TBS 1969年10月7日
あらすじ
鶴 亀次郎は裸一貫からたたき上げ、一代で築いた建設会社の社長である。ワンマンで頑固一徹な亀次郎は子どもたちに"おやじ太鼓"とあだ名を付けられている。この"おやじ太鼓"、朝は5時に起き、夜は8時になるともう寝てしまうが、起きている間は鳴り通し。そんな亀次郎をさらりとかわす7人の子どもたちに比べて、損な役回りはお手伝いさんたち。ひと言多いばっかりに、毎日カミナリを落とされる。
2023.10.9 BS松竹東急録画。12話からカラー。DVDは第1部の39話まで収録。
鶴家
亀次郎:進藤英太郎…大亀建設株式会社を一代で立ち上げた。62歳。
妻・愛子:風見章子…良妻賢母。57歳。
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長男・武男:園井啓介…亀次郎の会社で働いている。31歳。
妻・待子:春川ますみ…正子の紹介で結婚。
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次男・洋二:西川宏…ピアノや歌が得意。空襲で足を悪くした。29歳。
長女・秋子:香山美子…出版社勤務。27歳。
三男・三郎:津坂匡章(現・秋野太作)…二浪して今は大学4年生。
次女・幸子:高梨木聖…大学4年生。
四男・敬四郎:あおい輝彦…浪人中。
三女・かおる:沢田雅美…高校2年生。
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正子:小夜福子…亀次郎の兄嫁。高円寺の伯母さん。59歳。
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お敏:菅井きん…お手伝いさん。愛子の4つ下。53歳。
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黒田:小坂一也…運転手。
高円寺のおばちゃんは電話の声のみ。子供たちは武男、三郎、敬四郎だけ。
まだ風鈴が揺れる鶴家。「おやじ太鼓」の世界でももう10月に入ったのにね。
電話が鳴り、愛子が出た。まだグズグズしていたのかといらだっている亀次郎。愛子は黒田の車がまだ帰ってこないと返す。
亀次郎「だから、わしと一緒にうちを出ればよかったんですよ」
愛子「そうはいきませんよ。朝は女は忙しいんですよ」
亀次郎「バカなことを言いなさい。うちの用事と息子の一大事とどっちが大事だと思ってるんですか」
愛子は黒田さんが来たらすぐ出かけるという。
三郎はまだ寝てると聞き、今何時だと思ってるんだと怒る亀次郎は、「ここんところちっとも顔を出さないで一体何をしてるのかはっきり聞いてきなさい。たまにはうちへ顔を出すもんですよ」と三郎に言うように愛子に言うが、愛子もまた口がくたびれるほど言っていると反論。
社長室で亀次郎の傍らに立っていた武男は電話を代わるように言う。
愛子は、おばちゃんだって、もうこれじゃとても責任を持てないと怒っていると言っていると武男が代わりに出た。
武男「もしもし、僕です」
亀次郎「そんなことは分かってますよ」
武男は三郎には困る、一度じっくり話したいと愛子に言うが、愛子はお敏を呼んで「向こうが2人がかりならこっちもあんた出てちょうだい」と電話をお敏と代わる。
武男が今夜あたりおばちゃんと2人でうちへ来るといいんだけど、三郎がおっかながっていたら外で会ってもいい、洋二と水原さんのことも詳しく聞きたいし、もし一緒にご飯を食べるって言ったら…などと話していたが、亀次郎がまた代わり、「うちへ来るなり外で武男と会うなり、とにかく一度顔を見せてはっきりしなさい」としゃべりだすので、受話器を持っていたお敏はびっくり。
おばちゃんもいけませんよとおばちゃんに対しての怒りも話しだし、お敏は恐れて愛子を呼ぶが、亀次郎にバレ、「バカ者」とガチャ切りされた。
茶の間にいた愛子はあねさんかぶりで掃除をしていて、「やれやれ、やっと済んだわ」。愛子さんは家ではすっかりブラウスとスカートという組み合わせになったね。黒田さんが帰ってこなきゃどうしようもないとお敏に一服するように言う。
亀次郎の怒鳴り声を聞いていたお敏は一遍に肩が張って疲れたと広縁の椅子に掛けた。
愛子「お敏さんは気がいいのね。本気で聞いてるからいけないんですよ。怒鳴ってるほうは口癖なんですよ。大して腹も立っていないんですよ」
お敏「そりゃ奥さんだからそう言えるんですよ」とそこが夫婦と他人の違いだと言う。「私なんてほんとにつまらない。秋のうちわか秋の風鈴ですよ。もう人からは見向きもされないんですよ」
愛子「いやに哀れっぽいこと言うじゃないの」
お敏「哀れなもんですよ、私なんて。黒田さんが羨ましいようなもんですよ。子供があるわけじゃなし、これから先の楽しみなんてさっぱりないんですからね」
愛子「そんなことあるもんですか。楽しみなんてものはそれぞれその人の心がけしだいよ。思い方ですよ」
お敏「その思い方が問題なんですよ」
愛子「そうですよ」
お敏「私なんてそれこそ…贅沢な楽しみなんてこれっぽっちも望んじゃいないんですからね」
愛子「でもね、お敏さん。深く考えてみれば人間なんてみんな寂しいんですよ」
お敏「あら、そうでしょうか」
愛子「それを深くも考えないでいいかげんなとこで、その日その日を過ごしているんですよ。それでいいんですよ。それでなきゃ、たまらないんですよ。お敏さんはこのごろどうかしたんじゃないの。幸子やかおるまでそう言ってるわよ」
お敏「いいえ。どうもするもんですか。やっぱり秋だからちょっと考えちゃうだけですよ」
秋というけど、お敏は半そで。
愛子「そんならいいけど、お敏さんに寝込まれちゃったら大変ですからね」
お敏「寝るもんですか、この私が。この前寝たのは2度目の更年期ですよ」
愛子「まあ、そんなの聞いたことがないわね」
お敏「冗談ですよ。とにかく天高く馬だって肥えるっていうんですもの。モリモリ食べてるから大丈夫ですよ」
呼び鈴が鳴る。裏門が開いてるのにと見に行くお敏。黒田だと呼び鈴鳴らさずに飛び越えてくるからね。愛子は着替えの準備をしようとする。
帰ってきたのは黒田で「すいません、奥さん」と謝る。愛子は着替えるから一服しててちょうだいと返す。
台所
黒田「お敏さん、俺はもうダメだよ」
お敏「何を言ってるの、出し抜けに」
黒田「子供のことが分かったんだ」
お敏「えっ、どこにいるか分かったの?」
子供の行方は分からないが、女房がどこかへ預けたことは分かった。走っていたら、ちらっと女房の友達だった女を見かけたが、車を止めるところはないし、慌てた。よっぽど行ってからやっと駐車できるとこを見つけ、走って走って追いついて、危うくバスに乗るとこだった…バスに乗りそうな友達を止めたということね?
女房なんかどうでもいいけど子供に会いたいと思う黒田だが、その友達は5000円だか貸した金がもとでケンカになり、そのあとのことは知らないと言われた。子供を預けたことは知っているが、横浜だというだけ。女房はとっくに横浜にはいないので子供が本当にいるか分からない。しかし、子供だけはなんとしても捜したい。
お敏は横浜じゅうの警察へ行ってくるといいと言い、黒田は今度の日曜日に行くと言う。お敏はひと事とは思えないから一緒に行くと言うと黒田はお敏をじっと見つめる。
インターホンの呼び出し音が鳴り、お敏が出た。「もしもし、どなた様ですか?」
女性「あら、嫌だ。様だなんて」
お敏「もしもし、では、どなたですか?」
女性「照れちゃうわ。道でしゃべってるの。もしもし、そっちには聞こえてるの?」
お敏「ええ、聞こえてますよ」
女性「私、浜松から来たんです。ちょっとお願いがあって」
お敏「あらまあ、あの…浜松のどなた様ですか?」
女性「鈴木一造(いちぞう)の娘です。先日、お墓参りをしてくださったでしょ」
着物に着替えた愛子が茶の間から、黒田も台所から出てきた。
お敏は浜名湖のお墓の娘さんだと伝えた。
愛子「まあ、わざわざお礼を言いに来たのかしら」
お敏「いいえ。お願いがあるとか言ってましたよ」
愛子は広間へお通しするように言い、黒田にはお茶菓子がないから隣に何かもらってくるように言った。
電話が鳴り、愛子が出た。
正子「あっ、お母さんね」←お母さん!?
愛子はこれから伺おうと思ってたと言うが、三郎が顔を洗ってるとばかり思っていたが、いなくなったと言う。
そこにお敏が「大変ですよ」と駆け込んできた。外人かと思った、とてもまともな女じゃない、頭の毛は金髪で長いつけまつげをしていた。あんな人、広間へ通すんですか?とまだ門の前に待たせている。
愛子「通さないわけにはいきませんよ。早く行ってらっしゃい」
お敏「まあ、気色の悪い。私、あんな人真っ平ですよ」
愛子「早く行ってらっしゃいったら」
お敏「嫌ですね、ほんとに」
再び正子の電話に戻る。浜松からお客様が見えたけど頭を金髪にしてると愛子が言うと、「えっ? 金髪なの?」と驚く。正子は会わない方がいい、三郎もいないし、当分うちへは来ない方がいいわよと電話を切ってしまった。
黒田が隣から堅焼き煎餅を持ってきた。
お敏が連れてきた女性は金髪、ピンクのワンピースに緑系のスカーフをネクタイみたいに巻いたド派手な格好をしている。黒田にお父さんの親友の娘さんだと言う愛子。
台所
黒田「ひどいですね、あれじゃ」
愛子「死んだ人こそ、いい面の皮ですよ。まさかあんな娘になると思って、おんぶしたりだっこしたわけじゃありませんからね」
黒田「イッちゃんっていう人はどこまで運が悪いんだろ。あれじゃ死んでからまで腹が立ちますからね」
台所に戻ってきたお敏が女性を実況。広間に通されると、腰に手を当ててグルって見回し、あっ、ちょっといいわね、このうちは。さすがにお墓を寄付してくれる人は違うわよねと言った。愛子はお墓を寄付という言葉にショックを受ける。お敏に対してもいい婆やさんらしいけど、このうちもう長いの?と聞いてきた。
愛子「お願いがあって来たなんて、一体どんな用件かしら」
お敏「タカリに決まってますよ」
黒田「お墓を建ててもらえるからつけあがって来たのかな」
お敏「そうですよ。そういう女ですよ」
呼び鈴が鳴り、黒田が出た。
愛子はとにかく出なきゃと行こうとするとお敏が「気を強く持たなきゃ、とてもダメですよ」とアドバイス。
愛子「大丈夫よ。まさか鬼や大蛇が来たわけじゃないでしょ」
お敏「とんでもない。ああいう女にかかっちゃ、鬼だって大蛇だって顔負けですよ」あんな女には日本茶なんかもったいないとティーカップを用意していると、敬四郎が帰ってきた。
敬四郎「やあ、お敏さん」
お敏「また今日もお昼寝ですか」
敬四郎「やっぱり我が家はいいよ。お敏さんもいるしね」
お敏「まあ、お口がうまい」
あとから入ってきた黒田はバッグを両手に抱えていて、敬四郎が部屋に置くよう指示。引っ越しみたいと言うお敏にホテル辞めたんだとサラッという敬四郎。
広間
アイ子「そんなわけなんです。私、切なくて切なくて悩んだんです。どうしようかと思って…」
愛子「それで訪ねていらしたんですか?」
アイ子「そうなの。ちょっと厚かましいような気がしたんですけど、そうは言っても他に頼るところもないし。あっ、そうそう、その男、隣の部落の土地ブローカーなんです。だから、お墓を建てる話なんか真っ先に耳に入っちゃったんです。もっとも村じゅうの評判なんです」
愛子「その男の人が行ってこいって言ったんですか」
アイ子「まあ、それもあったけど、あたくしも一遍お礼を言わにゃ申し訳ないでしょ」
お敏がコーヒーを持ってきたので愛子が驚く。「はい。お客様はそのほうがよろしいかと思いまして」
愛子はコーヒーとお煎餅じゃ変だと言うが、アイ子はコーヒー大好き、ちょっとコーヒー中毒ねと気にしない。「お店がお店でしょ。昼間は喫茶なの。よく飲むわね。もっともウイスキーかブランデーを入れるけど」
愛子「じゃあ、物足りないかしら」
アイ子「いいえ、いいのよ、いただきます」
お敏は敬四郎が来ていると愛子に知らせた。「どうぞあたくしならご遠慮なく」というアイ子の言葉に甘えて広間を出る愛子。お敏も続けて出ようとしたが、アイ子にタバコを求められ、前掛けのポケットに入れたタバコを出した。
アイ子「あら、ハイライト吸ってるの? しゃれてるわね、ハハハハ…」
黒田がハイライトだからお敏さんも同じのにしたのかなと思ったけど、もしかしたらスポンサー? あ、日産の一社提供だった。
鈴木アイ子:坂上和子…阪上和子という名で「本日も晴天なり」や「はね駒」に出演。
台所
愛子にホテルを辞めたことを報告する敬四郎。黒田も聞いてる。愛子はため息をつき、黒田は敬四郎の洗濯物を持って洗濯場へ。黒田は台所の窓側のほうへ移動した。え、こっちに洗濯場があるの?
愛子「三郎のこともあるし、困ったわね。またあんたまで」
敬四郎「調理場へ入れると思ったら最初からつまずいちゃったんですよ」
愛子「違いますよ。辞めちゃったからつまずいたことになるんですよ。調理場へ回されるまで我慢していれば、つまずいたことにはなりませんよ」
敬四郎「ダメなんですよ、僕には。ホテルのボーイなんて性に合わないんですよ」
愛子「合わないものを合わしていくのが努力じゃありませんか。そうそう性に合った仕事ばっかりしている人ありませんよ」
敬四郎「いや、だけどですよ…」
お敏が台所へ来て、あきれて息が切れて心臓が止まりそうだと報告に来た。人のタバコを吸ったあげくに、給料まで聞いてきた。それどころじゃないと言う愛子に、「そうそう、あっちもこっちも大変ですよ」とお敏。「どういう日なんでしょうね、今日は。三隣亡じゃないんですか」。
1969年10月の三隣亡は6日(月)、10日(金)、22日(水)。
電話が鳴る。武男からの電話。愛子がまだ出かけてないとお敏から聞き、驚く。お敏から愛子に電話を代わり、武男も亀次郎に電話を代わる。
愛子「あっ、お父さん? 大変なお客さんが来ちゃったんですよ」
亀次郎「なんですか、大変って」
広間
アイ子「ダメかな。5万円ぐらい軽いんだけどな。それにしても失礼ね。人を置きっぱなしにしといて」
黒田が「やあ、いらっしゃい」と入ってきた。
お煎餅をかじりながらソファに持たれていた愛子は姿勢を正して「こんちは」。
黒田はソファの向かいではなく椅子に掛けた。
黒田「なるほどね、大した金髪じゃないの」
アイ子「そう? どうもありがとう」
黒田「浜松は田舎だと思ったけど、なかなかすごい女の人がいるんだな」
アイ子「そりゃいるわよ。浜松だって結構田舎じゃないわよ。それよりあんた誰なの? このうちの息子さんじゃないんでしょ」
黒田「まあね、運転手だけどね」
アイ子「どうりで。どうもそんなことじゃないかと思ったわ。私、男を見る目は肥えてるのよ。私、お店ではアイ子っていうの。カタカナよね。アイちゃんって言う人もいるわ。フフフッ。ちょっとモテちゃってねえ。どう? あんたもこれ食べたら」
黒田「僕はいいよ」
アイ子「おいしいわよ。ちょっと硬すぎるけど。私、前歯3本差し歯でしょ。おっかないのよ。でも、よく出来てるのよ、この歯」と見せびらかす。確かにキレイ。「随分お金取られちゃったのよ。でもね、これが元手みたいなもんですもんね。いいのよ。それはそうとタバコ1本くれない? 困っちゃってるの、さっきから」
黒田がポケットからハイライトを差し出すと、手を握って受け取るアイ子。「何よ、そんな目で私を見て」
黒田「つい見たくなるんだよ」
アイ子「やだわ、フフッ」ウインクして「ダメよ、ポーっとしちゃ。火をつけてちょうだい」と差し出した手を「自分でつけなよ」と押し返す黒田。
アイ子「あら、冷たいわね」
黒田「当たり前だよ。君にイカれる男の気が知れないよ」
アイ子「おやまあ、大きく出たわね」
黒田「大きく出たのは、お前のほうじゃないのかね」
アイ子「何よ、その言い方は」
黒田「なんだよ、その頭は」
アイ子「なんですって!?」
黒田「なんですはこっちの言うことだよ。5万円ねだりに来たそうじゃないか」
アイ子「大きなお世話ですよ」
黒田「男と別れる手切れ金だって? ちゃんちゃらおかしいこと言うなよ。ちょっとはモテちゃうおねえさんにしちゃ随分しみったれたタカリじゃないか」
アイ子「何よ、あんた。偉そうな口を利いて。あんたなんかに言われることないわよ。早く奥さんだか社長さんだか呼んでらっしゃいよ」
黒田「とうとう本性を暴露か」
アイ子「ええ、そうですよ。遠州っ子はね、女だって気が荒いんですからね。見損なってもらっちゃ困るわよ」
雄一も「お里は遠州浜松在」と言ってたけど、歌舞伎のセリフか。
黒田「ハハハハ! ああ、おかしい」
アイ子「何さ、そのバカ笑いは」
黒田「だっておかしいじゃないか。頭は金髪でさ、顔はまるっきり日本人もいいとこだよ。ほら、つけまつげが片っぽ落っこちそうになってるよ」
アイ子「なんて失礼な男かしら。まるでエチケットなんか知らない男だから」とコンパクトでチェック。
黒田が笑っていると、愛子が「何を笑ってるんですか?」と入ってきた。
アイ子「私、こんな失礼な男知らないわ」
黒田「おかしくて、おかしくて」
アイ子「私、帰ります。何さ、死んだおやじの墓を頼んでくれたぐらいで。そんなこと私はちっともありがたかありませんからね。墓参りするだけ世話が焼けますよ」
広間から出ていこうとするアイ子を愛子が止めた。
アイ子「いいえ、結構。私にだってプライドがありますからね」
黒田は帰るって言うなら帰ってもらったほうがいいと言う。
黒田「しかし、奥さん」
愛子「いいんですよ、黒田さん」
アイ子「なんだ、黒田か。どうりで腹の黒そうな顔してるわ」
黒田「なんだと、貴様…」
愛子「いいんですったら」今、亀次郎と電話で話したこと、同じアイコという名前であると言い、もう一度機嫌を直してこっちへ掛けてくださいなと頼む。「お父さんもイッちゃんの娘さんならひと目会いたいって言うんですもの」
黒田「社長がそう言ったんですか」
愛子「ええ、言いましたよ。どんなに立派に成長したかぜひ一度お目にかかりたいんですって。ああ、それから黒田さんね、今、お父さんね、私を待ちきれなくて洋二のアパートに出かけたの。あんたにすぐ迎えに来てほしいって言ってたわ」
タクシーが「スポーツ用品かどや釣具」という看板のかかった店の前で止まる。タクシーを降りた亀次郎はあたりを見渡し、歩き出そうとしたところ、金髪でサングラスをかけた青年とぶつかった。
亀次郎「あっ、失礼」
男性「ああ…ノーノー!」
しかし、サングラスを外すと金髪の三郎!「あっ…なんですか、お父さん」
亀次郎「なんですか、その頭」
三郎「あっ、しまった。バイバイ!」
亀次郎「待て、こら! こら!」
三郎「へへへ…わあ!」
亀次郎「待たないか! こら!」
三郎「あっ、あっ、あっ…バイバイ」
鶴家に電話。「愛子を呼びなさい、愛子を」という亀次郎からの電話に「はい! あっ、あの…どっちのアイコ様ですか?」と聞いちゃうお敏。
亀次郎「バカ者。うちの愛子さんは1人ですよ」
敬四郎と茶の間にいた愛子がお敏と電話を代わる。
敬四郎「やっぱり今日は三隣亡かな」
愛子が電話に出ると、お前は三郎の頭を見たのか?と怒っている亀次郎。金髪ですよ、と言われてアイ子と勘違いする愛子。
亀次郎「その金髪とは金髪が違いますよ」
愛子「違いやしませんよ。まだ見ないくせに何を言ってるですか」
亀次郎「バカのおたんこなす。わしははっきり見たんですよ。気が遠くなって道に倒れそうでしたよ」
愛子「何をガミガミ言ってるんですか。血圧が上がってるんじゃないんですか」
亀次郎「上がって下がって気が変になりますよ。一体三郎の頭、あれは何だ?」
愛子「えっ、三郎の頭がどうかしたんですか?」
亀次郎「どうかしたじゃありませんよ。あれじゃまるで…ですよ。猫かき病の猫ですよ。お前はあんな金髪の息子を産んだのか」←…は定番?のキ〇〇〇か?
どうかしてるんじゃないかと疑う愛子だったが、三郎の頭が金髪とようやく信じた。
亀次郎「わしは洋二のアパートに行こうと思ってぶつかったんですよ、外人に」
愛子「その外人が三郎なんですか」
亀次郎「ノーノーバイバイで逃げていきましたよ。そりゃそっちにも金髪がいるかもしれないけど、まさか自分の息子が金髪になったわしの気持ちにもなってみなさい。それも人通りの激しい横丁ですよ。もしもし!」
愛子「はい、お父さん」
亀次郎「大丈夫か、お前は」
愛子「いえ、フラフラっとして…」
亀次郎「こら、愛子。しっかりしなさい。こら、愛子!」
ここまで赤電話で話す亀次郎からのアングル。
ここから鶴家の愛子からのアングル。愛子は涙ぐんでいる。「アイコはもう真っ平です。お父さんの昔の友情も結構ですけど」
亀次郎「愛子、大丈夫か?」
愛子「(涙を拭きながら)お父さん。せっかくの好意があんなふうに裏切られると…」
亀次郎「そんなことはいいんだ。お前、イッちゃんの娘に金をやったのか?」
愛子「はい、あげました。お父さんの言うように10万円あげたら、それでも気がとがめたんでしょうか。しばらくじっとうつむいていてなんにも言わないで涙を拭いていましたよ」
亀次郎「そうか、涙を拭いていたか。うんうん」←笑顔。
愛子「それでどうしてもお父さんにお礼を言いたいって黒田さんと一緒にそっちへ行きましたよ。はい、ええ、そうですね」
台所で話を聞いていたお敏が涙を拭き、じっと聞いていた敬四郎も目頭を押さえる。
愛子「三郎も何か芝居をするのでそんな金髪にしたんでしょう。おばちゃんだってきっと困っちゃってうちへ来なかったんですよ。でもね、お父さん、洋二もそうでしたけど敬四郎のこともありますしね。子供たちの好きなようにさせてやりましょうよ。どうしても親は結局、子供たちの尻拭いをするしかありませんよ。それでなきゃ子供たちは育たなかったんですからね」
風鈴が揺れてつづく。
愛子は亀次郎の好意が無碍にされて悔しかったんだろうけど、案外亀次郎のほうはそういう裏切りには何度も遭っているのかも。それでもああやってお金を渡すこともあるんだろう。
そういえば、イッちゃんは亀次郎と愛子が出会う前に亡くなったと思い込んでいたけど、あの赤ちょうちんはこれから田舎に帰るという別れで徴用だの空襲だのはもっと後の話ってことなんだよねとやっと理解(-_-;)
あしたで終わるってのに何がどうなるのー? ただ日常の続きだから幸子も三郎も就職は決まらないし、秋子と神尾も結婚しないし、洋二もあのままで待子の子供もまだ生まれないし、あれから〇か月後という展開にはならないと思うけどね。
第二部は親離れ子離れがテーマだったのかきょうだいが揃わないことが多くて寂しかったな~。7人そろった回ってあったかな? 誰かしらいないことが多かったように思う。
土曜日に「3人家族」、日曜日に「二人の世界」の再放送が始まりました。週1の再放送だから、リアルタイムと同じ半年かけての放送になりそうで、見た記憶も新しいし、スルーしようかなと思ったんだけど、週1の30分ならリアルタイム視聴は難しくても、いつでも見られるだろうと録画することにしました。何度見ても面白い。役者がかぶってるから混乱しそうではある。