったことで崩れていくさまを描くホームドラマ。 代々造り酒屋の小早川家だが、最近では大資本に押され経営が厳しい。亡き長男の妻・秋子の再婚、末娘・紀子の結婚と問題が山積みしているのに、先代当主の万兵衛は昔の女のところに入り浸り。当主の久夫は頭が痛い。
2023.12.16 BS松竹東急録画。カラー。
「こはやがわけのあき」と読むのね。録画した小津映画はあと1本。
昭和三十六年度
芸術祭参加
宝塚映画作品
夜の街。ネオンが明るい。
バーのカウンターに座る男女。磯村は森繫久彌さん。隣に座っていた女性はホステス・あけみ。あとから弥之助が来た。加東大介さん。弥之助は磯村に未亡人を紹介する。
小早川秋子:原節子…字幕緑
弥之助のいるところに秋子が来て、偶然を装って隠れていた磯村が現れ、名刺を渡した。磯村は気に入ったサインである鼻をなで、弥之助に見せた。秋子が電話をかけに席を外すと、磯村は年頃もちょうどええと大OKを出し、ジンフィズを3つ注文した。
秋子が帰ると、紀子(司葉子)と息子の稔がいた。紀子は秋子の亡くなった夫の下の妹。
今回の映画は原節子さん以外は関西弁。
造り酒屋
小早川万兵衛:中村鴈治郎(2代目)…字幕黄色
中村玉緒さんの父以上の情報はないかと思ったけど「雁の寺」にも出てた。最初のほうで亡くなった旦那さんね。
秋子に磯村を紹介したことを報告した弥之助。弥之助は万兵衛の亡くなった奥さんの妹の夫。ややこし。
大学時代の友人の寺本忠(宝田明)が札幌に転勤するので、送別会に行った紀子。ただの同僚たちの歌がうまい!!
造り酒屋の番頭・山口信吉は山茶花究さん。 店員・丸山六太郎:藤木悠さん。
山茶花究さんは「女は二度生まれる」「雁の寺」などで見た。
藤木悠さんは「貸間あり」のハラ作か。これも宝塚映画だって。
どんどん人が出てくるので人間関係を把握するのが大変だ。
万兵衛はあとをつけてきた丸山を氷屋に行き、佐々木つねの家へ。浪花千栄子さんは「二十四の瞳」や「貸間あり」にも出てた。
つねの家には派手なピンクのドレスを着た若い娘・百合子が帰ってきた。万兵衛を「お父ちゃん」と呼び、つねを「お母ちゃん」と呼んでいる。二号さんというやつなの?? 百合子は万兵衛にミンクのストールをねだり、神戸の会社に勤めるアメリカ人・ジョージとつきあっている。
酒屋に帰ってきた丸山は、まかれたふりをして佐々木と門灯のある旅館に入った万兵衛を見ていた。山口は佐々木と聞いてピンときた。戦時中に切れたと思っていたが、まだ続いていたと言う。山口が言うには百合子は万兵衛の娘ではないらしい。
小早川家の長女・文子(新珠三千代)と夫の久夫(小林桂樹)は、つねのことを噂しあい、文子は万兵衛に問い詰めようとするが、久夫が止める。しかし、万兵衛が京都の嵐山で母の法事のあとで食事をしようと言いだすと、文子は佐々木という人の所へ行ってたんじゃないですか?と問い詰め、今から行ったらどうかと言う。
新珠三千代さんは「かあちゃん結婚しろよ」や「喜劇大安旅行」で見ました。
風呂上がりにくつろいでいた万兵衛は怒って、あとをつけてこいと着替えて出て行った。
百合子は、小さいころにもう一人、お父ちゃんと呼んでた人がいたような気がすると言うが、ミンクのストールをくれるまで、万兵衛をお父ちゃんと呼び続けるとちゃっかりしている。
結局、万兵衛が行ったのは、つねの家。がま口を持たずに出たものの、駅のタバコ屋で1000円借りたと言う。せっせと床の水拭き掃除を始める。
秋子の働く画廊へ行った弥之助は磯村のことを聞くが、秋子は考えさせてくださいと言うだけ。乗り気じゃない感じ。
嵐山に集まる小早川家の人々。秋子の夫の幸一が亡くなって6年。万兵衛と弥之助と久夫が秋子の今後について語り合う。文子の妹である紀子も見合いを済ませたもののはっきりと返事をしない。
文子は、また万兵衛に京都で行きたいところがあるんじゃないですか?と嫌みを言う。
秋子と紀子は川辺で紀子の縁談の話を聞く。見合い相手は、ご飯をよく食べる人。紀子から縁談のことを聞かれた秋子は「私なんかこんなおばあさん」といい、紀子から100円を要求される。紀子は秋子が「おばあさん」と発言するたび、100円をもらう約束していた。原節子さんは当時41歳。
その夜、帰ってきた万兵衛が突然倒れた。みんなが見に行くと、体を起こしてボーっとしている。医者を呼ぶと、心筋梗塞だといい、布団に寝かされている。弥之助夫婦も集まる。
翌朝、涙を流す紀子。各所に連絡をして万兵衛の弟妹も集まる。叔母ちゃんのしげは杉村春子さん! しげは名古屋に住んでいる万兵衛の妹、清造は東京に住んでいる弟。発作が落ち着き、二人とも用事があるので一旦帰りたいなどと言う。え、まだ亡くなってなかったんだ。
平気そうに起きて歩いている万兵衛。そこからウソみたいに元気になった。日曜日に秋子も遊びに来て、紀子とあんなに元気になってと笑い合う。
紀子が自分の部屋で手紙を書いていると秋子が来た。秋子は手紙の相手をごはんをよく食べる見合い相手のことだと思うが、札幌にいる人だという。
文子の息子・正夫と遊んでいる万兵衛。正夫が隠れている間に着替えて出かけた。子役の正夫は見たことあるような顔だと思ったら、「お早よう」に出ていた。
秋子は結婚前に品行が悪くても許せる。だけど、品行は直せても品性は直せないという話を紀子にしていると、正夫がおじいちゃん見なかった?と部屋に来たが、2階の窓から万兵衛が歩いていくのが見えた。
万兵衛とつねは競輪場へ。スッてしまい、大阪へ行こうと競輪場を後にした。
夜、弥之助と磯村がバーのカウンターに並ぶ。秋子からなるべく行けたら行くという返事だったと2時間待って伝えた弥之助。磯村は他の店で飲み直そうという。
文子と久夫が万兵衛の話をしていると、京都の佐々木から万兵衛が倒れたという電話があった。
百合子はつきあっているジョージではなく、ハリーが迎えに来たので、万兵衛に手を合わせて出て行った。え! 万兵衛の顔にはもう白い布が掛かっている。百合子はミンクのストールを買ってもらえなかったことしか言わない。
久夫と紀子が佐々木家を訪ねた。
「見事な娘」は東宝の映画だから司葉子さんと小林桂樹さんが共演してんのね。
8時23分亡くなったことをつねが伝えた。遺言がなかったか確かめる久夫。紀子は泣きだす。
川で農具を洗う農夫と妻。笠智衆さんの関西弁、珍しい。
火葬の日。久夫は造り酒屋を合併して、大きな会社に助けてもらってサラリーマンになると言う。紀子は札幌へ行く決意を秋子に語る。
番頭たちが葬儀を取り仕切る。しげも名古屋から駆け付けた。この間、みんなが集まったとき死んだらよかったなあと笑っていたが、好き勝手に生きた万兵衛を思い、泣きだす。
火葬場の煙突から白い煙が上がるのをそれぞれの場所で見上げる。
紀子は秋子の今後を訪ねる。秋子は稔も大きくなってきたのでこのままでいいと笑う。
青空とお墓とカラス。(終)
小津監督が東宝で撮った唯一の映画。
加東大介さん、森繫久彌さん、小林桂樹さんなどいつもと違うメンバーが多かったし、原節子さんも笠智衆さんもこれまでの映画に比べると脇の脇に感じてしまった。
キャストが違うせいか小津映画だけど小津っぽくないような!? 監督の名前を前面に出さなければ気付かないだろうな。
でも、紀子、文子、しげ、幸一などなどおなじみの名前ばかりで原節子さんの役名は、今回は紀子じゃないんだなと何度も確認してしまった。