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【ネタバレ】木下恵介アワー「おやじ太鼓」 #62

TBS  1969年9月23日

 

あらすじ

 

鶴 亀次郎は裸一貫からたたき上げ、一代で築いた建設会社の社長である。ワンマンで頑固一徹な亀次郎は子どもたちに"おやじ太鼓"とあだ名を付けられている。この"おやじ太鼓"、朝は5時に起き、夜は8時になるともう寝てしまうが、起きている間は鳴り通し。そんな亀次郎をさらりとかわす7人の子どもたちに比べて、損な役回りはお手伝いさんたち。ひと言多いばっかりに、毎日カミナリを落とされる。

2023.10.5 BS松竹東急録画。12話からカラー。DVDは第1部の39話まで収録。

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鶴家

亀次郎:進藤英太郎…大亀建設株式会社を一代で立ち上げた。62歳。

妻・愛子:風見章子…良妻賢母。57歳。

*

長男・武男:園井啓介…亀次郎の会社で働いている。31歳。

妻・待子:春川ますみ…正子の紹介で結婚。

*

次男・洋二:西川宏…ピアノや歌が得意。空襲で足を悪くした。29歳。

長女・秋子:香山美子…出版社勤務。27歳。

三男・三郎:津坂匡章(現・秋野太作)…二浪して今は大学4年生。

次女・幸子:高梨木聖…大学4年生。

四男・敬四郎:あおい輝彦…浪人中。

三女・かおる:沢田雅美…高校2年生。

*

お敏:菅井きん…お手伝いさん。愛子の4つ下。53歳。

*

黒田:小坂一也…運転手。

 

浜松市

黒田が運転する車がホテル前に止まる。唐突な旅行回。木下恵介監督が浜松出身なのね。お敏が以前、「ちんぷりかえっちゃって」と静岡の方言を口にしてたのはそのせいなのかも?

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亀次郎、愛子の部屋は広々。ボーイが鍵をテーブルに置き、バスとトイレの場所を説明し、部屋から出ていこうとしたところに愛子がボーイの尻ポケットにチップをいれた。

 

ボーイが部屋を出ていくと、

亀次郎「いいんですよ、チップは」

愛子「そうは言ってもあげたほうがいいんですよ」

亀次郎「チップのいらないのが日本のホテルのいいとこですよ」

愛子「いい悪いじゃありませんよ。気持ちですよ」

亀次郎「ホテルはちゃんとサービス料が決まってるんですよ。それを自分がいい気持ちになろうと思って。大体、人にお金をあげるなんて思い上がりですよ」

 

愛子はバスルームに入り、亀次郎は自らコップに水を注いで飲もうとしていたところにチャイムが鳴り、かおるが「あら、いい部屋じゃないの」と入ってきた。「お前の部屋はどうだ」と亀次郎が聞き、「見にいらっしゃいよ」とかおるが答え、亀次郎が部屋を出ようとするとバスルームから愛子が顔を出し、急いでシャワーを浴びるという。

 

かおるはお敏と同じ部屋だが、チャイムを鳴らしても部屋が開かない。亀次郎は801号室の黒田の部屋をノックするとかおるはこのボタン押すのとチャイムを鳴らす。黒田が出ると亀次郎とかおるは部屋の中へ。黒田は「僕にはちょっともったいなかったですね」と恐縮するが、「いいさ、いいさ、たまの旅行だよ」と亀次郎は機嫌がいい。

 

かおるはトイレをしに部屋を出ていくが、「お敏さんまだトイレよ」と黒田の部屋のトイレに入る。かおるって無邪気だな~。黒田ってなんか怖いんだもん。

 

亀次郎「おい、鍵を持って出なきゃダメですよ」←今回のネタふり。

 

黒田の部屋を出た亀次郎は自分の部屋に戻ろうとしたが、手前のお敏とかおるの部屋のチャイムを押す。お敏にすぐ出かけるから水ぐらい飲んどきなさいと注意するが、ちょっと遠いから水は半分ぐらいにしときなさいと訂正。「女は近くていかんよ」←おばちゃんとの旅行で懲りた?

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亀次郎が部屋に戻ろうとしたが、愛子がシャワー中で部屋に入れない。自分だって鍵持ってないということだね。黒田の部屋から出て来たかおるは亀次郎に私の部屋に来ない?と誘う。お敏とかおるの部屋はこぢんまりして寝るには十分。

 

お敏「だけどあれですね、ドアを開けたり閉めたり、なかなか忙しいもんですね。ホテルというのは」

亀次郎「バスの使い方なんか気をつけなきゃいけませんよ」

お敏「はい」

かおる「スリッパのまんまで廊下へ出ちゃいけないのよ」

お敏「はい」

亀次郎「日本人はそういうエチケットがなっちゃいないから気をつけなさい」

お敏「はい」

 

シャワーを浴びて、かおるたちの部屋に入ってきた愛子はスリッパで出てきて亀次郎に指摘される。しかし、部屋に戻った愛子はドアが開かずに困惑。

亀次郎「このボタンを押すんですよ」チャイムが鳴る。816号室か。

愛子「ボタンを押したら誰が出てくるんですか?」

亀次郎「あっ、そうだ。お前、鍵を持って出なかったのか」

愛子「あら、ついうっかりしちゃって」

亀次郎「だからボーイがちゃんと言ったじゃないか、ここへ置きますって」

愛子「うっかり出ちゃったんですよ、持たないで」

亀次郎「チップなんかを気にしてるからですよ」

愛子「隣の部屋から帳場へ電話しますよ」

亀次郎「帳場じゃありませんよ、フロントですよ」

 

車は浜名湖周辺を走る。車を止め、地図を片手に車を降りて走る黒田。車内は助手席が亀次郎、後部座席に愛子、お敏、かおるが並ぶ。

愛子「やっぱり忘れっぽくなったんですね。さっぱり覚えていないじゃありませんか」

亀次郎「ゆっくり捜しゃいいんですよ。浜名湖を1周してると思やいい見物ですよ」

お敏「ほんとにおかげさまでいい保養ですわ。これというのも亡くなった人のおかげですよ」

 

かおるから先祖の墓参りしてるか聞かれたお敏はそれがさっぱりなんですと答えた。

亀次郎「そんな了見じゃいい縁談は降ってきませんよ。どうしたんだ? 寿司屋の縁談は」

お敏は断るのは簡単だとやめちゃったんですよと話し、かおるには簡単に断られたんじゃないのとツッコまれる。お敏は向こうはどうしてもどうしてもとしつこく、断るのに困ったくらいだと言う。

お敏「あんなケチな男の所へおいそれと行けますか」

亀次郎「何を御託を並べてるんだ、いい年をして。それよりも黒田君を見てきなさい」と言われて、お敏が出ようとしたが、ドア側にいたかおるが外に出た。黒田は地元の人に道を聞いている。

 

お敏「だけどあれですね。いいお彼岸ですね」

愛子「よかったわ。天気がよくって」

お敏「いいえ。それよりも何よりも気持ちがいいじゃありませんか。秋のお彼岸に昔のお友達のお墓参りをするなんて。ねえ、旦那様」

 

秋のお彼岸ということは1969年9月23日(火)でこのドラマの放送日。

 

亀次郎「懐かしいよ、昔の友達は」

愛子「いい人ほど早く亡くなっちゃうんですね」

お敏「そうなんですよ。やっぱり気の優しい人は影も薄いんでしょうか」

愛子「さあねえ」

お敏「それにしてもまあ旦那様のおつむの黒々となんて濃いんでしょう」

亀次郎「なんですか、その言い方は」

お敏「いえいえ、影が薄いのと髪の濃いのとは関係ございませんよ」

亀次郎「当たり前ですよ」

かおると黒田が走って戻ってきて、場所が大違いだったと分かる。

 

浜名湖が見える山の上に墓参りに来た亀次郎一行。

亀次郎「これがイッちゃんのお墓ですか?」

女性「はあ、さっきもお話ししたようにこんな哀れな姿になっちまって」

 

大きめの石が置いてあるだけの粗末な墓に亀次郎は涙ぐむ。

 

かおる「ひどいわね、これじゃ」

愛子「なんてあきれた話でしょう」

亀次郎「わしが戦争の終わったあとでお参りに来たときは、ちゃんと立派なお墓が立っていたんだ」

女性「かわいそうに、イッちゃんは。生まれたときから不幸せな人だでね、やっと幸せになりかかったら徴用に取られた先で空襲でやられちまってね。その上、死んでからまでひどい目に遭うんだもの。実の女房と義理の弟ですからね。お墓を売り飛ばしたのは」

お敏「人のことでも腹が立ちますわ。だって義理の弟とはいえ、そのイッちゃんっていう人は養子なんだから、その弟さんのほうがちゃんとこのお墓を守っていく人なんでしょ。その人がお父さんやお母さんのお墓を売り払っちゃうなんて」

愛子「それも自分が建てたお墓じゃないんですものね」

 

女性「なまじっか実の子が生まれなきゃよかったですよ。イッちゃんを養子にもらってから5~6年あとだったかしらね。それくらい年が違ってましたよ」

亀次郎「イッちゃんはその弟のためにうちを飛び出したんだ。養子の自分がいちゃ邪魔だと思ってね」

女性「私はただ隣に住んでただけだから、とやかく言うわけにはいかなかったけど、そりゃ実の息子よりイッちゃんのほうがよく出来てたでね。第一、親思いでしたよ」

亀次郎「思い出すよ。イッちゃんと別れた最後の晩のことを」

 

浦辺粂子…お墓を案内してくれた女性。この時代からおばあちゃんで驚いた。その上、進藤英太郎さんより年下で当時67歳。その後、80年代にバラエティによく出演されていた。

 

赤ちょうちんの屋台。雪がちらついている。

一造「亀さん、あんたと別れんのはつらいけどまた折があったら訪ねてきてくれよ。俺の故郷は浜名湖のすぐ近くだ。いい景色のとこだぜ。なっ、一度ぜひ来いよ。なっ」

 

なみなみ注がれたコップ酒を持った手だけが大写しになる。戦中くらいの時代設定だけど、屋台のおでん鍋がスチール?で新しく感じる。

 

亀次郎「寒い節分の夜だったよ。あしたっから春になるんだから俺もこのへんで田舎へ帰ってけじめをつけようかって…」

 

屋台で飲む一造。「弟のやつがしょうがねえんだ。また年取ったおやじ、ほっぽり出してどっかへ飛び出していきやがった。もう50を超してからの畑仕事はえれえもんな。おっ、それによ、俺もやっとこさ金もたまったんだ。おう、飲みなよ。あっ、おやじさん、ほれ、ぼんやりしてねえでどんどんついでくれよ、ええ?」

店主「へいへい、つい話に聞き惚れちまって」

一造「苦労したんだよ、俺は。なあ、亀さん。おめえも知ってるよな。俺がさ、どうかしておふくろの墓を建ててやりてえと思って頑張って頑張って、やっとその金がたまったんだ。おふくろさんは本当にいい人だったよ。仏様みたいな人だった。自分の子供が生まれたのになさぬ仲のこの俺をだよ、自分の子供はぶったって、この俺には一度だって手上げたことはなかったもんな。

そうそう、ハハハ…たった一度だけこっぴどくどやされてぶん殴られたことがあったっけ。ありゃ、俺が11のときだった。ヘヘッ、すっかりひがんじまってな、夜になってから浜名湖の沖へ舟こぎだしちゃったんだ。村じゅう、もう大騒ぎで捜したらしいよ。明け方、舘山寺(かんざんじ)の沖でめっかっちゃってさ、村の人の舟で連れ帰られたら…いや、あれには驚いたよ。岸で待ってたおふくろがいきなり水ん中へ飛び込んできて、もうもう怒鳴られてひっぱたかれて、ハハハハ…。おふくろも泣くし、俺も泣くしよ」

コップ酒を一気飲み。

一造「俺はあんときぐれえ、おふくろをありがてえと思ったことはなかった。なあ、亀さん、そのおふくろの墓をやっと建ててやることができるんだよ。おふくろが死んだのはもう10年も前だもんな。いまだに仮の墓じゃ申し訳なくて、俺はそのことばっかり苦になってたんだ。それがやっと建つんだ。それだって俺はちっちゃい墓なんて真っ平だぜ。おう。俺はな、いろんなとこ歩いてるうちに研究したんだ。墓っちゅうのは黒い石はいけねえ。だから俺は小松石で建てようと思うんだ。小松石ってのは、お前、御影石よりも上等なんだぜ。なあ、亀さん、俺のおふくろは特別上等だ。なっ。そのぐらいの石でなきゃ似合わねえよ。そうだろ、亀さん。ハハハハ…」

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神奈川県の真鶴でしか採れない希少な石。

 

初登場のイッちゃんがしゃべるしゃべる。橋本功さんは1941年生まれだから、さすがに若作りした亀次郎と並ぶと年の差が出るからイッちゃんの一人しゃべりになったんだろうか。武男役の園井啓介さんや洋二役の西川宏さんより実年齢下だけど貫禄あるし、演技に引きつけられた。さすが、俳優座

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「若者たち」では次男の次郎。両親を亡くして、長男次男は貧乏で学歴もなく一生懸命働いているという役どころ。三郎は大学生、末吉は浪人生。オリエは家事や工場勤めなど。同じ時代、同じ兄妹たくさんの家でも「おやじ太鼓」とは大違いの世界。

 

墓の周りを掃除する亀次郎たち。こういう時、亀次郎も率先してやるからいい。

女性「ああ、こんなにしてもらってイッちゃんもどんなにか喜んでますに」

亀次郎「いやいや、イッちゃんはどれだけしたって恩が返せるってもんじゃないんだ。荒っぽい土方仕事をしていると生かすの殺すのってくだらないケンカもしょっちゅうだ。そんなとき、いつもわしたち2人はお互いをかばってね。たった2人で5~6人を相手に暴れたこともよくあった。イッちゃんはわしより小粒だったけどね、柔道の手を知っていたんだな。いや、年はわしと同じで若いほうだったが、いやあ、見事だったよ。ヒゲ面の荒くれ男をつかんでは投げ、つかんでは投げ。とにかくイッちゃんに腕をつかまれたら、もうダメなんだ。ハハハッ。おかげで危ないとこを何度助けてもらったか分かんないよ」

 

イッちゃんに負けじと長セリフだな! 

 

かおる「じゃあ、お父さんは弱かったの?」

亀次郎「弱いもんですか。お父さんのバカ力は有名だったんだ。ブイーンと一発くらわすと大抵のやつは2~3軒向こうにすっ飛んで目を回したもんだ。そこをお父さんはすかさず駆け寄って、この足でゴイーンと頭を踏んづけてやるんだ」

愛子「およしなさいよ、そんな話は。親が子供に話すことじゃありませんよ」

亀次郎「何がいけないんだ?」

愛子「そんな強がりはいけませんよ。暴力ですよ」

亀次郎「暴力は相手の側ですよ。このイッちゃんとその無法と戦ったんですよ」

 

お敏「つまり男の中の男ですわ」

亀次郎「そうさ」

愛子「あんまりおだてに乗せるようなこと言っちゃいけませんよ」

お敏「だって奥様…」

亀次郎「おだてなんかに乗りますか。なあ? 黒田君」

黒田「はあ」

亀次郎「こういう話は男同士でなきゃ分からないんだ」

 

かおるは私には分かるというと愛子は「あんたは男みたいだからですよ」といい、かおるはお得意の「まあ、失礼」。

お敏「まだ中途半端なんですよ、かおるさんは。ねっ、黒田さん」

かおる「とんでもない。認識不足もいいとこだわ。ねっ、お父さん」

亀次郎「さあ、どうかな」

お父さんたらとポンと肩を小突くかおる。こういうことができるのはかおるだけって感じがするな。亀次郎も「こら、痛いよ」と軽く言うだけ。

 

女性「フフフッ、まあまあ皆さん、面白い方ですね」

愛子「いつもこれなんですよ」

女性「イッちゃんがお墓ん中で笑ってますよ、きっと」

亀次郎「笑っててくれりゃいいけど、このありさまじゃ泣いてるかもしれないよ」

 

愛子「そりゃそうと子供さんはなかったんですか?」

女性「あったんですよ。1人、女の子でしたがね」

亀次郎「その子はどうしたんだね?」

女性「おかみさんの在所へ預けっぱなしですよ。その足で2人で逃げちゃったんですからね。もうその前にうちも畑も売り飛ばしてましたからね」

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お敏「行きがけの駄賃にお墓まで売っちゃったのかしら」

女性「それが分かったのはずっとあとなんですよ。びっくりしたんですよ、みんな」

亀次郎「おばあちゃん、石屋はこの近所にあるかね?」

女性「はあ、この近所にはないけど舘山寺の向こうの部落にありますけどね」

亀次郎「そうか。それじゃ、帰りに寄って頼んで行こう。確か小松石だと言っていたよ。そうだ、それが何よりの恩返しだ。なあ、愛子。よかったな、わざわざ来て」

愛子「お墓を建ててあげるんですね」

亀次郎「そうさ。無事でお前と巡り合えたのもイッちゃんのおかげだからな。お前と初めて会ったのはイッちゃんと別れたあと、1年ぐらいしてからだったかな」

 

お敏「いいロマンスじゃありませんか。ねえ、黒田さん」

かおる「つまりそういうわけで私が生まれちゃったのか」

お敏「そうですよ」

かおる「そういうわけでお敏さんと黒田さんも巡り合っちゃったのよね」

黒田「とんだ悪縁ですよ」

お敏「まあ言うわね、あんた」

女性「縁というものは不思議ですよね」

亀次郎「だから縁というものは粗末にしちゃいけませんよ」

 

黒田は車をこの下まで持ってきておくと言って先に行った。亀次郎はもう一度お参りをして帰ろうとお墓の前にしゃがむ。

愛子「だけど黒田さんはどんな気がしたでしょうね。黒田さんもこのお墓の人も同じように奥さんに裏切られて、それに子供が1人あったことも同じだし」

亀次郎「いい男だよ。さあ、お前ももう一遍お参りしなさい」

愛子「はい」

黒田の後姿を切なげに見つめるお敏。

 

ライトアップされた浜松城

部屋に戻ってきた亀次郎と愛子。

亀次郎「さあ、何かおいしいもんでも食べなきゃ」

愛子「黒田さん疲れたでしょうね。東京から走りづめで」

亀次郎「やあ、今日はうんとごちそうしてやんなきゃ」

 

しかし、亀次郎たちの部屋に来たかおるはお敏さんと黒田さんは気楽で安上がりだから勝手に外行ってご飯を食べたいと言っていたと伝えに来た。愛子は話を聞きに隣の815号室へ。お敏が招き入れると部屋には黒田もいた。

 

黒田は街をプラプラ歩きたいと言い、かおるも行きたがるが、愛子は食べてからでも行けると言う。しかし、8時過ぎたらどこだって店が閉まってしまう。浜松といえばうなぎだとお敏は目を輝かせるが、黒田はうなぎじゃなくたってと言い、愛子はうなぎなら田園調布にだってあると言う。

 

チャイムが鳴り、亀次郎が入ってきた。黒田はホテルの食事は高いからもったいないと亀次郎に言い、お敏も私たちなんてどんぶりもんでいいとし、亀次郎はそれも気楽でいいだろうとにっこり。愛子がお小遣いを持ってらっしゃいと部屋にお金を取りに行った。黒田は遠慮するが、亀次郎はうんとごちそうしてやろうと思ってたんだと言う。

 

亀次郎が部屋を出ると、愛子に鍵はどうしたか聞かれた。

亀次郎「知りませんよ。鍵なんか」

愛子「知りませんじゃありませんよ。また入れないじゃありませんか」

亀次郎は驚き、愛子からスリッパを履いていることを指摘される。「つい、うっかりすることだってありますよ」

 

街の寿司屋

並んでカウンターで酒を飲みながら寿司を食べる。いつかお寿司をおごってもらったからと今日はお敏のおごり。

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お見合いのことを言われたお敏は「やあね、変なこといつまでも覚えてないでよ。それにね、あんた、いつまでもおばちゃん、おばちゃんって言うのはやめてよ。孫か息子と一緒にいるみたいで変な気がしてくるわよ」

黒田「だって息子ぐらいの年じゃないか」

お敏「やんなっちゃうわね」

 

黒田とお敏はパチンコ屋へ。立ってやるやつ。

三百六十五歩のマーチ

三百六十五歩のマーチ

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店では「三百六十五歩のマーチ」が流れる。1968年11月10日発売だから、もうすぐ発売から1年というところか。

 

お敏はビギナーズラックで大当たり。黒田に玉を分ける。

黒田「ついてるんだね、おばちゃんは」

お敏「そうね。浜松、大当たりよ。だけど、黒田さん、そのおばちゃんはやめてよ」

 

ムーディーなバーへ。

お敏「ああ、いいわね。世の中にこんな楽しいことがあるなんて知らなかったわ。どうしてもっと若いときに気がつかなかったのかしら。私なんて台所から出てっちゃいけないのかと思ってたわ」

黒田「じゃあ、これからだって出てったらいいだろ」

お敏「だって…1人じゃどうしようもないもの」黒田をチラ見。

黒田「2人だってどうしようもないよ」

お敏「お互いに悲しい身の上よね」

黒田「あんたはそうでもないだろう」

お敏「どうしてよ」

黒田「みんなにかわいがられてさ」

お敏「あら、そうかしら」

 

黒田「今度だってたまには気晴らしにって連れてきてもらったじゃないか」

お敏「そりゃそうだけど…やっぱり満たされないものがあるわよ」

黒田「裏切られた人間よりは幸せだよ」

お敏「そういう苦労だってしてみたいのよ、私は。ねえ、黒田さん。今夜はもっと飲みましょうよ、ねっ。ホテルのてっぺんにいいとこがあるわよ」

 

ピアノ生演奏つきのおしゃれなバー。キョロキョロ店に入ったお敏を窓の見える椅子に掛けさせる黒田。

お敏「すてきだわ。なんてロマンチックかしら」

黒田「おばちゃんは若いよ」

お敏「あんたこそもっと若いじゃないの。ねえ、お敏さんって言ってよ。そうすりゃ、もっとロマンチックになるわよ。ねえ、気分だけでもさ」

 

注文を取りに来た若い女性が和泉真喜さんかな? 特に情報なし。

 

お敏「そうね…あれ、なんつったかしら。ウイスキーに氷入ってんの」

従業員「水割りですか?」

黒田「ビールでいいんだよ」

おつまみを勧められるが断り、メニューを返す。

お敏「ケチね。うんと豪遊しようと思ってたのに」

黒田「高いんだよ、こういうとこは」

お敏「貯金があるわよ、私だって。昨日、銀行から下ろしといたのよ。郵便局じゃないのよ、私は」

黒田「貯金の話はいいよ。今日のお墓の話を思い出すよ」

お敏「やあね。人がいい気分でいるのにお墓だなんて。私はあんたの奥さんやイッちゃんのおかみさんみたいにひどい女じゃありませんよ」

黒田は何かじっと見ている。

 

お敏が聞くが、黒田は席を立って部屋へ戻り、ベッドに飛び乗り頭を抱えた。お敏がチャイムを鳴らす。黒田がドアを開け、お敏が部屋に入ると「お敏さん」と言う。泣き出しそうな黒田の顔。

お敏「あんた、お敏さんって言ってくれたじゃないの」

 

女房をさらってった男がバーテンをしていたと黒田から聞いたお敏は「ちきしょう。どんな男だか見てきてやるわ」部屋を出ていこうとして振り向き、「じゃ、あんたの奥さんだった人もこの浜松にいるのかしら?」と聞く。答えない黒田にしらばっくれて聞いてみるわと出ていった。

 

勇んで廊下を歩きだしたが、亀次郎の部屋に入り報告。亀次郎も「よし、どんな男だか見てきてやろう」と飛び出していこうとする。愛子はスリッパであることを指摘。

 

亀次郎「そんな男はぶん殴ってやらなきゃ」

お敏「そうですとも」

愛子「乱暴しちゃいけませんよ。昼間からろくなこと言わないんだから」

亀次郎「それが男の気持ちなんですよ。亀さんの女房がいちいち驚くな」

 

亀次郎のあとにお敏、かおるも続き、愛子も部屋を出ていく。部屋の鍵が大写しになってつづく。

 

お敏さんは黒田が好きなのかなー? 黒田とお敏さんみたいに今32歳くらいの人と53歳くらいの人って誰だろうと調べました。1991年生まれの中村蒼さんはなんか雰囲気あるなあ。1970年生まれの女性だと相田翔子さん、中山美穂さん、水野真紀さん、坂井真紀さん…あ、坂井真紀さんと中村蒼さんは「詐欺の子」で親子役だった。やっぱりこのくらいの年齢差は親子感があるな。

 

終盤になって黒田回が続くねえ。ま、結構好きだけどね。