TBS 1969年6月17日
あらすじ
鶴 亀次郎は裸一貫からたたき上げ、一代で築いた建設会社の社長である。ワンマンで頑固一徹な亀次郎は子どもたちに"おやじ太鼓"とあだ名を付けられている。この"おやじ太鼓"、朝は5時に起き、夜は8時になるともう寝てしまうが、起きている間は鳴り通し。そんな亀次郎をさらりとかわす7人の子どもたちに比べて、損な役回りはお手伝いさんたち。ひと言多いばっかりに、毎日カミナリを落とされる。
2023.9.15 BS松竹東急録画。12話からカラー。DVDは第1部の39話まで収録。
鶴家
亀次郎:進藤英太郎…大亀建設株式会社を一代で立ち上げた。62歳。
妻・愛子:風見章子…良妻賢母。57歳。
*
長男・武男:園井啓介…亀次郎の会社で働いている。31歳。
妻・待子:春川ますみ…正子の紹介で結婚。
*
次男・洋二:西川宏…ピアノや歌が得意。空襲で足を悪くした。29歳。
長女・秋子:香山美子…出版社勤務。27歳。
三男・三郎:津坂匡章(現・秋野太作)…二浪して今は大学4年生。
次女・幸子:高梨木聖…大学4年生。
四男・敬四郎:あおい輝彦…浪人中。
三女・かおる:沢田雅美…高校2年生。
*
お敏:菅井きん…お手伝いさん。愛子の4つ下。53歳。
奥の茶の間では家族が食事をしていて、電話が鳴り、お敏が駆けつける。「かおるさんですよ」
かおる「あっ、彼だわ」茶の間のふすまを閉めて電話に向かう。
かおる「もしもし」
男子生徒「ああ、おはよう」
かおる「何? こんなに早く」
男子生徒「いやね、まだ寝てるかと思ったけどさ」
かおる「とっくに起きてるわよ。うちは日曜日だって見境がないのよ。ほら、あの人がいるでしょ。ねっ?」
茶の間
亀次郎「なんですか、あの電話は」
愛子「お友達からですよ」今日は洋装、白いブラウス。
亀次郎「そうじゃありませんよ。見境がないとか、あの人だとか」
⚟かおる「バカね、ハハハッ」
愛子「あの年頃は手がつきませんよ。言いたいことを言わしとくしかないんですよ」
亀次郎「彼だとか彼女だとか、どだい、うちの子供たちはどうかしてますよ」
愛子「それだけ大人になったんですよ」
今日の茶の間メンバーは亀次郎、愛子、幸子、敬四郎。お敏がおみおつけをよそう。
亀次郎「なり方がありますよ。洋二といい、三郎といい秋子は秋子で御託を並べてるし、なるに事欠いてうらなりよりも悪いですよ」
⚟かおる「そうそうそう、断然そうよ。私だってそう思うわ」
お敏「ああも思い、こうも思い、なかなか思うようにならないもんですね。どうしてこうなんでしょう」
亀次郎「母親が甘いからですよ」
お敏「そうでしょうか」
亀次郎「そうに決まってますよ」
愛子「いいじゃありませんか。私が甘くてお父さんが辛ければちょうどいいんですよ」
お敏「さあ、どうでしょう」
敬四郎「いいんだよ、お敏さんは黙ってりゃ」
幸子「お敏さんが口を出すから変なふうになっちゃうのよ」
亀次郎「変なふうにはなりませんよ。お敏にはお敏で言いたいことがあるんですよ」
お敏「そうなんです。とにかく忙しいのなんのって」
愛子「分かってますよ。さあさあ、ごはんをいただきましょう」
「いただきます」とごはんを食べ始める敬四郎たち。
お敏は「じゃあ、まあ、お給仕は敬四郎さんにお願いしますよ」と炊飯器を敬四郎のところへ移して、腰は痛いし、目はちらつくしとぼやきながら去っていく。下手にいる人が給仕するルール?
まだ電話中のかおる。「だけど彼、イカさないでしょ。変なもん着ちゃって。あれじゃ無理よ、モテないわよ。うん、うん。そうそう、だから彼の孤独は当然よ。スカッとしたとこないもんね。もっとも彼女だって軽薄だけどさ。どっちもどっちよ。自主的に解決するしかないわね。ああ、勧告したって無駄よ」
茶の間から出てきて、あきれて見ているお敏に、受話器を自分の肩に当て「冷たいお水ちょうだい」と言うかおる。
お敏「まあ、あきれた」
かおる「いいえ、こっちのこと。それで今日はどうすんの?」
茶の間
亀次郎「しかしだな…」
愛子、幸子、敬四郎が亀次郎に注目。
亀次郎「今日は日曜日か」
敬四郎と愛子と幸子はおみおつけの味について言い合う。お豆腐から水が出ていて、薄い。毎日のことだから雑になる。辛かったり甘かったりちょうどいいってことは難しい。幸子と敬四郎はお敏さんに対してちょっと厳しい。
愛子「うちなんかまあまあうまくいってるほうですよ」
亀次郎「うまくなんかいってませんよ」
愛子「思いようですよ」
敬四郎「このおみおつけ、薄いけどまずくはないもんね」
愛子「そうよ。贅沢言ったらキリがありませんよ」
幸子「辛いよりいいわ」
敬四郎は最近、里芋のおみおつけしないね、たまには食べたいと言う敬四郎に明日やると言う愛子。
亀次郎「何を言ってんだ、お前たちは。おみおつけ、おみおつけって、たかがこんなものの1杯じゃないか。もう少し利口なことに頭を使いなさい」
愛子「いいじゃありませんか。おみおつけの話でもしてるほうが平和ですよ」
亀次郎「そんな平和は見せかけですよ。何が高度成長だ。いいかげんな寝言も休み休み言いなさい」
愛子「それは政府に言うことですよ。私に怒ったってしょうがありませんよ」
亀次郎「しょうがないことがあるか。大体、女は無知ですよ」
幸子「あら、そうかしら」
亀次郎「そうですよ。女が無知だから有害な食品が出回るんですよ。やたら色がついてればきれいだと思って」
ふいに昔流行した本を思い出しました。
昭和34(1959)年以降に生まれた世代は41歳までしか生きられないとかいうやつ。「おやじ太鼓」の登場人物は全員、当てはまってないけど。
敬四郎「そうそう。バンコックのホテルで外人が言ってましたね。日本へ行くのもいいけど食べるもんがみんな毒だからおっかないって」
亀次郎「そうさ。このままだと外人は日本へ来なくなっちゃう。世界の物笑いだ」
愛子「まあまあ、世界のことはいいけど、うちの中だけでのんきにやりたいわね」
亀次郎「それがいけませんよ、それが。それがマイホームの塊ですよ。だから女は無知だってんだ」
愛子「諦めてるんですよ」
亀次郎「何を諦めてんだ?」
愛子「いろんなことですよ」
それにしても昔の人は、よくご飯を食べるよ。愛子も敬四郎におかわりを頼む。
亀次郎「諦めていて日本がよくなるか。年寄りじみたことを言うな」
愛子「じみてなんかいませんよ」
亀次郎「いますよ。ショボショボしちゃって」
敬四郎がご飯をよそって愛子に、亀次郎もおかわり。
幸子「だけど、あんたバンコックのホテルで外人が言ってたって言うけど、あんたどうして外人の言うことが分かったの?」
敬四郎「あっ、そうか。変だな」
亀次郎「変じゃありませんよ。ちゃんとそのための通訳がいますよ」
敬四郎「そうそう、そうでしたね」
幸子「そんなら分かるけどさ」
亀次郎「分かりが遅いですよ、お前は」
えー? 敬四郎のほうがボケなのに、幸子が分かりが遅いことになるの?
愛子「だけどあれですね。やっぱり外人も日本へ来ると気味が悪いでしょうね」
亀次郎「そうさ。何を食べたって毒が入ってるんだ」
愛子「あきれた国ですよね」
亀次郎「だからさっきからそれを言ってるんですよ。分かりが遅いですよ、お前は」
愛子「お父さんは早いですからね」
亀次郎「そうさ、当たり前ですよ」
女は無知という亀次郎の言葉に愛子の諦めてんですよが全てと思うけどな~。反論すれば、やっぱり無知。反論しなければ、やっぱり無知と言うだけ。それにしても着色料ならアメリカとかのお菓子とかのほうがすごくない?
まだ電話をかけているかおる。お敏がふすまを開けて魔法瓶と急須を運んできた。ふすまの向こうではかおるが椅子に座って電話をしているのがぼんやり見える。
亀次郎「かおるは何をしてんだ。いつまでも電話にかじりついてて」
お敏「そうなんです。水を持ってこい、腰掛けを持ってこい、まあ、あきれますよ」
亀次郎「腰掛けちゃってんのか?」
お敏「はい。すっかり腰を落ち着けちゃって」
茶の間からだとかおるの姿が正面に見えるのは幸子と敬四郎。愛子は背中側で亀次郎は部屋の奥で見えない。かおるは茶の間に背を向けて通話を続行。
亀次郎は「こら、かおる!」と呼びかけるが、愛子が止めた。
亀次郎「それが甘いんですよ」
愛子「お父さんは辛いんですよ」
亀次郎「おみおつけみたいなこと言うな」
お敏「おみおつけがどうかしたんですか」
敬四郎「薄いんだよ、今日のは」
亀次郎「贅沢言うんじゃありませんよ」
敬四郎「はい」
お敏「じゃあ、もう一遍煮直してきます」
愛子「ハァ…やれやれ」
亀次郎「何がやれやれだ」
愛子「武男さんたちは隣だし、秋子はちょうど旅行中だし寂しい父の日ですね」
今回は1969年6月15日(日) 第三日曜日で父の日。
愛子の言葉を聞いて敬四郎と幸子が父の日だと気付く。
亀次郎「何を言ってるか。このわしが寂しいもんか」
愛子「前はにぎやかだったもんね。みんなそろっていて」
回想シーン。白黒ならぬ白緑みたいな色遣い。茶の間の食事風景。奥が亀次郎で左奥から愛子、武男、秋子、幸子。右奥から洋二、三郎、敬四郎、かおる。これいつのかなあ。これと全く同じ並びで食事をしているシーンが27話の7月のお盆回でもあったんだけど、この回想シーンの服装が夏っぽくない。
回想で武男はガウンっぽいのを上に着てるし、亀次郎も寝巻きの上に1枚羽織ってる。
サラッとしか書いてないけど、この回かも? 4月ならみんな長袖だし、服装もおかしくないと思う。全員が揃って茶の間で食事をするシーンって誰かしらいないことが多くて案外少ないんだよね。敬四郎と三郎が石蹴りして歩いた回。
広間のソファに座り新聞を広げている亀次郎。愛子が入ってくると新聞をたたむ。「さてと、今、何時だ?」
愛子「10時ちょっと前ですよ」
亀次郎「まだ10時前か」
愛子「退屈なら、その辺を散歩してきたらどうですか? 脚が一番早くもうろくするって言いますよ」
亀次郎「脚の運動なら、さんざん会社でしてますよ。嫌なこと言うよ、お前は」
愛子「だって疲れた疲れたって、ゆんべも脚を揉ましたじゃありませんか」
亀次郎「疲れますよ、そりゃ」
愛子「そりゃ疲れるでしょ。私だって一日動いてると疲れますもの」
亀次郎「もうろくするのは、お前のほうが先ですよ。どっかその辺を歩いてきなさい」
愛子「はいはい。うちの中を歩いてるだけだって大変ですからね」
亀次郎「どこ行くんだ?」
愛子「行きゃしませんよ。うちの中にいたって、することがいっぱいあるんですよ」
亀次郎「まあ、いいからいいから、ちょっとここへ来て掛けなさい」
何か用があるのか愛子が聞くが、用はなく、日曜の朝ぐらいもうちょっと落ち着きなさいと言う。広間から出ようとした愛子が戻ってソファに座る。日曜ぐらいもうちょっと寝ていてくれればいいのにと言うが、性分なんですよと一言。
武男が顔を見せないことを気にする亀次郎に日曜だからまだ寝ていると答える愛子。
亀次郎「お前、ちょっと行って見てきなさい」
愛子「うるさい人ですね、あなたは」
亀次郎「うるさい? 何が?」
愛子「そんなことは待子さんがしてますよ。ここにいなさいって言ったり、見に行ってきなさいって言ったり、隣のことは隣に任しとけばいいんですよ」
亀次郎「任してますよ」
愛子「まだ昼寝しないんですか?」
亀次郎「まだ起きたばかりですよ。なんだ、10時前だというのに」
お敏が広間に来て、今日のお昼のことを聞く。愛子が亀次郎に聞くと、「今、食べたばっかりですよ。そんなにすぐ何が食べたいか分かるか」とキレる。
お敏「いいえ、父の日ですからお赤飯でも蒸(ふ)かすのかと思って」
愛子「そうですよ。いい日なんですよ、今日は」
亀次郎「いいことがあるか」
愛子「だっておめでたいじゃありませんか。とにもかくにも今日まで無事に生きてきたんですもの」←この時代の人が言うと重みがある。
お敏「そうですとも。人一倍頑固で丈夫で、こんなおめでたいことってありませんわ」
亀次郎「ひと言余計ですよ」
お敏「はあ」
愛子「余計じゃありませんよ。だからこそお父さんは成功したんですよ」お昼は外から何かとるわと言うと、お敏は一番楽で助かったとにっこり。
広間を出ようとしたお敏に愛子のお茶をおいしく入れてきなさいと命じる亀次郎。新茶の余ったのがあるとそそくさと広間を出ていくお敏。
亀次郎「どうもあいつはひと言余計だよ」
愛子「あれでいいんですよ。言いたいこと言ってなきゃ。このうちにはいられませんよ。よくいてくれますよ」
亀次郎「そりゃまあそうだけどさ」
愛子「さあさあ、今日はいい日になるといいんですけどね」
武男の話に戻り、隣は隣、こっちはこっち。みんなそれぞれ自分の生き方があるんですよと愛子が言う。
亀次郎「洋二と三郎か?」
愛子「秋子も結婚すれば間もなくこのうちを出ていきますしね」
亀次郎「あとは幸子と敬四郎とかおるか」
かおるはまだ間があるけど、幸子と敬四郎は子供じゃないからもうすぐ。
亀次郎「何を言ってるか。あんなものまだ独り歩きができてたまるか。うっかり歩かせりゃつまずいて転びますよ」
愛子「それが親バカなんですよ」
忙しいからと広間を出ようとする愛子を引き留める亀次郎。愛子は頂き物のお礼を書かなきゃと言うが、亀次郎は武男に書かせたらいいと言う。しかし、武男は亀次郎に似て字が下手。待子は大学出で英語もしゃべれるが似たもの夫婦でダメ。
亀次郎「一体、日本の教育はどういうことになってるんだ」
愛子「だから大学が揉めてるんですよ」
亀次郎「高等学校だって揉めてますよ」
愛子「この分だと中学だって揉めだしますよ」
亀次郎「やれやれ、あんパンはうまいが字はダメか」
愛子は会話を切り上げ、お礼状を書きに行こうとするが、亀次郎が止める。亀次郎はお茶を持ってこないお敏の様子を見に行くと、台所へ行った亀次郎を見計らって、階段を降りて来たかおるが広間へ。
台所
新茶の缶を開けたらかりんとうが入っていたと言うお敏。しけっているから早く食べたほうがいいと食べていた。ほうじ茶も入れ替えた。
亀次郎「バカ。あきれるよ、お前には」
広間から愛子を連れて、2階の三郎と敬四郎の部屋へ一緒に行くかおる。
両手で愛子のお茶を運ぶ亀次郎。「あっ、茶柱が立ってるよ。おい、愛子」と広間に入るが誰もいない。亀次郎は愛子を捜して歩き回り、階段でけつまずく。
三郎と敬四郎の部屋(結婚前の武男の部屋)
愛子「嫌ですよ。お母さんは。そんな話を今日お父さんに言えますか」
かおる「あら、どうして?」
愛子「せっかくの日曜日ですよ。それに今日は父の日ですからね。お父さんがガッカリするような贈り物はできませんよ」
敬四郎「だけど僕だってはっきりしたいんですよ。この前だって話したでしょ? 僕は真面目に真剣に考えてるんですからね」
かおる「必死なのよ」
愛子「じゃあ、もう一遍必死で勉強する気はないの?」
敬四郎「ありませんね」
幸子「だけど、お母さんだってまるっきり敬四郎の言うことに反対じゃないんでしょ?」
愛子「そりゃまあ、気持ちは分かるけど」
敬四郎「じゃあ、それに決めてくださいよ。ねえ、お母さんったら」
愛子を捜す亀次郎の声が廊下から聞こえる。
愛子「ちょっと待ってらっしゃい。寝かしつけてくるから」
三郎たちの部屋から出てきた愛子と階段を上ってきた亀次郎はよろよろ。
愛子「愛子、愛子ってまるで彼女を呼んでるみたいですよ」
亀次郎「そうさ、お前は彼女だよ」
愛子「じゃあ、あなたは彼ですか?」
亀次郎「バカなことを言いなさい。人が階段を上がり損なって向う脛を嫌っていうほどぶつけたのに。ああ、痛かった」
やっぱり脚からきたんですよと笑う愛子は下へ行ってお茶を飲みましょうと言うが、亀次郎は肩を貸しなさいと愛子の肩を抱く。
愛子「だらしがない。まるでヨボヨボじゃありませんか」
亀次郎たちの部屋
布団に横になっている亀次郎をマッサージする愛子。
亀次郎「そういえば、今、何時だ?」
愛子「まだ11時前ですよ」
亀次郎「まだ昼までは1時間か」←字幕は「昼間では」となってたけど、よくある変換間違いだと思う。
愛子「今日はどうして時間ばっかり気にするんですか?」
亀次郎「別に気にするわけじゃないよ。ただ時は金なりだからな。うかうかしてるとすぐ一日がたってしまうよ」
愛子「日曜ぐらいお金のことを忘れてぐっすり眠るといいんですよ」
亀次郎「お前ときたら、わしが寝てさえいれば楽ができるもんだから」
愛子「楽ができるわけじゃありませんよ。用が多いんですよ」
亀次郎「ヘッ、お前の用なんて、たかが知れてますよ。葬式のお返しに風呂敷をもらったお礼状を書いたり、どっかからバスタオルを贈ってきて葉書を書いたり。フッ、全く無駄もいいとこだ」
愛子「そりゃまあ、そうですけどね」
亀次郎「あんなものどこのうちだって引き出しも戸棚もいっぱいで困ってるんだ」
愛子「またお中元に変なものもらって困るんですよ。口に入るものならだんだんなくなってくからいいですけどね」
亀次郎「とにかく無駄が多すぎますよ、日本の習慣は。盆だの暮れだのお互いにいらないものをやり取りしてバカバカしくて話にならんよ」
それが50年以上たってもなくならないんだよね~。
「なんだ、もう昼寝ですか?」と武男が顔を出した。
愛子「それがなかなか寝つかないのよ。ブツブツ文句ばっかり言って」
亀次郎「当たり前ですよ。赤ん坊じゃあるまいし。そう簡単に寝ついてたまるもんですか」
愛子「くたびれちゃうのよ、ちょっと武男さん、代わってちょうだい」
武男「はい、代わりますよ」
愛子でいいと言う亀次郎だったが、武男に交代。「やっぱり脚から一番先にもうろくするそうですからね」
亀次郎「愛子は一番先に頭からきますよ」
愛子「憎らしいったらないんだから」
亀次郎「あとでお母さんの頭も揉んでやるといいよ」
武男「揉みますよ、お母さん」
愛子「いいえ、結構」
愛子が茶の間を出ようとすると、武男が「お父さん、ちょっと待っててください」と愛子と部屋を出ていった。
別宅の武男に洋二と三郎から今日は父の日だからお父さんの顔も見たいけど、やっぱり行かない方がいいと思うから、お母さんからそれとなくよろしく言ってくれと電話があった。せっかくお父さんがいい気持ちでいるときにわざわざ揉めるために出かけていくのもなんだからと言っていた。
亀次郎が朝から2人が来るのを待っていて時間ばっかり気にしていて、来るとすればお昼ごろだろうと思っているので、愛子もお昼の支度もしないで待っている。
洋二が電話をかけたときにお父さんが出なかったのがこたえた。ろくに会話してなかったもんね。亀次郎は一声聞けて満足したけど、洋二はそうではなかったんだね。
武男「どうします? お父さんが時間を気にしながら待ってるとすると、だけど2人が来たとき、お父さんはなんて言うでしょうね。ニコニコ笑って、よく来たよく来たって言うかしら」
愛子「照れくさいもんだから、また怒鳴るでしょうね」
武男「それなんですよ、困るのは」
愛子「困るなんてもんじゃないわ。もっともお父さんのほうだって、そう簡単には許すとは言えないとこがあるものね。三郎はともかく、洋二のほうは一番お父さんが困る女の人ですものね」
武男「よりによって一番おとなしい洋二がなんてことをしてくれたんだろう」
愛子「お父さんが一番気にしていたのに。脚も悪いし、気も小さいし」
亀次郎が武男や愛子を呼ぶ。
武男「はい! じゃあ揉みつぶして寝かしちゃいますからね」
愛子「寝るもんですか。怒ったって怒鳴ったって待つ身のつらさですよ」
敬四郎、かおる、幸子が待ちくたびれたと階段を降りてきた。敬四郎を追い詰められた負け犬と言うかおる。これじゃないけど一時、負け犬ってはやったよね~。
この本の出版が2003年であることに驚いた! 20年前(-_-;)
洗濯や掃除を終えたお敏がお昼は何にするか再び愛子に聞く。うなぎは一番高いし、お寿司はちょっと高いし、そば屋の天丼ならちょっと安い。それどころじゃないと言う愛子。
敬四郎はホテルの調理場へコックの見習いに入ろうとしていた。
愛子「お父さんがどんな顔するか考えてごらんなさい」
かおる「ハハッ、ヒゲが逆立ちしちゃうわよ」
茶化すようなこと言うかおるに愛子は「彼だの彼女だの高校生がなんですか」とキレる。
幸子「だけどね、お母さん。私、敬四郎が言うこと、もっともだと思うの」
敬四郎「ねっ、そうだよね?」
幸子「なまじっか今の大学を出るよりもいいかもしれないわ。とにかく自分の実力で生きていく世界ですもの。大学卒の肩書はもう色があせたわ」
敬四郎「ねっ、お母さん、そうですよ」
愛子「そりゃお母さんだって分かってんのよ。でもね…」
まあ、それこそ全学連なんて入っちゃったら、大変だよ。
武男が茶の間から出てきた。「やれやれ、お父さんを揉んでるのは疲れるのなんのって。骨が太いでしょ」
愛子「さっぱり寝ないんでしょ?」
武男「寝ないどころじゃありませんよ。日本はボロクソ、政治家はボロクソ。しゃべってるうちにだんだん腹が立ってくるんですね」
愛子「イライラしてるんですよ。間もなくお昼ですからね」
骨は太いけど、気持ちは細い人だと愛子が言い、お母さんが揉んできますよと席を立つ。お敏には駅前でお赤飯を買ってくるように頼む。
亀次郎が何をイライラしているのか武男に聞くと「父の日だもの。親不孝者の顔を見んなそろえて見たいんだろ」と弟妹達の顔を見る。後ろでうなずくお敏。
亀次郎は広縁でお茶の缶からかりんとうを取り出し、愛子と食べていた。まだ時間を気にする亀次郎。もうじきお昼と答えた愛子は洋二も三郎も今日は来ませんよと告げた。「二度とあんなもの、このうちの敷居をまたぐな」と怒鳴る亀次郎だったが、寂しさを隠せず庭を見る。(つづく)
寂しい話が続くねえ。金八シリーズでも1や2は最初は反発していても先生、先生と慕われる話だったのに、80年代半ばごろのスペシャルだとまるっきり金八のやり方が古いみたいな感じに描かれて、見ていてつらいものがあった。そんな感じかな。
第一部の父の日はどうだっけ?と思ったら、23話は父の日の前日に黄枝子がねじ込んできた話だった。明日は父の日という亀次郎のセリフがあっただけ。
しかし、特に第二部になってから武男ってすごいなとつくづく思う。特に父親に反抗することなく、すんなり亀次郎の跡継ぎとして大亀建設に入社。自分が好きになった人がヤバいとなれば自ら別れを切り出し、あっさり見合い結婚。妻には優しく、きょうだいたちには深入りすることもなく割とあっさり。親の教育の賜物かもね。
今日は待子さん別宅にいる設定だったんだろうけど出てこなかった。