公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
元子(原日出子)は鉄道事故の取材で犠牲者の妹・信子(壇まゆみ)と知り合う。残された家族の取材をするべく忌中の家を訪問し、取材の意図を告げると信子は表情を硬くしたが、自分も夫の正道(鹿賀丈史)が事故で大けがをして入院中の身だと明かし、話を聞くことができる。その後、のぼる(有安多佳子)たち東洋テレビの報道部の取材体験も聞き、事故というものが、安らかな日常をいかに突然に奪い取るものであるかを記事に書く。
タイトルバックで音楽の三枝成彰(最近になり、当時は”成章”だったと気付く)さんと語りの青木一雄さんが並んでる時は出演者が多い日。
満員電車に揺られる元子。
元子は危うく夫の命を失うところだった体験者として鶴見事故を取材しようと心に決めながらも気持ちは重くなる一方です。
事故当時の写真
回想
アナウンサー「失礼ですけれども、お亡くなりになられたのはお身内の方ですか?」
元子「いいえ」
アナウンサー「お悲しみのところまことに申し訳ありませんが、何かひと言」
元子「まだ何も分かってないんです。ですから何もお答えできません」
アナウンサー「何かひと言!」
元子「向こう行ってください! お願いします!」
回想ここまで
回想に見えるけど、微妙に前回とアングルが違うのと、だから→ですから、あっち→向こうと微妙にセリフも変わってる。
回想
福井「見たんでしょう、その目で。あなたの名前で記事を書くのよ。書きまくるのよ!」
回想ここまで
これも回想風でセリフも微妙に違う。「見たんでしょう、その目で。記事にするのよ。あなたの名前で全てを書くのよ」
信子が赤い公衆電話で電話をかける。「もしもし…」泣き出してしまった。
元子「もしもし、お電話代わりました。私、今、信子さんと一緒にいる者ですけれども。お兄様のご遺体を確認なさったものですから」
信子「お母さん! お兄さんは…お兄さんは…」
取材の手がかりは、やはり、ゆうべ總持寺で知り合った信子という娘でした。
山村家を訪れた元子。玄関には”忌中”の貼り紙。
元子「ごめんください」玄関には靴が並ぶ。「ごめんください」
⚟女性「はい」
信子「おばさん…!」←この呼びかけ、親戚でもない限り今はないよね~。
元子「ごめんなさい、お取込み中のところ」
信子「いいえ。ゆうべはありがとうございました。おかげさまであれからすぐ兄はこちらへ連れて帰られました。私一人だったらどうしていいか分からないのに。本当にどうも」
元子「それで…お義姉(ねえ)様は?」
信子「今、休ませてますけれど、やはりショックで…」
元子「そうでしょうねえ」
信子「あの、よろしかったらどうぞ。親戚の者も集まっておりますし、母も落ち着いたら、おば様をお訪ねして、お礼を申し上げなければと言ってましたし」
元子「そんな…」
信子「いいえ。ところが私、お名前もお住まいも聞かないで失礼してしまったものですから。さあ、どうぞ」
元子「ちょ…ちょっと待ってください」
信子「はい?」
元子「実は私、今日、仕事で来たんです」
信子「仕事…?」
元子「ええ。実は…女性時代の者なんです」
信子「雑誌社の方だったんですか」
元子「大原と申します。あれから社に戻りましたら是非こちらに伺って、ご家族の方から…」
信子「すいません。そういうことでしたら大変申し訳ないけれど何も話したくないし」
元子「お嬢さん」
信子「あんまりです。まさか仕事であんなに親切にしてくれたなんて思わないから、私、今の今までおばさんのこと…」
元子「でもゆうべ、あなたと一緒にお兄さん捜したの、あれは仕事じゃありません。あなた一人じゃとっても放っておけなかったし、亡くなっていらっしゃるとしたら、お兄様だって一刻も早くお身内の方に会いたいはずだ、そう思ったからなの。それは信じてね」
信子「分かりました。でも今日は帰ってください。母も義姉(あね)もとてもお話なんかできそうにありません」
元子「そうですか。では私、今日は、これで失礼するわ。でも、仕事でああいうところへ行ったのはゆうべが本当に初めてなんです。それは信じてください。主人が、やはり事故でけがをして病院に入院しているの」
信子「事故で?」
元子「ええ。それで女性時代の仕事をしているんです。だからあなたのこと、とってもひと事には思えなかったし、何としても力を貸さずにはいられなかったの。でも…でも、それだけのご縁で押しかけてくるなんて自分でも本当に恥ずかしくてたまらないんです」
信子「おばさん」
元子「本当にごめんなさい。また改めて出直してきます。そして、もし話してくださるお気持ちになられたら、今度のことの悔しいこと、悲しいこと、訴えたいこと、どうぞ私にぶつけてくださいな。二度とこんなひどいことが起きないように一生懸命記事にしますから。すいません、失礼します」
信子「すいません、ちょっと待っていただけますか」
元子「お嬢さん」
部屋
小さな男の子が飛行機を持って部屋を走り回っている。
一郎「ブ~ン」
節子「これ、この前の日曜に撮ったものなんです。カメラ買ったばっかりだから、あれもこれも写しまくって。あら、汚れててごめんなさい。これ、昨日出来上がったばっかりだったから、信子さんのところへ行く前に撮ってきたらしくて、あの人のポケットに入ってたんです。内ポケットだから大丈夫だったのよね、きっと。でも、あ~、こんなに汚れちゃって」
ハイテンションの節子に元子は言葉も出ない。そんな元子に一郎が抱きつく。
信子「駄目よ」
元子「ああ、僕…」
信子「すいません。もう大勢さんが見えてるんで、この子ったら今朝から落ち着かなくって」
元子「いえ」
節子「でも、空気がいいでしょう、この辺。5か月前に引っ越してきたのよ。彼、とっても気に入って、今度はお弁当作って裏山にピクニックに行こうって言ってたんだけど。信子さん結婚したら、お義母(かあ)さん、こっち来てもらうことになってたのよね。彼、とっても親孝行だったから。ね」
信子「え…ええ」
節子「あら、ごめんなさい、私一人でしゃべってるみたい。でも、彼のことならたくさんあるんですもの。何から話していいか分からないくらい」
元子「ええ…」
一郎「これ、パパだよ。お土産買ってきてくれるって」
節子「いい子にしてなければ買ってきてもらえませんよ」
一郎「うそだい、約束したもん」
節子「ほら、ごらん。パパが動いちゃ駄目って言ったのに一郎が動くから、この手、ボケボケ」
一郎「ボケボケだ~」
節子「ハハハハ…」
まだちょっと話を聞ける状態じゃなかったかもね。
一郎…庄司顕仁さん。「宇宙刑事シャイダー」(1984年)の小村良一役など。良一が手伝っている「モンキー」というペットショップをやっている大山小次郎が鈴木正幸さん。このドラマなら橋本さんで金八の大森巡査。大山小次郎の甥っ子という間柄。
節子…木崎雅子さん。1975年の大河ドラマ「元禄太平記」くらいしか分からなかった。
病室
正道「大変な取材してるんだって?」
元子「ええ…」
正道「大介が今朝寄ってね、そう言ってったよ」
元子「そう…」
正道「大変だっただろう」
元子「もう少し時間がたてば気も取り直せるかもしれないけど…」
正道さんの隣のベッドの平井さんがいなくなって空きベッドになってたのに、今日は(今日から?)山田さんが隣のベッドになっている。
元子「後悔してるのよ、私。死ぬか生きるかの事故に遭った者の身内として、ほかの人が行くよりは…初めはそんな気持ちもあったのね。だから、気は重かったけど、とにかく訪ねたのよ。でも…残された者にとって死ぬか生きるかでは決定的に違ってたわ。私や子供たちは、こうして会いに来ればいつでも会えるけど、あの人たちにはね…」
正道「詳しいことは分からんが、君が言うとおり死ぬと生きるとじゃ大違いだろうな。ご家族の悲しみに土足で踏み込んだっていうことは許されないだろうね」
元子「そうなの。たとえ、どんな言い訳をつけても私のしてることは、結局、そういうことなんじゃないかって思えて」
正道「だったら、やめたらいいよ」
元子「あなた…」
正道「けどな、元子がこれからもずっとペンを持ち続けようって思うんだったら事実だけは、その目でちゃんと見といた方がいいな。事故はラジオで聞いたけどもひどいよな…ひどすぎるよ」
元子「ええ」
正道「一緒に怒り、一緒に泣くことだ、人間として。な」
編集長からじっくり時間をかけてよしという許可を取り付けると元子は一段落したのぼるたちの取材体験を取材に行ったのです。
東洋テレビ
報道部
TNN1班
のぼる「私もね、女性ニュースは事件屋じゃないんだから、お棺の前に立ってしゃべるのだけは嫌だって言ってんのよ。けど、いざとなったら何だかんだって駆り出されて、だから、總持寺であなたがこの先、もう嫌だって言った時、内心ホッとしたのね。取材するところを見られるのも嫌だったし、あなた、これ以上、この世界に巻き込みたくなかったし」
のぼるのモデルになったと思われる来栖琴子さんが担当していたのは1959年から1968年までやっていたTBSの「ポーラ婦人ニュース」。月曜から土曜日のお昼の15分番組。この枠が終了して始まったのが「ポーラテレビ小説」。同時代に日テレにもポーラ提供の「婦人ニュース」があったなんてややこしや。
杉本「去年の三河島の二重衝突の時もひどかったなあ。僕なんか家族の人にぶん殴られちゃった」
元子「そういうこともあるんですか」
米内「ありますよ。嫌だと泣いて怒る顔を写して何がニュースだ。それこそ事件屋の何者でもありゃしない。そういう批判があることも知ってます。けどね、そもそもニュースというのは事実をありのまま知らせることなんだからね」
のぼる「その辺りがね、ニュース班と私たちの番組とちょっと違うのね。悲惨なニュースっていうのはバラバラになった人間の部分を撮ることじゃないと思うの。例えば、一家全滅のお宅の玄関を写した。そこには受け取る主がいないのに新聞と牛乳が配達されてる。つまり、事故とは人間の日常が目に見えない暴力によってぶった切られることでしょ」
米内「ああ、それは同感だよ。けど、事実は事実さ。それに主観を交えたら、それは既にニュースじゃないよ。評論さ」
杉本「僕もね、あとは見る人がどう受け止めるかに任せるべきだと思うな」
元子「では、ニュースが見る人のためにあるものだとして亡くなられた方や、ご遺族の方への礼儀はどういうことになるんでしょうか」
米内「だからつくづく因果な商売だと自分でも思ってるんですよ」
杉本「ただね、義憤っていうのがあるでしょう。これだけは人に伝えなきゃ、自分たちの社会的な責任が果たせない。最後はもうこれだけでカメラ回してるだけでね」
のぼる「ねえ、ガンコ、どんなふうに書いてもいいわよ。ニュースはこうして作られるんだって、それ、ありのまんま、あなたの目で書いてちょうだい」
元子「うん」
米内…佐々木敏さん。岩手出身なのか。2000年以前はドラマにもいろいろ出演してるけど、今は映画の吹替えなど声優って感じかな。
杉本…小川降一さん。今は小川降市としてドラマ、声優など。「けものみち」捜査一課刑事。佐々木敏さん、女性時代編集員の冬木役の中平良夫さんも同じ円企画所属。
大原家ダイニング
原稿をまとめる元子。
元子は書きました。突然の不幸に襲われ泣くことさえ忘れたように、ただ楽しそうに一家の団らんを話し続けた、あの身重の若い未亡人のことを。
ダイニングに入ってきた大介。「お茶いれようか?」
元子「ん? あ…うん。けど、どうしたの? まだ眠ってなかったの?」
大介「うん? うん」
元子「そうなのよね…」
大介「えっ?」
元子「事故っていうのは…こういう日常が突然奪い取られることなのよね。そんなものに大介をとられてたまるもんですか」
大介「うん」
そして、11月も下旬に入って早々のことです。
病室
宗俊「大介のやつ、間に合いそうもねえな」
元子「授業が終わったら、すぐ来るって言ってたんですけどね」
トシ江「いいじゃないの。別段、みんなそろわなくちゃならないってことはないんだしね」
宗俊「いや、だけどお前、あいつだって頑張ってきたんだ。一緒にワ~ッと喜びてえじゃねえか、え」
トシ江「さあさあ…」
道子「でも、ギプスとっても足ちゃんとしてるのかしら」
元子「してるから外すのよ」
道子「うん…」
正道「大丈夫だよ。また道子と一緒にな、すぐかけっこできるようになるんだから」
道子「うん」
正道「うん、ハハ…」
病室のドアが開く。
宗俊「おう」
看護婦「さあ、大原さん、参りましょうか」
正道「はいはい…」
そうです。今日はいよいよ正道のギプスを外す日なのです。
処置室前のベンチで待っている宗俊たち。
宗俊「おい、大介、大介、大介」
大介「あ…間に合ったね」
宗俊「おう、間に合った間に合った」
大介「病室へ飛び込んだら、お父さんがいなくてさ、山田さんがもう行ったって言うから慌てちゃった」
トシ江「ねえ、のこぎりででも開けるのかしらね」
宗俊「お前、気になるんなら、中、のぞいてみりゃいいじゃねえか」
トシ江「ああ…嫌ですよ、そんな」
宗俊「しかしよ、いつもおめえ、足ん中、かゆいかゆいって言ってたから、今夜あたりは思いっきり足かけるだろうぜ。なあ、大介」
大介「はい」
処置室のドアが開き、元子が車いすを押して出てきた。
宗俊「おう」
大介・道子「お父さん!」
正道「ハハハ」
宗俊「あぁあぁ、おい、随分サバサバしたじぇねえか、え」
正道「おかげさまで」
大介「お母さん、僕が押す」
元子「そう?」
道子「私も押す」
看護婦「わぁ、大変だ。じゃ、奥さんには、これお願いしましょうか」松葉杖を渡す。
元子「はい」
大介「では、出発!」
正道「おう」
小雪…苫米地洋子さん。いつも明るくフランクな看護婦さんが看護婦という役名だったのに名前が付いた。
これですぐに退院できるわけではありませんが、まずは一安心。
つづく
報道はこのあとより加熱するからな。
ドラマは1981年。そこから80年代中盤あたりが一番ひどかった気がする。ワイドショーのリポーターも男ばっかりで偉そうだったしさあ。日航機墜落事故や豊田商事社長刺殺事件とかテレビでバンバン流してたよね~。
さて、そろそろ次の再放送作、発表かな?