1951年 日本
あらすじ
小津安二郎の『晩春』の姉妹編ともいうべき名作。嫁ぐ日が近い娘の揺れる心と肉親の情愛、そして友との友情。鎌倉の穏やかな風景をバックに繰り広げられる人々の情愛を、温かいまなざしで描く。
植物学者の間宮周吉には、医師の長男、南方で戦死した次男と、秘書として働く末娘がいた。今の周吉夫妻の気がかりは、末娘・紀子の結婚についてである。そんなとき、紀子にふたつの縁談が持ち上がるが……。
2023.12.14 BS松竹東急録画。昨年末に録画した小津映画を古い順に見ています。
浜辺を走る犬。今回の映画は修復版なので、「宗方姉妹」と比べるとだいぶ見やすい。年寄りと小さな子供のいる三世代家族を描いているのが珍しく感じる。
間宮紀子：原節子…字幕黄色
間宮康一：笠智衆…字幕緑
今回は兄妹という設定。だから笠智衆さんの髪も黒々してんのね。
間宮家は他に兄嫁の史子(三宅邦子)、兄妹の父・周吉(菅井一郎)、母・志げ(東山千栄子)、康一と史子の息子の實と勇がいる。笠智衆さんより父役の菅井一郎さんのほうが若いのね。
東山千栄子さんは「おやじ太鼓」のカメオの祖母！ 面影ある。
紀子はタイプライターとして働き、会社に友達のアヤが遊びに来る。「思い橋」は“彩子”と書いて“サイコ”だったね。どちらも独身。紀子の上司の佐竹宗太郎は佐野周二さん。
田村アヤ：淡島千景…字幕水色
茂吉(高堂國典)という周吉の兄は耳が遠い。子供たちは近くで「バカ」と言ったり、キャラメルを紙のまま渡して食べるのを見ていたりバカにしている！？ 昔は微笑ましいシーンだったのかもしれないけど、ちょっとザワザワするね。高堂さんは当時64歳！？
アヤの家に遊びに行った紀子。2人の友達で既婚者の高子(井川邦子)も来るが、高子から夫婦喧嘩の話をされ、だから私たちは結婚しないのよとからかう。紀子は28歳。
紀子は佐竹から眞鍋という男を紹介された。アヤの家にいたと思ったら佐竹の部屋に移動したり、位置関係が？？
茂吉は周吉と志げに自分の住んでいる大和へ来ないかと誘う。
医師である康一をアヤ子の母であるのぶ(高橋豊子)が訪ねた。心臓を見て欲しいのが本題だけど、紀子の縁談の話。アヤ子なの？ アヤなの？
チャア子の婚礼に出た(やっぱり久子なのかな？)紀子、アヤ、マリ(志賀眞津子)、高子。既婚者と未婚者で軽い言い合い。あ〜、やっと「思い橋」の彩さんと重なってきた。しゃべり方、変わらないものね。
紀子は銀座へ行ったお土産にケーキを買ってきた。小さいケーキではあるけど、史子が一人で食べるんだ！？ 紀子は縁談の話に特に拒否する様子もないので、影で聞いていた康一は喜び、史子にうまく勧めるように言う。
杉村春子先生、来たー！ 矢部たみが志げを訪ね、紀子を調べている者がいると報告に来た。紀子にはもう一人の兄・省二がいて南方から帰って来ない。謙吉というのは、その省二の友人で、たみはその母。謙吉は数年前、妻を亡くしているが、光子という幼い娘がいる。
日曜日、間宮家には子供たちがたくさん遊びに来ていた。8人くらいはいる！ 實は32ミリゲージのレールを欲しがって、史子や紀子にねだる。
間宮家にアヤが遊びに来た。高子は遅れていて、既婚者のマリは旦那さんの出張で急に来られなくなった。アヤは鎌倉に住む紀子を羨ましがる。高子から電話があり、父の調子が悪くて大磯にいるという。結局、独身の2人だけが集まることになり、あんなに仲がよかったのにと懐かしむ。
博物館に出かけた周吉と志げ。外でのんびりお昼。康一が結婚し、孫が生まれて、紀子も結婚するかもしれない…今が一番いい時だと語り合う。
康一は病院に泊まり。紀子は900円のホールケーキを買って来たが、あまりの高額さに史子は落ち込み、いい毛糸が半ポンド買えると言う。たまたま訪れた謙吉(二本柳寛)にもおすそ分け。やっぱり子供に分けないものなんだね〜。勇が突然、起きて来たので、慌ててケーキを隠した。900円のホールケーキは今なら数万円くらいの感覚かな？
帰って来た康一はお土産を買って来た。レールの入った箱と勘違いした實だったが、中身は3斤くらいの長い食パンだった。
紀子の縁談相手を調べて、さらに乗り気の康一。相手は「紳士録」にも載るほどの男で明治43年生まれの数え42歳。満40歳だと分かると、志げや史子の顔が曇った。紀子の一回り上というのが気になる。康一はこちらも贅沢は言えないと怒り出した。欲張りかねえとしょげる志げだけど、志げの気持ち、よ〜く分かるよ。紀子ほどの美人の28歳なら相手はいくらでもいる！
それにしても間のCM、健康食品ならまだしも…生涯現役とかやめてよ。
志げは落ち込んで、「叱られちゃった」と周吉に話に行った。もう代替わりして康一が家長なんだね。
實はウソつき！と康一を責め、食パンを足で蹴った。康一は食べ物に何をすると怒り、子供たちは出て行った。入れ替わりで帰ってきた紀子に感情的に叱ってはダメよと注意される康一。いやー、どう考えても實が悪いからね！
夜、子供たちが帰って来ず、心配する史子と志げ。周吉も見に行った。
矢部家を訪ねた紀子。子供たちは来ておらず、謙吉も捜しに行くことにした。
康一は友人の西脇(宮口精二)の家で碁を打っていた。怒っちゃいかんと西脇にも注意される。康一は捜しに行かないの？ 間宮家から子供たちが帰ってきたと電話があった。
謙吉が帰り、秋田の県立病院の内科部長へ打診があったと、たみに話した。長くて3～4年、給料もいい。鎌倉を離れたくないたみは返事ができない。
アヤが紀子の会社を訪ねた。紀子は不在。佐竹はアヤと話をして、紀子がヘップバーンのファンでブロマイドを集めていたと話し、ヘップバーンが女優と知った佐竹は変態か？と笑う。面白い笑い方だな。
喫茶店で紀子と謙吉が会っていた。謙吉は徐州戦に行っていた省二から手紙をもらっていて、それを紀子にあげようかと話していた。後から康一も加わる。
「麦と兵隊」を読んでいる謙吉。
矢部家を訪ねた紀子。たみは引っ越し準備をしていたが、おなかの中で思っていたこととして、謙吉の嫁が紀子だったらよかったと話し始めた。紀子はこんな売れ残りでいいの？と笑顔。たみは本当にいいのね？と喜ぶ。
帰り道、謙吉と会ったが、いつも通りの挨拶をして別れた紀子。家に帰った謙吉に、たみは紀子が家に来てくれるってさと喜び、泣き出すが、謙吉はイマイチ、ピンと来てない！？ 明日には秋田に出発する。
史子が周吉と志げを呼んだ。紀子と康一もいて、康一は不賛成だとはっきり言う。紀子は、たみの提案にスッと素直になれた、後悔しないと言う。周吉と志げは一人で決めたことに驚くが、自室に戻った。
康一は不賛成とは言ったけど、本人が決めたら仕方ないと史子に言う。
上野の停車場に見送りに行ったたみが紀子の会社を訪ねた。昨日の今日で信じられないたみはもう一度確認に来た。別に秋田についてくわけじゃないのね。
志げと史子は子供のいる謙吉の元に嫁ぐ紀子を心配する。志げは、紀子が女学校を出ていいお嬢さんと褒められるたび、田園調布の篠田さんみたいな芝生のあるうちへいくのかと思っていたと語る。田園調布で芝生のある家…「おやじ太鼓」の鶴家を思い出す。
アヤにも報告。紀子を東京から離れられない人だと思っていたと言い、なぜか秋田弁で話し出す。紀子も少し秋田弁しゃべった。女学校に秋田の佐々木さんがいたんだって。
謙吉のことは好きでも嫌いでもない。近すぎて気が付かなかった。この人なら心から安心できると思ったと言う紀子。それって好きってことじゃないの？と言うアヤが言う。
アヤのお母さん、女将さんと呼ばれてるから、料亭が何かやってるのかな？ 2階に佐竹と眞鍋が来てるから覗いてみようとアヤが紀子の手を引っ張る。2階の廊下を忍足で歩く紀子とアヤ。
間宮家は決めちゃっていいのかねえとお通夜モード。紀子、帰宅。一人、お茶漬けの準備をして、ダイニングテーブルでかき込む。
浜辺を歩いている紀子と史子。志げたちが子供がいることを心配していることを史子が伝えると、紀子はうまくやっていけると笑顔で言う。紀子は40過ぎてブラブラしてる人より子供でもいる人のほうが信用できると本音を漏らす。浜辺を裸足になって歩いた。
退職の挨拶。俺じゃダメかと最後に売り込む佐竹。眞鍋よりは若いらしい。この組み合わせ「お嬢さん乾杯！」だね！ 今頃気づいた。
間宮家で記念撮影をする。後列に康一、紀子、史子。前例に勇、志げ、周吉、實。紀子は志げと周吉だけでもう1枚撮って欲しいと写真屋さんにお願いした。
その夜、昔の思い出を語る。鎌倉に住んで16年。康一はここで開業するつもりでいる。周吉と志げは茂吉のいる大和で暮らすことにした。私のせいですみませんと涙を見せる紀子。紀子を嫁に出すから、完全に代替わりするということ！？
茂吉の家で暮らし始めた周吉と志げ。家の中から花嫁行列を見て、紀子を思う。幸せだったと語り合う。揺れる麦の穂。(終)
突然の謙吉に驚き。あんまり紀子とカップル感なくて。でも、これまで見た小津作品の中では好きかな。年末に録画したのはあと4本。
